報道発表資料

平成16年3月23日
自然環境
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平成15年度第2回ジュゴンと藻場の広域的調査手法検討会の結果について

 環境省は、沖縄本島周辺海域に生息するジュゴンの全般的な保護方策を検討するため、平成13年度から「ジュゴンと藻場の広域的調査」を実施してきました。
 本調査に関し、本日、平成15年度第2回「ジュゴンと藻場の広域的調査手法検討会」を開催し、本年度の調査結果を含む過去3カ年の全体の結果について中間報告を行うとともに、調査結果の取りまとめ方針等の検討を行いましたので、その結果の概要をお知らせします。

I.「ジュゴンと藻場の広域的調査」について

 本調査は、沖縄本島周辺海域に生息するジュゴンの全般的な保護方策の検討に必要な情報やデータを収集することを目的に、平成13年度から3カ年の予定で実施しているものです。


II.第2回検討会結果概要

  1. 検討会の目的
      平成15年度に実施した調査の中間報告及び3カ年にわたる調査の結果を取りまとめる方針を検討するに当たり、中間の段階で、生物学的・科学的知見を有する専門家の意見を聴くことを目的としています(今回が最終回となります)。
  2. 検討会の構成メンバー
    相生 啓子  青山学院女子短期大学講師 (海草)
    井田  齊  北里大学水産学部教授   (沿岸生態系)
    内田 詮三  沖縄美ら海水族館館長   (海棲哺乳類)
    粕谷 俊雄  帝京科学大学理工学部教授 (海棲哺乳類)
    香村 眞徳  財団法人沖縄県環境科学センター専務理事 (藻類)
    山田  格  国立科学博物館第一研究室長(海棲哺乳類)
     
  3. 平成15年度中間報告概要
      第2回検討会では、平成15年度「ジュゴンと藻場の広域的調査」の中間結果報告を行いました。
      あわせて、平成13年度及び14年度の調査結果を踏まえ、全体の取りまとめ方針について検討を行いました。概要は以下のとおりです。 (1) 浅場の海草藻場食跡調査(食跡の確認位置については、図1を参照)
    <目的及び平成15年度結果概要>
    • ジュゴンが摂餌したあとに海草藻場に残される食跡を調査し、ジュゴンが沖縄本島周辺のどのような藻場を利用しているのかを明らかにすることを目的とする。
    • 平成13年度は、沖縄本島周辺の藻場の分布を把握するため、航空写真を分析し、「沖縄本島浅場藻場分布図」を作成した。
    • 平成14年度は、「沖縄本島浅場藻場分布図」を分析し、海草藻場を[1]リーフに囲まれた海草藻場と、[2]外洋へ開けた海草藻場に区分した上で、リーフ内の海草藻場の食跡調査を実施し、名護市嘉陽地先及び名護市辺野古地先においてジュゴンの食跡を確認した。
    • 平成15年度は、外洋へ開けた海草藻場をマンタ法を基本として調査を実施し、名護市屋我地島済井出(やがじじま すみいで)沖で3本、その地点から北1kmの地点で1本、今帰仁村古宇利島(こうりじま)南の海草藻場10地点で合計138本及び知念村志喜屋沖で2本のジュゴンの食跡を確認した。
    (2) 深場の海草藻場調査
    <目的及び平成15年度結果概要>
    • これまでほとんど知見がなかった沖縄本島周辺の深場の海草藻場分布の概要を把握することを目的として実施。
    • 平成15年度は、水深50mから10mまでを、水中ソリに搭載したビデオカメラ(水中ビデオカメラシステム)を用いて調査した。
    • その結果、調査海域として選定した8海域のうち、辺野古海域、石川海域、金武湾及び中城湾の4海域で海草の出現が確認された。
    • 総延長観察距離約63kmのうち、約14パーセントの調査区間で海草が出現したが、いずれもその被度(方形枠(50cm×50cm)で5パーセント以下であり、浅海域の海草藻場の現存量に比べて著しく低いことがわかった。また、出現した海草はウミヒルモ属が大半であった。
    (3)ジュゴンの分布及び行動調査
    ア)航空機による目視調査(平成13年度から平成15年度全体の確認位置の概要は図1を参照)
    <目的及び平成15年度結果概要>
    • 縄本島周辺におけるジュゴンの分布を把握することを目的として実施。
    • 平成15年度は、平成13年度及び平成14年度に引き続き、沖縄本島周辺海域において、セスナ機によるジュゴンの目視調査を、夏期(平成15年7月1日〜8日)、及び秋期(平成15年11月5日〜12日及び12月16日)の2回に渡り実施した。
    • その結果、第1回調査にて、延べ5頭のジュゴンを確認し、第2回調査では延べ4頭のジュゴンを確認した。
    • 平成13年度からの調査全体では、延べ12頭を確認したこととなる。
    • なお、平成15年度の第1回調査で、沖縄本島の西海岸でジュゴンが確認されたが、これは国の調査では平成12年11月26日に防衛施設庁が実施した調査で1頭が確認されて以来、約2年7ヶ月ぶり。

    *平成15年7月3日に屋我地島付近で確認した2個体については、写真撮影のために復路で追確認したこと、時間が近接していることから、1頭としてカウントした。

    イ)陸上からの24時間観察調査
    <目的及び平成15年度結果概要>
      ジュゴンの餌場である浅場藻場の利用時間・形態等に関するデータを蓄積することを目的として実施。
    • 平成15年度は、ジュゴンの目撃例が多い名護市嘉陽地先海岸の沿岸部に観察用の櫓(やぐら:高さ8メートル)を設置し、平成15年9月24日から10月23日のまでの30日間(観察合計時間約700時間)、目視による調査を実施した。
    • 観察の結果、明らかなジュゴンの観察には至らなかった。
    • 夜間は、暗視鏡による観察を行った。なんらかの物体が3回確認されたが、ジュゴンであるとの断定にはいたらなかった。
    • なお、目視調査を補完するため平行して行った藻場の概況調査で、調査期間中にジュゴンが摂餌した思われる食跡が数箇所確認された。
    (4)ジュゴンの食性調査
    <目的及び平成15年度結果概要>
    • ジュゴンの食性を明らかにすることを目的として、平成13年度、平成14年度に引き続き、死亡個体の消化管(胃及び腸)の内容物の分析を行った。
    • 平成15年度に分析した個体は2個体(1995年12月に名護市安部にて羅網し死亡した個体及び2002年10月に熊本県牛深市に漂着した個体)。
    • 葉部と根部の割合、及び葉部の分析を行い、海草の構成種を分析した。
    • 名護市安部の個体の胃内容物については、乾燥重量で58.7パーセントが葉部、41.3パーセントが地下部(地下茎・根)であった。
    • また、名護市安部の個体については、葉部から判別できる内容物構成種は乾燥重量全体でリュウキュウスガモが10.99パーセント、ボウバアマモが5.48パーセントであった。また、咀嚼が完全で判別不可能なものが42.20パーセントを占めた。
    • なお、熊本県牛深市の個体については、胃内容物は、相対被度でノコギリモク(約45パーセント)、ホンダワラ(約31.7パーセント)、クロメ(約16.7パーセント)、ヤツマタモク(約6.7パーセント)という結果となった。
    (5)ジュゴンの遺伝学的特性調査
    <目的及び平成15年度結果概要>
    • 太平洋、インド洋に広く分布するジュゴンと沖縄本島近海に生息するジュゴンの類縁関係を把握することを目的として、平成13年度にDNAの分析手法のマニュアルを整理し、平成14年度、平成15年度に海外と国内から得られた骨、歯、糞、筋肉などのサンプルからDNAを抽出し、その特性を比較検討した。
    • 平成15年度は29サンプル中9サンプルのDNA抽出に成功し分析を行った。
    • 平成14年度以降の調査の結果、以下のことが判明した。
      [1] オーストラリアの個体群と他海域の個体群は明確に区別することができる。
      [2] 沖縄の個体とフィリピン産の個体には生息域によりいくつかの小さな母系集団があり、両個体群は若干の相違はあるものの、同様もしくは同じ塩基配列の組成を持った同一の母系集団を共有している可能性を示唆する。
    (6)ジュゴンのレスキュー対策(施行委任をしている沖縄県から報告)
    <目的及び平成15年度結果概要>
    • 魚網に混獲されたり、海岸に漂着したジュゴンのレスキュー体制を整備し、現存するジュゴンの個体数の減少を防ぐことを目的とし、平成15年度に沖縄県の文化環境部局、水産部局及び教育庁、関係市町村、漁業協同組合、学識経験者並びにNGOから構成される検討会を設置し、救助、リハビリ、放流などに関する方法マニュアルを作成した。
    • 平成15年度は、レスキューの技術を浸透させるため、7の漁業協同組合(国頭村、今帰仁村、宜野座村、金武町、石川市、与那城町及び勝連町の各漁業共同組合)の協力を得て、大型定置網、小型定置網及び刺し網にジュゴンが混獲された場合を想定し、ジュゴンの模型を使用して、レスキューから搬送までの一連の手順について、実地訓練を行った。訓練には、近隣の漁協からも参加者があった。
    • レスキューの手順については、ビデオテープに編集し、来年度以降の普及に活用する予定。

III.3カ年の調査の取りまとめ方針

  • 今後の保護の取組に活用できるよう、事務局で最終取りまとめの作業を進めるに際して、科学的視点から各検討員の充分なチェックを得ながら、データの整理を行う。
  • 浅場の海草藻場調査、ジュゴンの食跡調査及び分布調査の結果等を総合的に分析し、ジュゴンの生息地、採餌場、藻場の良好度等の観点から、沖縄本島周辺の海域全体について、おおまかな評価を試みる。
  • 沖縄本島周辺のジュゴンについては、極めてまばらに広域に分布していることが示唆されたが、生息個体数については、確認頭数が少ないため、工夫が必要であるが、専門家の知見を得つつ、推定を試みる。

*最終の報告書は、6月を目途に取りまとめる予定です。

添付資料

連絡先
環境省自然環境局野生生物課
課長  名執 芳博 (内線6460)
 専門官 清野 達男 (内線6464)

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