報道発表資料

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1996年12月10日

平成8年版「化学物質と環境」について

「化学物質と環境」(通称「黒本」)は、環境安全課が昭和49年以来実施している化学物質の環境調査結果をまとめて公表する年次報告書である。今回公表する平成8年版「化学物質と環境」は、平成7年度化学物質環境安全性総点検調査結果、平成7年度指定化学物質等検討調査結果、平成7年度有機スズ化合物に関する環境調査結果及び平成7年度非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査結果等についてとりまとめたものである。

(12月10日開催の中央環境審議会化学物質専門委員会(七野護委員長((社)日本食品衛生協会専務理事)に報告、審議を経て了承されたもの))

1.平成7年度化学物質環境安全性総点検調査結果の概要

 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律における既存化学物質を中心に、環境中での残留状況を調査するものである。

(1) 環境調査
 水系・大気系の一般環境において、合計34物質について環境残留性を調査したところ次のとおり。なお、この結果これまでの調査で、752物質について調査が行われ、そのうち、287物質が一般環境から検出されたこととなる。
1  水系調査
 ア. 水系環境中に残留していると予測される30物質について、残留が予測される媒体(水質・底質・魚類)を選び全国56地点で調査を実施した。
イ. その結果、1-ブタノール等17物質が検出された。検出された物質の大半は、検出濃度及び検出頻度からみて、特に問題を示唆するものではないと考えられるが、ビス(2-クロロエチル)エーテルなど一部の物質については、今後一定期間をおいて環境調査を行い、その推移を監視することが必要と考えられる。
2  大気系調査
 ア. 大気系環境中に残留していると予測される18物質について、全国18地点で調査を実施した。
イ. その結果、18物質すべてが検出された。検出された物質の大半は、検出濃度及び検出頻度からみて、現時点では特に問題を示唆するものではないと考えられるが、クロトンアルデヒドなど一部の物質については、今後一定期間をおいて環境調査を行い、その推移を監視することが必要と考えられる。
(2) 水質・底質の経年監視(水質・底質モニタリング)
1  環境中に残留する物質の水質・底質中の濃度を経年監視する調査であり、第一種特定化学物質を中心に、20物質について全国18地点で調査を実施した。
2  その結果、水質から5物質、底質から20物質すべてが検出された。これらの物質を 中心に今後とも監視を継続することとする。
(3) 指標生物の経年監視(生物モニタリング)
1  生物を対象に、環境中に残留する物質の濃度を経年監視する調査であり、第一種特定化学物質を中心に、22物質について全国21地点の魚類8種、貝類2種、鳥類2種について調査を実施した。
2  その結果、21物質が検出された。これらの物質を中心に今後とも監視を継続するこ ととする。

2.平成7年度指定化学物質等検討調査結果の概要

 指定化学物質を中心とした物質について、環境中での残留性及び人への暴露状況を調査するものである。

(1) 環境残留性調査
 指定化学物質及び第二種特定化学物質計12物質について、全国64地点(水質・底質35地点、大気29地点)で調査したところ、11物質が検出された。
(2) 暴露経路調査(日常生活において、人がさらされている媒体(一般大気、室内空気、食事)別の化学物質量に関する調査)
 指定化学物質及び第二種特定化学物質計6物質について、全国9地区各3世帯において調査したところ、一般大気及び室内空気からは調査した6物質すべてが、食事からは3物質が検出された。
(3) 環境残留性調査及び暴露経路調査の結果からの考察は次のとおり。
1  四塩化炭素、クロロホルムは環境中に比較的高い濃度で広範囲に残留している。トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジクロロプロパン、1,4-ジオキサンは、環境中に広範囲に残留している。これらの物質については、環境汚染の状況を監視するため、今後とも引き続き調査を実施していくことが必要である。
2  3,3'-ジクロロベンジジン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノ-  3,3'-ジクロロジフェニルメタンは、現時点では環境中の残留はほとんど認められないことから、今後の製造・輸入量等の動向を見つつ、一定期間をおいて調査を実施ないし調査の実施を検討することが適当である。

3.平成7年度有機スズ化合物に関する環境調査結果の概要

 トリブチルスズ化合物及びトリフェニルスズ化合物について、生物モニタリングでは生物(魚類、貝類、鳥類)を、また、指定化学物質等検討調査では水質、底質を対象として調査を実施した。調査結果についての評価は次のとおり。

(トリブチルスズ化合物)
 トリブチルスズ化合物は環境中に広範囲に残留しており、その汚染レベルは、生物及び底質においては概ね横ばい傾向であり、水質においては改善ないし横ばいの状況にある。現在の汚染レベルが特に危険な状況にあるとは考えられないが、一部地点で高濃度での検出がみられ、水生生物への生態影響の可能性もあることから、引き続き、環境汚染対策を推進するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。
(トリフェニルスズ化合物)
 トリフェニルスズ化合物は、水質、底質、生物とも改善の傾向にある。その汚染レベルは、生物については、一部地点で高濃度の検出がみられるものの、生物及び底質においては概ね横ばい、水質においては改善の傾向が続いている。なお、水質については、平成7年度、本調査開始以来初めて全地点で不検出となった。現在のトリフェニルスズ化合物の生産状況を考慮すれば、汚染状況はさらに改善されていくことが期待されるが、今後も引き続き、環境汚染対策を継続するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。

4.平成7年度非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査結果の概要

 ダイオキシン類、PCBsの一種であるコプラナーPCBsについて、環境中(底質及び生物)における残留状況を調査した。調査結果についての評価は次のとおり。

(ダイオキシン類)
1  ダイオキシン類の一般環境への汚染状況は、前年度までの調査結果と比較して大きく変化したとは認められないが、底質を中心に広範囲に検出されているため、今後とも、引き続きその汚染状況の推移を追跡して監視していくことが必要である。
2  また、ダイオキシン類の発生源や環境中の挙動などの汚染機構の解明及び毒性関連知見の収集に努めることが必要である。
(コプラナーPCBs)
 コプラナーPCBsの環境残留はPCB製品からの環境放出に由来すると考えられており、PCBは既に昭和47年に使用が中止され、昭和49年6月には化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づく第一種特定化学物質に指定されるとともに、平成4年7月には廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく特別管理産業廃棄物に指定されていることから、その汚染の拡大の可能性は少ないと考えられるが、かなりの濃度レベルで検出されているため、調査地点を増やした上で、今後とも引き続き汚染状況を調査し、その推移を追跡して監視することが必要である。
連絡先
環境庁企画調整局環境保健部環境安全課
課     長:中島 正治(内線6350)
 保健専門官:尾崎 福栄(内線6355)
 担     当:池本 光宏(内線6354)