熊本県 熊本平野 地盤環境情報令和4年度

1.概要

(1) 地盤沈下等の概要
 熊本平野は、有明海に面し、阿蘇山麓に広がる火山性台地の西端に連なる地域であるが、古くから良質な地下水が豊富な地域として随所に自噴帯が見られていた。しかし、地下水採取量の増大やかん養域の減少などにより地下水自噴帯の後退、地下水位の低下及び地盤沈下等が見られるようになった。このうち、地盤沈下は国土地理院が昭和44年度に国道3号沿いに実施した一等水準測量により認められた。なお、熊本地域の地下水採取量は平成6年以降漸減傾向を示している。
熊本市では、昭和51年3月に全国初の「地下水保全都市宣言」を行うとともに、昭和52年9月1日「熊本市地下水保全条例」を制定公布し地下水の保全対策を推進している(平成19年12月25日改正)。また、昭和53年12月20日付けで熊本県も広域的地下水管理の必要性から「熊本県地下水条例」を制定、公布している。なお、「熊本県地下水条例」は平成2年10月2日に「熊本県地下水の採取に関する条例」と題名改正されたが、平成12年6月21日に「熊本県地下水保全条例」に統合され、平成24年3月6日には、地下水採取の許可制や、硝酸性窒素汚染対策を推進するための根拠規定を新設するなどの改正を経て現在に至る(平成24年4月1日一部施行、同年10月1日全面施行)。
 (2)地形、地質の概要
熊本平野は阿蘇山の西端にあり、洪積層として砂礫層や阿蘇火山の火砕流堆積物が分布している。山麓から市街地にかけての台地部では、表層部に厚い礫層が分布し、市街地より西の有明海側の沖積平野には、厚さ30~40mの軟弱な沖積層(有明粘土層)が分布している。
地下水(被圧)は、市内の地下では火山噴出岩類(砥川熔岩)等の中に大量に賦存し、利用されている。

2.地下水採取の状況

熊本市の地下水採取量は、熊本県地下水保全条例及び熊本市地下水保全条例に基づく報告によると、令和3年度は約102.7百万m3/年で、そのうち上水道用が約76.5百万m3/年で全体の74.5%、工業・建築物用が約15.9百万m3/年で同15.5%、農業水産用が約10.3百万m3/年で同10.0%を占めている。

3.地盤沈下等の状況

国土交通省九州地方整備局が昭和44年度から熊本平野(平成16年度測量距離48.9㎞、27地点)で実施した1級水準測量によれば、34年間の累積沈下量は最大33.56㎝であった。

4.被害

局地的ではあるが、井戸・橋梁の抜け上がり等が生じていたが、現在は沈静化している。

5.対策

(1) 地下水の採取規制
昭和52年9月1日に熊本市地下水保全条例が公布施行され、地下水採取の届出及び採取状況の報告がなされるとともに、県でも昭和53年12月20日に熊本県地下水条例(平成12年6月21日に熊本県地下水保全条例に統合)を制定公布した。さらに、県では、平成24年3月6日に、熊本県地下水保全条例を改正し、地下水を「公共水」と位置づけ、平成24年10月1日より、一定規模以上の地下水採取に対する許可制等を導入した。
(2) 監視測定
水準測量は、昭和49年度以降国土交通省によって行われ、県でも昭和53年度(17.4km2、22.5km、18地点)から、また、熊本市でも昭和54年度(4.5km2、15.5km、9地点)からそれぞれ水準測量を実施した。昭和63年度からは、県及び熊本市合同で実施(28.9km2、65.1km、48地点)したが、平成5年度からは県は熊本市に隣接する宇土市及び富合町のみで水準測量を実施(8.3km2、37.2km、18地点)した。熊本市内については、熊本市が実施することとなった。その後、県は平成11年度をもって水準測量を終了している。さらに、県では地盤沈下の機構解明のために簡易地盤沈下計を昭和61年度から計7ヶ所(10井)設置し、平成12年度まで観測を行った。
地下水塩水化については、県で海岸部の既設井戸について昭和50年度から昭和62年度まで調査を行っている。

6.詳細情報

その他の「詳細情報」を、下記のエクセルファイルからご覧になることができます。