環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第2章>第7節 東日本大震災からの復興・再生に向けた自然共生社会づくりの取組

第7節 東日本大震災からの復興・再生に向けた自然共生社会づくりの取組

1 三陸復興国立公園を核としたグリーン復興

(1)三陸復興国立公園に関する取組

青森県八戸市から福島県相馬市まで、太平洋沿岸を繋ぐ700kmを超える長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」については、これまで順次路線を開通しており、2017年1月に岩手県普代村から田野畑村の区間(約34km)が新たに開通しました。これによって約400kmが開通しましたが、早期に全線を開通するため、今後も路線検討を進めていきます。また、トレイルの利用を促進するための取組として、トレイルマップの配布、踏破認定制度の導入、メディアを通じたPR、イベントの開催、ウェブサイトのリニューアル等を実施しました。地震・津波による自然環境への影響の把握については、震災から5年間の変化状況を取りまとめ、過年度に地図化した「重要自然マップ」の更新等について情報発信を行いました。

(2)公園施設の整備

三陸復興国立公園の主要な利用拠点やみちのく潮風トレイルにおいて、防災機能を強化しつつ、被災した公園利用施設の再整備や観光地の再生に資する復興のための整備を推進しました。宮城県南三陸町では、南三陸・海のビジターセンターを再整備し、2016年11月に開所しました。また、青森県及び岩手県内での三陸復興国立公園の整備について、自然環境整備交付金による支援を行いました。

2 東京電力福島第一原子力発電所の事故への対応

(1)野生動植物への影響のモニタリング

東京電力福島第一原子力発電所の周辺地域での放射性物質による野生動植物への影響を把握するため、関係する研究機関等とも協力しながら、野生動植物の試料の採取、放射能濃度の測定、被ばく線量率の評価等を進めました。また、関連した調査を行っている他の研究機関や学識経験者、海外の研究者とも意見交換を行いました。

(2)野生鳥獣への影響と鳥獣被害対策

東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、放射線量の高い帰還困難区域等は、原則立入禁止となりました。これらの区域内では、農業生産活動等の人為活動が停滞していること、また、狩猟者の他市町村への避難等により、狩猟や被害防止目的の捕獲を行うことが難しい状況となっています。このため、イノシシ等の野生鳥獣の人里への出没が増加し、農地を掘り返したり、家屋に侵入したりする被害が発生しています。これらの鳥獣をこのまま放置すれば、住民の帰還準備や帰還後の生活、地域経済の再建に大きな支障が生じるおそれがあります。

このため、2013年度から帰還困難区域等において、イノシシなどの生息状況調査及び捕獲を開始しており、2016年度は、5町村(福島県富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村)でイノシシを計588頭、4町(福島県富岡町、大熊町、双葉町、浪江町)でアライグマ、ハクビシンを計234頭捕獲しました。また、捕獲個体の最終処分に向けた処理手法を検討しました。