第2回「森里川海大好き!読本(仮称)《編集委員会 開催結果報告》

開催日時

  平成29年2月3日(金) 9:30~12:30

開催場所

  島根県立吉賀高等学校 図書室

出席委員

  養老孟司たけし委員長、 天野礼子委員、 内山たかし委員、 小林朋道委員、 竹内典之みちゆき委員、 田中まさる委員、 辻英之委員

主な発言

 1.読本のターゲットや仕様等に関する論点
 (1)ターゲットについて
 ①子ども向け
  • 園児から小学生、中学生、高校生、大学生を連れて森に行って感じたのは、実はレベルにほとんど差がないこと。レベルに差があるわけではなく表現方法だけだと思う。(竹内委員)
  • 学校の先生と総合学習について話をすると、こういうテーマは5年生ぐらいで扱うことが適切ではないかという意見をもらう。背景としては、社会科の教科書の中に『森は海の恋人』など森里川海のつながりについて習うということがある。(田中委員)
  • 本当の意味の海洋教育というのは、いのちの源である水を循環させる森と海とのつながりも含めたものであるべき。森里川海のつながりを海洋教育とリンクさせながら広げていくと、広がる可能性がある気がする。(田中委員)
  • 社会的な学びの適齢期は、やはり3年から6年ぐらいかと思う。自分のことは自分で決められるようになる年齢でもある。(辻委員)
  •  ②大人向け
  • 小学校5年生が理解できるようにつくれば、大人と兼用できる。いろんなものをつくらず、それは大人も当然読めますよねというもので良いと思う。(天野委員)
  • 教師、保護者、教育関係者等が対象ということで異論はない。(事務局)

  •  (2)仕様について 
  • 絵本的なものは、子どもに読み聞かせることで大人も混ざることになる。そこで考えたり、声を出して読んでみることで、大人もなるほどと思ったりする。一つの教材をみんなが共有できるようなものがあれば、それがいちばんよいのではないか。(辻委員)
  • クリアファイルはみんな持っているし目に飛び込むという。そういうものを、読本との2本立てで配るのもよい方法だと思う。(天野委員)
  • 子ども向けの絵本や、学校の先生のための解説のようなもの(ティーチャーズガイド)を、読本とは別に用意するというのはあるかもしれない。(事務局)

  • 今は漫画の学部を持つ大学もあり、若い人が乗ってくれる可能性がある。(養老委員長)
  • 若い人の登龍門になるようなコンペなりをやるのはおもしろい。今回の読本をどんな形態にするかという議論とは別に、漫画も表現の可能性として残したい。(田中委員)
  • 漫画は読本とは別に考えて、お金も別途集めてやったらどうだろうか。それを公募でやるのも良いだろう。クラウドファンディングという方法もある。(事務局)
  • 日本語は縦書きのほうが読みやすい。日本語は縦書きで、ほとんどの本がいまだに縦書きで出ている。(養老委員長)
  • 記憶に残る本というのは、どれもボロボロになるまで持っていたというイメージがある。昆虫の図鑑、地図、体の秘密の図解みたいなもので、友達と何回も見て「これ何だっけ」ってワイワイやる。何度もアクセスできるものが良いのではないか。(辻委員)
  • 本というのはもともと多面的なもので、読む方もいろいろな形で情報を読みとく。普通の本でいったらコラムは図鑑に当たるわけで、そのコラムは、写真だったり、絵だったり、地図だったり、こぼれ話だったりする。(内山委員)
  •  (3)全体のボリュームについて
  • 読むのに必要な時間が5分とか10分にこだわる必要はない。なぜなら読む人は、5分で読むときは5分で読む。例えば写真集は飛ばして読む人もいるし、写真をじっと見て3時間かけて読む人もいる。そういうものなので時間についての心配は必要ない。(内山委員)
  •  
     (4)届け方について
     ①紙による配布について
     文部科学省ルート
  • 文部科学省の協力が得られれば学校に届けられる。授業で年に1回でも良いから取り上げてもらいたい。総合的な学習の時間に「今日はこれで勉強してみよう」と先生が言ってくれると良い。(天野委員)

  •  自治体ルート
  • 森里川海に賛同する自治体のネットワークが出来つつあると伺ったので、非常に良いと思った。一部の人だけでなく、全国民的あるいは全子どもたちに流行る方法をどうやって編み出せるか。予算をきちんと担保して、全員に配れる体制を取っていけると良い。(天野委員)

  •  企業の協力も得られないか(より多くの子どもに継続的に配布するための製作費として)
  • いろんな企業に、次世代の子どものために読本を配る運動に協力してほしいと寄付をお願いしてみるのはどうか。(内山委員)
  • 無料配布されるものはありがたみが無いので、そこの工夫が必要。(養老委員長)
  • 経団連、あるいは日本の地方銀行と都市銀行も一緒になって協力してくれたら良い。(天野委員)

  •  ②サイトやSNSによる発信について
  • まずは印刷物として製作し、サイトやSNSでの情報発信は継続して検討。(事務局)
  •  
     2.「読本」の内容に関する論点
     (1)編集方針(内容のイメージ)
  • 学生に「自然をどう捉えているか」と聞くと、大体公園の低灌木ぐらいのイメージ。その次は、アルプスというイメージになってしまう。間をつなげている里山等の自然というものは全くイメージからぬけている。そういうギャップを埋めるものにしたい。(辻委員)
  • 大人の理論をおしつけるのでなく、小さい子の感性にどう響かせるかが大事。子ども目線というのは意外に難しい。描き手は大人の子どもを探さないといけない。そういう人でないと上から目線になってしまう。(養老委員長)
  • 単に自然への回帰というだけではなく、循環系としての地球とか、生命系の地球として見た場合に、それらがつながっていることを可視化してイメージし易くさせる。直近の経済的価値として評価されない“縁の下の力持ち”的仕組みや生きものがいっぱい存在すること、それらを切り捨ててきたところに今の社会が抱える問題がある。多様な「つながり」がキーワードであることを、この読本を読んで感じてもらうのが大事。(田中委員)
  • 子どもたちに考えてもらうことは二つあり「本当はこういう形で生命系はできている」という話と「今は残念ながら、そうなっていない」ということ。そのバランスをどうするのか。どぎついことを書く必要はないが、後者の問題が全く出てこないのは不自然。(内山委員)
  • 読んだら川に飛び込みたくなるとか、一つでも何か自然体験をしたくなる、そういう要素があると良い。(事務局)
  • 社会の変わり目あたりに時間軸を置いて書き込んでいく手もあるということ。そうすると、色々なことの反省を迫ることになる。(内山委員)
  • 自然と切れてしまった人間が、自然とつながっていた時代を見ることができる、つながりの有機性を感じられるように書くということだと思う。(事務局)

  •  (2)構成と執筆者
  • 森里川海の四つのテーマで、1人の写真家の写真でずっとやってみる方法もある。(天野委員)
  • 『里山資本主義』というタイトルの一番新しい本の表紙に、里山や森の中で子どもが生き生きと動いている様子の絵をスタジオジブリの一員が描いている。あのような絵で話を作っていくのはどうか。(天野委員)
  • 子どもたちの気持ちを引き込む読み物となると、文章自体に統一性がなければいけないので、編集委員は意見を言うくらいは良いが、執筆にも分担して関わるのは適していない。(内山委員)

  •  (3)ストーリーについて
  • 「人間と人間以外の動物の違いは何だ」みたいな話が前文にあって、その次に森里川海の話が来る。(天野委員)

  • 森と川と海をつなぐ、一生の間にそういうところを行ったり来たりする生き物、その生き物の生き方をたどりながら、子どもたちが旅人として、森から海までずっとたどるようなストーリーも考えられる。(田中委員)
  • 「ダムがありました、これ以上のぼれません」という話にしなくたっていいわけで、少し前の時代を設定するなど、はっきり書かなくてもよい方法があるはず。むしろ大事なのは、森と川と海と里の暮らしみたいなものが有機的かつ密接につながっていた時代のことを情景としてありありと見せること。それがわかれば、多分子どもたちだって「今の川、こんなきれいになってないよね」というのは分かるのではないか。(内山委員)
  • 時代を設定するとすれば、やはり川にダムができる前だろう。明治の20年ぐらいまでという感じ。川にダムができる前というのは、ことダムの問題ではなく、日本の社会が自然とのつながりを守りながら生きていた時代の象徴。(内山委員)
  • 自然と人間が一番うまく有機的につながっているような時代のイメージ。それを大体つくっておく。もちろん、誰が主人公で、子どもがウナギの背中に乗る設定というようなことも決めておく必要があるが、むしろ人間たちが自然とどんなふうに生きてきたのかというコンテンツを出しておくことが大事。(内山委員)
  • 人と森の関わりを書くとき、単に山菜やキノコを採って暮らしていましたという話ではなく、どこまでつながりの深みを表現できるか。(内山委員)
  • 時代設定は明治でもよいし、都会に住んでいる孫がおじいさんに何か田舎で教わるというようなパターンでも良いが、忘れられていたものを取り戻すというストーリーが良いと思う。忘れていたものは、森里川海がつながっていたということだった。これを追求していくのを編集方針にしようという感じの要素を五つぐらい立ててみてはどうか。(天野委員)
  • 山形の庄内平野では水が出羽三山の方から来ているので、いつも霊山を仰ぎ見ながら農耕をやっていた。自分たちが出羽三山から出てきている水のおかげで暮らし、世界をつくっているということを知っていた。こういう話はいろんな地域にあると思う。コラムでこなしていくとしても、本筋にもそういうことを少し含んでいく必要もある。(内山委員)
  • 山形の庄内平野では水が出羽三山の方から来ているので、いつも霊山を仰ぎ見ながら農耕をやっていた。自分たちが出羽三山から出てきている水のおかげで暮らし、世界をつくっているということを知っていた。こういう話はいろんな地域にあると思う。コラムでこなしていくとしても、本筋にもそういうことを少し含んでいく必要もある。(内山委員)
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     (4)主人公について
  • ネガティブなことを正面から人間が語ったり問いかけると拒否反応が出がち。だから、生き物に語ってもらう。(田中委員)
  • 一番わかりやすいのは、ウナギみたいに海と川とを行き来する生きもの。ウナギとサケ(と子供)の「対話」も面白い(田中委員)
  • 読んだ子どもが、森里川海で遊びたいと思えるワクワクするものという点で考えると、子どもも主人公として登場させた方がよいのではないか。3年生から5年生ぐらいの想定で。ウナギがよいのかヤマメがよいのかわからないが、生き物の背中に子どもを乗っけて会話をさせる。海から川、里、森へ行って、子どもの目線でその楽しさや学んだことを表現する。それを読んだ現実の子どもが「自分も行って、こんな楽しいことがしたい」と思えるような話の展開。(事務局)

  • ファシリテーター(進行役)によるまとめ

    1.読本のターゲットや仕様等について
    (1)ターゲットについて
    ①子ども向け
     小学5年生程度が読んで理解できる内容とする。
    ②大人向け
     子ども向けと兼用。教師、保護者、教育関係者が対象。

    (2)仕様について
    ①子ども向け
     大きな方向として、読み物的な要素と、イラストや写真が入った図鑑や地図のような要素が入った冊子。「何度も読めるような」というキーワードも。日本語は縦組みにした方や読みやすいという意見もあり。
    ②大人向け
     学校での活用を想定して、子ども向け読本のガイド的な内容の冊子にしたらどうか。

    (3)全体のボリュームについて
     読本は数十ページ(50-100ページ)で、文章、イラストや写真などで構成する読み物とする。

    (4)届け方について
    ①紙による配布について
     学校での活用を目指した「文科省ルート」、森里川海への関心が高い市町村での活用を目指した「自治体ルート」が想定される。配布用媒体の作成に当たっては、企業の協力を得たらどうかという意見も。
    ②サイトやSNSによる発信について
     まずは印刷物として製作し、サイトやSNSでの情報発信は継続して検討。

    2.「読本」の内容に関して
    (1)編集方針
  • 森里川海がつながり連なっていることを思い出し取り戻すことを基本の編集方針として、そこから編集方針を五つぐらい立てたらどうか。
  • 本来はこうつながっていることを伝えたいが、現実にはつながってない場所がある。これをどう扱うか意識しておかなくてはいけない。ただ、誰かが気まずい思いをする本にしては広められない。

  • (2)構成と執筆者
  • 読み物だけれども、写真、イラスト、いろんなコラムがいっぱい上にも下にもあるイメージ。文字が5割、写真とイラストが5割で、コラムもいっぱい入って賑やかに。コラムも文章でなくてイラストや写真だったりという構成。
  • 本筋は誰か一人がまとめて、コラムとなるようなトピックを編集委員の皆さんからご提供いただいたらどうか。

  • (3)ストーリー
  • 森里川海のつながりを表現するには、そこを行き来する生き物の視点を通したストーリーとしてはどうか。
  • 背景についてはダムができる以前の明治20年ごろまで(社会と自然がつながっていた時代)という数字も出た。ある時期の日本のある地域、ある川を想定した方がつくりやすい。ただし特定の場所の話にならないように。

  • (4)主人公
      子ども、あるいは、生き物を主人公にしながら、人、自然のそれぞれとのつながり、自然と人間との関わりがわかるようなつくりにしたらどうか。

    当日配布資料

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