環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部>第6章 各種施策の基盤となる施策及び国際的取組に係る施策>第1節 政府の総合的な取組

第6章 各種施策の基盤となる施策及び国際的取組に係る施策

第1節 政府の総合的な取組

1 環境基本計画

2017年2月に環境大臣から中央環境審議会に対して諮問された環境基本計画の見直しについて、約1年に及ぶ審議を経て、同審議会から環境大臣に新計画案についての答申が提出されました。この答申を受けて、2018年4月に第五次となる環境基本計画を閣議決定しました。

本計画は、持続可能な開発目標(SDGs)を掲げる「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の採択やパリ協定の発効後に初めて策定された環境基本計画です。このような時代の転換点にあるとの認識の下、SDGsの考え方も活用しながら、環境政策による経済社会システム、ライフスタイル、技術などあらゆる観点からのイノベーションの創出や、経済・社会的課題の同時解決を実現し、将来にわたって質の高い生活をもたらす「新たな成長」につなげていくこととしています。

その中で、地域の活力を最大限に発揮する「地域循環共生圏」の考え方を新たに提唱し、各地域が自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合う取組を推進することとしています。

2 環境保全経費

政府の予算のうち環境保全に関係する予算について、環境保全に係る施策が政府全体として効率的、効果的に展開されるよう、環境省において見積り方針の調整を図り、環境保全経費として取りまとめています。2019年度予算における環境保全経費の総額は、1兆8,671億円となりました。

3 予防的な取組方法の考え方に基づく環境施策の推進

地球温暖化による環境への影響、化学物質による健康や生態系への影響など、環境問題の多くには科学的な不確実性があります。しかし、一度問題が発生すれば、それに伴う被害や対策コストが非常に大きくなる可能性や、長期間にわたる極めて深刻な、あるいは不可逆的な影響をもたらす可能性があります。このため、このような環境影響が懸念される問題については、科学的に不確実であることを理由に対策を遅らせず、知見の充実に努めながら、予防的な対策を講じるという「予防的な取組方法」の考え方に基づいて対策を講じていくべきです。この予防的取組は、第五次環境基本計画においても「環境政策における原則等」として位置付けられており、様々な環境政策における基本的な考え方として取り入れられています。関係府省は、第五次環境基本計画に基づき、予防的な取組方法の考え方に関する各種施策を実施しました。

4 SDGsに関する取組の推進

SDGsの環境的側面における各主体の取組を促進するため、環境省では2016年から「ステークホルダーズ・ミーティング」を開催しています。これは、先行してSDGsに取り組む企業、自治体、市民団体、研究者や関係府省が一堂に会し、互いの事例の共有や意見交換、さらには広く国民への広報を行う公開の場です。先駆的な事例を認め合うことで、他の主体の行動を促していくことを目的としています。2018年度は、全3回会議を実施し、脱炭素化とSDGsを実現するための将来ビジョンである「地域循環共生圏」の構築に向け、地域の取組を支える地域金融の役割、また海洋プラスチックごみ等について、有識者を交えた意見交換を行いました。

企業・団体等によるSDGs達成に向けた活動が加速度的に拡大している中、企業・団体等の優れた取組を政府全体として表彰することにより、こうした潮流を更に後押ししていくことを目的として、2017年に「ジャパンSDGsアワード」が創設されました。2018年12月に第2回目の表彰が行われ、「SDGs推進本部長(内閣総理大臣)表彰」に食品のリサイクルループを構築することで食品ロスの削減に貢献する、株式会社日本フードエコロジーセンターが選ばれました。

また、「まち・ひと・しごと創生総合戦略2018改訂版」(2018年12月閣議決定)においてSDGsの達成に向けた取組の推進が位置づけられており、地方創生の一層の推進に当たっては、SDGsの主流化を図り、SDGs達成に向けた観点を取り入れ、経済、社会、環境の統合的向上等の要素を最大限反映することとしています。また、SDGs達成に向けた取組をはじめとする社会的変化を見据え、地方創生の新たな展開としての飛躍に向け次期の総合戦略策定の準備を開始することなどが盛り込まれています。内閣府では2018年2月から3月にかけて、地方公共団体(都道府県及び市区町村)によるSDGsの達成に向けた取組を公募し、2018年6月に、優れた取組を提案する都市をSDGs未来都市として29都市選定し、その中でも特に先導的な取組を自治体SDGsモデル事業として10事業選定しました。これらの取組を支援するとともに、成功事例の普及展開を図っています。2019年度においても、引き続きSDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業を選定し、各都市の取組に対する支援を行っていく予定としています。加えて、SDGsの推進に当たっては、多様なステークホルダーとの連携が不可欠であることから、2018年8月に、官民連携の促進を目的として「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を設置し、マッチング支援や分科会の立ち上げ等の取組を実施しています。さらに、2019年2月には、国内外へ向けたSDGs未来都市等の取組の普及展開を図ることを目的に、第1回地方創生SDGs国際フォーラムを開催しました。都道府県及び市区町村におけるSDGs達成に向けた取組の割合を、2020年に30%とすることを目標とし、引き続きSDGsの普及促進活動を進めていきます。(表6-1-1)。

表6-1-1 SDGs未来都市一覧

5 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした取組の推進

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、環境省は、関係府省庁や東京都、大会組織委員会と連携し、「環境問題への配慮・暑さ対策」といった観点から、リサイクルメダル製作への協力、外国からの来場者にもわかりやすいごみ分別ラベル作成への助言、熱中症対策や会場周辺の暑さ指数(WBGT)の調査、CO2削減を実現する先進的な技術知見の提供など、様々な協力・支援を行っています。食品ロスの削減やドーピング検査に使用する注射針等の円滑な処理等を含めた各種の対策を進めていくなど、3R・適正処理を徹底しています。