ALPS処理水の処分に関して、日本政府は国際原子力機関(IAEA)の国際安全基準に準拠して安全かつ透明性の高い方法でALPS処理水の放出を実施できるように、IAEAに対してALPS処理水の放出に関する計画や活動をレビューするよう支援を要請しています。IAEAは日本からの要請を受け入れて、今後数十年にわたるALPS処理水の放出がIAEAの国際安全基準に適合して行われているかどうかの技術的なレビューを実施します。安全性に関する主要な要素を十分に確保するために、以下の主要な3つの項目で構成されます。
1. ALPS処理水の性状や放出計画などについて、「安全性」の面に特化して集中的に評価する。
2. 安全規制をおこなう主体である「原子力規制委員会」の対応を確認する。
3. ALPS処理水と環境中の放射性物質のモニタリングを独立した立場において実施することで、日本の公表データを裏付ける。
IAEAは、2022年2月から2023年6月まで複数回のレビューミッションを実施し、進捗報告を目的とした報告書を公表してきました。タスクフォースからの指摘事項に基づき、東京電力は実施計画や人及び環境への放射線影響評価報告書を見直し、内容の一層の充実を図りました。
2023年7月に包括報告書を公表し、その中でALPS処理水の海洋放出は「国際安全基準に合致している」、「人及び環境に対する放射線影響は無視できる程度」との結論を述べています(下巻P22「『ALPS処理水』の安全性に関するIAEA包括報告書」)。包括報告書では、
・ 東京電力福島第一原子力発電所での活動を継続し、放出に関するデータをリアルタイムで国際社会に提供していく。
・ 追加のレビューやモニタリングを継続し、国際社会に透明性と安心を提供する。
と言及されており、今まで実施してきた放出前のレビューだけではなく、放出中・放出後についても長年にわたってALPS処理水の海洋放出の安全性確保にコミットするとしています。
また、2024年1月にはALPS処理水放出後初となる日本へのレビューに関する報告書を公表しました。その中で、
・ レビューや観察において、 関連する国際安全基準の要求事項と合致しないいかなる点も確認されなかった。
・ ALPS処理水の放出を安全に監視するための強固な規制インフラが整備されており、また原子力規制委員会の現場での存在とその活動を直接みることができた。
・ 機器及び設備が実施計画及び関連する国際安全基準に合致した方法で設置され、運用されていることを確認した。
・ 東京電力福島第一原子力発電所の全体的な廃炉措置の一環として、ALPS処理水放出における防護の最適化を今後更に進める必要があるというIAEAの包括報告書の所見を改めて強調した。ただし、ALPS処理水放出から間もない時期であるため、防護の最適化には更なる時間と運用経験が必要である。
と言及しています。
IAEAによる報告書は以下のウェブサイトで公開されています。
IAEA Fukushima Daiichi ALPS Treated Water Discharge - Reports
https://www.iaea.org/topics/response/fukushima-daiichi-nuclear-accident/fukushima-daiichi-alps-treated-water-discharge/reports
(出典)
・ 経済産業省「IAEAがALPS処理水海洋放出の安全性を確認」(2023年)、 https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/shirou_alps/reports/02/
・ 経済産業省「IAEAは2月に行われた東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水の安全性に関するレビューについて報告書を公表しました」(2022年4月) https://www.meti.go.jp/press/2022/04/20220429002/20220429002.html
に基づき作成
本資料への収録日:2024年3月31日
改訂日:2025年3月31日
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