森林内の放射性セシウムは、事故後最初の1年である2011年から2012年までにかけて、葉、枝、落葉層の放射性セシウムの分布割合が大幅に低下し、土壌の分布割合が大きく上昇しました。これは、樹木の枝葉等に付着した放射性セシウムが、落葉したり、雨で洗い流されたりして地面の落葉層に移動し、さらに落葉層が分解され土壌に移動したためと考えられます。その後も放射性セシウムの土壌への分布割合はさらに増えており、2023年度現在、森林内の放射性セシウムの90%以上が土壌・落葉層に分布し、その大部分は土壌の表層0~5cmに存在しています。
葉、枝及び樹皮の放射性セシウム濃度は、2011年度の調査開始以来、全体として低下傾向が続いています。落葉層の濃度は、いずれの調査地でも、2011年度以降2023年度にかけて、9割以上低下しました。土壌については、表層土壌(0~5cm深さまで) の濃度が土壌の中では最も高く、濃度の上昇と低下が混在し、明瞭な傾向は見られません。
一方、森林全体の放射性セシウム蓄積量では、明瞭な変化は見られませんでした。チョルノービリの調査等から、放射性セシウムは森林生態系に留まり、その一部は内部循環するといわれていますが、森林全体の放射性セシウムの蓄積量の経年変化が少ないことと土壌表層付近に溜まっていることから、森林外への流出量が少ないとまず考えられます。また、さらに、事故から時間が経っても木材中の放射性セシウム濃度の変化が小さいこと、樹木が根を通じて土壌から放射性セシウムを吸収することも明らかになっています。
(関連ページ:上巻P186「森林中の分布」)
本資料への収録日:2016年1月18日
改訂日:2025年3月31日
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