原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、被ばく線量評価に基づいて、公衆の健康影響について、上表のように評価しました。
また、個別のがんや疾患のリスクに関する評価は次のとおりです。
・ 甲状腺がん:線量のほとんどは、放射線被ばくによる甲状腺がんの過剰発生率を確認できないレベルであったが、その中で上限に近い甲状腺吸収線量では、十分に大きな集団において、甲状腺がんの発生率上昇が観察される可能性がある。しかし、東京電力福島第一原子力発電所事故後の甲状腺吸収線量が、チョルノービリ原発事故後の線量よりも大幅に低いため、福島県でチョルノービリ原発事故後のように多数の放射線誘発性甲状腺がんを発生させるというように考える必要はない。
・ 白血病:胎児及び幼少期、小児期に被ばくした人の白血病のリスクを検討した。当該集団でのかかる疾患の発生率が識別可能なレベルで上昇するとは予測していない。
・ 乳がん:若年期に被ばくした人の乳がんのリスクを検討した。当該集団でのかかる疾患の発生率が識別可能なレベルで上昇するとは予測していない。
・ 妊娠中の被ばく:自然流産、流産、周産期死亡率、先天的な影響、又は認知障害が増加するとは予測していない。さらに、東京電力福島第一原子力発電所事故で被ばくした人の子孫に遺伝的な疾患が増加することも予測していない。
UNSCEARは、東京電力福島第一原子力発電所事故からの放射性物質による公衆の被ばく線量評価は、不十分な知識と情報に基づいて一定の仮定を前提として行われており、その結果には不確かさが含まれていると評価しています。
【報告書記載箇所】
・ UNSCEAR2013年報告書(科学的附属書A, 日本語版P82~83, 第220項及び第222~224項から作成)
本資料への収録日:2015年3月31日
改訂日:2024年3月31日