環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第2節 廃棄物等の発生、循環的な利用及び処分の現状

第2節 廃棄物等の発生、循環的な利用及び処分の現状

1 我が国の物質フロー

ここでは、廃棄物・リサイクル対策を中心として循環型社会の形成に向けた、廃棄物等の発生とその量、循環的な利用・処分の状況、国の取組、各主体の取組、国際的な循環型社会の構築について詳細に説明します。

(1)我が国の物質フロー

私たちがどれだけの資源を採取、消費、廃棄しているかを知ることが、循環型社会を構築するための第一歩です。

第三次循環基本計画では、発生抑制、再使用、再生利用、処分等の各対策がバランス良く進展した循環型社会の形成を図るために、物質フロー(物の流れ)の異なる断面である「入口」、「循環」、「出口」に関する指標にそれぞれ目標を設定しています。

以下では、物質フロー会計(MFA)を基に、我が国の経済社会における物質フローの全体像とそこから浮き彫りにされる問題点、第三次循環基本計画で設定した物質フロー指標に関する目標の状況について概観します。

ア 我が国の物質フローの概観

我が国の物質フロー(2014年度)は、図3-2-1のとおりです。

図3-2-1 我が国における物質フロー(2014年度)
イ 我が国の物質フロー指標に関する目標の設定

第三次循環基本計画では、物資フローの「入口」、「循環」、「出口」に関する三つの指標について目標を設定しています。

それぞれの指標についての目標年次は、2020年度としています。各指標について、最新の達成状況を見ると、以下のとおりです。

[1]資源生産性(=GDP/天然資源等投入量)(図3-2-2

図3-2-2 資源生産性の推移

2020年度において、資源生産性を46万円/トンとすることを目標としています(2000年度の約24.8万円/トンからおおむね8割向上)。2014年度の資源生産性は約37.8万円/トンであり、2000年度と比べ約52%上昇しました。しかし、2010年度以降は横ばい傾向となっています。

[2]循環利用率(=循環利用量/(循環利用量+天然資源等投入量))(図3-2-3

図3-2-3 循環利用率の推移

2020年度において、循環利用率を17%とすることを目標としています(2000年度の約10%からおおむね7割向上)。2000年度と比べ、2014年度の循環利用率は約5.8ポイント上昇しました。しかし、近年は増減があるものの横ばいとなっています。

[3]最終処分量(=廃棄物の埋立量)(図3-2-4

図3-2-4 最終処分量の推移

2020年度において、最終処分量を1,700万トンとすることを目標としています(2000年度の約5,600万トンからおおむね7割減)。2000年度と比べ、2014年度の最終処分量は約74%減少しました。

(2)廃棄物の排出量
ア 廃棄物の区分

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)では、廃棄物とは自ら利用したり他人に有償で譲り渡したりすることができないために不要になったものであって、例えば、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿等の汚物又は不要物で、固形状又は液状のものを指します。

廃棄物は、大きく産業廃棄物と一般廃棄物の二つに区分されています。産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号。以下「廃棄物処理法施行令」という。)で定められた20種類のものと、廃棄物処理法に規定する「輸入された廃棄物」を指します。一方で、一般廃棄物とは産業廃棄物以外の廃棄物を指し、し尿のほか主に家庭から発生する家庭系ごみのほか、オフィスや飲食店から発生する事業系ごみも含んでいます(図3-2-5)。

図3-2-5 廃棄物の区分
イ 一般廃棄物(ごみ)の処理の状況

2015年度におけるごみ処理のフローは、図3-2-6のとおりです。

図3-2-6 全国のごみ処理のフロー(2015年度)
ウ 一般廃棄物(し尿)の処理の状況

2015年度の水洗化人口は1億2,077万人で、そのうち公共下水道人口が9,446万人、浄化槽人口が2,631万人(うち合併処理人口は1,460万人)です。また非水洗化人口は727万人で、そのうち計画収集人口が720万人、自家処理人口が7万人です。

総人口の約3割(非水洗化人口及び浄化槽人口)から排出された、し尿及び浄化槽汚泥の量(計画処理量)は2,117万kℓで、年々減少しています。そのほとんどは水分ですが、1kℓを1トンに換算して単純にごみの総排出量(4,398万トン)と比較すると、その数値が大きいことが分かります。それらのし尿及び浄化槽汚泥は、し尿処理施設で1,969万kℓ、ごみ堆肥化施設及びメタン化施設で6万kℓ、下水道投入で137万kℓ、農地還元で2万kℓ、その他で3万kℓが処理されています。なお、下水道終末処理場から下水処理の過程で排出される下水汚泥は産業廃棄物として計上されます。

エ 産業廃棄物の処理の状況

2014年度における産業廃棄物の処理の流れ、業種別排出量は、図3-2-7のとおりです。この中で記された、再生利用量は、直接再生利用される量と中間処理された後に発生する処理残さのうち、再生利用される量を足し合わせた量を示しています。また、最終処分量は、直接最終処分される量と中間処理後の処理残さのうち処分される量を合わせた量を示しています。

図3-2-7 産業廃棄物の処理の流れ(2014年度)

産業廃棄物の排出量を業種別に見ると、排出量が多い3業種は、電気・ガス・熱供給・水道業、農業・林業、建設業となっています。この上位3業種で総排出量の約7割を占めています(図3-2-8)。

図3-2-8 産業廃棄物の業種別排出量(2014年度)
(3)循環的な利用の現状
ア 容器包装(ガラス瓶、ペットボトル、プラスチック製容器包装、紙製容器包装等)

容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成7年法律第112号。以下「容器包装リサイクル法」という。)に基づく、分別収集及び再商品化の実績は図3-2-9のとおりです。

図3-2-9(1) 容器包装リサイクル法に基づく分別収集・再商品化の実績
図3-2-9(2) 容器包装リサイクル法に基づく分別収集・再商品化の実績
図3-2-9(3) 容器包装リサイクル法に基づく分別収集・再商品化の実績
イ プラスチック類

プラスチックは加工のしやすさ、用途の多様さから非常に多くの製品に利用されています。一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、2015年におけるプラスチックの生産量は1,086万トン、国内消費量は964万トンと推定されています。排出量に対する有効利用率は、一般系廃棄物が約80%、産業系廃棄物が約86%と推計されています。一方で、リサイクルされていないものの処理・処分方法については、一般系廃棄物は単純焼却が約14%、埋立処理が約6%、サーマルリカバリーが約6%、産業系廃棄物は単純焼却が約5%、埋立処理が約8%、サーマルリカバリーが約11%と推計されています。

ウ 家電製品

家庭用エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫及び洗濯機・衣類乾燥機の4品目については、リサイクルをする必要性が特に高いことから、2001年4月に本格施行された特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号。以下「家電リサイクル法」という。)で、特定家庭用機器廃棄物として規定され、製造業者等に一定の水準以上の再商品化を義務付けています。全国の指定引取場所において引き取られた廃家電4品目の台数は、図3-2-10のとおりです。

図3-2-10 全国の指定引取場所における廃家電の引取台数
エ 建設廃棄物等

建設廃棄物の種類別の排出量は、図3-2-11のとおりです。建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成12年法律第104号。以下「建設リサイクル法」という。)の施行によって、特定建設資材廃棄物(コンクリート、コンクリート及び鉄からなる建設資材、木材、アスファルトコンクリート)のリサイクルが促進され、建設廃棄物全体の再資源化・縮減率は2000年度の85%から2012年度には96%と着実に向上しています。

図3-2-11 建設廃棄物の種類別排出量
オ 食品廃棄物

食品廃棄物とは、食品の製造、流通、消費の各段階で生ずる動植物性残さ等であり、具体的には加工食品の製造過程や流通過程で生ずる売れ残り食品、消費段階での食べ残し・調理くず等を指します。

これら食品廃棄物は、食品製造業から発生するものなどは産業廃棄物に区分され、一般家庭、食品流通業及び飲食店業等から発生するものは、主に一般廃棄物に区分されます。2014年度の食品廃棄物の発生及び処理状況は、表3-2-1のとおりです。

表3-2-1 食品廃棄物の発生及び処理状況(2014年度)

なお、食品廃棄物は、飼料・肥料等への再生利用や熱・電気に転換するためのエネルギーとして利用できる可能性があり、循環型社会及び低炭素社会の実現を目指すため、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成12年法律第116号。以下「食品リサイクル法」という。)等により、その利活用を更に推進しています。

カ 自動車

(ア)自動車

使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号。以下「自動車リサイクル法」という。)に基づき、使用済みとなる自動車は、まず自動車販売業者等の引取業者からフロン類回収業者に渡り、カーエアコンで使用されているフロン類が回収されます。その後、自動車解体業者に渡り、そこでエンジン、ドア等の有用な部品、部材が回収されます。さらに、残った廃車スクラップは、破砕業者に渡り、そこで鉄等の有用な金属が回収され、その際に発生する自動車破砕残さ(Automobile Shredder Residue、以下「ASR」という。)が、自動車製造業者等によってリサイクルされています(図3-2-12)。

図3-2-12 使用済自動車処理のフロー(2015年度)

(イ)タイヤ

一般社団法人日本自動車タイヤ協会によれば、2016年における廃タイヤの排出量99.7万トン(2015年100.0万トン)のうち、27.7万トン(2015年27.9万トン)が輸出、更生タイヤ台用、再生ゴム・ゴム粉等として原形・加工利用され、62.6万トン(2015年64.3万トン)が製錬・セメント焼成用、発電用等として利用されています。

キ パーソナルコンピュータ及びその周辺機器

資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号。以下「資源有効利用促進法」という。)では、2001年4月から事業系パソコン、2003年10月から家庭系パソコンの再資源化を製造等事業者に対して義務付け、再資源化率をデスクトップパソコン(本体)が50%以上、ノートブックパソコンが20%以上、ブラウン管式表示装置が55%以上、液晶式表示装置が55%以上と定めてリサイクルを推進しています。

2015年度における自主回収実績は、デスクトップパソコン(本体)が約13万台、ノートブックパソコンが約19万台、ブラウン管式表示装置が約22万台、液晶式表示装置が約16万台となっています。また、製造等事業者の再資源化率は、デスクトップパソコン(本体)が78.3%、ノートブックパソコンが61.1%、ブラウン管式表示装置が73.9%、液晶式表示装置が74.2%であり、いずれも法定の基準を上回っています。

ク 小形二次電池(ニカド蓄電池、ニッケル水素蓄電池、リチウム蓄電池、密閉形鉛蓄電池)

小形二次電池には、主な材料としてニッケルやカドミウム、コバルト、鉛など希少な資源が使われており、小形二次電池のリサイクルは大きな効果を持っています。

そこで、資源有効利用促進法では、2001年4月から小形二次電池の再資源化を製造等事業者に対して求め、再資源化率をニカド電池が60%以上、ニッケル水素電池が55%以上、リチウム蓄電池が30%以上、密閉型鉛蓄電池が50%以上と定めて、リサイクルの一層の推進を図っています。

2015年度における小形二次電池(携帯電話・PHS用のものを含む)に係るリサイクルの状況は、ニカド蓄電池の処理量が643トン(再資源化率71.5%)、ニッケル水素蓄電池の処理量が169トン(再資源化率76.6%)、リチウム蓄電池の処理量が339トン(再資源化率55.9%)、密閉型鉛蓄電池の処理量が725トン(再資源化率50.1%)であり、再資源化率の実績は、いずれも法令上の目標を達成しています。)

ケ 小型電子機器等

使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(平成24年法律第57号。以下「小型家電リサイクル法」という。)は、2013年4月から施行されました。同法では、使用済小型電子機器等に利用されている金属等の大部分が回収されずに廃棄されている状況を踏まえ、使用済小型電子機器等の再資源化を促進するための措置を講じることによって、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図るものです。なお、同法の基本方針では、回収され再資源化を実施する量の目標を、2018年度までに一年当たり14万トン、一人一年当たりに換算すると約1kgとしており、回収され再資源化された量の実績は、2013年度は約2.4万トン、2014年度は約5万トン、2015年度は約6.7万トンと年々増加しています。

コ 下水汚泥

下水道事業において発生する汚泥(下水汚泥)の量は、近年は横ばいです(図3-2-13)。2014年度現在、全産業廃棄物の発生量の約2割を占める約7,770万トン(対前年度約74万トン増、濃縮汚泥量として算出)が発生していますが、最終処分場に搬入される量は約39万トン(対前年度比増減なし)であり、エネルギー・肥料としての再生利用や脱水、焼却等の中間処理による減量化により、最終処分量の低減を推進しています。なお、2011年度以降の下水汚泥の有効利用率は、東日本大震災の影響により埋立処分や場内ストックが増えたため減少しましたが、その後再び上昇傾向に転じており、2014年度には、乾燥重量ベースで63%となっています。

図3-2-13 年度別下水汚泥発生量の推移

また、下水汚泥の再生利用は、バイオマスとしての下水汚泥の性質に着目した緑農地利用やエネルギー利用、セメント原料等の建設資材利用等、その利用形態は多岐にわたっています。

2014年度には、乾燥重量ベースで148万トンが再生利用され、セメント原料(61万トン)、煉(れん)瓦、ブロック等の建設資材(41万トン)、肥料等の緑農地利用(36万トン)、固形燃料(6万トン)等の用途に利用されています。

2 一般廃棄物

(1)一般廃棄物(ごみ)
ア ごみの排出量の推移

ごみの総排出量及び一人一日当たりの排出量は、図3-2-14のとおりです。

図3-2-14 ごみ総排出量と一人一日当たりごみ排出量の推移
イ ごみ処理方法

ごみ処理方法を見ると、直接資源化及び資源化等の中間処理の割合は、2015年度は18.7%となっています。また、直接最終処分されるごみの割合は減少傾向であり、2015年度は1.1%となっています。

ウ ごみ処理事業経費

2015年度におけるごみ処理事業に係る経費の総額は、約1兆9,495億円であり、国民一人当たりに換算すると約1万5,200円となり、前年度から横ばいとなりました。

(2)一般廃棄物(し尿)
ア し尿及び浄化槽汚泥の処理状況の推移

2015年度の実績では、し尿及び浄化槽汚泥2,117万kℓは、し尿処理施設又は下水道投入によって、その99.5%(2,106万kℓ)が処理されています。また、し尿等の海洋投入処分については、廃棄物処理法施行令の改正により、2007年2月より禁止されています。

3 産業廃棄物

(1)産業廃棄物の発生及び処理の状況
ア 産業廃棄物の排出量の推移

1995年度以降の産業廃棄物の排出量の状況は、図3-2-15のとおりです。

図3-2-15 産業廃棄物の排出量の推移
イ 産業廃棄物の中間処理施設数の推移

産業廃棄物の焼却、破砕、脱水等を行う中間処理施設の許可施設数は、2014年度末で1万8,680施設となっており、前年度との比較では0.1%の減少となっています。中間処理施設のうち、汚泥の脱水施設は16%、木くず又はがれき類の破砕施設は52%、廃プラスチック類の破砕施設は10%を占めています。

ウ 産業廃棄物処理施設の新規許可件数の推移(焼却施設、最終処分場)

産業廃棄物処理施設に係る新規の許可件数は図3-2-16図3-2-17のとおりです。

図3-2-16 焼却施設の新規許可件数の推移(産業廃棄物)
図3-2-17 最終処分場の新規許可件数の推移(産業廃棄物)
(2)大都市圏における廃棄物の広域移動

首都圏等の大都市圏では、土地利用の高度化や環境問題等に起因して、焼却炉等の中間処理施設や最終処分場を確保することが難しい状況です。そのため、廃棄物をその地域の中で処理することが難しく、広域的に処理施設を整備し、市町村域、都府県域を越えて運搬・処分する場合があります。そのような場合であっても、確実かつ高度な環境保全対策を実施した上で、廃棄物のリデュースや適正な循環的利用の徹底を図っていく必要があります。

4 廃棄物関連情報

(1)最終処分場の状況
ア 一般廃棄物

(ア)最終処分の状況

2015年度における最終処分量(直接最終処分量と中間処理後に最終処分された量との合計)、一人一日当たりの最終処分量は、図3-2-18のとおりです。

図3-2-18 最終処分量と一人一日当たり最終処分量の推移

(イ)最終処分場の残余容量と残余年数

最終処分場の残余容量及び残余年数は、図3-2-19のとおりです。

図3-2-19 最終処分場の残余容量及び残余年数の推移(一般廃棄物)

(ウ)最終処分場のない市町村

2015年度末現在、当該市区町村として最終処分場を有しておらず、民間の最終処分場に埋立てを委託している市区町村数(ただし、最終処分場を有していない場合であっても大阪湾フェニックス計画対象地域の市区町村は最終処分場を有しているものとして計上)は、全国1,741市区町村のうち302市町村となっています。

イ 産業廃棄物

2013年度の産業廃棄物の最終処分場の残余容量及び残余年数は、図3-2-20のとおりです。

図3-2-20 最終処分場の残余容量及び残余年数の推移(産業廃棄物)
(2)廃棄物焼却施設における熱回収の状況
ア 一般廃棄物

(ア)ごみの焼却余熱利用

ごみ焼却施設からの余熱を有効に利用する方法としては、後述するごみ発電をはじめ、施設内・外への温水、蒸気の熱共有が考えられます。ごみ焼却施設からの余熱を温水や蒸気、発電等で有効利用している施設の状況は、図3-2-21のとおりです。余熱利用を行っている施設は765施設であり、割合は施設数ベースで67%となっています。

図3-2-21 ごみ焼却施設における余熱利用の状況(2015年度)

(イ) ごみ発電

ごみ発電とは、ごみを焼却するときに発生する高温の排出ガスが持つ熱エネルギーをボイラーで回収し、蒸気を発生させてタービンを回して発電を行うもので、ごみ焼却施設の余熱利用の有効な方法の一つです。

2015年度におけるごみ焼却発電施設数と発電能力は、表3-2-2のとおりでした。また、ごみ発電を行っている割合は施設数ベースでは30.5%となっています。また、その総発電量は約82億kWhであり、一世帯当たりの年間電力消費量を3,313kWhとして計算すると、この発電は約255万世帯分の消費電力に相当します。なお、ごみ発電を行った電力を場外でも利用している施設数は190施設となっています。

表3-2-2 ごみ焼却発電施設数と発電能力(2015年度)

最近では、発電効率の高い発電施設の導入が進んできていますが、現状では発電とその他の余熱利用を合わせても、燃焼によって発生する熱量の4分の3程度が回収できていません。一方、発電後の低温の温水を地域冷暖房システムに有効利用する事例も見られ、こうした試みを更に拡大していくためには、熱利用側施設の確保・整備とそれに合わせたごみ焼却施設の整備が重要です。

(ウ) ごみ固形燃料(RDF)

ごみ固形燃料(Refuse Derived Fuel、以下「RDF」という。)は、通常のごみと比較して、腐敗性が少なく、比較的長期の保管が可能であること、減容化・減量化されるため、運搬が容易であること、形状、発熱量がほぼ一定となるため安定した燃焼が可能であることなどの特徴を有しています。

循環型社会における廃棄物処理の優先順位を踏まえつつ、性状に応じた利用先を確保することが可能であれば、RDFを利用していくことも循環型社会の形成及び低炭素社会の構築に有効であると言えます。

イ 産業廃棄物

低炭素社会の取組への貢献を図る観点から、3Rの取組を進めてなお残る廃棄物等については、廃棄物発電の導入等による熱回収を徹底することが求められます。産業廃棄物の焼却による発電を行っている施設数は、2015年度には163炉となりました。このうち、廃棄物発電でつくった電力を場外でも利用している施設数は36炉となっています。また、施設数ベースでの割合は13.2%となりました。また、廃棄物由来のエネルギーを活用する取組として、廃棄物の原燃料への再資源化も進められています。廃棄物燃料を製造する技術としては、ガス化、油化、固形燃料化等があります。これらの取組を推進し、廃棄物由来の温室効果ガス排出量のより一層の削減とエネルギー供給の拡充を図る必要があります。

(3)不法投棄等の現状
ア 2015年度に新たに判明した産業廃棄物の不法投棄等の事案

(ア)不法投棄等の件数及び量

産業廃棄物の不法投棄件数及び投棄量、不適正処理件数及び不適正処理量の推移は、図3-2-22図3-2-23のとおりです。また、2015年度に新たに判明したと報告があった5,000トン以上の大規模な不法投棄事案は3件、不適正処理事案は4件でした。

図3-2-22 産業廃棄物の不法投棄件数及び投棄量の推移
図3-2-23 産業廃棄物の不適正処理件数及び不適正処理量の推移

(イ)不法投棄等をされた産業廃棄物

2015年度に新たに判明したと報告があった不法投棄等をされた産業廃棄物は、図3-2-24のとおりです。

図3-2-24 不法投棄された産業廃棄物の種類(2015年度)

(ウ)不法投棄等の実行者

2015年度に新たに判明したと報告があった不法投棄等事案の実行者の内訳は、不法投棄件数で見ると、排出事業者によるものが全体の56.6%(81件)で、実行者不明のものが25.2%(36件)、複数によるものが8.4%(12件)、許可業者によるものが4.9%(7件)となっています。これを不法投棄量で見ると、許可業者によるものが84.1%(13.9万トン)で、排出事業者によるものが8.2%(1.4万トン)、複数によるものが6.2%(1.0万トン)、実行者不明のものが1.3%(0.2万トン)でした。また、不適正処理件数で見ると、排出事業者によるものが全体の69.7%(182件)で、複数によるものが10.0%(26件)、許可業者によるものが8.4%(22件)、実行者不明が6.9%(18件)となっています。これを不適正処理量で見ると、複数によるものが74.3%(30.2万トン)で、排出事業者によるものが12.5%(5.1万トン)、許可業者によるものが12.3%(5.0万トン)、無許可業者によるものが0.6%(0.2万トン)でした。

(エ)支障除去等の状況

2015年度に新たに判明したと報告があった不法投棄事案(143件、16.6万トン)のうち、現に支障が生じていると報告された事案2件については、全てが支障除去措置に着手しています。現に支障のおそれがあると報告された事案3件については、2件が支障のおそれの防止措置に着手しており、1件が定期的な立入検査を実施しています。

また、2015年度に新たに判明したと報告があった不適正処理事案(261件、40.7万トン)のうち、現に支障が生じていると報告された事案3件については、全てが支障除去措置に着手しています。現に支障のおそれがあると報告された事案11件については、8件が支障のおそれの防止措置に着手しており、3件が定期的な立入検査を実施しています。

イ 2015年度末時点で残存している産業廃棄物の不法投棄等事案

都道府県及び廃棄物処理法上の政令市が把握している、2016年3月末時点における産業廃棄物の不法投棄等事案の残存件数は2,646件、残存量の合計は1609.7万トンでした。

このうち、現に支障が生じていると報告されている事案12件については、全てが支障除去措置に着手しています。現に支障のおそれがあると報告されている事案88件については、23件が支障のおそれの防止措置、17件が周辺環境モニタリング、48件が状況確認のための立入検査等を実施又は実施予定としています。そのほか、現在支障等調査中と報告された事案19件については、14件が支障等の状況を明確にするための確認調査、5件が継続的な立入検査を実施又は実施予定としています。また、現時点では支障等がないと報告された事案2,527件についても、改善指導、定期的な立入検査や監視等が必要に応じて実施されています。

注:第2節4(3)ア、イの調査結果は、環境省が都道府県及び廃棄物処理法上の政令市の協力を得て、毎年度取りまとめているものです。

(4)特別管理廃棄物
ア 概要

廃棄物のうち爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものを特別管理一般廃棄物又は特別管理産業廃棄物(以下「特別管理廃棄物」という。)として指定しています。特別管理廃棄物の処理に当たっては、特別管理廃棄物の種類に応じた特別な処理基準を設けることなどにより、適正な処理を確保しています。また、その処理を委託する場合は、特別管理廃棄物の処理業の許可を有する業者に委託する必要があります。

イ 特別管理廃棄物の対象物

これまでに、表3-2-3に示すものを特別管理廃棄物として指定しています。

表3-2-3 特別管理廃棄物
(5)石綿の処理対策
ア 産業廃棄物

石綿による健康等に係る被害の防止のための大気汚染防止法等の一部を改正する法律(平成18年法律第5号)が2007年4月に完全施行され、石綿(アスベスト)含有廃棄物の安全かつ迅速な処理を国が進めていくため、溶融等の高度な技術により無害化処理を行う者について環境大臣が認定した場合、都道府県知事等による産業廃棄物処理業や施設設置の許可を不要とする制度(無害化処理認定制度)がスタートしています。2017年3月現在、2事業者が認定を受けています。また、2010年の廃棄物処理法施行令の改正により、特別管理産業廃棄物である廃石綿等の埋立処分基準が強化されました。

イ 一般廃棄物

石綿を含む家庭用品が廃棄物となったものについては、他のごみと区別して排出し、破損しないよう回収するとともにできるだけ破砕せず、散水や速やかな覆土により最終処分するよう、また、保管する際は他の廃棄物と区別するよう、市町村に対して要請しています。

また、永続的な措置として、石綿含有家庭用品が廃棄物となった場合の処理についての技術的指針を定め、市町村に示し、適正な処理が行われるよう要請しています。

(6)ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物の処理体制の構築
ア 全国的なPCB廃棄物処理体制の構築

我が国は、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)を活用して、高濃度ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物を全国5か所(北九州、豊田、東京、大阪、北海道(室蘭))のPCB処理事業所において処理する体制を整備し、各地元関係者の理解と協力の下、その処理が進められています。経産省、環境省及びJESCOはPCB廃棄物の早期処理を促すため、全国19か所で説明会を開催しました。

また、環境省は都道府県と協調し、費用負担能力の小さい中小企業者等による処理を円滑に進めるための助成等を行う基金「PCB廃棄物処理基金」を造成しています。

今後、計画的処理完了期限の一日も早い達成に向けて政府一丸となって取り組んでまいります。

イ 微量PCB汚染廃電気機器等の処理方策

微量PCB汚染廃電気機器等については、その処理体制の整備を推進しており、2016年12月末までに30の事業者が認定され、処理が進められています。今後、微量PCB汚染廃電気機器等の処理が更に合理的に進むよう、技術的な検討を行い、処理体制の充実・多様化を図ってまいります。

ウ PCB廃棄物処理基本計画の変更

2016年7月に計画的処理完了期限の1日も早い達成に向けて、その取組を強化するためにPCB廃棄物処理基本計画を変更しました。本計画はこれまでの環境大臣が定める計画から閣議決定により定める計画に位置づけられたことから、期限内処理の達成に向けて政府一丸となって取り組むこととなりました。

(7)ダイオキシン類の排出抑制

ダイオキシン類は、物の燃焼の過程等で自然に生成する物質(副生成物)であり、ダイオキシン類の約200種のうち、29種類に毒性があるとみなされています。ダイオキシン類の主な発生源は、ごみ焼却による燃焼です。廃棄物処理におけるダイオキシン問題については、1997年1月に厚生省(当時)が取りまとめた「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン(新ガイドライン)」や、1997年8月の廃棄物処理法施行令及び同法施行規則の改正等に基づき、対策が取られてきました。環境庁(当時)でも、ダイオキシン類を大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)の指定物質として指定しました。さらに、1999年3月に策定された「ダイオキシン対策推進基本指針」及び1999年に成立したダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号。以下「ダイオキシン法」という。)の二つの枠組みにより、ダイオキシン類対策が進められました。2015年におけるダイオキシン類の排出総量は、削減目標量(2011年以降の当面の間において達成すべき目標量)を下回っており、目標達成が確認されました(表3-2-4)。

表3-2-4 我が国におけるダイオキシン類の事業分野別の推計排出量及び削減目標量

また、2015年の廃棄物焼却施設からのダイオキシン類排出量は、1997年から約99%減少しました。この結果については、規制強化や基準適合施設の整備に係る支援措置等によって、排出基準やその他の構造・維持管理基準に対応できない焼却施設の中には、休・廃止する施設が多数あったこと、また基準に適合した施設の新設整備が進められていることが背景にあったものと考えられます。

なお、ダイオキシン法に基づいて定められた大気の環境基準の2015年度の達成率は100%であり、全ての地点で環境基準を達成しています。

(8)その他の有害廃棄物対策

感染性廃棄物については、「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」を2017年3月に改訂し、周知を行っています。また、残留性有機汚染物質(POPs)を含む廃棄物について、国際的動向に対応し、適切な処理方策について検討を進めています。2009年8月にPOPs廃農薬の処理に関する技術的留意事項を改訂し、2011年3月にペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項を改訂し、その周知を行っています。その他のPOPs廃棄物については、分解実証試験等を実施しています。

そのほか、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号)及び放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和32年法律第167号)に基づき、原子炉等から排出されるもののうち、放射線防護の安全上問題がないクリアランスレベル以下の廃棄物については、情報管理システムを稼働させ、トレーサビリティの確保に努めています。

(9)有害廃棄物の越境移動

有害廃棄物の越境移動に起因する環境汚染等の問題に対処するために採択された、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(以下「バーゼル条約」という。締約国は2016年10月現在183か国及びEU)を受け、我が国は特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(平成4年法律第108号。以下「バーゼル法」という。)を制定しました。また、国内処理が原則となっている廃棄物についても、廃棄物処理法により輸出入規制を行い、これらの法律により有害廃棄物等の輸出入の厳正な管理を行っています。2016年のバーゼル法に基づく輸出入の状況は、表3-2-5のとおりです。

表3-2-5 バーゼル法に基づく輸出入の状況(2016年)