環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部パート3第5章>第4節 水銀対策における我が国の国際協力

第4節 水銀対策における我が国の国際協力

 国内での取組に加え、我が国は、過去の経験と教訓をいかし、開発途上国による水俣条約の適切な実施に向けて積極的に国際協力を実施しています。

1 開発途上国における水銀対策の支援

 水俣条約外交会議において我が国が表明した「MOYAIイニシアティブ」の一環として、環境省では、「“水銀マイナス”プログラム:MINAS(MOYAI Initiative for Networking, Assessment and Strengthening)」を立ち上げました。MINASは、開発途上国の水銀対策を後押しするものであり、関係機関と密接に連携しつつ[1]アジア太平洋地域における水銀モニタリングネットワークの構築、[2]開発途上国の水銀使用、排出、実態等の調査・評価の支援、[3]開発途上国におけるニーズ調査・能力形成支援等の取組を進めています。

 平成27年度は、水銀モニタリングネットワークの構築に向け、インドネシア、タイ、フィリピン及びベトナムの4か国を対象に、現地の水銀分析施設の能力評価を行ったほか、我が国に担当者を招聘(へい)し、我が国の水銀分析関係施設の視察等を通じた能力形成支援を行いました。また、大阪府大阪市に事務所を置くUNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)への資金拠出等を行い、UNEP/IETCが実施するASEAN諸国の水銀廃棄物対策に関するワークショップの開催等を支援しました。さらに、イラン、パラオ及びブラジルの3か国で水銀に関するニーズ調査と現地ワークショップを開催し、調査の結果報告及び日本の技術紹介等を行いました。これらの取組のほか、水俣条約外交会議において発表した水銀汚染防止に特化した人材育成支援についても引き続き実施しています。

2 水俣条約の早期発効に向けた取組

 2015年(平成27年)9月、第70回国連総会期間中の国連本部(米国・ニューヨーク)において、我が国はウルグアイ、スイス及び米国と共に、各国による水俣条約の締結を促進するサイドイベントを前年に引き続き開催し、水俣条約の更なる推進を世界に強く呼び掛けました。また、平成27年10月、環境省は熊本県及び水俣市と共催で、熊本県水俣市において「水銀に関する水俣条約2周年記念行事」を開催しました。同行事では、国内外に対し水銀対策の着実な実施を呼び掛けることを目的として、水俣市内の中学生約250名が参加しメッセージを横断幕に書いて署名採択しました。横断幕は、2016年(平成28年)3月に開催された第7回政府間交渉委員会会合(INC7)で展示され、水銀対策の必要性を呼び掛ける水俣からのメッセージとして各国の会合参加者に届けられました。

3 UNEP世界水銀パートナーシップの活動とバーゼル条約のガイドライン改訂支援

 UNEPでは、水銀管理に関する各国の自主的取組の促進の一環として、意識啓発やパイロットプロジェクト等を行う世界水銀パートナーシッププログラムを推進しています。2008年(平成20年)の立ち上げ以来、廃棄物管理のパートナーシップ分野は、我が国が活動の推進、コーディネート等を主導的に行うなどイニシアティブを発揮しており、ワークショップの開催や優良事例集の取りまとめ等を実施してきました。

 また、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(以下「バーゼル条約」という。)の下で策定された「水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドライン」は、我が国が更新作業を主導しました。2015年(平成27年)5月にスイスで開催されたバーゼル条約第12回締約国会合では、更新されたガイドラインが採択されました。また、同年10月には、当該ガイドラインに対する実務者向けの解説書としてUNEPが作成した「水銀廃棄物の保管と廃棄のためのソースブック」の出版普及イベントを、UNEPと共にスイスにおいて共催しました。