子どもの健康と環境に関する全国調査

調査の成果

令和7年度

NIBN×環境省連携シンポジウム「エコチル調査の可能性 ~国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所とエコチル調査の連携で築き上げる未来」

2026年3月11日(水)、大阪の国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBN)にて、NIBN×環境省連携シンポジウム「エコチル調査の可能性 ~国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所とエコチル調査の連携で築き上げる未来」を開催しました。NIBN研究者、エコチル調査関係者が現地・オンライン合わせて約200名参加して行われました。
NIBNの研究者とエコチル調査の担当者や研究者の間で将来の協働に向けた意見交換が行われました。

日 時 令和8年3月11日(水) 15:00~17:00
場 所 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
彩都 1階 大会議室(Webexによる配信とのハイブリッド開催)





 

プログラム

 ご挨拶

 ・NIBN 理事長 中村 祐輔
 ・環境省 大臣官房環境保健部 化学物質安全課 環境リスク評価室長 市村 崇

講演(90分)

[環境省・調査班より]

NIBN×エコチル調査の連携で築き上げる未来~エコチル調査の概要と広報戦略~
 ・環境省 大臣官房環境保健部 化学物質安全課 環境リスク評価室長 市村 崇
 ・環境省 大臣官房環境保健部 化学物質安全課 環境リスク評価室 室長補佐 牛﨑 昌子
エコチル調査の成果とこれから
 ・国立研究開発法人国立環境研究所 環境リスク・健康領域エコチル調査コアセンター 次長
中山 祥嗣
エコチル調査ゲノム・遺伝子解析研究のこれまでの成果
 ・国立成育医療研究センター エコチル調査研究部 遺伝子解析室 チームリーダー
東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター デジタル・ゲノミクス分野 教授 熊坂 夏彦

[医薬基盤・健康・栄養研究所より]
NIBNにおけるマイクロバイオーム研究とエコチル調査とのシナジー効果の可能性
 ・NIBN 医薬基盤研究所 副所長 國澤 純
NIBNにおけるロングリードシーケンス技術を活用した免疫ゲノム研究の紹介
 ・NIBN 医薬基盤研究所 難病・免疫ゲノム研究センター長 山本 拓也
エコチル調査との連携による相乗効果について 誰一人取り残さない栄養の観点から
 ・NIBN 理事 兼 国立健康・栄養研究所 所長 瀧本 秀美

【総合討論】(30分)

開催レポート

ご挨拶~講演

医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBN)と環境省のご挨拶に続き、まず環境省の調査班(環境省の担当者や、国立環境研究所や国立成育医療研究センターの研究者)から、エコチル調査の概要と広報戦略、エコチル調査の成果とこれから、エコチル調査ゲノム・遺伝子解析研究のこれまでの成果について紹介がありました。環境省主導のエコチル調査は、規模が大きく、維持率が高く、長期間の追跡であること、生体試料が豊富であることなどの強みがある一方で、環境保健分野の研究力、国際連携力、発信力、研究インフラなどの面で課題もあることが示されました。そして、エコチル調査を社会に役立つようにするため、共同研究をしたいという人や応援したいという人を増やしたいという想いが共有されました。












続いてNIBNから、マイクロバイオーム研究、ロングリードシーケンス技術を活用した免疫ゲノムの研究、栄養調査について紹介がありました。腸内環境から健康社会を実現したいという想い、ゲノム情報からわかることの可能性、まだ知見が不足している子どもや中高生の栄養系データへの期待など、エコチル調査との連携の可能性につながるお話を伺うことができました。

総合討論

NIBNの研究とエコチル調査の膨大なデータの連携の可能性について、NIBN側とエコチル調査側で熱い議論が交わされました。
 











マイクロバイオーム(腸内細菌叢)
様々な健康状態や病気と関わっている腸内環境。エコチル調査でもマイクロバイオーム(腸内細菌叢)の調査について検討が進められていますが、調査対象とする人数が多いため、予算や解析手法が課題となっています。これに対してNIBN側からは、解析手法の共有というアイディアが提案されました。腸内環境には食事内容の変化が影響するとされています。子どもの食事内容の変化には親の健康意識の変化が反映されるため、母親の調査を維持することには大きな意義があるという点で意見が一致しました。

ロングリードシーケンス(長いDNA断片の解析)
「ロングリードシーケンス(長いDNA断片の解析)」は、「ショートリードシーケンス(短いDNA断片の解析)」と比較して、より高い精度でゲノムを解読できる技術です。エコチル調査側は、最初はショートリードシーケンスから連携したい、10万人規模のロングリードシーケンスは実現が難しいと思われるがどうすればよいのかと、まずはお伺いの姿勢。これに対してNIBN側からは、特定の重症症例に絞ってでもロングリードシーケンスを行えば世界でも類を見ない画期的な知見が得られる、親から子への遺伝的影響も分かる、環境要因と遺伝的要因の関わりも分かるなど、エコチル調査のゲノム解析におけるロングリードシーケンスの実現に口々に期待が寄せられました。

栄養調査
エコチル調査側の研究者には栄養の専門家が不足していることが課題であり、栄養の専門家がいるNIBNとぜひ連携したいという意向が示されました。NIBN側も、エコチル調査で測っているバイオマーカー(体の状態や病気の有無・進行などを示す生物学的指標)は貴重なデータとの考え。得られたデータを適切に定量化して分析することで、栄養と環境に関する研究が進み施策に役立てられれば、との認識が共有されました。

今後の展望
少子化が進む日本において、子どもたちが元気に育つのは何より大事なこと。エコチル調査に参加いただいている方々のご協力により得られた貴重なサンプルやデータを有効に生かして持続可能な形で社会に還元するために、NIBNとエコチル調査はぜひ協力して一緒に研究をやっていきたいということで意見が一致し、連携の可能性が大いに期待される結びとなりました。