環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成25年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第2章>第6節 科学的基盤を強化し、政策に結びつける取組

第6節 科学的基盤を強化し、政策に結びつける取組

(1)生物多様性の総合評価

 平成22年5月に公表した生物多様性総合評価(JBO)に引き続き、国土全体の生物多様性の状態や変化の状況を空間的に把握するため、生物多様性評価の地図化を行いました。作成した地図は、優先的に保全・再生を行うべき地域の抽出など国や地方公共団体の政策決定のための基礎資料や、生物多様性の現状を国民にわかりやすく伝えるためのツールとして活用していきます。このため、多様な主体が利用できるよう、HPで成果を公表するとともに、GISデータ等も提供できるよう準備を進めています。

(2)自然環境調査

 我が国では、全国的な観点から植生や野生動物の分布など自然環境の状況を面的に調査する自然環境保全基礎調査や、さまざまな生態系のタイプごとに自然環境の量的・質的な変化を定点で長期的に調査する重要生態系監視地域モニタリング推進事業(モニタリングサイト1000)等を通じて、全国の自然環境の現状及び変化状況を把握しています。

 自然環境保全基礎調査における植生調査では、詳細な現地調査に基づく植生データを収集整理した縮尺2万5千分の1植生図を作成しており、我が国の生物多様性の状況を示す重要な基礎情報となっています。平成24年度までに、全国の約64%に当たる地域の植生図の作成を完了しました。また、砂浜・泥浜の面積等の変化状況についても調査を実施しています。

 モニタリングサイト1000では、高山帯、森林・草原、里地里山、陸水域(湖沼及び湿原)、沿岸域(砂浜、磯、干潟、アマモ場、藻場及びサンゴ礁)、小島嶼の各生態系について、生態系タイプごとに定めた調査項目及び調査方法により、合計約1000か所の調査サイトにおいて、モニタリング調査を実施しており、平成24年度も引き続きモニタリングを実施しました。

(3)IPBESなど

 生物多様性に関する科学及び政策の連携の強化を目的とした「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」が平成24年4月に設立され、平成25年1月にドイツ・ボンで開催された第1回総会において、総会議長を始めとするビューローメンバー及び学際的専門家パネル(MEP)のメンバー、初年度予算案等が決定されました。我が国はIPBESの創設に向けた国際的な議論に積極的に参画するとともに、暫定事務局に対し概念的枠組みの構築の検討などに対して支援を行いました。

 地球規模での生物多様性保全に必要な科学的基盤の強化のため、アジア太平洋地域の生物多様性観測・モニタリングデータの収集・統合化などを推進する「アジア太平洋生物多様性観測ネットワーク(AP-BON)」への支援を行いました。また、東・東南アジア地域での生物多様性の保全と持続可能な利用のための生物多様性情報整備と分類学能力の向上を目的とする事業である「東・東南アジア生物多様性情報イニシアティブ(ESABII)」を推進しました。

(4)研究・技術開発など

 独立行政法人国立科学博物館において、「日本海周辺域の地球表層と生物相構造の解析」、「生物多様性ホットスポットの特定と形成に関する研究」などの調査研究を推進するとともに、約408万点の登録標本を保管し、これらの情報をインターネットで広く公開しました。また、GBIF(地球規模生物多様性情報機構)の活動を支援するとともに、GBIF日本ノード(データ提供拠点)である国立科学博物館及び国立遺伝学研究所と連携しながら、生物多様性情報を同機構に提供しました。