環境再生・資源循環

第5回PCB廃棄物適正処理推進に関する検討委員会議事要旨

日時

平成24年3月6日(火) 13:00~15:00

場所

JA共済ビル カンファレンスホール

出席委員(五十音順)

(委員)
浅野委員、飯干委員、影山委員、鬼沢委員、酒井委員、田中委員、田辺委員、築谷委員、永田委員、本多委員、横山委員
(オブザーバー)
日本環境安全事業株式会社(JESCO)
経済産業省
産業廃棄物処理事業振興財団

議事

  1. (1)微量PCB汚染廃電気機器等について
  2. (2)無害化認定処理施設の処理対象について
  3. (3)その他

議事概要等

  • 会議は公開で行われた。
  • 事務局(環境省産業廃棄物課)より、微量PCB汚染廃電気機器等に関する施策の状況及び今後の方向について説明し、委員から意見があった。
  • 事務局より、環境省における実証試験の実績を説明した上で、無害化認定処理施設の処理対象範囲等についての方向性について説明があり、委員から意見があった。

主な意見

(1)微量PCB汚染廃電気機器等について

  • 鬼沢委員 無害化認定処理施設について、今後どの程度増えていくかという見通しはあるのか。政府から大臣認定の申請を働きかけるといったことはあるのか。
  • 本多委員 企業としてはいつ完了宣言が出せるかという点が、経営としてのリスクが大きい。また、国としても、ここで処理が完了する予定という宣言が必要であり、そのためにも、処理の対象量を確定しないといけない。ここからここまでが対象だということを、リスクを踏まえ再定義することが必要。対象量と処理期限を決めて、それに相当する処理能力について議論するべき。
  • 田中委員 無害化処理認定施設を増やすことが大事。認定を円滑に行うためには、住民の理解、それから地方自治体の行政の支援あるいは理解、これが欠かせない。特に、実証実験のときに地元説明を行い、また認定や許可を受けるときにも同じことを求める場合がある。大臣認定の処理の対象になるということをあらかじめ明らかにして実証試験を行うことが必要。当初予定していたもの以外のものを処理するときに、また改めてゼロから振り出しに戻って全部手続きをやるということを避けるような運用を図るべき。あるいは試験材料を提供するとか、住民や行政に理解を得るようなところを支援するなどできないか。県許可と大臣認定について、場所により、両制度を弾力的に活用されるようにすべき。
  • 鬼沢委員 地元住民の理解が得られないという点について、国民全体では、処理をすれば無害化ができること、一方、処理をしなければ保管のリスクがあるということをしっかり示すことが大切ではないか。
  • 影山委員 処理対象量の限定という意見があったが、特に容器については、油を抜いた後は、微量の微量なので、リスクについてはかなり少ないと思われる。容器のリスクを踏まえた合理的な扱いというのを、さらに考えることができるのではないか。大変な人手と費用がかかる。容器のリスクというのを考えて、合理的な扱いというものをお考えいただきたい。強くお願いする。
    処理期限については、期限を迎えた後に存在が判明した機器についての扱いを明記されるようにお願いしたい。また、POPs条約にかからないような50ppm以下のものについての扱いについてもお願いしたい。
    最も合理的なものができるのは、課電自然循環洗浄法。液判定も含め、推進していただくようにお願いしたい。
  • 環境省 第一に行うべきは、処理施設の能力を増やすことなので、今回資料にあるようにさまざまな施策について一生懸命推進していきたい。資料2にあるような施策を推進していってある程度いくと、大体見通しというのが見えてくるだろうと考えている。その上で一体どこまでどういうスケジュールでやるかというのを最終的に決めなければならない。スケジュールの面に関して言うと、当然POPs条約で50ppmを超えるものについては、平成40年までに処理をしなければいけないという義務があるということを念頭におくべき。
    無害化認定施設というのは、思ったよりハードルが高いのではないかという御指摘もいただいたが、今まで以上に地元の各自治体に対する周知をもっとしっかりやっていかなければならないと思っている。PCB汚染廃電気機器を持っていることのリスクをしっかり示しながら、地元自治体の協力、地元住民の皆様の協力を求めていくというのを我々は一生懸命やらなければならない。
    容器を処理する施設の整備はそれほど進んでいないので、さまざまな工夫をして増やしていかなければいけない。御指摘を踏まえてしっかりと取り組んでいきたい。
  • 浅野委員 民間の無害化処理認定事業者を増やして処理していくという方針は全く間違っていない。ただ、処理事業者としては、金をかけ施設を整備しても、仕事があるのかというのが大きな問題。見通しがよくわからない状況で処理をお願いしたとしても、だれが手を挙げるのだろうか。
    どういうものが処理対象になるのかという基準は将来も動かないという保証がないといけない。国はしっかり腹を決めたら、少なくとも期限まではその基準を変えてはいけない。このぐらいのところはもう絶対に譲れませんという線を明確に打ち出しておけば、民間の事業者も、参入しましょうということになる。温暖化のときに目標がわからないのに、対策をせよということと同じ話になってしまう。
    微量汚染ということが大事なキーワード。高濃度汚染であるということの違いをどう見るか。これは処理すると分解して消えてしまうということであれば、大分周辺の住民の方々も受け止め方が違うはず。危ないものを処理しているというイメージでしかとらえられないとなかなか進まない。
    手続きの面で、利害関係者の意見書提出があるが、一部の方が最後まで反対するということは他の事案でも、しばしば見かけられる。一部に最後まで反対があっても安全に処理しているならば、意見書は意見書、認定は認定と考えればよい。全員の賛成をとっておかないといけないという印象を与え過ぎて何もできないということになっているのではないか。
    PCBは処理をすれば完全に無害化されるものと理解されたとしても、問題はむしろ、処理結果ではなくて、まだ汚れているものが自分たちのすぐ身近なところに持ち込まれて、山のように積まれるようなことがあったら怖い。そのほうがむしろ心配されることなのではないか。処理するまで危なそうなものが持ち込まれていることに対する不安感について、的確に誤解を解いて、安心感を与えるような施策を考えるべき。手を挙げようという業者に対しても、きちんと技術指導などをして、こういうようなやり方で持ち込んで、こういうやり方で保管をして処理をするならば問題ありませんと言ってあげることが必要なのではないか。
    JESCOは、まさにそこのところから全部やっているからそれなりの信頼を得てやってきているわけだ。その応用編なのだから、民間の方にお願いするなら、そこのところからちゃんと一から全部考えて仕組みを設計して、こうやってやったら大丈夫でというようなことを示すことが、大事なのではないか。
  • 本多委員 トータルとしての汚染の実態が見えてこない。日本全体で微量PCBの量は3トン程度であり、何万トンと推計される高濃度PCBと比べると、そのリスクは、圧倒的に小さい。環境基本計画には、環境リスクの考え方などを用いて合理的な判断を行う、その時点において合理的なコストのもとで得ることができる最善の科学的知見を活用するとの記述があり、例示として、アスベストやPCB等が書かれている。0.5ppm以上で500万台程度と推定されているが、当該計画を踏まえ、基準について改めて説明していただいたうえで、線を引くことを考えたい。
  • 酒井委員 処理対象量を明確にせよというのはもっともなこと。検出率の年次別のデータを出されているが、年次別の製造台数、保管台数等々を把握されているはずなので、対象量は明確に見えているのではないか。
    濃度に関する再定義をという意見が出されているが、定義がふらつくことのデメリットということも考えるべき。基準を変えるということに関しての不信感という点も十分に配慮した中で、政策は考えるべき。
    資料5のコンデンサの70年代から80年代にかけての2回目の調査で、検出率が相当上がっているが、どういう要因でこうなったかというところの分析ができていれば、教えていただきたい。また、再生油使用の柱上トランス291万台についても一定の基準でこれまで相当処理実績がある。この実績に関しても整理して、御報告をお願いしたい。
  • 築谷委員 無害化認定施設は、これまで1,100℃以上の施設を対象としてきたものを850℃以上に変えていこうということについて、1,100℃ではかなり耐火物の傷みとかも激しくなるが、これが、850℃になれば、対象炉のすそ野が広がり、850℃になれば手を挙げようという業者もいるのでぜひ進めていただきたい。
  • 環境省 微量PCB汚染廃電気機器等の処理対象として、現実に考えているものは、資料にも掲げている0.5ppmを超えるもの。民間事業者の方に大いに処理に参画していただきたいと考えている。微量PCB汚染廃電気機器等の処理と、高濃度で汚染されたPCB汚染の廃棄物を処理するリスクが違うのは当然。そのため、我が国においては、高濃度の場合には、JESCOを中心として化学処理を進めるということを行い、微量汚染のものについては、民間事業者の力を借りながら、焼却処理を中心としたもので処理をしていこうということで、まさにリスクを考慮して推進してきた。今回、さらに合理的に進める道はないかということで、いろいろな提案をさせていただいた。我々としては、科学的合理的な知見をベースにしてやってきた。我々としてはそのベースとなる知見は変わっていないと思っている。
  • 影山委員 機器の使用中、使用者に渡った後、点検あるいは油の入替え等で汚染されるという可能性についての証明は使用者側で行うということだと思うが、使用者の証明が説得力があるかということを考えると、行政のほうで一定の関与なりあるいは使用者とあわせて証明方法について御検討いただくということをお願いしたい。
    酒井委員から基準がふらつくのはよくないという発言があり、それはおっしゃるとおりであろうが、ただ、今の基準については、濃度ということだけでしか基準が設定されていないので、微量のものですので量という概念もリスクの中に入れてもいいのではないか。容器については微量のものが非常にごくわずか付着している状況なので、考え方を追加していただいてもいいのではないか。

(2)無害化認定処理施設の処理対象について

  • 川本委員 過去に焼却実証試験を実施した施設で、無害化処理認定事業者等にはなっていない産業廃棄物事業者がかなりの数ある。なぜそういうことになってきているのか。
     また、申請手続きについては、自治体での現状の変更許可の手続きなどの状況を踏まえると、煩雑さがあると感じるので、アンケート調査の結果も踏まえて検討することが必要。
  • 鬼沢委員 これまで30回実証試験を実施して、安全かつ確実に無害化できることが確認できているという情報は、地域住民の方、あるいは地域住民以外にも、どんなふうに広報されてきたのか。
  • 本多委員 許可要件について、850℃は一つの適切な目安だと思うが、既に論文等では、800℃でも有機物と一緒に燃やすと十分PCBが、分解できるという報告がある。ダイオキシン類対策で800℃以上として設置されている数多くの焼却炉が活用できるよう、850℃でとめずにこの先も800℃まで実験を続けていただきたい。
  • 横山委員 認定施設について、一般の事業者で焼却炉等を持っている事業者は数多くいる。一般の事業者が持っている焼却炉でも処理できるように800℃とするなど、間口を広げていくということを考えたらどうか。
  • 環境省 無害化施設の認定がされていない事業者が多いという点についてだが、認定に向けて準備をしている業者さんが複数ある。順次準備が整えば申請される事業者もいる。他には、業者さんとしての経営判断もあるが、関心は高いので、今後順次申請されるのではないか。軽微な変更手続きについては今後考えていくことが必要。
    それから、試験結果の広報については、今までも、試験を行う前には試験計画、試験後には試験結果を報道発表してきたが、それを取りまとめて情報提供していくというやり方もあるのかもしれないと思う。
    800℃ということについて、今後も専門家の意見を聞きながらさらにもうちょっと低くできるのかどうかを含め、検討はしていきたい。一般の事業者が持っている焼却炉について、自社施設であっても、申請は可能だろうと思う。
  • 永田座長 処理対象物の上限濃度について、5,000mg/kgという値も出てきているが、上限は定めても、現実には処理施設の実証試験の結果の範囲内、各施設で処理できる上限濃度というのは決まってくるということだが、御意見があればどうぞ。
  • 浅野委員 資料7の提案については、合理性があるのではないか。
  • 酒井委員 影山委員から、濃度だけでなくて量も考えよという指摘があったが、過去相当に真摯に考えてきている。この問題はリスク論的視点のみではなく、社会合意的な視点、さらに事業経営的な視点等々を含めて総合的に考えるべき問題。今基準論云々ということで意思決定するのであれば、平成21年3月の中環審の専門委員会段階でなされておくべき話。それに加えてこの5年10年、一定の基準でPCB処理を日本社会が進めてきたという、そういう実績も考えるべき。途中でルールを変えることの不利益ということも、相当に考えて決断すべきと考える。
  • 本多委員 資料2、資料7について、とりまとめに当たっては、それぞれの検討が、だれがどういう場でいつまでにやるということを、本検討委員会のコンセンサスとして書き込んでいきたい。
    この15年でいろいろ進歩した技術、例えばリスク評価の技術もあるので、それも活用しながら、全国に3トン程度が、薄く散らばっているPCBを処理する必要があると思われるが、そうしないのであればこの3トンのPCBのリスクに見合った処理、あるいは入口基準であるということを整理して、国民に見せていただきたい。また、結果のみではなく、経緯についても残していただきたい。
  • 浅野委員 最初に影山委員が言われた、経団連の意見書について、「既存施設の活用を念頭に置くべきである」とあるが、既存施設の活用については、地元合意というハードルがある。このように言われるのであれば、事業者もちゃんと乗り出して説得していただかないといけない。言っておいてあとは行政に任せるというのでは、ちょっと話が違うという気がする。自分たちも先頭に立って説得の努力をするというふうに言っていただければ、抵抗感はない。
  • 影山委員 浅野委員の御意見については、我々も所有者としての責任があるので、ぜひ行政に協力をして一緒になってやらせていただきたい。
    酒井委員の意見はよくわかるが、基準は基準で尊重する。尊重した上で処理をいかに進めるか。そういう点で、今のやり方では不十分なところがあると考えているので、そこの改善というのは、ぜひこれからも取り組んでいただきたい。
  • 環境省 もともとPCBに汚染されたものを、これまで0.5ppmということで進めてきた経緯がある。高濃度に汚染されたPCB廃棄物と、0.5ppmを超えるような微量PCB汚染廃電気機器等のリスクというのは、当然違うので、だからこそ処理のやり方として、高濃度のものについてはJESCOを中心にしてやってきた。微量のものについては、諸外国でもやられているように焼却処理というものをやってきた。どれだけ気を遣わなければならないかというのを、丁寧に実証試験を重ねて評価して、今まで積み重ねてきたものが確かにある。我々が今回さまざま御提案させていただいたのは、そういったこれまでの実績も含めながら、現実のリスクに見合うような処理の仕方というものでより合理的なものということで提案した。
    今回いろいろ御意見をいただいたが、もちろんそういった御意見を十分に参考にしながら、これまでのデータというものを活用して、微量PCB汚染廃電気機器等の処理を迅速に進めるために、我々も一生懸命やっていきたい。