報道発表資料
<調査の概要>
1.背景・目的
人為的に持ち込まれた外来生物が既存の生態系や農林水産業に悪影響を及ぼす事例が
報告されていることを踏まえ、平成16年6月に特定外来生物被害防止法が成立し、外来生物の適切な取扱いが求められることとなった。
公共事業においても、工事法面の早期緑化等を図るため、これまで外来植物が緑化材として多く利用されているが、近年では外来生物問題への配慮から在来植物が積極的に利用されてきている。しかし、在来植物であっても外国で生産されたものや国内の他の産地から持ち込まれたものである場合、それが地域の生物多様性を損なうおそれがあるため、このような場合についても検討を行う必要性が指摘されている。
公共事業における緑化は国土保全等の観点を踏まえて利用植物を選定しており、代替緑化手法が確立していないのが現状である。また、一つの地域の中でも様々な事業で緑化が行われていることから、個別の事業毎ではなく事業横断的な検討を行うことが不可欠である。
このため、本調査では公共事業における外来緑化植物について、国立公園等の自然性の高い地域をモデル地域として、利用植物の現状把握、植物の特性と地域の自然環境の実情に応じた緑化植物取扱指針等の検討を行い、生物多様性の保全と国土保全という緑化植物に求められる機能を両立し得る緑化方策の推進を図ることを目的として調査を行った。
2.調査対象
本調査の対象とする緑化植物は、「特定外来生物等専門家会合」において整理されている「別途総合的な検討を進める緑化植物」の対象植物を主体としつつ、我が国の法面緑化等において一般的に使用されている外来植物(国内に自然分布域を有する種であっても国外から導入されている外国産在来種を含む)を対象とした。
3.調査内容
本調査は、法面緑化等に用いられる外来緑化植物を中心として調査対象種の選定を行い、各省庁において現況における調査対象種の使用状況や影響実態等について確認を行うための調査を行った。
そして、この調査結果を踏まえて、対象とする外来緑化植物の取扱に係る基本的な考え方等について検討を行い、これを取りまとめた。
個々の調査や作業手順は別添フロー図のとおりである。
なお、本調査における調査対象種の使用状況や逸出状況実態調査等は、各省庁が個別に行い、その調査結果を総合することにより、全体としての取扱いに係る考え方を取りまとめた。
4.進め方
本調査は、関係省庁の担当者により構成される「連絡調整会議」を設け、この会議において全体の調整及び取りまとめを行った。
また、有識者等により構成する「研究会」を開催し、検討内容等についての指摘やアドバイスを受け、本調査の成果に反映した。
- ○連絡調整会議メンバー
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環境省自然環境局 農林水産省 農村振興局 同 生産局 林野庁 国土交通省 都市・地域整備局 同 河川局 同 道路局 同 港湾局 - ○研究会メンバー
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【専門委員】 天野 邦彦 (独立行政法人土木研究所水循環グループ上席研究員) 岡村 俊邦 (北海道工業大学工学部教授) 小川 恭男 (独立行政法人農業環境技術研究所生物環境安全部植生研究グループ長) 亀山 章 (東京農工大学農学部教授) 小林 達明 (千葉大学園芸学部助教授) 高橋 新平 (東京農業大学助教授) 竹内 美次 (独立行政法人森林総合研究所水土保全研究領域長) 中野 裕司 (中野緑化工技術研究所長) 濱野 周泰 (東京農業大学教授) 福永 健司 (東京農業大学講師) 松江 正彦 (国土技術政策総合研究所緑化生態研究室長) 嶺田 拓也 (独立行政法人農業工学研究所農村環境部環境評価研究室主任研究官) 鷲谷いづみ (東京大学農学生命科学研究科教授) -
【生産、流通、施工等関係者】 菊地 富夫 (社団法人全国特定法面保護協会 技術委員・緑化小委員会主幹) 小林 正勝 (社団法人日本種苗協会 芝・牧草部会) 佐藤 憲璋 (社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会 副会長) 高橋 一輔 (社団法人日本造園建設業協会) 松本 文巳 (全国芝生協会 事務局長) 三上 常夫 (社団法人日本植木協会 学術委員)
5.調査結果概要 ※別添資料参照
- (1)外来緑化植物の概念整理
- 調査を行うに当たり、緑化植物を「在来緑化植物」、「外来緑化植物」及び「(外国産)在来緑化植物」に区分し、定義を整理するとともに、「外来緑化植物」の位置づけを整理した。
- (2)調査対象種の選定
- 「特定外来生物専門家会合」において検討されている「別途総合的な検討を進める緑化植物」等45種を調査対象種として選定した。
- (3)調査対象種の現状把握
- 調査対象種による生態系等への影響又は影響の可能性等に関して文献等で指摘されている内容を整理した。
- 調査対象種の使用状況を把握することを目的として、国の関係機関に対し、法面緑化工事等に使用した植物等に係るアンケートを実施し取りまとめた。
- 調査対象種を使用した法面緑化地を対象として、調査対象種の逸出状況を把握することを目的として実態調査を実施し、使用種32種のうち24種が法面緑化地から逸出していることがわかった。
- 調査対象種の取扱を総合的に検討するために、調査対象種の有用性及び経済性について整理した。
- 統計資料収集及びヒアリング調査により調査対象種の生産・供給状況等の把握を行った。その結果、緑化植物の多くは国外からの輸入により供給されていることがわかった。
- (4)法面緑化等に係る現行制度等の把握
- 各省庁が所管する法面緑化等に関連する事業制度及び計画設計等に係る指針等の整理を行った。
- (5)生物多様性に配慮した緑化に係る技術等の現状把握
- 生物多様性に配慮した緑化工法のタイプ及び施工事例を整理した。また、調査対象種による影響の防除のための管理事例を整理した。
- 外国で整備されている、国内や特定の地域に新たな外来植物を導入する際の導入可否を評価する手法に関する情報を収集し、整理した。
- (6)影響等に係る問題点・課題の整理
- 現状を踏まえて、調査対象種による影響に係る問題を整理し、影響の回避・低減に向けた課題を整理した。
- (7)外来緑化植物による影響の回避・提言に向けた取組方策の取りまとめ
- 外来緑化植物による影響の回避・提言に向けた中長期的な対応方向の取りまとめを行った。
- (8)調査対象種の当面の望ましい取扱方向(案)の整理
- 調査対象種による影響の回避・低減を念頭に置いた望ましい取扱いを行うための基本的考え方(案)を調査対象種の有用性に配慮して整理するとともに、国内において指摘されている生態系及び農林水産業への影響に対応した調査対象種の望ましい取扱方向(案)を整理した。
なお、報告書全文については、下記ホームページの調査報告書検索で御覧いただけます。
http://nrb-www.mlit.go.jp/cgi-doc/DSS/Sech0300.cgi?id=20061024132156
添付資料
- 連絡先
- 環境省自然環境局国立公園課
直通:03-5521-8279
課長:鍛治 哲郎 (6460)
課長補佐:則久 雅司 (6442)
係長:田中 準 (6448)