環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策>第1章>第1節 地球温暖化対策に係る国際的枠組みの下での取組

平成27年度 環境の保全に関する施策
平成27年度 循環型社会の形成に関する施策
平成27年度 生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する施策

第1章 低炭素社会の構築

第1節 地球温暖化対策に係る国際的枠組みの下での取組

1 気候変動枠組条約に基づく取組

 2014年(平成26年)11月に公表された気候変動に関する政府間パネル(以下「IPCC」という。)第5次評価報告書統合報告書では、「工業化以前と比べた温暖化を2℃未満に制御する可能性が高い緩和経路は複数あり、これらの経路の場合には、今後数十年間にわたり大幅に温室効果ガスの排出を削減し、21世紀末までに排出をほぼゼロにすることを要するであろう」とされており、世界全体でより一層の排出削減を推進していくことが重要です。2015年(平成27年)12月に開催される気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21。以下、締約国会議を「COP」という。なお、本章における締約国会議(COP)は、気候変動枠組条約締約国会議を指す)においては、2020年(平成32年)以降の全ての国に適用される新たな法的枠組みに合意することとされています。COP20では、各国がCOP21に十分先立ち約束草案を示す際に提出する情報が特定され、全ての国が約束草案を提出できる状況が整うとともに、新たな枠組みの交渉テキスト作成に向けた議論が前進しました。我が国としては、COP21における新たな枠組みの合意に向け、引き続き議論に積極的に貢献するとともに、新たな枠組みが構築されるまでの間においてもカンクン合意の着実な実施に向けた取組、及び各国による排出削減の努力を促進していきます。また、2014年(平成26年)9月の国連気候サミットにおいて安倍総理から表明した、途上国支援、技術革新と普及及び新たな枠組みへの貢献の3つを柱とする貢献策に基づき、行動を続けていきます。

2 JCMの推進

 気候変動分野における国際的な貢献として、途上国への優れた低炭素技術等の普及や対策実施を通じ、実現した温室効果ガスの排出削減・吸収への我が国の貢献を定量的に評価し、我が国の削減目標の達成に活用する二国間オフセット・クレジット制度(以下「JCM」という。)を推進します。平成27年2月末時点で12か国(モンゴル、バングラデシュ、エチオピア、ケニア、モルディブ、ベトナム、ラオス、インドネシア、コスタリカ、パラオ、カンボジア、メキシコ)との間でJCMに係る二国間文書に署名しており、平成28年までにこれを16か国に増やすことを目指します。また、外務省、経済産業省、環境省等の関係省庁が連携し、制度の実施やクレジットの獲得を目指した補助事業及び低炭素技術の実証事業などを通じ、具体的な排出削減プロジェクトを実施します。さらに、途上国におけるプロジェクトの組成を目的とした実現可能性等調査や人材構築支援等を実施します。

3 気候変動枠組条約の究極的な目標の達成に資する科学的知見の収集等

 地球温暖化対策に不可欠な科学的知見の一層の発展を視野にIPCCの各種報告書の執筆に参加する専門家をサポートする等、IPCCの活動に対する人的、技術的、資金的な貢献を行うとともに、国別の温室効果ガス排出・吸収量を計算するための国際的に合意された方法論の開発・改善を行うIPCCの組織の一部であるインベントリ・タスクフォースの技術支援ユニット(1999年(平成11年)より公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)内に設置)をホスト国として引き続き支援します。

 また、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の2号機の開発により、温室効果ガスの多点観測データを提供し、気候変動の科学、地球環境の監視、気候変動関連施策に貢献します。

 さらに、環境研究総合推進費に関する取組としては、戦略プロジェクト「気候変動の緩和策と適応策の統合的戦略研究」を開始します。

4 関連する国際機関等の取組

 地球温暖化防止のため、今後の国際交渉の状況を注視しつつ、気候変動対策に取り組む意欲的な途上国に対する支援を実施することに加え、気候投資基金(CIF)や地球環境ファシリティ(GEF)等の多数国間基金を通じた貢献、コベネフィット・アプローチ等に基づく二国間・多国間の技術・資金協力の推進、国際民間航空機関(ICAO)及び国際海事機関(IMO)における国際航空分野及び国際海運分野からの温室効果ガス排出削減に関する検討、短寿命気候汚染物質削減のための気候と大気浄化のコアリション(CCAC)を通じたブラックカーボン等の短寿命気候汚染物質の削減の取組等を引き続き実施します。