トリチウムは、水素の放射性同位体(半減期は約12.3年)で、弱い放射線(ベータ線)を出しています(上巻P79「トリチウムの性質」)。
自然界では宇宙線等により地球上で年間約7京(7×1016)Bq 程度のトリチウムが生成されています。また、過去の核実験(1945~1963年)により、トリチウムが1.8~2.4×1020Bq放出されました。このほか全世界の原子力発電所等の施設からも日常的にトリチウムが排出されており、全世界の原子力発電所からの年間放出量は2×1016Bq、事故前の日本全国からの原子力発電所からの排出量は年間380×1012Bq(海洋排出、事故前5年平均)でした。環境中のトリチウムの平衡存在量(生成と壊変1が平衡に達している状態での存在量)は1~1.3×1018Bq、核実験由来や原子力施設等から放出されたトリチウムの現在の存在量は約1×1019Bqと推定されています。放出されるトリチウムの量は水分子を構成する水素として存在するものが多く、大気中の水蒸気、雨水、海水、水道水にも含まれています。日本における降水中のトリチウム量を試算すると、年間約223×1012Bqとなります。
1. 放射性核種が放射線を出して異なる核種へ変化すること(上巻P10「親核種・娘核種」)。壊変によってトリチウムはヘリウムに変化する。
本資料への収録日:2021年3月31日
改訂日:2024年3月31日