報道発表資料
環境省では、平成17年度より実施している自主参加型国内排出量取引制度の第1期(平成17年度開始分)が本年夏に終了したことを受けて、その結果についての評価を行うための委員会を開催し、有識者の方々から本制度の第1期事業を評価、総括していただきました。今般、評価報告書をとりまとめましたので公表いたします。
1.自主参加型国内排出量取引制度評価委員会について
(1)背景
- 環境省では、2005年度(平成17年度)から、自主参加型国内排出量取引制度を実施しており、2007年9月をもって第1期事業(平成17年度事業)が終了した。
- 第1期事業の成果について客観的に評価し、今後の制度設計・改善に繋げていくために、環境省では本分野への知見、経験を有した有識者からなる「平成17年度自主参加型国内排出量取引制度(第1期)評価委員会」を設置し、本事業の成果に対する評価を行った。本報告書はその評価及び提言を取りまとめたものである。
(2)メンバー
委員長
- 植田和弘(京都大学大学院経済学研究科教授)
委員
- 大塚直(早稲田大学大学院法務研究科教授)
- 藤井良広(上智大学大学院地球環境学研究科教授)
- 三田真己(アーガス・メディア・リミテッド 日本支局代表)
- 村井秀樹(日本大学商学部教授)
- 諸富徹(京都大学公共政策大学院・大学院経済学研究科准教授)
2.評価報告書について
(1)構成
- はじめに
- 本報告書の概要
- 自主参加型国内排出量取引制度の概要及び結果
- 自主参加型国内排出量取引制度第1期事業(2005年~2007年)の評価
- 自主参加型国内排出量取引制度に対する提言
- 付録
(2)概要
第1期事業(2005年~2007年)の概要
[1] 第1期事業の概要
- 排出削減目標を有し、排出削減を実施する参加者(目標保有参加者):31社
- 取引参加者:7社
- 排出量の検証機関:12社
- 目標保有参加者31社による削減対策実施年度排出量:1,288,543 tCO2
- 全目標保有参加者が目標を達成
- 基準年度からのCO2削減量:377,056tCO2(基準年度比29%の削減)
- 当初の排出削減約束量である273,076tCO2(基準年度比21%の削減)を大幅に超過して達成
- 排出枠は24件、合計82,624 tCO2が取引された。うち、取引仲介システム(GHG-TRADE.com)を活用した取引の平均価格1,212円/tCO2
[2] 第1期事業およびその経験を踏まえた制度インフラの整備
- 排出枠を管理するための電子システム(自主参加型国内排出量取引登録簿システム)の構築
- 排出量を管理するための電子システム「排出量管理システム」の構築
- 排出枠の取引を支援するWeb上の仲介システム(GHG-TRADE.com)の構築
- 目標保有参加者による排出量の「モニタリング・報告ガイドライン」の策定
- 検証機関による第三者検証を実施するための「検証ガイドライン」の策定
第1期事業の評価概要
- [1]
- 排出量のモニタリング・算定及び第三者検証の実施、登録簿システムを活用した排出枠の取引・移転、遵守評価等からなる自主参加型国内排出量制度を構築し、3年間にわたる事業サイクルを実際に運営・完遂することができた。
- [2]
- 事業開始時の全目標保有参加者の排出削減約束量合計が基準年度排出量合計の21%であったところ、実際には29%の削減が達成されており、当初の予測量を大幅に上回る削減が達成された。
- [3]
- 第1期事業の目標保有参加者は比較的中小規模の事業所であり、これは中小規模事業所においても高い削減ポテンシャルが存在することを示している。
- [4]
- 我が国で始めて有価による排出枠の取引が実施されたことにより、排出量取引に係る契約や企業会計処理等、排出枠の取引に関連した実務における知見が蓄積された。
- [5]
- 削減対策実施年度の排出量が初期割当量を上回った事業所数は13件存在したが、いずれも排出枠の取引を行うことで目標を達成した。これによって、排出量取引が目標保有参加者の目標達成のための柔軟性措置として機能することが実証された。
第1期事業への評価を踏まえた提言
提言1:目標設定方法や検証方法などルールの改善
- 第1期事業の結果を踏まえ、目標設定方法や検証方法等についての改善に向けた検討を行う必要がある。
- [1]
- ベンチマーク方式を含めた目標設定方法についての検討
- [2]
- 効率的かつ高精度な排出量のモニタリング・検証に向けた検証方法の改善
提言2:参加者数の拡大
- 参加者が第1期では目標保有参加者31社、取引参加者7社であり、排出量取引は限定的に行われていたとも言えるが、本制度の政策的意義・効果を十分に実現するためには、参加者数を拡大していくことが望ましい。そのために必要なこととして以下の諸点が挙げられる。
- [1]
- 目標設定方法の改善
- [2]
- 参加形態の多様化
- [3]
- 海外市場とのリンク
- [4]
- より広範な部門の参加を可能とするルールの検討
- [5]
- 積極的な情報開示・普及
提言3:取引の円滑化のための取引システムの改善
排出枠の価格が、CO2排出コストの明示的なシグナルとして、事業者の排出削減対策へのインセンティブとなるためには、一定量の排出枠の取引が不可欠である。このため、以下の諸点に留意して、取引の円滑化を促進する必要がある。
- [1]
- 取引参加者の参加拡大
- [2]
- 取引実務に係る事業者の負担軽減
- [3]
- 会計処理及び税務処理に関する取り扱いの明確化
(3)本文
本文については、別添資料をご覧下さい。
添付資料
- 連絡先
- 環境省地球環境局地球温暖化対策課市場メカニズム室
直通:03-5521-8354
代表:03-3581-3351
室長 : 高橋 康夫(6737)
補佐 : 二宮 康司(6757)
担当 : 吉田 宏克(6781)
関連情報
過去の報道発表資料
- 平成19年12月17日
- 「始動する日本の排出量取引-自主参加型国内排出量取引制度の経験と今後の展望」の開催について(お知らせ)
- 平成19年9月11日
- 自主参加型国内排出量取引制度(第1期)の排出削減実績と取引結果について