報道発表資料
その結果、商工業地域など(II類型)の測定地点では環境基準値をすべて下回っていたが、一層の静穏を要する住宅地域など(I類型)の測定地点ではその52%で環境基準値を超えており、測定した28箇所全体の環境基準達成率は54%にとどまった。
これらの結果を踏まえ、環境省は、直ちに対策を強化するなど環境基準の速やかな達成に努めるよう、国土交通省、熊本県及び鹿児島県に対して要請を行った。
1.経緯
新幹線鉄道騒音については、環境基本法第16条の規定に基づき、生活環境を保全し、人の健康の保護に資する上で維持することが望ましい基準として「新幹線鉄道騒音に係る環境基準について」(昭和50年環境庁告示第46号)が定められ、地域の類型別の基準値及び達成目標期間が設定されている。このうち新設の新幹線鉄道に係る達成目標期間については、「開業時に直ちに達成され、又は維持されるよう努めるもの」とされている。
今般、九州新幹線新八代~鹿児島中央間(路線延長約130km。トンネルが約70%を占め、トンネル以外の区間は約40km)が、平成16年3月13日に開業したことに伴い、環境省では熊本県及び鹿児島県の協力を得て沿線の騒音測定を行い、環境基準の達成状況の把握を行った。
2.調査方法
- 測定実施機関・・・熊本県、鹿児島県
- 測定地点・・・熊本県:13地点、鹿児島県15地点 計28地点
- 騒音測定方法
環境基準の告示に定める方法にしたがい、連続して通過する20本の列車の騒音レベルを測定し、上位半数をパワー平均したものを各々の地点の評価値とした。
3.騒音調査結果
九州新幹線新八代~鹿児島中央間について、測定した28箇所における軌道中心から25m離れた地点の騒音測定結果をまとめたものが表1及び図1である。
騒音レベル(dB) | ||
---|---|---|
最大 | 最小 | |
熊本県 | 76 | 64 |
鹿児島県 | 74 | 66 |
全体 | 76 | 64 |
図1 騒音レベルの分布
4.環境基準の達成状況
新幹線鉄道騒音の環境基準については、都道府県知事が、主として住居の用に供される地域にはI類型を、商工業の用に供される地域等I類型以外の地域であって通常の生活を保全する必要がある地域にはII類型を当てはめ、それぞれI類型については70デシベル以下、II類型については75デシベル以下とすることとし、新設の新幹線鉄道は開業時直ちに達成されるよう努めることが定められている。
今回測定した九州新幹線新八代~鹿児島中央間について、測定した28箇所における軌道中心から25m離れた地点についての環境基準の達成状況を類型別に示したものが表2である。環境基準の達成状況については、I類型では48%、II類型では全ての地点で達成されており、全体では約54%の地点の達成にとどまった。このような環境基準達成率は、九州新幹線以前に供用開始された新幹線鉄道全体における達成率の37.6%を上回るものの、新設新幹線については、本来は開業時に環境基準を達成していることが望まれるところであり、なお一層の対策が必要となっている。
なお、振動については、環境基準はないが、指針値に照らして全ての地点で達成されていた。
測定地点数 | 達成地点数 | 達成率(%) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
I類型 | II類型 | I類型 | II類型 | I類型 | II類型 | 合計 | |
熊本県 | 11 | 2 | 5 | 2 | 45 | 100 | 54 |
鹿児島県 | 14 | 1 | 7 | 1 | 50 | 100 | 53 |
全体 | 25 | 3 | 12 | 3 | 48 | 100 | 54 |
5.今後の対応
環境基準が可及的速やかに達成されるよう、本日付けをもって国土交通省、熊本県、鹿児島県に対し要請を行った。その要旨は、次のとおりである。
【要請内容】
(国土交通省鉄道局あて)
- 最も基本的な施策である音源対策を直ちに強化し、環境基準の達成を図ること。
- 現時点で技術的に可能な音源対策を十分に講じても環境基準を達成できない場合は、今後、音源対策に関する技術開発に努め、実施可能なものから遂次音源対策への活用を図るとともに、住宅防音工事の推進を図ること。
- 環境基準の円滑な達成に資するため、関係機関と連携し、土地利用の適正化を図ること。
- 騒音・振動その他の環境の状態のモニタリングを行い、必要に応じて適切な環境保全対策を講じること。
- 今後の路線の延伸などの新幹線鉄道事業の推進に当たっては、環境保全の観点か ら、関係地方公共団体と十分連絡調整を図ること。
(国土交通省都市・地域整備局あて)
(熊本県及び鹿児島県あて)
- 環境基準の達成状況の把握のため、定期的に新幹線鉄道騒音を測定するよう努めること。また、測定結果については当省にその都度送付すること。
- 土地利用の適正化を図ることが必要であることに鑑み、関係部局及び市町村の連携に努め、沿線の土地利用の適正化に努めること。
- 建設主体及び営業主体が環境保全のため実施する音源対策又は住宅防音工事の促進のため、当該建設主体及び営業主体との連絡調整を図ること。
- 環境基準の地域類型を当てはめる地域の指定の処理基準については、既に通知したところであるが、今後とも必要な見直しを行われたいこと。
- 今後とも騒音・振動その他の環境の状態のモニタリングを行い、必要に応じて、適切な環境保全対策を講じること。
添付資料
- 連絡先
- 環境省環境管理局自動車環境対策課
課長 奥主喜美(6520)
課長補佐 二瓶文人(6523)