石川県 金沢平野 地盤環境情報 令和4年度

1.概要

(1) 地盤沈下等の概要
昭和46年に国土地理院が実施した一等水準測量により、金沢市北部において若干量の地盤沈下が認められたため、関係者への注意を喚起した。今後の地下水揚水量の増加による地下水位の低下等によって地盤沈下が進行する可能性があったため、金沢市では昭和47年12月市公害防止条例により揚水設備を届出制としたほか、石川県でも昭和49年10月県公害防止条例を改正して地下水採取を届出制にするとともに、昭和49年に水準点を設置し地盤沈下量観測を始めた。
 (2)地形、地質の概要
金沢平野は、洪積世前期以降の沈降盆地域に形成された海岸平野で、中央部では厚さ400 mの洪積層の存在が推定されている。堆積物は砂礫が主であるが、海岸部~河北潟にかけては厚さ数10 mの泥質の沖積層が表層部に分布している。

2.地下水採取の状況

近年の揚水量は、上水道用は横這い傾向であり、工業用は減少傾向にある。

3.地盤沈下等の状況

昭和49年度から測量を実施した結果、金沢市内では令和4年度までの48年間で最大の地点で約63 ㎝の沈下が認められている。年間の地下水位の変動は、概ね4月上旬から8月上旬にかけて上昇し、9月中旬から12月中旬まで大きな変動はなく一定の範囲で推移するが、12月中旬から3月中旬まで消雪用地下水の揚水設備の稼働、停止による急低下・急上昇が見られる。 地盤収縮量は、従来から降雪期の急激な水位低下に対応して急増するが、揚水の停止によって十分に回復せず、そのまま地盤収縮が累積する状況が続いている。

4.被害

被害は確認されていない。

5.対策

(1) 監視測定
昭和49年度以降、県が水準点を設置して測量を実施するほか、国土地理院も平成27年度まで2年に1回測量を実施してきた。観測井による地下水位の観測は、県及び金沢市で実施しており、金沢市内には15ヶ所19井、金沢市以南の市町には8ヶ所11井を設置している。このうち金沢市内の4ヶ所8井では地盤収縮量を併せて観測している。
(2) 地下水等の採取規制
ァ.県条例による地下水採取規制
石川県は昭和49年10月「石川県公害防止条例」を改正し、昭和50年1月1日より県下全域の吐出口断面積6 cm2を超える工業用及び建築物用の揚水設備に対して、届出・減少勧告に関する規定を設けた。金沢市及び周辺で吐出口断面積160cm2を超えるものについては水量測定器の設置、揚水量の報告を規定した。平成16年4月1日からは、同条例を「ふるさと石川の環境を守り育てる条例」に改め、さらに、水量測定器の設置、揚水量報告の対象設備を吐出口断面積50cm2に引き下げるほか、年間の総揚水量が40万m3を超える事業所については、地下水使用合理化計画書の提出を義務づけている。
イ.市町条例による地下水採取規制
金沢市は昭和47年12月「金沢市公害防止条例」に「地下水の採取に関する規制」を定め、市内全域に適用し、地下水採取の実態把握に努めてきた。平成9年9月には「金沢市環境保全条例」を制定し、揚水量の測定、報告の義務付けを行った。さらに、平成21年4月からは「金沢市における地下水の適正な利用及び保全に関する条例」を施行し、吐出口の断面積が6cm2を超えるものについては、井戸の設置や変更を事前許可制とし、新規の消雪用井戸は原則不許可とするなど規制を強化するとともに、揚水量の報告や吐出口断面積が50cm2を超える揚水設備について、水量測定器の設置を義務付けている。
(3)各種用水道事業
ァ.工業用水道事業
金沢・手取川扇状地域の5箇所の公営工業用水道事業のうち、4箇所の水源は地下水となっており、地下水取水量の合計は平均で54,082m3/日(令和3年)である。石川県では手取川ダムに工業用として53,500m3/日(令和3年度)を確保している。
イ.水道事業
金沢市の水道普及率は100%(令和3年度)で平野部のほぼ全域にわたっており、その水源の大半が表流水地表水で地下水依存率は0.4%(令和3年度)である。
地図 金沢・手取地盤沈下調査路線網図 

6.詳細情報

その他の「詳細情報」を、下記のエクセルファイルからご覧になることができます。