環境保全上の支障を未然に防止するため、環境基本法第19条では、国は環境に影響を及ぼすと認められる施策の策定・実施に当たって、環境保全について配慮しなければならないと規定されており、上位の計画や政策段階の戦略的環境アセスメントについて我が国での導入に向けた検討を行いました。
環境影響評価法(平成9年法律第81号)は、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、埋立・干拓、土地区画整理事業等の開発事業のうち、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価の手続の実施を義務付けています。同法に基づき、平成27年3月末までに計355件の事業について手続が実施されました。そのうち、26年度においては、新たに34件の手続を開始、また、16件が手続完了し、環境配慮の徹底が図られました(表6-7-1)。
環境影響評価の信頼性の確保や評価技術の質の向上に資することを目的として、調査・予測等に係る技術手法の開発を推進するとともに、国・地方公共団体等の環境影響評価事例や制度及び技術の基礎的知識の情報等を集積し、インターネット等を活用して国民や地方公共団体等への情報支援を行いました。
特に、石炭火力発電所については「東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ(平成25年4月25日)」以降6件の配慮書が提出され、これらについて、同取りまとめを踏まえ、最新鋭の高効率技術が採用の有無や国の目標・計画との整合性などについて、環境影響評価手続を通じて審査しました。
火力発電所のリプレースや風力・地熱発電所の設置の事業に係る環境影響評価手続について、従来3~4年程度要していた期間を、火力発電所のリプレースについては最短1年強まで短縮、風力・地熱発電所の設置についてはおおむね半減させることを目指すこととしています。
これらについて、自治体の協力を得て、経済産業省と共に、運用上の取組により、対象となった案件の迅速化について、おおむね想定のとおりに国の審査期間の短縮を実現しました。また、風力・地熱発電所については、質の高い環境影響評価を効率的に実施できるよう、風況等から判断し風力発電等の適地と考えられる地域の環境情報(貴重な動植物の生息・生育状況等の情報)や環境影響評価に関連する技術情報の収集・整理を行い、これらの情報を「環境アセスメント環境基礎情報データベースシステム」(https://www2.env.go.jp/eiadb/(別ウィンドウ))を通じて公開しました。
環境影響評価法等個別環境法で規定されている放射性物質による環境汚染に係る適用除外規定を削除する、放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律(平成25年法律第60号)が第183回通常国会で成立しました。
これにより、環境影響評価法が改正され、放射性物質による環境の汚染を防止するため、環境影響評価手続の対象に放射性物質による環境への影響を含めることとなりました(平成27年6月1日施行)。このため、「環境影響評価の基本的事項等に関する技術検討委員会」を開催し、平成26年6月に報告書を取りまとめ、上記報告書の内容を踏まえ、平成26年6月27日に基本的事項を改正しました。同基本的事項を踏まえて、事業種毎の主務省令が順次改正されているところです。また、事業者が環境影響評価の際に参考とする、放射性物質に係る調査等の手法や環境保全措置の内容について、「環境影響評価技術ガイド(放射性物質)」として取りまとめました。
アジア地域においては、環境影響評価が適切に行われず、事業実施に伴い環境影響が生じている事例があります。また、アジア各国の環境影響評価は運用面、技術面の課題が共通であることもありますが、情報交流や課題共有等を行うネットワークが現状存在しません。こうした状況下、我が国の事業者がアジアに事業展開するに際し、環境影響に関する問題により、事業実施が円滑に行えない事例も生じています。このため、我が国企業の事業展開に着目してアジア各国の環境影響評価に係る制度、運用に関して情報の収集・整理を行いました。また、各国の有する共通課題を抽出、共有し、アジア地域内における協力を推進するため、アジア各国の政府関係者や専門家による国際ワークショップを開催しました。
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