令和４年度大気環境における放射性物質の モニタリング結果について

　環境省では、大気汚染防止法に基づき、放射性物質による大気汚染状況の常時監視（モニタリング）を行っています。
　具体的には、環境省が離島等で実施している環境放射線等モニタリング調査における測定結果及び原子力規制委員会が各都道府県で実施している環境放射能水準調査等における測定結果を取りまとめています。
　測定は、空間放射線量率及び大気浮遊じんの放射能濃度並びに大気浮遊じん及び大気降下物中の核種分析を行っており、このうち、環境省が行っている空間放射線量率並びに大気浮遊じんの全アルファ及び全ベータ放射能濃度等の測定結果については、随時、速報値としてインターネット上で公表しています。
　https://housyasen.env.go.jp/
 
　なお、令和４年度に、環境省が環境放射線等モニタリング調査において行った空間放射線量率、大気浮遊じんの全アルファ及び全ベータ放射能濃度並びに核種分析の調査結果の詳細は、以下の環境省ホームページに掲載しています。
　https://www.env.go.jp/air/rmcm/conf_cm3.html

　　　　令和４年４月１日から令和５年３月31日まで

ア　空間放射線量率
イ　大気浮遊じんの全アルファ及び全ベータ放射能濃度
ウ　核種分析（大気浮遊じん、大気降下物）

ア　空間放射線量率
　　307地点
　（環境放射線等モニタリング調査10地点、環境放射能水準調査等297地点）
イ　大気浮遊じんの全アルファ及び全ベータ放射能濃度
　　10地点（環境放射線等モニタリング調査10地点）
ウ　核種分析
　　①　大気浮遊じん
　　　　58地点
　　　（環境放射線等モニタリング調査10地点、環境放射能水準調査48地点）
　　②　大気降下物
　　　   51地点
　　　（環境放射線等モニタリング調査４地点、環境放射能水準調査47地点）

・　空間放射線量率、大気浮遊じんの全アルファ及び全ベータ放射能濃度、大気浮遊じん及び大気降下物の核種分析のデータを対象として、降水等の気象データを参考に、直近の過去３年間（平成31年４月から令和４年３月）及び東京電力福島第一原子力発電所事故（以下「原発事故」という。）の前３年間（平成20年１月から平成22年12月）の調査結果と比較し評価を行いました。
・　得られたデータの最大値、最小値及び平均値を求め、変動範囲を確認しました。

ア　空間放射線量率
　①　全国の空間放射線量率の範囲は、0.005～0.256μSv/h注１（マイクロシーベルト毎時）でした。今回の調査結果は、過去の調査結果（過去３年間及び原発事故の前３年間のデータ）と比べて特段の変化は見られませんでした。注２  
　②　全国307地点のうち、過去の調査結果（過去３年間及び原発事故の前３年間のデータ）と比べて最大値が高かった80地点については、降水が確認されており、一時的な上昇であることから自然現象に伴う空間放射線量率の変動と考えられます。  
　③　原発事故後に空間放射線量率が上昇した東北及び関東の地点については、空間放射線量率の平均値は過去３年間の調査結果と比べて減少若しくは同等となっています。  
　　（注１）本公表では、１Gy/h（グレイ毎時）=１Sv/h（シーベルト毎時）と換算して表示しています。
　　（注２）「特段の変化」とは、今回の測定結果が、直近の過去３年間（平成31年４月から令和４年３月）及び原発事故の前３年間（平成20年１月から22年12月）の調査結果と比較して外れた値ではない（降水による空間放射線量率の一時的な上昇及び移設等による周辺環境の変化に伴う値の変化を除く。）こととして専門的評価を受けて確認したものです。  

イ　大気浮遊じんの全アルファ及び全ベータ放射能濃度
　①　今回の調査結果は、概ね過去の調査結果（過去３年間及び原発事故の前３年間のデータ）と比べて平均値に特段の変化は見られませんでした。  
　②　過去の調査結果（過去３年間及び原発事故の前３年間のデータ）と比べて最大値が高かった地点についても、大気浮遊じんの全ベータ/全アルファ放射能濃度比の上昇は見られなかったこと及び空間放射線量率測定における通過率の低下が見られないことから、自然現象に伴う変動と考えられます。  

ウ　核種分析
　①　大気浮遊じん
　　・　γ線スペクトロメトリーによって分析した結果、一部の調査地点では、人工放射性核種であるセシウム137がわずかに検出されたものの、ほとんどの地点において不検出でした。なお、セシウム134についてはすべての地点で不検出でした。
　　・　過去の調査結果（過去３年間及び原発事故の前３年間のデータ）と比べて特段の変化は見られなかったことから、新たな事象による人工放射性核種の影響は認められなかったものと考えられます。
　②　大気降下物
　　・　γ線スペクトロメトリーによって分析した結果、一部の調査地点では、人工放射性核種であるセシウム134及びセシウム137が検出されたものの、これらほとんどの地点においてわずかな検出でした。
　　・　概ね過去の調査結果（過去３年間及び原発事故の前３年間のデータ）と比べて特段の変化は見られなかったことから、新たな事象による人工放射性核種の影響は認められなかったものと考えられます。

　環境省では、令和５年度も引き続き、全国の離島等の10地点において大気環境における放射性物質のモニタリングを実施中です。この結果については、原子力規制委員会が各都道府県において実施している環境放射能水準調査等と合わせて令和７年３月に公表する予定です。