新潟県 長岡 地盤環境情報令和4年度

1.概要

(1) 地盤沈下等の概要
長岡市は、全国で最初に消雪パイプ(道路表面に埋設した散水用ノズル付きパイプに地下水を導水し、道路上に地下水を散水することによって雪を消す施設)を設置した都市である。消雪パイプは、昭和36年の試験的施工以降、急速に普及した。それに伴い、消雪用地下水の揚水による地下水位の低下と地盤沈下が顕在化した。昭和39年の新潟地震後、国土地理院の測量で年間最大3cm程度の沈下が認められ関心が持たれた。昭和50年から県及び長岡市が実施した水準測量の結果では、長岡市の市街地及びその周辺で年間1cm前後の沈下を示す地点が認められた。揚水量や地下水位の変動状況により、消雪用地下水の汲み上げが沈下の原因と考えられたことから、長岡市では、昭和61年3月に地下水保全条例を制定し、地盤沈下の防止に努めた。その後、昭和63年から平成4年度にかけて、少雪にもかかわらず信濃川左岸地区で年間3cmを超える沈下が進行していたため、県では長岡市と協力して「長岡地域地盤沈下機構解明調査」を実施した。その結果、同地区の地盤沈下の進行には、水溶性天然ガスの採取が関係していたことが判明した。平成4年以降、水溶性天然ガスの採取を停止したことから、沈下は沈静化した。
(2)地形、地質の概要
長岡地域は、新潟平野(越後平野)の南部に位置し、信濃川沿いの低地である。地形は、信濃川によって運搬された堆積物によって形成された氾濫原性低地と扇状地及び平野の縁辺部に分布する段丘に区分される。氾濫原には自然堤防及び旧河道が分布し、自然堤防はそのほとんどが集落となっている。扇状地は平野東縁の山麓部に発達する。平野部に分布する沖積層は、主として信濃川の河床礫層と細粒の後背低地堆積物よりなる。段丘は、火成岩の中礫~大礫よりなり、信濃川によって運搬されたものと考えられる。本地域の西側は東頸城丘陵の北東部、東側は魚沼丘陵の北部に当たり、新第三系~第四系更新統の堆積岩が分布する。本地域の不透水性基盤は、新第三系の堆積岩と考えられるが、その深度は不明である。平野部の地下地質は、粘土、シルト~砂・礫の互層であるが、砂及び礫が卓越している。

2.地下水採取の状況

長岡市では主として消雪用に地下水が利用されており、昭和56年度に環境庁が実施した地下水揚水量等実態調査によると、長岡市での地下水採取量は1,094千m3/日であり、そのうち85%にあたる928千m3日が消雪用である。 消雪用以外では、地下水は建築物用(92千m3/日)、工業用(53千m3/日)などに利用されている。

3.地盤沈下等の状況

長岡地域の地盤沈下は、市街地を中心に生じており、沈下面積は約71km2に及んでいる。観測を開始した昭和50年から令和4年までの累計沈下量の最大値は約25cm(長岡市蓮潟)であり、年間沈下量の最大値は、平成2~3年の3.7cm(長岡市蓮潟)であった。平成18年度以降の水準測量は、隔年で実施しており、令和4年度の水準測量の結果では、調査面積22.9km2のうち沈下面積は15.6km2であり、令和2~4年度の2年間最大沈下量は2.24cm(長岡市稲葉町)であった。本地域では、消雪用地下水の揚水の影響により、冬季に地下水位低下量及び地層収縮量が著しく増大する。令和4年冬季(令和3年12月から4年3月まで)の蓮潟中央公園観測井(長岡市蓮潟)による観測結果では、地下水位(日平均値)の最大低下量は22.08m(前年度:23.86m)、地層収縮量の最大値は3.7cm(前年度:3.5cm)であった。

4.被害

特に冬季に地下水位の低下が著しい。

5.対策

(1) 監視測定
長岡地域では、関係行政機関が、水準測量及び地盤沈下観測井による地下水位と地層収縮量の観測を実施している。観測開始は、水準測量が昭和50年、地盤沈下観測井が昭和42年である。水準測量は平成18年度以降、隔年で実施しており、令和4年度の水準測量は22kmであり、すべて2級である。実施機関は、長岡市である。地盤沈下観測井による監視は16本で実施し、地下水位と地層収縮量を観測するものが5本、地下水位のみを観測するものが11本である。実施機関は、長岡市である。

(2) 地下水等の採取規制
長岡市では昭和61年に「長岡市地下水保全条例」を制定し、ストレーナーの位置が20m以深で、かつ吐出口の断面積が4cm2以上の揚水設備は届出の義務があり、消雪面積150m2以上の揚水設備には「自動降雪検知器」及び「水量調節弁」の設置を義務付けた。平成16年3月には一定規模以上の井戸における管理責任者の設置及び採取量報告の義務、地下水位低下時における緊急時対策の実施などの改正を行った。さらに、平成27年4月から、消雪面積150m2以上の揚水設備を新たに設置する際には、従来義務化していた「自動降雪検知器」に代え、「節水型自動降雪検知器」設置を義務付けた。また、既設の大規模揚水設備についても猶予を設けた上で設置を義務化した。

(3)対策事業
道路管理者は、消雪用地下水の節水対策として無散水融雪装置あるいは降雪強度に応じて散水量を自動調節する可変型節水装置等の整備を進めている。

6.詳細情報

その他の「詳細情報」を、下記のエクセルファイルからご覧になることができます。

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