報道発表資料

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2024年03月22日
  • 大気環境

令和5年度アスベスト大気濃度調査結果について

1.環境省では、アスベストによる大気汚染の状況を把握し、今後のアスベスト飛散防止対策を検討するための基礎資料とするとともに、国民に対し情報提供するため、平成17 年度から大気中のアスベスト濃度を調査しています。

2.令和5年度に全国38 地点で調査した結果を公表します。

令和5年度アスベスト大気濃度調査結果について

1 調査目的

本調査は、平成17年12月27日付け「アスベスト問題に係る総合対策」(「アスベスト問題に関する関係閣僚による会合」決定)に基づき、アスベストによる大気汚染の状況を把握し、今後のアスベスト飛散防止対策の検討に当たっての基礎資料とするとともに、国民に対し情報提供するために平成17年度から毎年度実施しているものです。

2 調査地点・調査方法

(1)調査地点

調査地点は、環境省が平成17年度から継続して調査を実施している33地点及び令和5年度に地方公共団体から推薦のあった解体現場等の5地点(計38地点)です。
このうち、解体現場等を含む発生源周辺地域は17地点、発生源の影響を受けない住宅地域等のバックグラウンド地域は21地点です。
 
表1 調査地点の内訳
調査区分 調査時期 調査地点 発生源周辺地域調査地点内訳 バックグラウンド地域調査地点内訳 解体現場
  調査箇所 旧石綿製品製造事業場等 廃棄物処分場等 蛇紋岩地域 高速道路及び幹線道路沿線 住宅地域 商工業地域 農業地域 内陸山間地域 離島地域
継続調査地域 令和5年8月~12月 33 64 3 3 6 7 5 1 4 4
令和5年度調査地域 5 30 5

(2)調査方法

試料の採取及び分析は、「アスベストモニタリングマニュアル(第4.2版)」(令和4年3月 環境省水・大気環境局大気環境課)に基づいて行いました。
採取した試料については、位相差顕微鏡を用いて試料中の石綿及びその他繊維を含む総繊維数濃度を測定し、総繊維数濃度が1本/Lを超過した場合は、分析走査電子顕微鏡法で石綿繊維数濃度を測定しました。

3 調査結果の概要

(1)位相差顕微鏡法による地域分類別の総繊維数濃度結果

発生源周辺地域(解体現場は施工区域周辺)及びバックグラウンド地域において、総繊維数濃度の幾何平均値は1本/Lを超過しませんでした(表2参照)。
なお、解体現場においては、飛散・漏えい確認のために集じん排気装置出口等において行った調査の結果を参考として示しています。
表2 位相差顕微鏡法における地域分類別の総繊維数濃度結果
地域分類 地点数 測定箇所数 測定データ数 総繊維数濃度
最小値(本/L)
(3日間の幾何平均)
最大値(本/L)
(3日間の幾何平均)
幾何平均値
(本/L)
発生源周辺地域 旧石綿製品製造事業場等
廃棄物処分場等 3 6 6 0.070 1.4 0.16
蛇紋岩地域 3 6 6 0.081 0.46 0.21
高速道路及び幹線道路沿線 6 12 12 0.12 0.39 0.20
バックグラウンド地域 住宅地域 7 13 13 0.056 0.28 0.15
商工業地域 5 10 10 0.10 0.44 0.21
農業地域 1 2 2 0.095 0.20 0.13
内陸山間地域 4 7 7 0.056 0.36 0.092
離島地域 4 8 8 0.056 0.30 0.14
解体現場(施工区域周辺) 5 20 20 <0.11 15 0.74
合計 38 84 84 - - -
(参考)解体現場の集じん排気装置出口等における調査結果 地点数 測定箇所数 測定データ数 総繊維数濃度
最小値(本/L) 最大値(本/L) 幾何平均値(本/L)
解体現場(セキュリティゾーン出入口) 5 5 5 0.51 15 2.7
解体現場(集じん排気装置出口) 5 5 5 0.11 6.9 0.33
合計 10 10 - - -
注1)検出下限値は0.056本/L(ただし、解体現場の検出下限値は0.11本/L)
注2)施工区域周辺とは、解体現場等の直近で一般の人の通行等がある場所との境界
注3)解体現場以外の地域については、各測定箇所で3日間(4時間×3回)総繊維数濃度を測定しました。また、得られた個々の測定値を幾何平均した値を示しています。

(2)分析走査電子顕微鏡法による石綿繊維濃度結果

総繊維濃度数が1本/Lを超過した16試料について分析走査電子顕微鏡法により石綿繊維数濃度を測定しました。その結果、2試料で石綿繊維数濃度が1本/Lを超過しました(詳細、表3参照)。
※ 環境省の近年のモニタリング結果から、一般大気環境中の総繊維数濃度が概ね1本/L以下であることから、飛散・漏えい確認の観点からの目安を石綿繊維数濃度1本/Lとしています。
 
表3 総繊維数濃度が1本/Lを超過した試料の分析走査電子顕微鏡法測定結果
都道府県名 地域分類 位相差顕微鏡法 分析走査電子顕微鏡法
(長さ5μm以上、幅0.2μm以上)
石綿濃度
(本/L)
総繊維数濃度
(本/L)
繊維数割合(%)
クリソタイル クロシドライト アモサイト その他
石綿繊維
その他の繊維
大阪府 廃棄物処分場等 2.8 0 0 0 0 100 ND
大阪府 廃棄物処分場等 1.7 0 0 0 0 100 ND
北海道 解体現場
(施工区画周辺)
1.0 0 0 0 0 100 ND
北海道 解体現場
(施工区画周辺)
1.2 0 0 0 0 100 ND
北海道 解体現場
(集じん排気装置出口)
6.9 0 0 94.9 0 5.1 6.5
山梨県 解体現場
(施工区画周辺)
15 1.5 0.7 0.7 0 97.1 0.4
山梨県 解体現場
(施工区画周辺)
2.3 0 0 0 0 100 ND
山梨県 解体現場
(施工区画周辺)
2.8 0 0 2.6 0 97.4 <0.2
山梨県 解体現場
(施工区画周辺)
5.6 9.6 0 4.1 0 86.3 0.8
山梨県 解体現場
(セキュリティゾーン出入口)
9.6 0 0 0 0 100 ND
秋田県 解体現場
(セキュリティゾーン出入口)
15 0 0 68.4 0 31.6 10
大阪府 解体現場
(施工区画周辺)
1.4 0 0 0 0 100 ND
大阪府 解体現場
(施工区画周辺)
1.7 0 0 0 0 100 ND
大阪府 解体現場
(施工区画周辺)
1.8 0 0 0 0 100 ND
大阪府 解体現場
(セキュリティゾーン出入口)
2.8 0 0 0 0 100 ND

4 調査結果を踏まえた対応

3(2)において石綿繊維数濃度が1本/Lを超過した試料が確認された調査地点における対応は以下のとおりです。
北海道の「解体現場等(集じん排気装置出口)」では、測定実施にデジタル粉じん計の数値が上昇していたため、集じん排気装置のフィルタにズレが生じている可能性が考えられます。なお、調査結果は、速やかに北海道へ提供し、北海道から施工業者へ指導等がなされています。
秋田県の「解体現場(セキュリティゾーン出入口)」については、作業員の出入り時にファイバーモニターの変更が大きくなっていたことから、作業員の出入りが影響している可能性が考えられます。ただし、負圧隔離養生内の負圧は担保されていたため、セキュリティゾーン外へ常時漏えいしていた可能性は低いものと考えられます。

環境省では、引き続きアスベストによる大気汚染の状況を把握するため、令和6年度もアスベスト大気濃度調査を行います。

連絡先

環境省水・大気環境局環境管理課環境汚染対策室
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8293
室長
鈴木 清彦
室長補佐
児玉 康宏
担当
松永 季実果