環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部>パート3 主な課題に関する取組の進展>第1章 国際的な枠組みの進展>第1節 2030アジェンダ――持続可能な開発の新たな枠組み

パート3 主な課題に関する取組の進展

第1章 国際的な枠組みの進展

 平成27年度は、様々な国際的な枠組みが大きな進展を見せた一年でした。パート1第1章で述べたとおり、パリ協定が成立したほか、持続可能な開発目標(SDGs)を中核とする持続可能な開発のための2030アジェンダ(以下「2030アジェンダ」という。)も採択されました。

 中でも、2030アジェンダは、国際社会が2030年(平成42年)に向けて、持続可能な社会の実現のために取り組むべき課題(アジェンダ)を集大成した新たな国際的な枠組みであり、この点からも国際社会は新たなステージに入ったと言えます。本章では、2030アジェンダの枠組みのほか、我が国が大きな貢献を果たしている国際的な枠組みについて説明します。

第1節 2030アジェンダ――持続可能な開発の新たな枠組み

 持続可能な開発の概念は、1987年(昭和62年)に国連の環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)が公表した報告書「我ら共有の未来(Our Common Future)」がきっかけとなり広く一般に認識されるようになったと言われています。1992年(平成4年)の国連環境開発会議(以下「地球サミット」という。)において、各国や国際機関が遵守すべき行動原則である「環境と開発に関するリオ宣言」、同宣言を達成するための行動計画である「アジェンダ21」が採択され、持続可能な開発が、人類が安全に繁栄する未来への道であることが確認されました。地球サミットから10年に当たる2002年(平成14年)には、持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグサミット)が、2012年(平成24年)には、国連持続可能な開発会議(以下「リオ+20」という。)がそれぞれ開催され、過去に国連が策定した行動計画を再確認した上で、2015年(平成27年)に達成期限を迎えるミレニアム開発目標(MDGs)とも整合を取りながら、SDGsに向けた議論を開始することが決定されました。

1 MDGsの達成状況とその国際的評価

(1)MDGsの概要と各目標の達成状況

 MDGsは、開発分野における国際社会共通の目標で、2000年(平成12年)の国連ミレニアム・サミットで採択された「国連ミレニアム宣言」を基にまとめられました。MDGsは、極度の貧困と飢餓の撲滅に加え、環境の持続可能性の確保も含め、2015年(平成27年)までに達成すべき8つの目標が掲げられていました。達成期限を迎えて国連で行われた評価によると、一定の成果が上げられたとされています。

(2)MDGsの限界と課題

 MDGsは、従来の開発手法と比較して画期的な試みでした。具体的には、それまで個別に目標を掲げて援助活動をしていた国連、各国政府、NGOにとっての共通目標を定め、その達成を目指したこと、援助活動全体の効果を上げるため、被援助国の開発政策と援助国の援助政策の整合性を取るなどの共通の枠組みが定められたことなどが挙げられます。しかし、国際機関や先進国等の援助提供者側が主導して内容を決定したため、被援助国である途上国側は自身が努力するという意識(オーナーシップ)を十分に持てず、また、アフリカを始めとする地域間格差や国内格差の問題が十分に考慮されていないという指摘がありました。

 さらに、MDGsには貧困、教育、保健等社会開発に関する目標(ゴール)が多く、経済開発、環境・気候変動、人権等に関するゴールが十分な内容ではないという指摘もあります。MDGsにおいて環境に直接関係する目標は、「目標7:環境の持続可能性確保」だけであり、その目標には、多くの国が悩まされている大気汚染問題への対応及び天然資源の持続可能な利用は含まれていませんでした。また、この目標7とその他の目標との関連が薄く、他の目標を達成するために環境的側面が十分に顧みられない可能性がありました。例えば、「目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅」を達成するためには農業生産を向上させる必要がありますが、そのために淡水の大量使用や廃水による水質汚染、農薬による環境汚染、富栄養化、土壌浸食及び施肥等に伴う窒素酸化物(温室効果ガスの一種)の排出等を招く可能性があります。環境に配慮した持続可能な方法で農業が実施されていれば良いのですが、MDGsではそのような観点が明示されていませんでした。加えて、国連環境計画(UNEP)等により、経済・環境に関わる目標が不十分だったため、必要なステークホルダーを幅広く巻き込むことができないという限界があったことも指摘されています。

2 2030アジェンダに至る国際的な議論の経緯

(1)リオ+20で示された方向性

 2012年(平成24年)6月に開催されたリオ+20において、[1]30か国によるオープン・ワーキング・グループを設置し議論すること、[2]SDGsは、ポスト2015年開発アジェンダに整合的なものとして統合されることの2点が決定されました。これを受けて、2014年(平成26年)夏に報告書が国連に提出されました。

 環境的側面から見ると、リオ+20では、上述したMDGsの限界と課題を踏まえ、環境、経済、社会の三側面統合の概念が打ち出されたことが非常に特徴的です。成果文書である「我々が望む未来」では、「我々は、あらゆる側面で持続可能な開発を達成するためには、経済的、社会的、環境的側面を統合し、それらの相関を認識し、あらゆるレベルで持続可能な開発を、主流として更に組み込む必要があることを認める」とされており、随所で三側面統合の重要性が示されています。この三側面統合の概念は、2030アジェンダとSDGsに明確に引き継がれていることから、後述します。

(2)2030アジェンダ採択に至る歩み

 2015年(平成27年)9月25日、2030アジェンダが、ニューヨーク国連本部で開催された持続可能な開発のための2030アジェンダ採択のための首脳会議国連総会で正式に採択されました。ここに至るまでの歩みのうち、特に環境的側面では、UNEPによる取組が特徴的です。UNEPは、先述した環境、経済、社会の三側面統合の概念を確実に2030アジェンダとSDGsに引き継ぐため、研究者や各国政府を含むステークホルダーと、SDGsに開発の三側面をバランス良く入れ込む方法について議論し、2013年(平成25年)に討議用資料を発表しました。また、2014年(平成26年)にナイロビで開催されたUNEPの第1回国連環境総会(UNEA)には、157か国の代表及び国際機関、ステークホルダー等が出席し、そこで決定されたハイレベルセグメント成果文書では、野心的、普遍的かつ実現可能なポスト2015年開発アジェンダを策定すること、並びに同アジェンダは持続可能な開発の環境的・経済的・社会的側面の全てを包摂することが明記されました。

(3)我が国のプロセスへの貢献

 2030アジェンダ採択に向け、我が国は様々な貢献を行ってきました。まず、リオ+20の前年の2011年(平成23年)に、東京でMDGsフォローアップ会合を開催し、ポスト2015年開発アジェンダに関する国際的な議論の端緒を開きました。また、約20か国の政府関係者、主要国際機関、研究機関、市民社会団体、民間セクターの政策担当者が、非公式に政策対話を行う場であるポスト2015年開発目標に関するコンタクト・グループを主催し、計6回の会合で活発な意見交換を行ってきました。その議論の結果は、議長ノートとして取りまとめ、ポスト2015年開発アジェンダに関するハイレベルパネルに取り入れられました。

 さらに、2012年(平成24年)と2013年(平成25年)に実施された国連総会では、ポスト2015年開発目標に関するサイドイベントを開催しました。また、2012年(平成24年)には、国際通貨基金(IMF)・世銀年次総会東京会合の機会に、外務省、独立行政法人国際協力機構(JICA)及び世界銀行グループの共催で、ポスト2015年開発アジェンダに関する公式セミナーを開催しました。

 環境省では、平成25年度より、環境研究総合推進費戦略研究プロジェクトの一つとして、「持続可能な開発目標とガバナンスに関する総合的研究――地球の限られた資源と環境容量に基づくポスト2015年開発・成長目標の制定と実現へ向けて――」を立ち上げ、SDGs策定へ向けた国際議論に貢献してきました。

 これらの取組は、2014年(平成24年)から開始された国連加盟国間の2030アジェンダ策定への交渉にいかされています。

3 2030アジェンダの内容

 前項で見たように、2030アジェンダは、三年間の参加型プロセスを経て策定されました。検討段階ではポスト2015年開発アジェンダと呼ばれていましたが、正式名称は「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」となり、[1]序文、[2]政治宣言、[3]SDGs、[4]実施手段、[5]フォローアップとレビューの5項目により構成されています。

 2030アジェンダでは、これまでの国際目標とは異なる幾つかの画期的な特徴があります。まず、途上国に限らず先進国を含む全ての国に目標が適用されるというユニバーサリティ(普遍性)が大きな特徴となっています。次に、包括的な目標を示すと同時に、各々の目標は相互に関連することが強調されており、分野横断的なアプローチが必要とされています。加えて、グローバル・パートナーシップの重視も2030アジェンダの特徴です。具体的には、2030アジェンダの序文や、SDGsの「ゴール17(パートナーシップ)」において、目標達成のためにマルチステークホルダー・パートナーシップを促進することが明記されています。

 さらに、MDGsにおいて「環境、経済、社会の統合的向上」に向けた取組が十分でなかったことを踏まえて、2030アジェンダ及びSDGsにおいては、この考え方が明確に打ち出されている点も特徴的です。具体的には、2030アジェンダの序文では、「持続可能な開発を、経済、社会及び環境というその三つの側面において、バランスがとれ統合された形で達成することにコミットしている」と明記されています。この経済、社会、環境の三側面をバランスがとれ統合された形で達成するという考え方は、国の環境基本計画等に示された我が国の環境政策が目指すべき方向性と基本的に同様であると言えます。

(1)SDGsの概要と環境との関わり

 アジェンダ2030の中核を成すSDGsは、17のゴールと各ゴールごとに設定された合計169のターゲットから構成されています(図1-1-1)。17のゴールを見ると、「ゴール6(水)、12(持続可能な生産・消費)、13(気候変動)、14(海洋)、15(生態系・森林)」等のゴールは、環境と特に関わりが大きく、MDGsのゴールと比較して、環境的側面が増加していることが読み取れます。しかし、これにとどまらず、SDGsはゴール間での関連を重視している特徴からも、その他のゴールにも環境との関わりが見られます。


図1-1-1 SDGs17のゴール

 例えば、一見環境とは関わりが小さい「ゴール1(貧困)」では、ターゲットの一つである1.5において、「気候変動に関連する極端な気象現象(中略)や災害に対する曝(ばく)露や脆(ぜい)弱性を軽減する」と記載され、気候変動への適応も貧困削減に寄与することが明記されています。また、「ゴール4(教育)」では、ターゲット4.7において、「持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル(中略)の教育を通して、全ての学習者が(中略)必要な知識及び技能を習得できるようにする」とあり、持続可能な開発のための教育(ESD)や環境教育の重要性が示されています。

 このように、各ゴールはターゲットを介して環境との結び付きが示され、持続可能な開発の三側面、すなわち環境、経済、社会は統合され、不可分であるという考えがターゲットのレベルでも貫かれています。

(2)各国及び様々なステークホルダーに期待されていること

 SDGsは、国連総会決議に従い、2016年(平成28年)1月から効力を有しています。我が国を含めた各国政府は、SDGsのゴール・ターゲット等に対し、具体的な政策や計画の設定等の対応を求められており、我が国においてもそのための検討が始まっています。各ゴール・ターゲットについて、様々な組織・機関が計画等でどのように役割を分担し、どのように我が国の目標を設定していくかは、今後政府としての対応を検討していく中で整理されていくものと考えられます。

 一方で、2030アジェンダの序文やSDGsの「ゴール17(パートナーシップ)」では、SDGsの達成には、国境を越えて、政府にとどまらず様々な主体がそれぞれの役割を見出しつつ連携していく「グローバル・パートナーシップ」の必要性が強調されています。これは、我が国において、平成6年の第一次環境基本計画で、「循環」、「共生」、「参加」及び「国際的取組」が実現する社会を目指すとされて以来、四次にわたる環境基本計画においてその目指す社会の達成に向けて様々な主体による参加と連携が重視されてきたことにも通じています。

 一方、SDGsにはその達成のための具体的手段は必ずしも明記されておらず、多様な主体により多様な取組が進められることが期待されています。その観点から、主体間での情報共有や連携の強化が求められており、我が国における動きについては、次項で紹介しています。

4 2030アジェンダを受けた国内外の動き

(1)国際的な動き

 国内外では、2030アジェンダを受けて様々な動きが見られるようになっています。国際的には、国連やUNEP、経済協力開発機構(OECD)等の国際機関や、G7やG20等の国際的枠組みにおいて、SDGsのゴール達成に向けた協力が表明される等、具体的な施策が打ち出されています。

 例えば、2000年(平成12年)に発足した国連グローバル・コンパクトというイニシアティブの下、企業を中心とした様々な会員団体が、人権、労働、環境、腐敗防止の4分野・10原則を軸に活動を展開しています。国連グローバル・コンパクトはSDGsに対しても積極的に取り組んでおり、グローバル・リポーティング・イニシアティブ(GRI)等と共同で、企業によるSDGs実施のためのガイドラインとして「SDG Compass」を作成し、企業の取組を後押ししています。さらに、監査、税務、アドバイザリーサービスを提供する企業の国際的ネットワークであるKPMGと共同で、企業によるSDGsの先進的取組を共有するプラットフォームの運営等も行っています。

 また、UNEPでは、持続可能な消費と生産(SCP)パターンの国際的定着に向け、国や地方レベルの政策、民間・NGO等を含む各種事業、人材育成、技術移転、研究等を促進するため、リオ+20で合意された「国連持続可能な消費と生産10年計画枠組み(10YFP)」を進めています。具体的には、持続可能な消費と生産を促進するためのプロジェクト運営等を行っており、日本も大きく貢献していますが、詳細は後述します。OECDにおいては、2030アジェンダを推進するに当たってのOECDによる貢献可能性について議論が進められており、OECDが定めるグリーン成長指標を始めとする様々な指標や、OECD開発センターに集積された知見の活用が提案されています。

 さらに、2015年(平成27)年6月にドイツで行われたG7エルマウ・サミットでは、首脳宣言中に、2030アジェンダを後押しするため、資金的・被資金的手段の促進を支援することが明記されています。11月にトルコで行われたG20アンタルヤ・サミットにおける首脳コミュニケ中にも、2030アジェンダの履行に強くコミットすることが明記されています。

 そして、世界各国においても、SDGsに対応する動きが見られるようになっています。SDGsの進捗は、国連ハイレベル政治フォーラムにおいて毎年各国が報告することとされており、2016年(平成28年)7月に、2030アジェンダ採択後初めての同フォーラムが開かれることから、各国はこの場を目指してSDGsへの対応を進めています。

(2)国内における動き

 日本国内においては、次項で詳述する政府のほか、NGO、企業等もSDGsへ対応すべく動き出しています。例えば、国連サミットで2030アジェンダが採択された翌日、国際協力NGOセンター(JANIC)、「動く→動かす」及びグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)の三者は、政府や研究者の協力も得て、2030アジェンダ採択に際しての市民社会・企業部門の共同声明を発表しました。これは、NGOが主要会員を占める団体と、企業が主要会員を占める団体が、他のセクターの協力も得ながら共同でSDGsへ対応していくことを宣言するもので、2030アジェンダの特徴の一つであるグローバル・パートナーシップを象徴する取組です。

 既にSDGsに対応している民間企業もあり、それらの取組は内外で高く評価されています。SDGsは、それぞれの企業の本業、社会貢献事業、CSR活動の全てをSDGsという文脈で整理して、それを基に企業活動を再度見直すことができる機会、いわば棚卸しのツールにもなります。そうした行動をする企業の姿勢が、投資家からも評価されるようになってきました。

 貧困、飢餓、環境等の世界的な問題に対し、非政府の立場から利益を目的とせずに取り組んできたNGOの多くは、MDGsに対して積極的に取り組んできた経緯があり、SDGsに対しても引き続き取組を進めていこうとしています。GCNJは、前項で紹介した国連グローバル・コンパクトの日本におけるローカルネットワークで、企業に対しSDGsの内容について普及に努め、対応を促す活動を精力的に行っています。様々な講演会で、SDGsの概要や企業による取組について紹介するとともに、平成28年3月には、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)と協働で、先述した「SDG Compass」の和訳を行いました。

 この背景には、SDGsの各ゴールは、全ての国連加盟国が喫緊の世界課題、つまり社会ニーズとして整理されたものであり、新規性や成長率の高いビジネスが生み出される可能性の高い分野を指摘しているものであるという考えがあります。元々企業は、社会のニーズを満たすことでそれぞれのビジネスを発展させてきたため、SDGsの達成を目指すことは、企業の活動拡大につながると考えられます。

 例えば、「ゴール7(エネルギー)」では、全ての人々が、安価かつ信頼できる持続可能な現代的エネルギーを確保することがゴールとして掲げられており、地域において安価に確保できる分散型の再生可能エネルギーへの需要が高まると考えられます。我が国においても、途上国の未電化村落への電源供給ビジネス等の検討が行われているところですが、SDGsはその取組を後押しするものになります。この再生可能エネルギーの導入は、同時に、「ゴール15(生態系・森林)」への達成にも大きく貢献します。すなわち、未電化村落では森林から得られる木炭や薪等をエネルギー源とすることが多いことから、再生可能エネルギー利用設備を導入することは、森林被覆の減少を食い止めることにつながるのです。このように、ビジネスの観点からも、SDGsのゴール同士が関連していることを読み取ることができます。

 加えて、SDGsはMDGsに比べて環境的側面が強いことから、SDGsの達成を目指すことは、近年消費者の興味・関心が高まっている環境配慮を強化し、実践することにもつながります。実際に、SDGsが自社の企業活動にとっても有益であることを認識する企業の数は増えているという指摘もあります。SDGsの達成が企業活動の一環としても捉えられるようになることは、環境、経済、社会の統合的向上の視点からも意義深いものであり、日本の各企業や業界における認識が広がり、具体的な活動にまで広がっていくことが期待されます。また、その結果、各企業の社員やその家族の間にもSDGsの理念が広がることも期待され、多様なステークホルダーによるSDGsの達成に一層近づくことができます。したがって、政府としても、企業の取組を後押ししていくことが重要です。

5 今後の我が国の取組

 政府はこれまで、MDGsも踏まえ、持続可能な社会の実現に向けて積極的な国際的取組を行ってきました。環境政策に関する知識や経験、技術の蓄積をいかし、政策支援、技術支援、イニシアティブの発揮等、様々な取組を行ってきています。例えば、気候変動の問題については、前述したように優れた低炭素技術等の普及等を通じて排出削減・吸収を実施することは、相手国のみならず我が国も含めた双方の低炭素成長に貢献することができます。このため、途上国への温室効果ガス削減技術、製品、システム、サービス、インフラ等の普及や対策実施を通じ、実現した温室効果ガス排出削減・吸収への我が国の貢献を定量的に評価するとともに、我が国の削減目標の達成に活用するため、二国間オフセット・クレジット制度(JCM)の構築・実施を進めています。平成25年以降16か国との間で制度を構築し、平成27年12月には、フィリピンとJCMの構築に向けた覚書への署名を行いました。また、途上国が抱える大気汚染や水質汚濁等の深刻な環境問題に対処するため、地球温暖化対策と環境汚染対策を同時に実現するコベネフィット・アプローチの普及に取り組んでいます。具体的には、「アジア・コベネフィット・パートナーシップ」への活動支援を通じ、アジアの途上国におけるコベネフィット・アプローチの推進を支援するなど様々な取組を行っています。

 SDGsは、開発途上国のみならず我が国等先進国にも目標が適用されることや、多岐に渡る分野の目標が相互に間連していることが特徴であり、政府全体での国内外に対する取組が一層重要になります。現在、関係省庁間で連携し、政府全体での今後の取組の方向性等を検討しているところです。

 環境省では、特にSDGsの環境的側面の実施を促進するため、平成28年度より「ステークホルダーズ・ミーティング」を開催します。平成27年3月には、準備会合を開催しました。これは、先行してSDGsに取り組む企業、市民団体、研究者、地方公共団体や各省庁が一堂に会し、互いの事例の共有や意見交換、さらには広く国民への広報を行う公開の場として発展させる予定です。具体的には、先駆的な事例について、内容だけでなく、取組を実施するプロセス、パートナーシップも含めてミーティングで共有し、これらの事例を認め合うことで、他の主体の行動を促します。

 また、前述のUNEPによる10YFPにおいて、我が国が培った低炭素型ライフスタイルに関する経験や技術を活用し、民生部門対策における貢献を行うとともに、10YFPに設置された6つのプログラムのうち「持続可能なライフスタイルと教育(SLE)」プログラムを共同で主導しています。SDGs交渉過程の2015年(平成27年)6月、SLEの一環としてニューヨークで開催したサイドイベントで、食品廃棄物削減に関する我が国の取組を発表し、官民一体となった手法に対して、各国から関心が寄せられました。加えて、我が国は、次回会合が2016年(平成28年)に予定されている東アジア首脳会議環境大臣会合(EAS EMM)等の国際的枠組みを通じ、ASEAN諸国におけるSDGs実施に向けた支援を行っていくことにしています。