環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第9節 原子力利用における安全の確保

第9節 原子力利用における安全の確保

1 原子力規制行政に対する信頼の確保

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえて設置された経緯を踏まえ、国民からの信頼性の向上に向けて、継続的に原子力規制行政の信頼の確保に取り組んでいくことが極めて重要であると認識しています。原子力規制委員会は、原子力利用に対する確かな規制を通じて、人と環境を守るという使命を果たすため、科学的・技術的見地から、公正・中立に、かつ独立して意思決定を行うこと、その際、多様な意見を聴くことによって独善的にならないように留意すること、形式主義を排し、現場を重視する姿勢を貫き、真に実効ある規制を追求すること、意思決定のプロセスを含め、規制に関わる情報の開示を徹底し、透明性を確保することを組織理念として、様々な政策課題に取り組んでいます。

(1)独立性・中立性・透明性の確保、コミュニケーションの充実

 平成25年度に引き続き、原子力規制委員会は、組織理念に基づき、科学的・技術的見地から公正・中立に、かつ独立して意思決定を行いました。同時に、外部とのコミュニケーションの充実のため、各種検討会合等において外部有識者を構成員に含め、その知見を活用するとともに、それ以外の専門家や関係事業者からのヒアリングも積極的に実施しました。さらに、原子力規制委員会は、行政手続法(平成5年法律第88号)に基づくパブリックコメント及び同法に基づかない任意のパブリックコメントを計14件実施し、広く国民の意見を募集しました。また、九州電力川内原子力発電所(以下「川内原子力発電所」という。)の原子炉設置変更許可後には、立地自治体である鹿児島県内の市町計5か所で開催された住民説明会に出席し、審査結果の説明を行いました。さらに、関西電力高浜発電所(以下「高浜発電所」という。)の原子炉設置変更許可後には、審査結果に関する説明ビデオを作成し、高浜町によりケーブルテレビで公表され、また、原子力規制委員会のウェブサイトに公表しました。

 中立性の確保については、平成24年9月に決定した原子力規制委員会委員の行動規範や外部有識者の選定に当たっての要件等を遵守し、業務を遂行しています。平成26年9月19日に新たに委員に就任した田中知委員及び石渡委員についても、就任前直近3年間の寄付等の必要な情報は就任日に公開しました。

 透明性の確保については、原子力規制委員会及び各種検討会合等の議事録及び資料の公開に加えインターネット動画サイトによる生中継、委員3人以上が参加する規制に関わる打合せ及び被規制者との面談の概要等の公開、幅広い報道機関に対する積極的な記者会見(原子力規制委員会委員長定例会見は週1回、原子力規制庁定例ブリーフィングは週2回)等を継続し、意思決定の透明性を確保しています。

(2)原子力規制委員会及び内閣府原子力防災担当の体制の見直し

 平成26年10月14日、政府全体の原子力防災体制の充実・強化のため、地域の原子力防災の充実・強化に係る業務等を原子力規制委員会職員が内閣府職員を併任し実施していた従前の体制が見直され、専任の内閣府政策統括官(原子力防災担当)組織が発足しました。一方で、原子力規制委員会としても従前の放射線防護対策部を廃止し、新しく核セキュリティ・核物質防護、放射線対策等の業務を総括する審議官として、核物質・放射線総括審議官を長官官房に設置し、核物質・放射線総括審議官の下に放射線防護グループを設置しました(図6-9-1)。

 また、平成27年1月15日には、原子力発電所周辺地域における緊急時モニタリング体制を充実・強化するため、5人の定員を措置しました。

 平成27年3月31日現在の定員は964名、平成26年度予算は631億7,200万円(補正後)です。


図6-9-1 原子力防災体制の充実・強化に伴う組織見直しについて

(3)マネジメントシステムの構築

 原子力規制委員会は、原子力規制委員会設置法(平成24年法律第47号)の任務を達成するため、原子力利用における安全の確保を図ると同時に、品質、セキュリティ等各種のマネジメント要素を効果的に統合したマネジメントシステムを構築するため、平成26年度第22回原子力規制委員会(平成26年9月3日)において原子力規制委員会マネジメント規程を決定しました。

 当該マネジメントシステムの平成27年4月1日からの本格運用に向け、平成26年度第56回原子力規制委員会(平成27年2月12日)において、組織理念に基づく中期目標(平成27年4月1日から5年間)を決定し、さらに、平成27年度第65回原子力規制委員会(平成27年3月25日)において、中期目標に基づく平成27年度重点計画を決定しました。

(4)国際機関及び諸外国の原子力規制機関との連携・協力

 原子力規制委員会は、原子力規制の向上のために、国際機関及び諸外国の原子力規制機関との積極的な連携・協力を図っています。

 国際機関との連携については、国際原子力機関(以下「IAEA」という。)や経済協力開発機構/原子力機関(以下「OECD/NEA」という。)の常設委員会(安全基準委員会(CSS)等)を含む各種会議に参加しました。また、IAEA及びOECD/NEA事務局長との意見交換や、IAEAの総合規制評価サービス(IRRS)の受入れを進めるとともに、平成27年2月16日から2月27日までの間、IAEAの国際核物質防護諮問サービス(以下「IPPAS」という。)ミッションを受け入れました。

 諸外国の原子力規制機関との協力については、国際原子力規制者会議(INRA)、日中韓上級規制者会合(TRM)等へ参加しました。また、各種国際条約に基づく国別報告の作成や各種会合への参加等の活動を行いました。さらに、国際アドバイザーとの意見交換等を通じ、原子力規制に関する経験や知見を積極的に取り入れるよう努めました。

2 原子力施設等に係る規制の厳正かつ適切な実施

(1)原子炉等規制法に係る規制制度等の見直し

 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号。以下「原子炉等規制法」という。)に係る規制制度等の見直しについては、平成26年7月から作業員の被ばく制限の見直しについて検討を開始しました。また、保安検査の在り方についても、平成24年度から引き続き検討を行いました。

 さらに、平成26年5月12日、原子力規制委員会は、原子力安全専門審査会及び核燃料安全専門審査会に対し、国内外で発生した事故・トラブル及び海外における規制の動向に係る情報の収集・分析を行い、それを踏まえた原子力規制委員会としての対応の要否について助言を行うことを指示しました。これまでに計4回の合同審査会において審議が行われ、その結果が原子力規制委員会に報告されています。

 このほか、放射線審議会においては、放射線障害防止の技術的基準に関する法律(昭和33年法律第162号)において、関係行政機関の長からの諮問を受け、放射線障害の防止に関する技術的基準の斉一化に関する審議を行うこととされており、原子力規制委員会において緊急作業時の被ばくに関する規制について検討が始まったことを踏まえ、関係機関から、緊急作業に従事する者の被ばく制限に関する東京電力福島第一原子力発電所の事故時における対応を聴取しました。

(2)全国の原子力施設の審査・検査等の状況

 実用発電用原子炉については、原子力規制委員会が平成25年7月8日に新規制基準を施行した後、平成26年度までに11事業者から15原子力発電所24プラントの新規制基準への対応に係る設置変更許可申請等が提出されました。これらの申請については、原子力規制委員会において了承された方針に基づき厳正かつ適切に審査を行っているところであり、平成26年度に審査会合を計113回開催しました。

 そのうち、川内原子力発電所1・2号炉及び高浜発電所3・4号炉については、発電用原子炉設置変更許可申請書に対する審査の結果の案を取りまとめ、事業者の技術的能力や原子炉の構造、設備に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集、審査の結果の案に係る経済産業大臣及び原子力委員会への意見聴取を行いました。募集した科学的・技術的意見、経済産業大臣及び原子力委員会からの回答を踏まえて審議した結果、川内原子力発電所1・2号炉に対しては平成26年度第23回原子力規制委員会(平成26年9月10日)において、高浜発電所3・4号炉に対しては平成26年度第56回原子力規制委員会(平成27年2月12日)において、設置変更許可処分を行いました。また、川内原子力発電所1号炉については、平成26年度第63回原子力規制委員会(平成27年3月18日)において、工事計画の認可を行いました。さらに、川内原子力発電所1号炉については、平成27年3月19日に使用前検査申請書を受理し、同年3月30日から使用前検査を開始しました。

 また、特定重大事故等対処施設の設置に係る設置変更許可について、3事業者3原子力発電所6プラントに係る申請書が提出されました。これらの申請についても、厳正かつ適切に審査を進めました。

 核燃料施設等については、原子力規制委員会が平成25年12月18日に新規制基準を施行した後、平成26年度までに8事業者から19施設の事業変更許可申請等が提出されました。これらの申請について、原子力規制委員会において了承された方針に基づき厳正かつ適切に審査を行っているところであり、平成26年度に、再処理施設(日本原燃株式会社再処理事業所)及びMOX燃料加工施設(日本原燃株式会社再処理事業所)については、原子力規制委員会委員が原則として出席する審査会合を、ウラン燃料加工施設(日本原燃株式会社濃縮・埋設事業所等)及び試験研究用等原子炉施設(独立行政法人日本原子力研究開発機構JRR-3)については原子力規制庁が原則として行う審査会合を計40回開催しました。

 このほかに、原子力規制委員会は、原子炉等規制法等に基づき、加工施設、試験研究炉等原子炉施設、実用発電用原子炉施設、研究開発段階にある発電用原子炉施設、使用済燃料貯蔵施設、再処理施設、廃棄物埋設施設、廃棄物管理施設、核燃料物質使用施設及び核燃料物質等の工場又は事業所の外における廃棄・運搬等に関する必要な規制を行っています。また、原子力規制委員会では、原子力施設近傍に原子力規制事務所(全22か所)を設置し、原子力保安検査官等を配置しています。そして、現地駐在の原子力保安検査官を中心に、それぞれの原子力施設を対象に、定期的に保安規定の遵守状況等の検査を実施しているほか、発電用原子炉施設においては、発電用原子炉設置者が行う安全確保上重要な行為等に対する保安検査等を実施するとともに、日々の原子力施設の巡視、運転状況の聴取、定例試験への立会い等を行っています。

(3)原子力発電所敷地内破砕帯の調査

 旧原子力安全・保安院での検討において、発電所敷地内の破砕帯の追加調査が必要とされた6つの発電所について、関係学会から推薦を受けた有識者で構成する会合を開催し、現地調査と評価を実施しています。平成26年度においては、評価が終了した関西電力大飯発電所以外の5つのサイト(日本原子力発電敦賀発電所、東北電力東通原子力発電所、日本原子力研究開発機構高速増殖原型炉もんじゅ、関西電力美浜発電所及び北陸電力志賀原子力発電所)について、19回の評価会合等を実施しました。日本原子力発電敦賀発電所について、有識者会合は、評価書を取りまとめ、平成27年3月25日に原子力規制委員会に報告し終了しました。また、東北電力東通原子力発電所については、評価書を取りまとめ、平成27年3月25日に原子力規制委員会に報告し終了しました。

(4)放射性同位元素等による放射線障害の防止

 原子力規制委員会では、放射性同位元素等の放射線利用による放射線障害を防止するため、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和32年法律第167号)に基づき、許可使用者等について、放射性同位元素の使用、販売、賃貸、廃棄その他の取扱い、放射線発生装置の使用及び放射性汚染物の廃棄その他の取扱いに関する規制を行っています。平成26年度において、放射線同位元素等の使用について新規に39件の許可を厳正かつ適切に行いました。

(5)安全文化醸成への取組

 原子力規制委員会では、我が国全体としての安全文化の浸透とその基礎に立った安全性向上に関する取組の促進を図るため、1か月に1回程度の頻度で、原子力事業者の経営責任者と意見交換を行うこととしています。第1回の意見交換は、平成26年10月29日に九州電力株式会社の取締役社長と実施し、以降、四国電力株式会社、関西電力株式会社、北海道電力株式会社、東京電力株式会社及び中部電力株式会社の経営責任者との間で意見交換を行いました。

3 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取組の監視等

(1)中期的リスクの低減目標マップ

 東京電力福島第一原子力発電所は、事故発生当初の応急処置を次々と実施する状態から、廃炉に向けた計画的な取組を活動の中心にしうる状態に移行しつつあります。安全上の観点からの優先順位を明確にするとともに、完了した措置と更なる取組を要する措置が分かるようにすることを目的として、中期的リスクの低減目標マップ(平成27年2月版)が平成26年度第57回原子力規制委員会(平成27年2月18日)において決定されました。当該低減目標マップでは、優先的に解決すべき事項を抽出し、完了の見通しなどの時間軸を用いた整理が行われています。今後、当該低減目標マップを定期的に見直し、目標の達成状況の評価を行うこととしています。

(2)特定原子力施設に係る実施計画の認可・検査等

 原子力規制委員会は、施設の状況に応じた適切な方法による管理を行うため、平成24年に東京電力福島第一原子力発電所を「特定原子力施設」に指定するとともに、東京電力株式会社に当該発電用原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護のために措置を講ずべき事項を示しました。その後、措置を講ずべき事項に基づき策定した、「東京電力福島第一原子力発電所 特定原子力施設に係る実施計画」(以下「実施計画」という。)の認可申請を受理し、留意事項を示した上で平成25年にこれを認可しました。作業の進捗状況に応じ、平成26年度に38件の実施計画の変更を認可しました。主な実施計画の変更認可等は以下のとおりです。

[1]凍土方式遮水壁工事の一部認可について

 平成26年3月7日、建屋への地下水流入を抑制するための凍土方式遮水壁による対策に関する実施計画の変更認可申請が提出されました。同申請については、第19回から第23回までの特定原子力施設監視・評価検討会における議論を踏まえ、平成26年9月17日付けで認可を行いました。

[2]敷地境界における実効線量(評価値)の変更等の認可について

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の敷地境界における実効線量(評価値)が、平成25年4月以降1mSv/年未満を大幅に超過していることから、26年2月に実効線量(評価値)の制限を達成する時期の明確化等を含む実施計画の変更を東京電力株式会社に指示していました。上記を踏まえ、26年3月26日及び6月20日、東京電力株式会社は敷地境界における実効線量(評価値)を27年3月末までに2mSv/年未満、28年3月末までに1mSv/年未満とする方針等を含む実施計画の変更認可申請(平成25年12月18日付申請)の一部補正を提出しました。同申請については、平成26年度第14回原子力規制委員会(平成26年6月25日)においてこれを確認し、26年6月25日付けで認可しました。

 実施計画の遵守状況については、現地に駐在する保安検査官による日常的な巡視活動のほか、保安検査、使用前検査、溶接検査などにより、東京電力株式会社の取組を監視しています。

(3)事故の分析

 東京電力福島第一原子力発電所の事故についての継続的な分析は、原子力規制委員会の重要な所掌事務の1つであり、「東京電力福島第一原子力発電所における事故の分析に係る検討会」における議論、現地調査等を踏まえ、平成26年度第31回原子力規制委員会(平成26年10月8日)において、中間報告書を取りまとめました。中間報告書では、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(以下「国会事故調」という。)や東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会等の報告書において提起されている様々な課題、未解明事項などのうち、まずは、国会事故調報告書において、未解明問題として規制機関に対し実証的な調査が求められている事項(1号機原子炉建屋4階における出水や4号機原子炉建屋の水素爆発等の7項目)を対象に原子力規制委員会の見解を取りまとめました。今後も、中長期にわたる原子炉内の調査結果なども踏まえ、引き続き技術的な側面から調査を進めていくこととしています。

4 原子力規制等に関する技術・人材の基盤の構築

(1)原子炉等規制法に係る規制基準等の見直し

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、事故の教訓や最新の技術的知見、IAEA等の国際機関の定める規制基準を含む海外の規制動向を踏まえて、平成25年7月に発電用原子炉施設の新規制基準等を施行し、平成25年12月に再処理施設の新規制基準等を施行しました。これらの規制基準(解釈・ガイド等を含む)については最新の科学的・技術的知見等を踏まえて、継続的に改善することとしています。

 平成26年度においては、実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈の改正、実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則の解釈の改正など必要な見直しを実施しました。

(2)原子力安全研究の推進

 原子力規制委員会では、世界で最も高いレベルの原子力規制を実現するため、原子力安全を継続的に改善していくための課題に対応した安全研究を実現し、科学的・技術的知見を蓄積していくこととしています。

 このため、原子力規制委員会は、平成25年度第23回原子力規制委員会(平成25年9月25日)において、「原子力規制委員会における安全研究について」を取りまとめ、原子力規制委員会における安全研究として実施すべき研究分野を特定し、これに基づき、国内外の研究機関と連携した安全研究を実施しています。安全研究の成果として、平成26年度においては、規制基準、各種ガイド類並びに審査及び検査における判断のための技術的基礎・実験データ等を取りまとめた3件の「NRA技術報告」を公表するとともに、17件の論文投稿、47件の学会発表を行いました。

(3)人材の確保・専門性の向上

 実効ある規制事務を遂行するためには、原子力規制委員会の高度な専門的技術的判断を支える専門性を有する人材を確保するとともに、その専門性の更なる向上に継続的に取り組んでいくことが不可欠です。

 人材の確保については、新規採用に加えて行政職や研究職を対象とした実務経験者の採用を累次にわたり実施しました。

 また、専門性向上の取組として、職員の人材育成に係る基本理念や人材育成の施策の大半を明確にするため、平成26年度第14回原子力規制委員会(平成26年6月25日)において、「原子力規制委員会職員の人材育成の基本方針」を決定し、さらに、当該基本方針に定められた人材育成に係る施策の進め方として、「職員の人材育成に係る施策の進め方について」が、平成26年第22回原子力規制委員会(平成26年9月3日)において承認されました。当該基本方針等に基づき、職員の力量向上に向け、知識管理・技術伝承の取組や、研修用プラントシミュレータの開発・整備等を開始しました。また、職員向けに各種研修プログラムを設け、原子力規制に関する専門研修等を計画的に実施しました。

5 核セキュリティ対策の強化及び保障措置の着実な実施

(1)核セキュリティに係る取組

 核セキュリティにおける主要課題への対応に関しては、平成25年7月より、核セキュリティに関する検討会において、個人の信頼性確認制度、輸送時の核セキュリティ対策並びに放射線物質及び関連施設に係る核セキュリティといった個別課題の具体的検討を進めるため、それぞれの課題を取り扱うワーキンググループを開催して検討を行っています。

 核セキュリティ文化を醸成する取組として、原子力規制委員が、事業者経営層に対する直接の説明や面談を行い、核セキュリティ文化醸成活動への経営層の関与について意識の強化を図りました。また、原子力規制委員会の組織理念に基づき、原子力規制組織として原子力規制委員会における核セキュリティ文化の醸成、維持を図るための指針として「核セキュリティ文化に関する行動指針」を平成26年度第50回原子力規制委員会(平成27年1月14日)において決定しました。

 国際的要請への対応としては、平成26年1月、IAEAに対しIPPASミッションを受け入れる旨の正式要請を行い、26年6月30日、7月1日の公式事前準備会合を経て、27年2月16日から2月27日までの間、IPPASミッションを受け入れました。原子力規制委員会は、今後最終的に示される正式報告書の勧告事項や助言事項について、必要に応じ関係省庁と協議しつつ精査・検討し、既存の取組の継続的な改善の一環として適切な措置を講じることとしています。

 また、平成17年に採択された核物質の防護に関する条約の改正の締結のため、国内担保法である、放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律(放射線発散処罰法)の一部を改正する法律(平成26年法律第25号)が第186回国会で可決されました。さらに、我が国は、平成26年6月28日にIAEA本部において、核物質の防護に関する条約の改正の受諾書をIAEA事務局長に寄託しました。許認可等については、平成26年度において、核物質防護規定の変更の認可を56件、厳正かつ適切に行いました。また、独立行政法人日本原子力研究開発機構原子力科学研究所及び中部電力浜岡原子力発電所において核物質防護規定遵守義務違反が認められたため、それぞれ、平成26年9月12日及び27年1月30日に文書により厳重に注意するとともに、再発防止を求めました。

(2)保障措置に係る取組

 原子力規制委員会は、日・IAEA保障措置協定及び追加議定書に基づき、我が国の核物質が核兵器などに転用されていないことの確認をIAEAから受けるため、[1]原子力施設や大学などが保有する全ての核物質の在庫量等を取りまとめてIAEAに報告し、[2]その報告内容が正確かつ完全であることをIAEAが現場で確認をするための査察等への対応を行い、これらの活動を通じて国際社会における我が国の原子力の平和利用への信用の維持に努めています。なお、東京電力福島第一原子力発電所においても、廃炉作業の進捗に合わせた保障措置活動を行っています。

 また、平成26年6月20日にIAEAより公表された「2013年版保障措置声明」においても、我が国に対しては、平成16年以降継続して「全ての核物質が平和的利用の範囲にあると見なされる(拡大結論)」との評価がなされています。

6 原子力災害対策及び放射線モニタリングの充実

(1)原子力災害対策に係る取組

 平成24年9月19日の原子力規制委員会の設置に合わせ、原子力基本法(昭和30年法律第186号)、原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)等の関連法令が改正され、政府の新たな原子力災害対策の枠組みが構築されました。

 平成26年10月14日には、内閣府政策統括官(原子力防災担当)組織が発足し、これまで原子力規制庁が担うこととなっていた原子力災害対策本部の事務局は内閣府政策統括官(原子力防災担当)組織が担うこととなりました。現在の原子力防災体制については、図6-9-2のとおりとなっています。


図6-9-2 原子力防災体制

 また、原子力災害対策特別措置法では、原子力規制委員会は、事業者、国、地方自治体等による原子力災害対策の円滑な実施を確保するため、原子力災害対策指針を定めることとされています。このため、原子力規制委員会においては、平成24年10月に同指針を策定し、平成24年度に1度、平成25年度に2度の改定を行いました。また、平成26年10月以降は、原子力災害事前対策等に関する検討チームを開催し、同指針に挙げられた課題である東京電力福島第一原子力発電所に係る原子力災害対策、緊急防護措置を準備する区域(UPZ)外におけるプルーム通過時の防護措置実施の範囲及び判断基準について検討を行いました。検討結果を踏まえた指針の改定案について、平成27年3月に取りまとめ、パブリックコメントを実施しました。

(2)緊急時対応への取組

 原子力規制委員会は、原子力災害対策特別措置法に基づき実施される原子力事業者防災訓練について、平成25年度から、原子力事業者防災訓練報告会を開催し、当該訓練の評価を行っています。平成26年度の報告会においては、前年度に抽出された共通の課題への取組状況や今後の課題等について、原子力事業者と意見交換を行い、前年度よりも訓練が充実してきていることを確認しました。

 また、原子力規制庁として原子力事業者防災訓練に参加し、原子力規制庁緊急時対応センターと原子力施設事態即応センターとのより幅広い情報共有の在り方を追求するなど、緊急時対応能力の向上に向けて改善を図っています。原子力規制委員会としての危機管理に係る取組としては、平成26年10月14日の内閣府及び原子力規制委員会の組織改編に伴い、原子力規制委員会防災業務継続計画等を改正する等、必要な体制整備を行いました。また、宿日直簡易チェックリストの作成や実務研修の実施を通じて、原子力規制委員会初動対応マニュアルに基づく初動対応能力の維持向上に努めています。

 さらに、平成26年11月2日、11月3日に行われた、北陸電力志賀原子力発電所を対象とした、国、原子力事業者、地方公共団体等が一体となって実施する原子力総合防災訓練に、原子力規制委員会も関係省庁の1つとして参加しました。今回の訓練は、内閣府政策統括官(原子力防災担当)組織発足後初めての訓練であり、内閣府政策統括官(原子力防災担当)組織と原子力規制委員会との連携を確認しました。

(3)放射線モニタリングの充実

 原子力災害対策指針に基づく実効性のある緊急時モニタリングを行うために、原子力規制庁は、平成26年6月12日に「緊急時モニタリング計画作成要領」を、26年10月29日には、「緊急時モニタリングセンター設置要領」を作成しました。また、原子力規制委員会は、27年1月21日に「緊急時モニタリングに係る動員計画」を策定する等、緊急時モニタリング体制の充実・強化を行いました。さらに、原子力発電所周辺地域における緊急時モニタリング体制の充実・強化のため、地方放射線モニタリング対策官事務所を新たに茨城県、愛媛県、佐賀県、鹿児島県及び福井県大飯・高浜地域に設置しました。

 また、原子力規制委員会では、政府が定めた「総合モニタリング計画」(平成23年8月2日モニタリング調整会議決定、平成26年4月1日改定)に基づき、東京電力福島第一原子力発電所の事故に係るモニタリングとして、福島県全域の環境一般モニタリング、東京電力福島第一原子力発電所周辺海域及び東京湾のモニタリング、全国的な空間線量率のモニタリング等を実施し、解析結果を毎週、公表しています。平成26年11月には、IAEA環境研究所の専門家が来日し、原子力規制庁と共同で東京電力福島第一原子力発電所近海の海水を採取し、日本のデータの信頼性が高いことを確認しました。

 このほか、原子力発電施設等の周辺地域における放射線の影響及び全国の環境放射能水準を調査するため、全国47都道府県における環境放射能水準調査、原子力発電所等周辺海域(全16海域)における海水等の放射能分析、原子力発電施設等の立地・隣接道府県(24道府県)が実施する放射能調査等の支援を行いました。そのほか、地方公共団体のモニタリング従事者向け研修の実施や、米国原子力艦寄港に係る放射能調査を着実に実施しました。

(4)事故・故障等

 原子炉等規制法では、原子力事業者等に対し原子力施設等で発生した事故・故障等について原子力規制委員会に報告することを義務付けています。平成26年度に受けた報告は、原子力事業者等から6件、放射線同位元素等取扱事業者から2件でした。