新潟県 南魚沼 地盤環境情報令和4年度

1.概要

(1) 地盤沈下等の概要
南魚沼地域は新潟県の南部に位置する豪雪地帯であり、年間降雪深の平年値は、1,054cm、豪雪年には2,000cmを超える降雪に見舞われる。そのため、幹線道路から生活道路に至るまで消雪パイプ(道路表面に埋設した散水用ノズル付きパイプに地下水を導水し、道路上に地下水を散水することによって雪を消す施設)が敷設されている。消雪パイプは、その高い消雪効果により豪雪地帯における民生の安定、産業の発展などに大きく貢献してきたが、一方で、地下水に頼った雪対策は、過剰揚水による井戸枯れと地盤沈下を引き起こした。南魚沼地域においては、昭和48年に地盤沈下現象を確認して以来、現在までに最大で約99cmの沈下が観測されている(該当の水準点(M-25)は令和3年度に亡失しており、昭和54年~令和2年の測定結果である)。特に、豪雪時の沈下の進行が著しく、59豪雪時の一年間の沈下量は9.2cmに達した。地盤沈下に対し、これまでに機構解明調査、地下水採取規制、道路消雪用井戸の集中管理システムの導入など、多くの調査と対策が行われてきたが、未だ豪雪年には地盤沈下が確認されている。
(2)地形、地質の概要
南魚沼地域は、新潟県の南部に位置する六日町盆地のほぼ中央部に位置する。六日町盆地は、新発田小出構造線の南西方の延長線上にあり、南南西-北北東に流れる魚野川によって形成された盆地である。六日町盆地の西側は、伏在する六日町断層(六日町盆地北西縁構造線)の影響を受けるため、標高約500~1,000m程度の魚沼丘陵が魚野川とほぼ平行に連なり、丘陵と盆地との境はおおむね直線状である。一方、盆地の東側は2,000mに達する急峻な越後山地が広がっており、魚沼丘陵に比べると起伏が大きく、山地からは三国川や登川など比較的大きな河川が盆地に流入する。南魚沼市六日町市街地の地下には、深度30~50mまでに分布する粘土層のほか、深度100m前後にも粘土層が分布しており、消雪井戸の揚水が被圧帯水層を主体とする地下水盆全体の地下水位を低下させ、粘土層分布域で地盤沈下を発生させている実態が明らかになっている。

2.地下水採取の状況

県では、昭和61~62年度に南魚沼地域地盤沈下機構解明調査を実施しているが、この中で地盤沈下の最も著しい六日町市街地(約5km2)の昭和60年度の地下水揚水量は約1,150万m3/年、うち12月から3月までの冬季間は約880万m3と推定された。また、このうち約700万m2が消雪用とされている。

3.地盤沈下等の状況

南魚沼地域の地盤沈下は、六日町市街地の西側を中心に生じており、沈下面積は65.1km2に及んでいる。昭和50年から令和2年までの累計沈下量の最大値は約99cm(南魚沼市六日町河原崎:昭和54年から令和2年まで観測)であり、年間沈下量の最大値は、昭和59年度の9.2cm(南魚沼市余川)であった。地盤沈下は、豪雪時に著しく進行する。令和4年度の水準測量結果では、調査面積13.3km2のうち13.25km2で沈下が確認された。年間最大沈下量は2.0cm(南魚沼市六日町)であった。地盤沈下観測井の観測結果では、地下水位は降雪量に相関し冬季に著しく低下し、降雪期後になると急激に元の状態まで戻る。しかし、地層収縮量は、地下水位の回復とともに一部膨張するものの、すべては回復しない。令和4年冬季(3年12月から4年3月まで)の市民会館60m観測井(南魚沼市六日町)による観測結果では、地下水位(日平均値)の最大低下量は21.55m(前年度:19.17m)、地層収縮量の最大値は4.3cm(前年度:3.8cm)であった。

4.被害

南魚沼市六日町の市街地においては、井戸の抜け上がりや建築物の破損等が認められており、県内で被害が顕在化している地域であるが、以前ほどの大きな地盤沈下は確認されなくなってきている。

5.対策

(1) 監視測定
南魚沼地域では、関係行政機関が、水準測量及び地盤沈下観測井による地下水位と地層収縮量の観測を実施している。観測開始は、水準測量が昭和50年、地盤沈下観測井が昭和45年である。令和4年度の実施状況は以下のとおりであった。水準測量の実施距離は、32kmであり、すべて2級である。実施機関は、新潟県及び南魚沼市の2機関である。地盤沈下観測井による監視は8本で実施し、地下水位と地層収縮量を観測するものが3本、地下水位のみを観測するものが3本、地層収縮量のみを観測するものが2本である。実施機関は、新潟県及び南魚沼市の2機関である。

(2) 地下水等の採取規制
旧六日町では昭和44年に「六日町地下水採取の規制に関する条例」(平成5年全面改正)を制定し、全町を地盤沈下区域とその他の区域に区分し、揚水設備の設置に際して許可を要することとした。また、旧六日町では昭和62年12月1日から「六日町地域消雪用地下水揚水量削減対策要綱」(現行「南魚沼市消雪用地下水削減対策要綱」)を定め、市街地を中心とした第1種地域の冬季間の消雪用地下水を概ね500万m3とすることとし、消雪用の揚水設備に対して削減対策実施基準を定めるとともに、地下水位の低下により地盤沈下の注意報または警報を発令し、消雪用地下水の削減を要請することとした。 旧塩沢町では昭和52年度に「塩沢町地下水採取の規制に関する条例」を、また旧大和町でも昭和53年度に「大和町地下水採取の規制に関する条例」を制定し、地下水採取規制を行った。平成17年9月には、これら3町の合併により「南魚沼市地下水の採取に関する条例」として一本化された。しかし、近年、住民の高齢化により地下水以外の手段での消雪が困難となってきたこと、井戸設置の許可要件が厳しいため、規制区域である市中心部から人口流出が見られることなどから、地盤沈下を防止しつつ、規制を緩和する方向で平成29年9月に条例を改正した。 それに伴い平成29年9月に「南魚沼市消雪用地下水削減対策要綱」を廃止し、新たに「南魚沼市地盤沈下防止等対策要綱」を制定した。また、令和4年3月に警察署の用に供する場合は規制の対象から除くよう条例を改正した。

(3)対策事業
国、県及び地元3町(当時)で構成する南魚沼地区地下水管理協議会は、平成6年3月に「南魚沼地区地下水管理計画」を策定し、地区ごとの地下水揚水目標量の設定及び地下水削減対策を提示した。さらに平成6年6月に国、県及び旧六日町からなる六日町地盤沈下対策推進協議会を設置し(平成13年廃止)、関係機関が連携して、地盤沈下区域における消雪パイプの集中管理システムの導入、流雪溝の整備等地盤沈下防止関連事業を推進した。また、旧六日町は、平成6年度までに市街地における水道水源を表流水に転換し、平成5年度からは公共及び民間施設における無散水融雪設備の導入を推進した。南魚沼市では、「平成18年豪雪」により地盤沈下が大幅に進行したことから、平成18年度に「新潟県南魚沼市における地盤沈下低減対策検討調査」(環境省委託)を実施し、低減対策を検討した。

6.詳細情報

その他の「詳細情報」を、下記のエクセルファイルからご覧になることができます。

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