経済成長と人口増加に伴い、世界における廃棄物の発生量は増大しています。2011年に発行された「世界の廃棄物発生量の推計と将来予測2011改訂版」(株式会社廃棄物工学研究所)によると、2050年には、世界の廃棄物発生量が2010年の2倍以上となる見通しとされています。
このような状況の中、我が国における国民の3Rに関する意識は総じて低下の傾向にありました(表3-1-1)。しかし、その一方で具体的な3R行動の実施率は、従来から大きな変化は見られませんでした(表3-1-2)。これらの結果を踏まえ、問題意識が実際の3Rに結び付くような社会システムの在り方、とりわけ2Rの取組に関して、検討を行う必要があります。また、循環資源を原材料として用いた製品の需要拡大を目指した消費者への普及啓発や、2R取組実施事業者に対するインセンティブを喚起するための取組を進めることも重要です。
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個別リサイクル法に関して現状を見てみると、その大部分が目標を達成していました。今後も、法又はその目標等の見直しを踏まえ、循環型社会形成推進の観点を念頭に置いた取組を推進していくことが重要となります。特に使用済小型家電のリサイクルについては、市町村や認定事業者等による取組が進んでいますが、回収量の増大や効率的・効果的なリサイクルシステムの構築に向けて、現在の取組を更に強化していく必要があります。
廃棄物の最終処分量は、2000年度から2014年度の間で約74%減少しています。一方で、事業系ごみ排出量は、2014年度において2000年度比で約27%削減されていますが、近年の事業系ごみ排出量の推移は横ばいとなっています。
このような廃棄物や事業系ごみ排出量の推移における現況を踏まえ、事業者における更なる自主的取組の深化に向けて、我が国は2Rの取組を進めるとともに、業種に応じて、製品アセスメントや環境配慮設計、資源生産性等の考え方に基づいて取組の方向性や方針、目安を定めることなどを検討する必要があります。また、製造事業者やリサイクル業者間で、有用金属等の含有情報を共有化するための取組を進めることも必要です。さらに、リサイクル原料についても、新規用途への利用促進、地域間での需給調整、有害物質の混入状況に関する基準の策定等の取組や、適正処理困難物の処理体制を構築することについて検討する必要があります。
これらの検討が必要な事項に加え、資源循環だけでなく、同時に生物多様性や自然環境保全に配慮した統合的取組を進めることや、地域の主体性を尊重しつつ、地域の特性や循環資源の性質に応じた最適な規模の循環を形成するという、地域循環圏の考え方を浸透させるとともに、地域循環圏づくりに向けた体制整備等を進めることも重要です。
循環資源の輸出入に関しては、不適正な輸出入を防止することを前提とした上で、途上国では適正処理が困難な国外の廃棄物を我が国に受け入れ、有効活用等を図るとともに、他国において需要がある一方、国内での利用に限界がある循環資源について輸出円滑化を図ることが求められます。このため、国際的な廃棄物管理の取組に関する情報収集や連携の更なる促進、国際的な資源循環に関する研究、円滑な資源輸送に必要な港湾施設の整備及び受入体制の確保に関して、それぞれ取組を進める必要があります。
加えて、近年、世界的な資源制約の顕在化、自然災害の頻発化・激甚化等、廃棄物処理・リサイクルを取り巻く状況は大きく変化しており、循環型社会の形成に向けて絶えず取り組んでいくためには、災害により生じた廃棄物についても、適正な処理を確保し、かつ、可能な限り分別、再生利用等による減量を図った上で、円滑かつ迅速な処理を確保することを基本として、備えを平時から進める必要があります。
我が国における循環型社会とは、「天然資源の消費の抑制を図り、もって環境負荷の低減を図る」社会です。そして、この「天然資源」という言葉が指す資源という言葉には、化石燃料も当然含まれています。循環型社会の形成において、「天然資源の消費の抑制を図る」ことは、低炭素社会の実現にもつながります。
続いて、温室効果ガスに関するデータからこれら二つの社会の関係性を見てみます。直近のデータによれば、2014年度の廃棄物由来の温室効果ガスの排出量は、約3,740万トンCO2(2000年度約4,670万トンCO2)であり、2000年度の排出量と比較すると、約20%減少しています。その一方で、2014年度の廃棄物として排出されたものを原燃料への再資源化や廃棄物発電等に活用したことにより廃棄物部門以外で削減された温室効果ガス排出量は、約1,940万トンCO2となっており、2000年度の排出量と比較すると、約2.3倍と着実に増加したと推計され、廃棄物の再資源化や廃棄物発電等に活用が進んでいることが分かりました。2015年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」や2016年5月に閣議決定された地球温暖化対策計画を踏まえ、廃棄物処理分野からの排出削減を着実に実行するため、各地域のバイオマス系循環資源のエネルギー利用等により自立・分散型エネルギーによる地域づくりを進めるとともに、廃棄物焼却施設等が熱や電気等のエネルギー供給センターとしての役割を果たすようになることで、化石燃料など枯渇性資源の使用量を最小化する循環型社会の形成を目指すこととしています。その観点から3Rの取組を進めながら、なお残る廃棄物等について廃棄物発電の導入等による熱回収を徹底し、廃棄物部門由来の温室効果ガスの一層の削減とエネルギー供給の拡充を図る必要があります。
3Rの取組が温室効果ガスの排出削減につながる例としては、金属資源等を積極的にリサイクルした場合を挙げることができます。例えば、アルミ缶を製造するに当たっては、バージン原料を用いた場合に比べ、リサイクル原料を使った方が製造に要するエネルギーを大幅に節約できることが分かっています。同様に、鉄くずや銅くず、アルミニウムくず等をリサイクルすることによっても、バージン材料を使った場合に比べて温室効果ガスの排出削減が図られるという結果が、環境省の調査によって示されました。これらのことから、リサイクル原料の使用に加え、リデュースやリユースといった、3Rの取組を進めることによって、原材料等の使用が抑制され、結果として温室効果ガスの更なる排出削減に貢献することが期待できます。ただし、こうしたマテリアルリサイクルやリデュース・リユースによる温室効果ガス排出削減効果については、引き続き調査が必要であるともされており、これらの取組を一層進める一方で、継続的に調査を実施し、資源循環と社会の低炭素化における取組について、より高度な統合を図っていくことが必要です。また、今後、大量に導入されることが予想される太陽光パネルや風力発電、蓄電池等の再生可能エネルギーに関連する製品・設備については、使用済みになった後のリユース・リサイクルや適正処分が問題となる可能性があり、これらについて引き続き注視していく必要があります。
2016年5月に開催されたG7富山環境大臣会合では、資源効率性・3Rに関するG7の新たな枠組みとして、議長国である日本の主導の下、G7メンバーが共通のビジョンを持ちながら、協力して進める具体的取組である、「富山物質循環フレームワーク」が採択されました。
「富山物質循環フレームワーク」では、共通のビジョンとして、地球の環境容量内に収まるように天然資源の消費を抑制し、再生材や再生可能資源の利用を進めることにより、資源がライフサイクル全体にわたって効率的かつ持続的に使われる社会を実現すること、また、その実現により、廃棄物や資源の問題への解決策をもたらすのみならず、雇用を生み、競争力を高め、グリーン成長を実現し、自然と調和した持続的な低炭素社会が実現することが示されました。さらに、各国において、気候変動政策などの他の政策との統合を図りながら、食品ロスの削減を始めとする3R対策や災害時に大量に発生する災害廃棄物の適正処理と再利用等を進めるとともに、国際的には、G7以外の国々との協力や、電気電子廃棄物の適正管理を進めることとし、その進捗をG7でしっかりとフォローアップしていくことが合意され、資源効率や3Rの分野で、G7が世界にリーダーシップを発揮していくことが示されました。
また、2015年6月のG7 エルマウ・サミットでは、首脳宣言の中で資源効率性が取り上げられ、産業界、公的部門、研究機関、消費者等のステークホルダーがベストプラクティスを共有するフォーラムとして、「資源効率性のためのG7 アライアンス」が設立され、議長国の主導により毎年ワークショップを開催することとされました。日本がG7 議長国を務めた2016年には、2月の神奈川県横浜市での国際協力をテーマとしたワークショップ及び3月のワシントンでの自動車サプライチェーンをテーマとしたワークショップに引き続き、12月に東京都で、資源効率性と低炭素社会による機会と示唆をテーマとしたワークショップを開催しました。12月のワークショップでは、G7各国のほかインドネシア、インド等の政府、欧州委員会、UNEP国際資源パネル、UNEP国際環境技術センター、OECD、専門家、ビジネス界からの参加の下、資源効率性と気候変動問題との関係性をより深く理解し、世界各国におけるベストプラクティスを共有し、関係者間の意見交換や交流を促進しました。
我が国は、このような国際的な動向も踏まえながら、循環型社会の形成に関する政策課題を克服するための有効かつ効果的な取組をより一層検討し、資源効率性に関する国際的議論において、リーダーシップをとっていく必要があります。
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