環境省
VOLUME.59
2017年6・7月号

笑顔をつくる人たち

福島がもっと元気になれるよう、地元の方々を笑顔にする活動をしている人がいます。酪農場とよりあい処、形の違う2つの場所からあふれる、笑顔の源を紹介します。

1頭の乳牛から始まり、現在では約30頭の牛を飼育する

1頭の乳牛から始まり、現在では約30頭の牛を飼育する

1.佐々木光洋さん@ささき牛乳(福島市佐原地区)/震災を乗り越え、つくり手の顔が見える牛乳を届け続ける

福島市佐原地区で牧場と牛乳製造を営む「ささき牛乳」。震災後、しばらく県内産の牧草や飼料が使えず困難を強いられましたが、安全性が確保され、再び新鮮な牛乳を届けられるようになりました。牛たちとともに震災を乗り越え、新たな一歩を踏み出しています。

 福島市西部に位置する佐原地区で、牛乳の製造販売を手がける「ささき牛乳」。1960年、一頭の乳牛から「ささき牧場」として酪農を開始し、「自分で搾った牛乳を自分の手で直接お客さまに届けたい」との思いで1987年から牛乳の製造販売も行うようになった。
「市販の牛乳は120℃から130℃で2秒間殺菌するのが一般的ですが、うちの場合、63℃で約30分という低温殺菌が特徴です。こうすることで、搾りたての牛乳に近いすっきりとした味になるんです」。そう語るのは二代目社長の佐々木光洋さん。

 「美味しい、安全、手頃な価格」をモットーに宅配を中心に牛乳販売を行ってきたが、2011年3月の震災で、最も大切にしてきた「安全」が損なわれた。ささき牛乳のある佐原地区では放射線の線量は比較的低かったものの、福島県からの通達で県産の牧草の使用は自粛。佐々木さんは、牧草などを北海道から取り寄せ、飼料も輸入品に頼りながら乗り切ったという。
「震災後1カ月は牛乳の出荷も止められてしまいましたが、牛は搾乳をやめると炎症を起こしてしまうため、乳を搾っては畑に捨てる日々。酪農家として本当につらかった」と当時の心境を語る。

 ささき牛乳のホームページでは、震災の2カ月後から、定期的に放射性物質の検査結果を公開。震災直後から、牧草や飼料、水などはいずれも基準値以下になっている。「汚染された餌を与えなければ搾った牛乳も安全だということが分かったので、自信をもってお客さまに届けることができるようになりました」。

 2016年には、光洋さんの姉・純さんが牧場の隣に「ささき牧場カフェ」を開設。震災前からカフェの構想はあったというが、「震災をきっかけに、作り手の顔が見える飲み物や食べ物がより求められている」と実感したそうだ。牛乳のおいしさをそのまま生かしたソフトクリームが人気となり、遠方から車で買い求める人も少なくない。ささき牛乳は震災を乗り越え、新たな一歩を踏み出している。

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1_900mlの瓶に詰められた牛乳は主に福島市、伊達市に宅配される 2_ 搾りたての生乳は風味を損なわないよう低温殺菌される 3_搾りたての牛乳を使ったソフトクリームは自然な甘さが特徴 4_2016年、牧場内にオープンした「ささき牧場カフェ」

MESSAGE

震災では大きなダメージを受けましたが、後ろばかりを見ているわけにはいきません。これを機に、夢だったカフェを開設することもできました。自然の恵みをそのまま詰め込んだ牛乳やソフトクリームを安心して味わってほしいですね。

INFORMATION

ささき牧場

住所: 福島県福島市佐原字入左原50-1
TEL: 024-593-2811
URLhttp://www.geocities.jp/i_cot_erikun/about.html

写真/石原敦志

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