2030年度までに、温室効果ガス26%削減(2013年度比)という目標を掲げた日本。目標の実現には、企業やNPOなど、あらゆる主体の協力が欠かせません。
ここでは、さまざまな企業・NPO・学校等が描く未来と、それを実現するための取り組みを紹介します。
天気予報専門メディア「tenki.jp」などを運営する日本気象協会。2014年から、商品の製造・流通・販売を効率化するために気象データを活かすプロジェクトに乗り出している。気象情報やPOSデータなどのビッグデータを解析し、食品ロスや不要に発生するCO2の削減を目指すという取り組みだ。
▲ さまざまな業態に影響を及ぼす「気象」の予測情報を活用し、商品需要予測を行う
「将来を予測する手段」として気象を経済に活かす
日本気象協会では、2014年から「天気予報で物流を変える取り組み」を行ってきた。現在、「商品需要予測プロジェクト」を担当している吉開朋弘さんは、その狙いについてこう語る。
「気象予測の精度は、この15年で30%も向上しています。一方、世界の全産業の3分の1は、何らかの形で気象リスクを抱えていると言われています。そこで気象という『将来を物理的に予測する有効な手段』を経済に活かせないか、と考えたのです」
2015年度の実証実験では、プロジェクト参加企業の相模屋食料(株)と協同で豆腐の需要量を予測した。当日から4日後までの天気・気温から需要量を予測する「よせ豆腐指数」を独自に算出。予測に基づいて工場のオペレーションを変更したことで、導入前と比べて「需要予測の誤差を30%削減」を実現した。
記者発表会で取り組みについて説明
▲ 商品需要予測の情報提供サービスについての記者発表会の様子。「物流」を変えるため、1社1社の賛同を呼びかけて、参画する企業を増やしていく
「気象」を軸に、企業・業界どうしをつなげる役割を担う
2017年からは、この「商品需要予測コンサルティングサービス」を事業化。気象予測データとPOSデータ(販売データ)などのビッグデータをもとに、人工知能を用いた解析を加えることで、顧客である企業・団体の課題にリアルタイムで応える商品需要予測を提供している。
さらに、「天気予報で物流を変える取り組み」に参画している企業であることを示す「eco×ロジ」マークを制定し、参画企業の拡大を目指している。
吉開さんは、「メーカーと卸売業者、小売店が気象情報を用いて連携することができれば、サプライチェーンのさらなる効率化が期待できます。今後は気象データを軸として、企業どうし、業界どうしをつなげる“ハブ”の役割を、私たちが担っていきたいですね」と意気込みを語った。
「eco×ロジ」マークがスタート
▲ 「天気予報で物流を変える取り組み」に賛同している企業・団体が、自社商品などに表示し「商品需要予測情報をもとに生産、配送、在庫管理などを行っている」企業であることを示すマーク
ペットボトルコーヒー輸送(ネスレ日本)の事例。海外の気象機関のデータをもとに、2週間先までの気象予測を作成。暑くなることが予想されるときには事前に多めに配送するといった工夫によって、トラック輸送から海上輸送へのモーダルシフトを支援。結果として年間54%のCO2削減に貢献した。