環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第1章>第3節 地球温暖化に関する国内対策

第3節 地球温暖化に関する国内対策

 COP19等において、全ての国に対し、COP21に十分先立ち(準備できる国は2015年第1四半期までに)2020年(平成32年)以降のINDCを示すことが招請されました。我が国としても2020年(平成32年)以降の温室効果ガス削減目標の検討を加速化するため、2014年(平成26年)10月に、中央環境審議会地球環境部会2020年以降の地球温暖化対策検討小委員会・産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同専門家会合を立ち上げて検討を行い、2015年(平成27年)4月にはINDCの要綱案を同合同専門家会合において示しました。同年6月には地球温暖化対策推進本部を開催し、INDCの政府原案を取りまとめ、パブリックコメントを経て、同年7月17日に開催した地球温暖化対策推進本部において、2030年度(平成42年度)の我が国の温室効果ガス削減目標を、2013年度(平成25年度)比で26.0%削減(2005年度(平成17年度)比で25.4%削減)とするとの内容を含む「日本の約束草案」を決定し、同日付で気候変動枠組条約事務局に提出しました。

 COP21におけるパリ協定の採択を踏まえ、同年12月22日に地球温暖化対策推進本部を開催し、「パリ協定を踏まえた地球温暖化対策の取組方針について」を決定しました。この中では、国内対策の取組方針として、「日本の約束草案」で示した2030年度(平成42年度)削減目標の達成に向けて着実に取り組むこと、また、パリ協定等において、2℃目標が世界の共通目標となり、この長期目標を達成するため排出と吸収のバランスを今世紀後半中に目指すとされたことなどを踏まえ、我が国としても世界規模での排出削減に向けて、長期的、戦略的に貢献することとしました。このため、平成28年春までに地球温暖化対策計画や政府実行計画を策定することとしました。また、国民各界各層が一丸となって地球温暖化対策に取り組むため、国民運動を強化し、多様な主体が連携しつつ、情報発信、意識改革、行動喚起を進めていくこととしました。また、地球温暖化対策計画に定めるべき事項として、普及啓発の推進等を明記することなどを内容とする「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」を平成28年3月8日に閣議決定しました。

 なお、地球温暖化対策計画については、2015年(平成27年)12月22日に開催した中央環境審議会地球環境部会・産業構造審議会環境部会地球環境小委員会合同会合において「地球温暖化対策計画(骨子案)」を提示し、議論を開始しました。その後、2016年(平成28年)3月4日に開催した同会合において、「地球温暖化対策計画案」を示しました。同年3月15日に開催した地球温暖化対策推進本部において「地球温暖化対策計画案」についてパブリックコメントに付することについて了承を得た後、同年3月15日から4月13日までパブリックコメントを行いました。

1 温室効果ガスの排出削減、吸収、気候変動の影響への適応等に関する対策・施策

(1)エネルギー起源二酸化炭素に関する対策の推進

ア 低炭素型の都市・地域構造や社会経済システムの形成

 都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第84号)に基づく低炭素まちづくり計画策定支援をこれまで15都市に行いました。計画に基づく都市機能の集約を図るための拠点となる地域の整備を都市再生整備事業で行うことにより、低炭素型都市構造を目指した都市づくりを総合的に推進しました。

 低炭素なまちづくりの一層の普及のため、温室効果ガスの大幅な削減など低炭素社会の実現に向け、高い目標を掲げて先駆け的な取組にチャレンジする23都市を環境モデル都市(表1-3-1)として選定しており、平成20年度に選定した13都市について、平成21年度から5年間かけて実施してきた取組と、その効果としての温室効果ガス排出量等に対する総括評価を行いました。加えて、23の選定都市について、平成26年度の取組評価等のフォローアップを行いました。


表1-3-1 環境モデル都市一覧

 また、都市の低炭素化をベースに、環境・超高齢化等を解決する成功事例を都市で創出し、国内外に展開して経済成長につなげることを目的として、平成23年度に被災地域6都市を含む11都市を環境未来都市(表1-3-2)として選定しており、それぞれが掲げる未来都市計画につき、平成26年度の進捗状況等の評価を行いました。さらに、地域特性・資源を踏まえた低炭素で災害に強い地域づくりの実証事業や、地域の防災拠点への自立・分散型エネルギーの導入支援を行いました。


表1-3-2 環境未来都市一覧

 電力の需要を制御し、節電やピークカットにつなげるディマンドリスポンスについて、平成27年度は次世代エネルギー技術実証事業において、日本におけるネガワット取引のポテンシャルを検討する技術実証等を行いました。また、工場の未利用排熱、下水熱等の再生可能エネルギー熱や太陽光発電等の再生可能エネルギー電気といった地域のエネルギーをその地域で活用する、地産地消型のエネルギーシステムの構築支援(事業計画の策定やシステム構築等の支援)を実施し、再生可能エネルギーの更なる普及やエネルギーの効率的な利用を推進しました。

 交通システムに関しては、公共交通機関の利用促進のための鉄道新線整備の推進、環状道路等幹線道路ネットワークをつなぐとともに、本格的な導入が開始されたETC2.0の活用等による道路を賢く使う取組等、交通流対策等を行いました。

 再生可能エネルギーの導入に関して、平成25年10月から国内初の本格的な2MWの浮体式洋上風力発電の運転を開始し、本格的な運転データ、環境影響・漁業影響の検証、安全性・信頼性に関する情報を収集し、事業性の検証を行いました。

イ 部門別(産業・民生・運輸等)の対策・施策

(ア)産業部門(製造事業者等)の取組

 平成25年度以降の産業界の地球温暖化対策の中心的な取組である「低炭素社会実行計画」の平成26年度実績について、審議会による厳格な評価・検証を実施するとともに、一部の省庁において、審議会開催前の事前質問プロセスの活用や開示情報の増強等の改善を行いました。さらに、各産業の計画や実績データ等の情報を集約したポータルサイト(日英両語)(http://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/kankyou_keizai/va/(別ウィンドウ))を通じ、国内外への情報発信を強化しました。また、COP21に向けて、またCOP21終了以降も継続的に国家及び非国家(地方政府、エネルギー企業、金融機関、NGO、国際機関等)が積極的に連携し、各々が主導的に炭素削減アクションに貢献することが求められる中、2015年(平成27年)6月に、国際エネルギー機関(IEA)本部において国際ワークショップ「産業/ビジネスにおける炭素削減にかかる補完的手段:価格や規制以外の自主的及びその他アプローチ」が開催されました。同ワークショップでは、炭素価格や規制的手法以外の自主的取組等について、欧米やアジアからの官民多様な立場の専門家や参加者により議論が行われ、経験や分析等の情報が共有されました。その中で、日本の産業界からは、プレッジ&レビュー方式の自主的取組が地球温暖化対策として重要な政策手法であるとの紹介がなされました。さらに、2020年(平成32年)以降の我が国の約束草案の決定に先立って、平成27年4月に一般社団法人日本経済団体連合会が2030年(平成42年)を目標年限とする経団連低炭素社会実行計画(フェーズⅡ)を発表し、政府としても各業界の計画策定を慫慂(しょうよう)してきました。平成28年3月末までに94業種が2030年(平成42年)を目標年限とする計画を策定し、平成24年度の国内のエネルギー起源CO2排出量に占める割合は、産業部門・エネルギー転換部門の8割、日本全体の5割に達しています。

 産業分野等の事業者に対して、温室効果ガス排出削減に有用なCO2削減ポテンシャル診断の実施、L2-Tech(先導的低炭素技術)情報の収集とリスト化、既存ストックからCO2削減効果の高い設備へ更新するための補助等の取組を行いました。

 中小企業におけるCO2排出削減対策の強化のため、低炭素機器導入における資金面の公的支援の一層の充実や、中小企業等が行った温室効果ガス排出削減・吸収のための取組による排出削減・吸収量をクレジットとして認証し、低炭素社会実行計画の目標達成等のために活用するJ-クレジット制度の運営、さらにCO2排出低減が図られている建設機械の普及を図るため、世界で初めて策定した建設機械の燃費基準値を基に、この燃費基準値を達成した建設機械3型式を燃費基準達成型建設機械として認定しました。

 農林水産分野においては、平成19年6月に策定した農林水産省地球温暖化対策総合戦略に基づき実施してきたバイオマスの利活用の推進や施設園芸等における地球温暖化防止策、暑さに強い品種の開発や栽培体系の見直し等の地球温暖化適応策、我が国の技術を活用した国際協力を引き続き推進します。さらに、平成20年7月に改定した同戦略に基づき農山漁村地域に賦存する様々な資源やエネルギーの有効活用による低炭素社会実現に向けた農林水産分野の貢献等を実施しました。

(イ)業務その他部門の取組

 エネルギー消費量が増加傾向にある住宅・ビルにおける省エネ対策を推進するため、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号。以下「省エネ法」という。)を改正(平成25年5月公布)し、建築材料等に新たにトップランナー制度を導入し、平成25年12月に断熱材、平成26年11月に窓(サッシ、複層ガラス)の基準が示されました。平成27年7月には、大規模非住宅建築物のエネルギー消費性能基準への適合義務や表示制度等を措置した、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(平成27年法律第53号。以下「建築物省エネ法」という。)が公布されました。また、建築物等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)、省エネルギー性能に特化した指標である建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の充実・普及を行いました。さらに、省CO2の実現性に優れたリーディングプロジェクト等に対する支援のほか、環境不動産の形成を促進するための官民ファンドの設置等を行いました。トップランナー制度については、更に個別機器の効率向上を図るため、基準の見直しについて検討を行い、平成28年3月には電気冷蔵庫及び電気冷凍庫の新たな基準等を策定しました。また、既存の事業場について、ストック全体の低炭素化のため、温室効果ガス排出削減に有用なCO2削減ポテンシャル診断の実施、L2-Tech情報の収集とリスト化、既存ストックからCO2削減効果の高い設備へ更新するための補助等の取組を行いました。

 政府実行計画に基づく取組に当たっては、平成19年11月に施行された国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)に基づき、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約を実施しました。

(ウ)家庭部門の取組

 消費者等が省エネルギー性能の優れた住宅を選択することを可能とするため、CASBEEや住宅性能表示制度の充実・普及を実施しました。また、都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく、低炭素建築物の認定基準の普及・促進を図りました。加えて、平成23年度より、各家庭のCO2排出実態やライフスタイルに合わせた、きめ細やかなアドバイスを行う家庭エコ診断制度の創設に向けた基盤整備を行い、26年度の制度の運営開始以降、27年度までに約6万件の診断を行いました。平成27年7月には、住宅の表示制度等を措置した建築物省エネ法が公布されました。

(エ)運輸部門の取組

 自動車単体対策として、自動車燃費の改善、車両・インフラに係る補助制度・税制支援等を通じたクリーンエネルギー自動車の普及促進等を行いました。また、環状道路等幹線道路ネットワークをつなぐとともに、本格的な導入が開始されたETC2.0の活用等による道路を賢く使う取組等の交通流対策やLED道路照明灯の整備を行いました。また、環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築に向け、共同輸配送、モーダルシフト、大型CNGトラック導入、物流拠点の低炭素化の取組について支援を行いました。また、港湾の最適な選択による貨物の陸上輸送距離の削減、港湾における総合的な低炭素化等を推進するとともに、グリーン物流パートナーシップ会議を通じて、荷主と物流事業者の連携による優良事業の表彰や普及啓発を行いました。

 海運分野については、国際的枠組み作りと技術研究開発・新技術の普及促進を一体的に推進するため、国際海事機関(IMO)において船舶の燃費規制(2011年(平成23年)7月採択、2013年(平成25年)1月発効)の段階的強化及び燃費報告制度等の議論を主導するとともに、船舶の省エネ技術の開発支援や省エネ船等の普及促進に取り組みました。

 また、航空分野については、国際民間航空機関(ICAO)において国際航空分野の温室効果ガス排出削減に向けた国際的枠組み作りの議論を主導するとともに、飛行経路の短縮を可能とする広域航法(RNAV)の導入等の航空交通システムの高度化や環境に優しい空港(エコエアポート)等を推進しました。

(オ)エネルギー転換部門の取組

 太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、バイオマス等の再生可能エネルギーは、地球温暖化対策に大きく貢献するとともに、エネルギー源の多様化に資するため、国の支援策によりその導入を促進しました。また、ガスコージェネレーションやヒートポンプ、燃料電池等、エネルギー効率を高める設備等の普及も推進してきました。さらに、二酸化炭素回収・貯留(CCS)の導入に向け、技術開発や貯留適地調査等を実施しました。

 また、電力業界の低炭素化の取組については、平成27年7月に電気事業者35社により策定し、公表された電力業界の「自主的枠組み」には、掲げられた目標をいかにして達成するのかという実効性の観点から、詰めるべき課題があるとして、電力業界に対して具体的な仕組みやルール作り等に早急に取り組むよう求めるとともに、環境省・経済産業省で連携して、政策的な対応について検討を行いました。こうした取組や検討を踏まえ、平成28年2月に環境大臣・経済産業大臣が合意した内容について、両大臣それぞれから公表しました。電力業界の自主的枠組みについては、引き続き実効性・透明性の向上等を促していくとともに、省エネ法やエネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)(平成21年法律第72号)に基づく基準・運用の強化等により、電力自由化の下で、電力業界全体の取組の実効性を確保していくこととしました。また、これらの取組が継続的に実効を上げているか、毎年度、その進捗状況を評価し、省エネ法等に基づき必要に応じて指導を行うこととしました。また、目標の達成ができないと判断される場合には、施策の見直し等について検討することとしました。

(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素に関する対策の推進

 廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の推進により化石燃料由来廃棄物の焼却量の削減を推進するとともに、有機性廃棄物の直接最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化等を推進しました。

 また、下水汚泥の焼却に伴う一酸化二窒素の排出量を削減するため、下水汚泥の燃焼の高度化や、一酸化二窒素の排出の少ない焼却炉及び下水汚泥固形燃料化施設の普及を推進しました。

(3)代替フロン等4ガスに関する対策の推進

 代替フロン等4ガス(HFC、PFC、SF6、NF3)は、オゾン層は破壊しないものの強力な温室効果ガスであるため、京都議定書の対象(NF3については2013年(平成25年)からの第二約束期間にて追加)とされています。その排出量の削減に向け、業務用冷凍空調機器からの冷媒フロン類の回収を徹底するため、フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(平成13年法律第64号。以下「フロン排出抑制法」という。)に基づき、フロン類の回収及び再生・破壊を進めました。また、特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号。以下「家電リサイクル法」という。)、使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号。以下「自動車リサイクル法」という。)に基づき、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機、ルームエアコン及びカーエアコンからのフロン類の適切な回収を進めました。

 産業界の取組に関しては、自主行動計画の進捗状況の評価・検証を行うとともに、行動計画の透明性・信頼性及び目標達成の確実性の向上を図りました。

 また、先導的な排出抑制の取組に対する補助、低温室効果冷媒、低温室効果冷媒を用いた省エネエアコン、省エネ性能の高いノンフロン型断熱材等の技術開発、冷媒にフロン類を用いない省エネ型自然冷媒冷凍等装置の導入を促進するための補助事業等を実施しました。代替フロン等4ガスの中でも、HFCについては、冷凍空調機器の冷媒用途を中心に、CFC、HCFCからHFCへの転換が進行していることから、排出量が増加傾向にあります。また、冷凍空調機器の廃棄時のみではなく、使用中においても経年劣化等により冷媒フロン類が機器から漏洩(えい)するため、今後は代替フロン等4ガスの排出量が、冷媒HFCを中心に急増すると見込まれています(図1-3-1)。


図1-3-1 代替フロン等3ガス(京都議定書対象)の排出量推移

 このため、平成25年3月の中央環境審議会・産業構造審議会の合同会議報告「今後のフロン類等対策の方向性について」において、フロン類の製造から製品への使用、回収、再生・破壊に至るライフサイクル全体にわたる排出抑制に取り組むことが必要とされたことを踏まえ、従前の特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(平成13年法律第64号。以下「フロン回収・破壊法」という。)を同年6月に改正し、法律名称をフロン排出抑制法と改め、平成27年4月1日に施行されました。

 同改正では、新たにフロン類製造・輸入業者に対するフロン類の転換・再生利用等、フロン類使用製品(冷凍空調機器等)の製造・輸入業者に対するノンフロン又は低GWP(温室効果)の製品への転換を求めるとともに、業務用の冷凍空調機器ユーザーに対しては、定期点検等によるフロン類の漏洩(えい)防止等を求めています。また、冷媒の充填(てん)について、登録された業者による適正な実施を求めるとともに、フロン類の再生業を導入しています(図1-3-2)。


図1-3-2 フロン排出抑制法の概要

 平成27年度は、4月1日の施行を受け、昨年度に引き続き全国で説明会を実施し、平成28年度から始まるフロン類算定漏洩(えい)量報告・公表制度等の周知を行いました。

 また、2015年(平成27年)6月に気候変動枠組条約事務局に提出した「日本の約束草案」においても、代替フロン等4ガスの排出量を2030年(平成42年)において2,890万 CO2トン(2013年(平成25年)比▲25.1%)とすることとされています。この目標を達成できるよう、フロン排出抑制法の確実な施行を通じて、短期的には市中の冷媒フロン類使用機器からのフロン類排出を抑制するとともに、長期的・抜本的なフロン類の使用・排出の低減を推進していきます。

(4)温室効果ガス吸収源対策の推進

 森林吸収量(1990年(平成2年)以降に森林経営活動等が行われた森林の吸収量)については、平成27年12月に気候変動枠組条約に基づき提出された我が国の報告書において、京都議定書第二約束期間の土地利用、土地利用変化及び林業部門(LULUCF)のルールに則して、対象となるLULUCF活動実施による吸収量を活用することとしています。具体的には、2020年度(平成32年度)において、森林経営による吸収量は、約3,800万CO2トン以上(一定の前提を置いて試算)、植生回復による吸収量は約120万CO2トンの確保が目標とされています。また、農地土壌吸収源による純吸収量は約770万CO2トンが見込まれています。

 この目標を達成するため、森林・林業基本計画や平成25年5月に改正した、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法(平成20年法律第32号)等に基づき、間伐等の森林の適正な整備や保安林等の適切な管理・保全、成長に優れた種苗の確保に向けた生産体制の構築、「国民参加の森林づくり」、木材及び木質バイオマスの利用拡大、「木づかい運動」等の森林吸収源対策を推進しました。

 また、森林吸収源対策を含めた諸施策の着実な推進に資するよう、国全体としての財源確保を引き続き検討しました。

 また、都市における吸収源対策として、都市公園整備や道路緑化等による新たな緑地空間を創出し、都市緑化等を推進しました。

 さらに、農地土壌の吸収源対策として、炭素貯留量の増加につながる土壌管理等の営農活動の普及に向け、炭素貯留効果等の基礎調査、地球温暖化防止等に効果の高い営農活動に対する支援を行いました。

(5)気候変動の影響への適応策の推進

 気候変動の影響に対処するため、温室効果ガスの排出の抑制等を行う「緩和」だけではなく、既に現れている影響や中長期的に避けられない影響に対して「適応」を進めることが求められています。

 平成27年9月に、気候変動の影響への適応に関し、関係府省庁が緊密な連携の下、必要な施策を総合的かつ計画的に推進するため、気候変動の影響への適応に関する関係府省庁連絡会議を設置しました。

 気候変動の影響は幅広く多様であることから、全体で整合の取れた取組を推進するため、政府の適応計画を策定し、統一した考え方・方向性を提示することが必要です。このことから、関係府省庁において行われた検討結果を踏まえつつ、政府全体として気候変動の影響への適応策を計画的かつ総合的に進めるため、目指すべき社会の姿等の基本的な方針と、基本的な進め方、分野別施策の基本的方向、基盤的施策及び国際的施策を定めた、政府として初の気候変動の影響への適応計画を平成27年11月27日に閣議決定しました。

2 横断的施策

(1)地方公共団体における対策の促進

 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)に基づき、都道府県及び市町村は、地球温暖化対策計画を勘案し、その区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施するように努めるものとされ、特に現・施行時特例市(平成27年3月までの特例市。以下「特例市」という。)以上の地方公共団体には、地域における再生可能エネルギーの導入拡大、省エネルギーの推進等盛り込んだ地方公共団体実行計画(区域施策編)の策定が義務付けられています。

 このため、地方公共団体職員向けの研修会を実施するなどして、より多くの地方公共団体が実効的な計画を策定・実施するよう取り組んでおり、平成26年10月1日時点で、特例市以上では94.0%、特例市未満では14.8%の地方公共団体が計画を策定しました。

 また、全ての都道府県及び市町村は、自らの事務・事業に伴い発生する温室効果ガスの排出削減等に関する地方公共団体実行計画(事務事業編)の策定が義務付けられており、平成26年10月1日時点で80.3%の都道府県・市町村が計画を策定しました。

 これらの地域の計画推進を後押しするため、「実行計画(区域施策編)策定支援サイト」(http://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/kuiki/(別ウィンドウ))や地方公共団体職員向けの掲示板、地方公共団体メーリングリスト等を活用した情報発信を行いました。

 加えて、地方公共団体実行計画(区域施策編)に位置付けられた施策の実現に必要な省エネ・再エネ設備導入等を補助する「グリーンプラン・パートナーシップ事業」を平成26年度から実施しており、平成27年度は、25件の事業化計画策定・実現可能性調査、29件の設備導入事業を採択しました。

(2)温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度

 地球温暖化対策推進法に基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度により、温室効果ガスを一定量以上排出する事業者に、毎年度、排出量を国に報告することを義務付け、国が報告されたデータを集計・公表しています。

 全国の1万1,374事業者(1万3,628事業所)及び1,358の輸送事業者から報告された平成24年度の排出量を集計し、平成27年6月26日に結果を公表しました。今回報告された排出量の合計は6億6,902万CO2トンで、我が国の平成24年度排出量の約5割に相当します。

(3)排出抑制等指針

 地球温暖化対策推進法により、事業者が事業活動において使用する設備について、温室効果ガスの排出の抑制等に資するものを選択するとともに、できる限り温室効果ガスの排出量を少なくする方法で使用するよう努めること、また、国民が日常生活において利用する製品・サービスの製造等を事業者が行うに当たって、その利用に伴う温室効果ガスの排出量がより少ないものの製造等を行うとともに、その利用に伴う温室効果ガスの排出に関する情報の提供を行うよう努めることとされています。こうした努力義務を果たすために必要な措置を示した、排出抑制等指針を策定・公表することとされており、これまでに産業部門(製造業)、業務部門、上水道・工業用水道部門、下水道部門、廃棄物処理部門、日常生活部門において策定しました。

(4)国民運動の展開

 平成27年度に開始した新しい国民運動「COOL CHOICE」では、賛同企業・団体等の協力を得て、省エネ・低炭素型の「製品」、「サービス」、「行動」等、温暖化対策に資する「賢い選択」を促しました。

 夏期には、冷房時の室温を28℃にしても快適に過ごせるライフスタイル・ビジネススタイル「クールビズ」を推奨しました。特に6月から9月の期間については、「スーパークールビズ」として、更なる軽装、勤務時間のシフトなどワークスタイルの変革等を呼び掛けました。また、スーパークールビズの一環として、一人一台のエアコン使用をやめ、涼しい場所をみんなで共有する「クールシェア」も呼び掛けました。

 冬期には、暖房時の室温を20℃にしても快適に過ごせるライフスタイル・ビジネススタイル「ウォームビズ」を推奨しました。暖房に頼り過ぎずに快適に暖かく過ごす取組を広く提案するとともに、みんなで暖かい所に集まったり、家庭の暖房を止めて、街に出掛けたりすることでエネルギー消費を削減する「ウォームシェア」も呼び掛けました。

 さらに、通年の取組として、“「移動」を「エコ」に。”をテーマに、よりCO2排出量の少ない「移動」にチャレンジする「smart move(スマートムーブ)」を提案し、エコなだけでなく、便利で快適に、しかも健康にもつながるライフスタイルを呼び掛けました。

 加えて、エコドライブの取組を更に広げるため、「エコドライバープロジェクト」も推進しました。エコドライブは、CO2排出量を減らす運転であるとともに、燃費もよく、安全で、同乗者や周りから信頼されるドライブマナーに優れた運転と位置付け、そのようなドライブマナーに優れた運転をする人を「エコドライバー」と呼び、「エコドライバー」であることが“これからのドライブマナー”であるとしてエコドライブへの賛同を呼び掛けました。

 これらの取組のほか、平成27年6月22日から7月7日までの間に「ライトダウンキャンペーン」として、全国のライトアップ施設や家庭等の照明を消し、地球のことや未来のことを考えるよう呼び掛けました。特に夏至、七夕(クールアース・デー)を特別実施日とし、多くのライトアップ施設がライトダウンを行いました。

(5)「見える化」等の推進

 温室効果ガス排出量の「見える化」とは、商品やサービスの製造等に伴う温室効果ガスの排出量を定量的に可視化することなどを言います。政府では、商品・サービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通しての温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、当該商品・サービスに簡易な方法で分かりやすく表示する「カーボンフットプリント制度」の構築・普及等の取組を進め、平成28年2月1日現在で商品種別算定基準(PCR)の数は107、認定商品数は1,161となっています。また、事業者において、原料調達・物流・製造・使用・廃棄等サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の「見える化」を促進するため、当該排出量の算定方法に関するガイドラインに基づき、個別事業者及び業界団体の算定支援、テーマ別セミナーの開催、参考書・業種別算定事例集・Q&Aの作成、取組事例など既存資料の拡充を行いました。加えて、中小ビルの省エネ改修によるCO2削減余地を分析することなどにより、低炭素化に向けた中小ビル改修をモデル的に支援し、民間主体による改修促進のための環境性能評価が可能となる基盤の構築を目指しています。さらに、前述した家庭エコ診断等において、家庭におけるCO2排出量の「見える化」を推進しています。

(6)公的機関の率先的取組

 政府における取組として、地球温暖化対策推進法及び京都議定書目標達成計画に基づき、自らの事務及び事業から排出される温室効果ガスの削減を定めた「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画(政府実行計画)」において、平成19年度から平成24年度までの期間を対象とし、平成22年度~平成24年度の平均温室効果ガス排出量を、平成13年度比で8%削減することを目標としていました。

 計画期間の終了時期である平成24年度が既に経過していますが、「当面の地球温暖化対策に関する方針(平成25年3月15日地球温暖化対策推進本部決定)」において「政府は、新たな地球温暖化対策計画に即した新たな政府実行計画の策定に至るまでの間においても、現行の政府実行計画に掲げられたものと同等以上の取組を推進する」とされているため、関係府省庁は引き続き温室効果ガスの削減に取り組み、平成25年度は基準年度としていた平成13年度に比べ11.5%の削減を達成しています。また、平成27年12月22日の地球温暖化対策本部では、政府の実効計画を平成28年春までに作成することとされました。

 そのほか、地球温暖化対策推進法に基づき、引き続き都道府県や指定都市等において、地域における普及啓発活動や調査分析の拠点としての地域地球温暖化防止活動推進センター(地域センター)の指定や、地域における普及啓発活動を促進するための地球温暖化防止活動推進員を委嘱し、さらに関係行政機関、関係地方公共団体、地域センター、地球温暖化防止活動推進員、事業者、住民等により地球温暖化対策地域協議会を組織することができることとし、これらを通じパートナーシップによる地域ごとの実効的な取組の推進等が図られるよう継続して措置しました。

(7)税制のグリーン化

 環境関連税制等のグリーン化については、低炭素化の促進を始めとする地球温暖化対策のための重要な施策です。

 我が国では、税制による地球温暖化対策を強化するとともに、エネルギー起源CO2排出抑制のための諸施策を実施していく観点から、平成24年10月に「地球温暖化対策のための税」が導入されました。具体的には、我が国の温室効果ガス排出量の約9割を占めるエネルギー起源二酸化炭素の排出削減を図るため、全化石燃料に対してCO2排出量に応じた税率(289円/CO2トン)を石油石炭税に上乗せするものです。急激な負担増を避けるため、税率は3年半かけて段階的に引き上げることとされており、平成28年4月に最終段階を迎えます。この課税による税収は、エネルギー起源CO2の排出削減を図るため、省エネルギー対策・再生可能エネルギーの導入に充当されます。

 車体課税については、環境性能に優れた自動車に対する、自動車重量税及び自動車取得税におけるエコカー減税、自動車税及び軽自動車税におけるグリーン化特例(軽課)について、軽減を拡充するなど累次強化しています。今後、消費税率10%への引上げ時に、自動車取得税を廃止するとともに、自動車の環境性能に応じて税率が決定される環境性能割を、自動車税及び軽自動車税の取得時の課税として導入することとされています。

 税制のグリーン化の詳細については、第6章第2節を参照。

(8)国内排出量取引制度

 国内排出量取引制度については、2005年度(平成17年度)から2013年度(平成25年度)まで、確実かつ費用効率的な削減と取引等に係る知見・経験を蓄積するため、自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)を実施し、合計389者の参加を得て41万9,243CO2トンの排出枠が取引され、全体で221万7,396CO2トンの排出削減を達成し、制度参加者が掲げた124万5,454CO2トンの削減約束を97万1,942CO2トン上回りました。

 また、2008年度(平成20年度)から2013年度(平成25年度)まで「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」における試行排出量取引スキームを実施した結果、192者が参加し、そのうち147者がそれぞれの参加期間において目標を達成、45者は目標未達成となりました。参加者全体では、削減目標に対して2億5,486万CO2トンの削減不足になりました。

 平成22年12月には、地球温暖化問題に関する閣僚委員会において、国内排出量取引制度を含む地球温暖化対策の主要3施策についての政府方針を取りまとめ、国内排出量取引制度について、地球温暖化対策の柱としつつ、我が国の産業に対する負担やこれに伴う雇用への影響、海外における排出量取引制度の動向とその効果、国内において先行する主な地球温暖化対策(産業界の自主的な取組等)の運用評価、主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的な枠組みの成否等を見極め、慎重に検討を行うこととしました。

 これを踏まえ、環境省では、平成24年3月「国内排出量取引制度の課題整理報告書」で報告されているように、産業に対する負担や雇用への影響等の課題について整理するとともに、平成25年5月には排出削減ポテンシャルを最大限引き出すための方策について国内排出量取引制度も含め分析する「排出削減ポテンシャルを最大限引き出すための方策検討について」を作成し、また米中など海外の動向も注視しながら調査・検討を進めているところです(ただし、「国内排出量取引制度の課題整理報告書」、「排出削減ポテンシャルを最大限引き出すための方策検討会」における国内排出量取引制度に係る検討、その他の環境省で行っている調査・検討は関係省庁を含めた政府全体としての見解を取りまとめるものではなく、国内排出量取引制度の導入に関する議論等の方向性について何ら予断を与えるものではありません)。

(9)カーボン・オフセット、カーボン・ニュートラル

 「カーボン・オフセット(以下「オフセット」という。)」とは、市民、企業等が、[1]自らの温室効果ガスの排出量を認識し、[2]主体的にこれを削減する努力を行うとともに、[3]削減が困難な部分の排出量を把握し、[4]他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(クレジット)の購入や、他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動の実施等により、[3]の排出量の全部又は一部を埋め合わせることにより、幅広い主体の自主的な温室効果ガス排出削減を促す仕組みです。また、「カーボン・ニュートラル」は、オフセットの深化版として、より広い範囲の排出量を対象とし、排出量の全部を埋め合わせる仕組みです。適切なオフセットの普及促進のため、「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」(平成26年3月)に基づき、以下を含む様々な取組を行っています。

 ・平成24年5月から、「カーボン・ニュートラル認証制度」と「カーボン・オフセット認証制度」を一つの制度として統合した「カーボン・オフセット制度」を開始しています。平成27年12月末現在までに243件の取組がオフセット認証を受けています。

 ・平成24年11月から、算定されたCFPの値を活用してオフセットを行い、専用のマーク(どんぐりマーク)を添付する「CFPを活用したカーボン・オフセット制度」を開始し、平成27年12月末までに79事業者280製品・サービスの参加を得ました。また、平成25年11月から、消費者への訴求力を高めるため、CFPを活用したオフセット製品等に、環境に配慮した製品等と交換が可能なポイントを付けて流通させる「どんぐりポイント制度」を開始し、平成27年12月までに60事業者166製品・サービスの参加を得ました。

 ・平成27年度から、消費者がクレジットを活用した商品・サービスを購入することで間接的に地球温暖化対策の推進に貢献する取組を促進するとともに、クレジットを創出する地域社会への資金還流を推進するため、当該商品・サービスの開発を支援する「環境貢献型の商品開発・販売促進支援事業」を実施しました。平成27年10月までに404件の商品・サービスの開発を行いました。

 ・平成25年4月から、温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として認証する「J-クレジット制度」を開始しています。

 ・平成27年3月31日現在、J-クレジット制度の対象となる方法論は60種類あり、これまで10回の認証委員会を開催し、太陽光発電設備の導入や森林の整備に関するプロジェクトを中心に102件のプロジェクトを承認しました。J-クレジット制度の活用により、中小企業や農林業等の地域におけるプロジェクトにオフセットの資金が還流するため、地球温暖化対策と地域振興が一体的に図られました。

(10)金融のグリーン化

 温室効果ガスの大幅削減を実現し、低炭素社会を創出していくには、必要な温室効果ガス削減対策に的確に民間資金が供給されることが必要です。このため、金融を通じて環境への配慮に適切なインセンティブを与え、資金の流れをグリーン経済の形成に寄与するものにしていくための取組(金融のグリーン化)を進めることが重要です。

 金融のグリーン化の詳細については、第6章第2節を参照。

3 基盤的施策

(1)排出量・吸収量算定方法の改善等

 気候変動枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(以下「インベントリ」という。)の報告書を作成し、排出量・吸収量の算定に関するデータとともに条約事務局に提出しました。また、これらの内容に関して、条約事務局による審査の結果等を踏まえ、インベントリの算定方法の改善等について検討しました。

(2)地球温暖化対策技術開発・実証研究の推進

 地球温暖化の防止や地球温暖化への適応に資する技術の高度化、有効活用を図るため、再生可能エネルギーの利用、エネルギー使用の合理化、エネルギー消費の大幅削減、燃料電池や水素エネルギー、蓄電池、そしてCCS等に関連する技術の開発・実証、普及を促進しました。

 農林水産分野においては、農林水産省地球温暖化対策総合戦略及び農林水産省気候変動適応計画に基づき、地球温暖化対策に係る研究及び技術開発を推進しました。

 温室効果ガスの排出削減・吸収機能向上技術の開発として、温室効果ガスの発生・吸収メカニズムの解明を進め、温室効果ガスの排出削減技術、成長が早い新世代林業種苗の作出による森林再生技術、農地土壌等の吸収機能向上技術の開発を推進しました。また、低投入・循環型農業の実現に向けた生産技術体系の開発として、有機資源の循環利用や、微生物を利用した化学肥料・農薬の削減技術、養分利用効率の高い施肥体系、土壌に蓄積された養分を有効活用する管理体系等の確立を推進しました。さらに、高精度なレーザー計測技術により、アジア熱帯林の資源量と動態を把握するとともに、土地利用変化予測モデル等の開発を推進しました。

 農林水産分野における温暖化適応技術については、精度の高い収量・品質予測モデル等を開発し、気候変動の農林水産物への影響評価を行うとともに、温暖化の進行に適応した栽培・飼養管理技術や土着天敵を活用した害虫防除システムの開発を推進します。また、ゲノム情報を最大限に活用して、高温や乾燥等に適応する品種・育種素材の開発を推進しました。

(3)観測・調査研究の推進

 地球温暖化に関する科学的知見を充実させ、一層適切な行政施策を講じるため、引き続き、環境研究総合推進費等を活用し、現象解明、影響評価、将来予測及び対策に関する調査研究等の推進を図りました。

 また、地球温暖化対策に必要な観測を、統合的・効率的なものとするため、「地球観測連携拠点(地球温暖化分野)」の活動を引き続き推進しました。加えて、平成21年1月に打ち上げられた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)(第6章第3節2(1)を参照)は、設計寿命を超えた後も運用データを発信し続けており、その観測データの検証、解析を進め、全球の温室効果ガス濃度分布、吸収・排出量の推定結果、濃度の三次元分布推定データの一般提供を行いました。GOSAT観測データの解析により、地球大気全体の平均二酸化炭素濃度の算出を行い、その結果を公表するとともに、世界の人口密集地域、大規模な農業地域、天然ガス・石油の生産・精製地域等の人為起源メタン排出地域でその周辺よりもメタン濃度が高い傾向が見られることを明らかにしました。さらに、平成29年度打ち上げを目指し、観測精度と密度を飛躍的に向上させたGOSATの2号機の開発を平成24年度から実施しています。

4 フロン等対策

(1)国際的な枠組みの下での取組

 オゾン層の保護のためのウィーン条約及びモントリオール議定書を的確かつ円滑に実施するため、我が国では、特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(昭和63年法律第53号。以下「オゾン層保護法」という。)を制定・運用しています。また、同議定書締約国会合における決定に基づき、「国家ハロンマネジメント戦略」等を策定し、これに基づく取組を行っています。

 さらに、開発途上国によるモントリオール議定書の円滑な実施を支援するため、議定書の下に設けられた多数国間基金を使用した二国間協力事業、開発途上国のフロン等対策に関する研修等を実施しました。

 また、国際会議等において、ノンフロン技術やフロン回収・破壊法の改正等、日本の技術・制度・取組を紹介しました。

(2)オゾン層破壊物質の排出の抑制

 我が国では、オゾン層保護法等に基づき、モントリオール議定書に定められた規制対象物質の製造規制等の実施により、同議定書の規制スケジュール(図1-3-3)に基づき生産量及び消費量(=生産量+輸入量-輸出量)の段階的削減を行っています。HCFCについては2020年(平成32年)をもって生産・消費が全廃されることとなっています。


図1-3-3 モントリオール議定書に基づく規制スケジュール

 オゾン層保護法では、特定物質を使用する事業者に対し、特定物質の排出の抑制及び使用の合理化に努力することを求めており、特定物質の排出抑制・使用合理化指針において具体的措置を示しています。ハロンについては、国家ハロンマネジメント戦略に基づき、ハロンの回収・再利用、不要・余剰となったハロンの破壊処理等の適正な管理を進めています。

(3)フロン類の管理の適正化

 我が国では、主要なオゾン層破壊物質の生産は、大幅に削減されていますが、過去に生産され、冷蔵庫、カーエアコン等の機器の中に充填(てん)されたCFC、HCFCが相当量残されており、オゾン層保護を推進するためには、こうしたCFC等の回収・破壊を促進することが大きな課題となっています。また、CFC等は強力な温室効果ガスであり、その代替物質であるHFCは京都議定書の削減対象物質となっていることから、HFCを含めたフロン類の排出抑制対策は、地球温暖化対策の観点からも重要です。

 このため、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機及びルームエアコンについては家電リサイクル法に、業務用冷凍空調機器についてはフロン排出抑制法に、カーエアコンについては自動車リサイクル法に基づき、これらの機器の廃棄時に機器中に冷媒等として残存しているフロン類(CFC、HCFC、HFC)の回収が義務付けられています。回収されたフロン類は、破壊業者等により適正処理されることとなっています。平成26年度の各機器からのフロン類の回収量は表1-3-3図1-3-4のとおりです。


表1-3-3 家電リサイクル法対象製品からのフロン類の回収量・破壊量(平成26年度)

図1-3-4 業務用冷凍空調機器・カーエアコンからのフロン類の回収・破壊量等(平成26年度)

 また、フロン排出抑制法には、冷媒フロン類に関して、業務用冷凍空調機器の使用時漏洩(えい)対策、機器の廃棄時にフロン類の回収行程を書面により管理する制度、都道府県知事に対する廃棄者等への指導等の権限の付与、機器整備時の回収義務等が規定されています。これらに基づき、都道府県の法施行強化、関係省庁・関係業界団体による周知等、フロン類の管理の適正化について、一層の徹底を図っています。