報道発表資料
1.背景
環境省は、4月14日に福島市、郡山市、相馬市及び伊達市(以下、「4市」という)から、「毎時0.23マイクロシーベルトの意味が正しく伝わっていない現状を国が正すべきである」「除染から復興への加速化を促す方策を検討すること」などの要望を受け、国(復興庁及び環境省)と4市において事務方レベルの勉強会を開催してきた。また、6月15日には除染に関する有識者との意見交換会を開催した。これらを、今般「除染・復興の加速化に向けた国と4市の取組」の中間報告として取りまとめた。
2.概要
中間とりまとめは、「1.現状と課題」、「2.これまでの知見や新たにわかってきたこと」、「3.これまでに除染に関して政府が示した方針」、「4.目指す方向」、「5.基本的な考え方」、「6.具体的な取組」から構成されている。
そのうち、基本的な考え方として、「個人の被ばく線量に着目した放射線防護の充実」、「リスクコミュニケーションの充実」、「これまでの知見を踏まえた除染の実施(個人の被ばく線量を勘案した除染の実施、除染実施計画の早期完了に向けた効果的な除染によるスピードアップ)」、「環境回復・復興に向けた不安解消・放射線防護対策の総合的な推進」の項目を挙げている。
それぞれの項目においては、以下のような事実や認識を踏まえて、個人線量を重視して放射線防護やリスクコミュニケーション等を検討・実施していくこととしている。
<個人線量関連>
事故発生後初期においては、個人線量計等を用いた個人線量の測定が困難であったため、空間線量率から推定される被ばく線量を用いて防護策をとってきた。その後、福島県内の自治体において個人線量が測定され、その結果等の知見も積み重ねられてきている。これらの知見からは、以下のことがわかってきている。
- 4市における多くの地区では、個人の年間追加被ばく線量は1ミリシーベルトに近く、現在も低減している。
- 空間線量率の平均値が毎時0.23マイクロシーベルトを超える地域においても、当該地域に住む市民の平均的な年間追加被ばく線量は、1ミリシーベルトを超えない場合が見られる。
居住地区の空間線量率(平均)との関係では、空間線量率が毎時0.3~0.6マイクロシーベルト程度の地域においては、個人の年間追加被ばく線量は平均的には1ミリシーベルト程度となることが見込まれる。
個人の年間追加被ばく線量は、生活パターンによる差異が大きいため、空間線量率に基づく除染のみでは、必ずしも個人の被ばく線量低減には結びつかない可能性がある。そのため、個人の被ばく線量を継続的に把握し、住民一人一人に対して必要な放射線防護を実施することが重要である。
<リスクコミュニケーション>
毎時0.23マイクロシーベルトという数値が安全と危険を分ける基準であると住民に受け止められていることがあり、そのことが不安につながっている。このような実態を認識するとともに、これまでの国による情報の伝え方等を反省し、正しい情報をわかりやすく伝えることが必要である。
<除染の迅速化>
現在、汚染物質は、降雨や清掃等の人の活動により雨どい下など局所に集中している傾向が見られる。汚染物質が減少している箇所もあり、局所に集中した汚染物質を取り除くことが迅速化につながる。
<復興>
上記対策を効果的に組み合わせ、知見及び既存の体制を更に強化することが必要である。そのための具体的な取組を検討する。特に子どもの放射線防護を優先して取り組む。また、検討結果を踏まえて、環境回復・復興へとつなげていくための支援策やそれを促す仕組みを構築する。
3.その他
本中間報告はあくまでも4市との勉強会の報告であり、汚染状況重点調査地域等を指定する基準(毎時0.23マイクロシーベルト)について変更するものではない。
今回の4市は、市町村除染を実施している自治体の中でも空間線量率が相対的に高い地域が存在する自治体であり、今回取りまとめた内容は他の自治体においても参考になる考え方であると考えられる。環境省としても、それぞれの自治体の除染実施計画に基づく除染を加速化するため、本報告書を各自治体の支援等に活用していくとともに、市町村からの相談等に応じてきめ細かに助言等を行っていく。
添付資料
- 連絡先
- 環境省水・大気環境局除染チーム
代表:03-3581-3351
参 事 官:秦 康之(7501)
参事官補佐:玉谷 雄太(7528)
担 当:千葉 亮輔(7529)