宮城県 仙台平野 地盤環境情報令和4年度

1.概要

(1) 地盤沈下等の概要
仙台平野では昭和41年に国土地理院が実施した一等水準測量によって、前回測量時(昭和31年)に比べ約7cm程度の沈下が認められた。昭和48年には、仙台市東部に新しく造成された工業団地において急激な地盤沈下が起こり、工場・事業所等に建物被害が続出し大きな問題となった。このため宮城県は、昭和49年7月に「宮城県地盤沈下防止対策要綱」を制定し、仙台市宮城野区苦竹地区の地下水採取の規制を始めた。昭和50年8月には同地区を含む約90km2の地域を工業用水法に基づき地域指定した。
その結果、仙台市東部を中心とする地域の地盤沈下はかなり鈍化したが、塩竈市での埋立地の圧密沈下や多賀城市などにおける地盤沈下に対処するため、昭和58年9月に県要綱の指定地域を拡大した。さらに、平成4年4月には、軟弱層の続く仙台市若林区荒井・沖野地区を指定し、要綱の指定地域は合計62.4km2となった。平成8年1月からは「要綱」を廃止して「宮城県公害防止条例」による規制を行っている。
 (2)地形、地質の概要
阿武隈川下流から名取川及び七北田川下流にかけて展開する臨海平野部で、第三紀基盤岩上に厚さ60m前後の第四紀層が分布している。仙台市の市街部が比較的良好な地盤となっている段丘礫層上に位置するのに対して、市街地の東側では厚さ20m程度の泥炭層を含んだ沖積層が分布しており軟弱な地盤となっている。地下水は、第四紀層のほか第三紀層からも採取されている。

2.地下水採取の状況

仙台平野における地下水揚水量は地下水揚水量等実態調査によれば約122千m3/日(平成19年度)であり、そのうち建築物用が41%で最も多く、農業用、水道用、工業用の順でこれに続いている。

3.地盤沈下等の状況

過去に激しい沈下を生じていた地域は仙台市宮城野区苦竹地区の約7.5km2で昭和41~43年度の2年間に最大20.7cmの沈下が記録されている。ただし、これは仙台市青葉区北四番丁の水準点を基準としたもので、この基準点自体が昭和29~41年の12年間に7.1cm沈下している。さらにその後も沈下は進行し、測量は行われていないが、建築物の被害状況等から、累計沈下量が30cm以上に達している地域があると推定された。このため、昭和49年から県及び関係市町が水準測量を実施している。その結果では、昭和49年度以降の累積沈下量の最大値は58.9cmで平成30年度から令和3年度までの3年間における最大沈下量は2.18cmとなっている。 
昭和53年度の測量結果によれば、苦竹地区等の地盤の軟弱な地域を中心として、大きな沈下量が記録されている(年間沈下量の最大は18.9cm)が、これは昭和53年6月の宮城県沖地震によって一時的に急激な沈下が発生したことによると考えられる。近年、地盤沈下は沈静化していたが、平成23年度は大幅な沈下がみられており、これは東北地方太平洋沖地震の影響によるものと考えられる。平成27年度以降に実施した水準測量では一部隆起する現象が見られており、これは大規模な地震後に観測される余効変動と呼ばれる地殻変動の影響を受けているものと考えられる。
地下水位は、苦竹地区では自由水で1m位、被圧水で4~6m程度の深さになっており、近年横這いの傾向にある。

4.被害

激しい沈下が生じた昭和48~49年頃の仙台市東部においては、工場事業場の建造物被害が著しく、床、壁、窓枠等の亀裂、破損から倒壊の危険が出ているものもあった。その他配管類の破損、排水不良等を含めて被害の著しい施設だけで、工場、事務所等39棟に及んだが、その後著しい被害は発生していない。

5.対策

(1) 監視測定
水準測量は昭和48年に仙台市が、昭和49年度からは国、県と仙台市を含めた5市1町が実施している。平成18年度以降は隔年で実施されていたが、平成24年度からは3年に1回実施している。また、地下水位、地盤沈下の状況については、県及び関係市が、地下水位計27台、地盤沈下計15台を設置し、監視測定している。
(2) 地下水等の採取規制
1. 法律による地下水採取規制
昭和50年7月、工業用水法による指定地域とされたのは、仙台市東部、多賀城市の一部及び七ヶ浜町の一部である。これらの地域における工業用の井戸の許可基準は、ストレーナーの位置300m以深、吐出口断面積21cm2以下とされている。

2. 条例による地下水採取規制
宮城県は昭和49年7月「宮城県地盤沈下防止対策要綱」を制定し、同7月、仙台市東部苦竹地区7.5km2を、昭和58年9月には同地区44.7km2を、さらに平成4年4月には仙台市荒井・沖野地区17.7km2、合計62.4km2を地域指定した。さらに平成8年1月からは「要綱」から移行した「宮城県公害防止条例」による規制を行っている。規制内容は、建設工事によるものを含めて、新増設については事前の届出を要する。さらに、地下水採取量の記録、報告を義務づけるとともに、知事の地下水採取量の削減、または、水源転換の勧告を可能にしている。

(3) 各種水道事業
1. 工業用水道
宮城県は、地盤沈下対策事業として、大倉ダムを水源とする仙塩工業用水道、釜房ダムを水源とする仙台圏工業用水道の建設を行い、この一部を地盤沈下地域の代替用水として利用している。
2. 水道
仙台平野地域における水道普及率は令和3年度末で塩竈市、多賀城市、岩沼市、利府町が100%、名取市が99.9%、仙台市が99.7%である。

6.詳細情報

その他の「詳細情報」を、下記のエクセルファイルからご覧になることができます。