環境省
VOLUME.73
2019年10・11月号

課題解決ストーリー エコ・サクセス

エコに取り組み、目標を達成した
サクセスストーリーを紹介します

Vol.09 NPO法人おてらおやつクラブ

深刻な社会問題となっている子どもの貧困。
おてらおやつクラブは、お寺の「おそなえ」を経済的に困難な状況にある子どもたちに「おすそわけ」として届ける活動に取り組んでいます。

【課題】子どもの貧困をなくすためにできることはないか…

START!
きっかけは痛ましい事件

 おてらおやつクラブの仕組みは、全国のお寺におそなえとして集まった食品や日用品を、子ども食堂や児童養護施設などの団体を通じて、経済的に困難を抱える家庭に届けるというもの。2013年に大阪で起きた母子餓死事件に衝撃を受けた安養寺(奈良県)住職の松島靖朗さんが、子どもの貧困問題をなくしたいと立ち上がり、2014年におてらおやつクラブを発足させた。

START!

おてらおやつクラブの活動が始まった安養寺。住職の松島さんが始めた活動が、全国各地のお寺へ広がっている

PROCESS
“見えない貧困”への理解を広げる

 現代の日本における貧困の多くは「相対的貧困」と呼ばれ、一見しただけでは気付かれにくいという課題がある。活動を広げようと各地のお寺で行った説明会では、こうした“見えない貧困”を認識してもらうことから始める必要があったという。また、お寺によっては「おすそわけ」の活動が難しいケースもあり、募金箱の設置など、協力する方法の幅も広げていった。

※ その国の平均的な生活に比べて困窮した状態のこと。衣食住に事欠く「絶対的貧困」とは異なる

PROCESS

「おすそわけ」に添える送付状には、手書きのメッセージも。活動では心のつながりを感じてもらうことも大切にしている

GOAL!!!
モノだけではなく、思いも届ける

 参加する寺院は年々増え、2019年8月現在で1,287を数える。「おすそわけ」が届いた子どもは、月に延べ1万人。2018年にはグッドライフアワード環境大臣賞優秀賞も受賞した。しかし、広報担当の野田芳樹さんは「まだ活動は始まったばかり。全国には約7万のお寺があるため、より多くのお寺に参加してほしいと考えています」と語る。

 活動の広がりは、お寺だけではない。例えば、野田さんが副住職を務める林昌寺(愛知県)では、「おすそわけ」を箱詰めする発送会に、林昌寺を訪れたことがなかった地域住民もボランティアで参加しているそう。おそなえ、寄付、ボランティアなど、さまざまな形で関わる人が増えていることも、活動の力になっている。
「モノを届けるだけではなく、おそなえをしてくださった方やボランティアの方など、関わる人の思いも届く支援でありたい」と野田さん。これからも活動の裾野を広げ、子どもの貧困の解決に向けて地道に活動を続けていく。

GOAL!!! 月に延べ1万人の子どもたちに「おすそわけ」を届けています

林昌寺での発送会には、地域の住民が親子や友人同士で誘い合って参加しているそう。「活動によって、お寺と地域の方に新しいご縁が生まれていることもうれしいです」(野田さん)

SUCCESS HINT!

すでにあるものの価値を見つめ直す

おてらおやつクラブは、昔からお寺にあるおそなえの文化と社会課題を上手に組み合わせた、「お寺の“ある”と社会の“ない”を結ぶ」活動。「自分たちがすでに持っているモノ、習慣、文化などの価値を再発見して使うことが、無理なく続けるポイントかもしれません」(野田さん)

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