長崎県 島原半島基部 地盤環境情報令和4年度

1.概要

(1) 地盤沈下等の概要
当地域は、諫早市の有明海沿岸の古い干拓地を中心とした農業地域であり、水源の不足から水道用水、農業用水、工業用水等として地下水を利用している。灌漑期には農業用水を多量に汲み上げるため、地下水位の低下を生じ、地盤沈下が顕在するようになってきた。 昭和51年~昭和55年に農林水産省九州農政局及び県(農林部)が、また、昭和61年以降県(生活環境部)が行った調査では、沈下は主として、灌漑期に生じており、灌漑終了時には地下水の補給により地盤は若干回復する。昭和51年から昭和63年までの平均沈下量は10mm/年程度であり、地下水の利用量が減少しないかぎり、同様の地盤沈下が今後も続くものと考えられる。
(2)地形、地質の概要
当地域は北側を多良山系(経ケ岳 1,076m)、南東側を雲仙岳(普賢岳 1,360m)、西側を長崎方面の100m~300mの山地に囲まれ、北東側は諫早湾に、南側は橘湾に面している。諫早湾側の低地は過去において繰り返し干拓が行われ、現在諫早平野と呼ばれる県下最大の穀倉地帯となっている。干拓は1697年頃より行われ、現在、島原鉄道以北の面積は1,528haに及び、そのうち1,389haが水田として、残り139haが畑地または宅地として利用されている。また、干拓地周辺地域は宅地、市街地となり、山地の緩斜面は畑地や樹園地として利用されている。
地盤沈下が生じている地域は、第四紀の島原火山の凝灰角礫岩、安山岩の基岩の上に沖積世の有明粘土層が広く分布している。同粘土層は海岸部での層厚が20m程度となっており、この下位に最大厚さ50m程度の粘土・砂礫互層が分布する地点もある。地下水は主に凝灰角礫岩と、一部ではこの上位の砂礫層から採取され、井戸の深さは数十~百m前後である。 

2.地下水採取の状況

当地域における地下水揚水量は、平成3年度調査では合計17,138,000m3であり、用途別の地下水利用は次のとおりである。

(1) 水道用水
水道用深井戸は59本であり、その給水人口は93,917人となっている。日平均揚水量は26,894m3、年間揚水量は9,759,540m3となり、全揚水量の57%を占めている。 
(2) 農業用水
農業用は干拓地水田の灌漑用として105本の深井戸が利用され、特に森山地区の干拓地では降水を除く用水の全量を地下水に依存している。農業用の揚水量は3,435,083m3となっており、全揚水量の20%を占める。また、7月~9月までの1日あたりの使用量は約25,060m3/日と非灌漑期の約8倍になる。 
(3)建築物用、工業用水用
建築物用88本、工業用52本の計140本の深井戸が利用されており、平成2年度の揚水量は3,943,828m3/年で全体の23%を占める。

3.地盤沈下等の状況

昭和63年2月に県が実施した森山地区水準測量の結果では、昭和55年9月と比較して水準点22ヶ所すべてで累積沈下が認められ、これらの累積沈下量は平均67mmであり、最大127mmとなっている。地域的には諫早湾側堤防部が最も沈下し、100mm以上となり、山際部を除く平野は50mm以上となる。昭和55年9月から昭和63年2月までの年平均沈下量は9mmであり、多いところでは年間17mmに達する。
しかし、干拓地中央部から山際部にかけては沈下の進行は鈍化している。また、昭和56年3月に森山地区で実施した井戸抜け上がりの調査では干拓地を中心に大部分の深井戸で20cm以上が観測され、最大は干拓2号井の64cmとなっている。なお、昭和51年から昭和55年9月までの調査では、地盤沈下はいずれも主として灌漑期に生じており、+B17灌漑終了後は回復する傾向を示している。

4.被害

5.対策

6.詳細情報

その他の「詳細情報」を、下記のエクセルファイルからご覧になることができます。

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