報道発表資料

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2002年01月15日
  • 地球環境

アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)第1回会合の結果について

環境省は、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)、国連環境計画(UNEP)及びタイ科学技術環境省との共催により1月12日(土)及び13日(日)の両日、アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)第1回会合をタイ・バンコクで開催した。
 フォーラム議長は橋本元総理が務め、川口環境大臣も出席した。
 このフォーラムは、アジア太平洋地域に相応しいより衡平で持続可能な発展のモデルを2004年までに提示することを目的に、アジア太平洋地域の環境大臣が集まる年次会合(エコアジア)で昨年10月に設立された。今回の会議では、本年8月に南アフリカで開催されるヨハネスブルグサミットに対する提言内容の検討が行われ、特に重要なテーマとして、淡水資源、再生可能エネルギー、貿易及び資金に関する問題が議論された。
 フォーラムの提言は、5月初旬にジャカルタで開催される第2回実質会合で取りまとめられる予定。
アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)第1回実質会合

1. 日   時  平成14年1月12日(土)、13日(日)
 
2. 場   所  国連会議場(タイ、バンコク)
 
3. 主   催  国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)
 国連環境計画(UNEP)
 タイ王国科学技術環境省
 日本国環境省 
出 席 者  フォーラムメンバー13人、その他7人(別添1参照)
 
4. 会議結果概要:
 
(1) 本会合は橋本議長を含むメンバー13人が出席して開催された。冒頭、タイ王国ソンタヤ科学技術環境大臣(タクシン首相の代理)、キム・ハクスESCAP事務局長、アンドリュースUNEPアジア太平洋地域事務所長から挨拶があった。
(2) APFED議長である橋本元総理の議事進行の下、ヨハネスブルグサミットに対する提言に盛り込む内容について、特に重要な課題である、[1]淡水資源、[2]再生可能エネルギー、[3]貿易、[4]資金の4テーマを中心に議論が行われた。議論はそれぞれのテーマごとに事務局が作成した討議用ペーパー(別紙2~5)に基づいて行われた。議論の概要は、下記5.のとおり。
(3) 会議では、直前に関連会合として開催された専門家会合と各界関係者(マルチステークホールダー)会合の結果も報告された。
(4) フォーラム事務局((財)地球環境戦略研究機関)は今回出された意見を踏まえて提言素案を作成し、事前に各メンバーの意見を聞いた上で、提言案を作成することになった。
(5) 次回会合は5月4日(土)~5日(日)の2日間、ジャカルタ(インドネシア)で開催することが合意された。次回会合では、今回の議論を踏まえて作成されるヨハネスブルグサミットへの提言案について議論される予定。
  (6) 今回の会合に合わせて、各界関係者(マルチステークホルダー)会合及び専門家会合がそれぞれ、1月10日(木)と1月11日(金)に開催され、その結果が各議長より実質会合冒頭に報告された。両議長の報告概要は別紙のとおり(別紙6・7)。
 
5. 議論の概要
 
(1) 総論
4つのテーマに関する提言のほかに横断的な提言の必要性が指摘された。また、「ガバナンス(統治、管理・経営)」を個別テーマを繋ぐ視点とすべきとの意見も出された。
良いガバナンスと実施のメカニズムの確保が重要性が強調された。
地球憲章(アースチャーター)に盛り込まれたような環境倫理は、人々の態度、価値観、生活様式の変革を求めるもので、APFEDからの発信が必要とされた。
APFEDは各国政府の意見に拘束されない、有識者の議論の場。この特色を活かして、ヨハネスブルグに対して、数は少なくとも、極力、具体的で効果のある提言を行う必要がある。
 
(2) 淡水資源
淡水資源は、持続可能な発展を実現していく上で、最も重要な柱であるとの認識が共有された。
数多くの有意義な指摘の中から、特に注目をすべき点は次のとおり。
  - 淡水資源は幅広く利用されるとともに多くの活動の影響を受けることから多角的、相互的な取り組みが必要。また、全ての関係ステークホルダーの参加が必要。
- 国際水域の問題に対しては全ての関係国の協力が不可欠。
- 水を巡る紛争を解決するにあたり、上流・下流を含めた総合的な視野が必要。
- 社会、経済、政治、文化的な側面をも考慮した水問題への対応が重要。
- 水の価格付けに関しては、経済財としてだけでなく、社会的、環境的な価値の考慮。貧しい人への負担も考慮。
これらの諸点は、ヨハネスブルグ・サミットに提言するだけでなく、2003年に開催する第3回世界水フォーラムでの議論にも反映させる。
 
(3) 再生可能エネルギー
持続可能な開発を達成するためには再生可能エネルギーが必要であることは認識されているが、何故、その導入が進まないかについて議論が行われた。
再生可能エネルギーの普及促進を阻害している要因として、先進国と途上国の感情的な溝(先進国が化石燃料を利用しているのに、何故途上国は、再生可能エネルギーを利用しなくてはいけないのか。)、化石燃料関連の助成金や補助金、知的所有権の問題があげられる。
再生可能エネルギーの普及促進のためには、使いやすい技術や人々が実際に必要とする技術の開発、市場メカニズムの活用、助成金が今後再生可能エネルギーの有効活用に使われるようなグッド・ガバナンス、利用者に対する適切な情報提供が必要とされた。
この他、先進国だけでなく途上国自身の生活態度や価値観の転換、省エネルギーの促進(特に途上国における積極的な推進)、グローバルパートナーシップによる国際協力推進の重要性が指摘された。
 
(4) 貿易
国情に応じた能力開発の必要性が強調された。
直接投資を受け入れるにあたっては、当該受け入れ国において適正かつ円滑な投資が可能となるよう社会環境の整備を図ることが必要。
国際貿易自由化の下で、途上国の生産者が市場へのアクセスをより容易にするために、情報技術を活用すべき。
環境にやさしい技術を積極的に推進できるようなメカニズムの必要性が指摘された。
伝統的かつ環境にやさしい技術とモダンな技術を連結することが必要。
輸出品に関連した資源の適正管理、環境にやさしい技術の導入、市場へのアクセスの向上のために関係者間のパートナーシップの構築が必要。
能力開発や環境にやさしい技術の普及のための南・南協力について検討すべき。
貿易自由化がもたらす環境面および社会面への影響を軽減するため、最低限維持されるべき基準の設定が必要。
(開発にあたって)自然資源や人的資源などの自国の宝を守るとともに自国の魂を売ってはいけないとの指摘がなされた。
 
(5) 資金
持続可能な開発に向けた資金調達に関する目標を実現可能なレベルまで下げる必要があり、その新しい目標は必ず達成すべき。あるいは資金調達のあり方をより柔軟にすべき。
最貧国の対外債務に関して行動を起こす必要(債務と自然のスワップ、債務と貧困削減のスワップ等)。債務をかかえている国々が他国からの資金に期待するだけでなく、予算改革など各国が取り組む必要がある。債務放棄した場合の資本市場への影響について考慮すべき。
政府開発援助について、ドナー国、受入国側ともに責任を持つべき。
途上国自身、社会・環境分野への支出を増やすべき。
途上国の金融機関に対する能力開発が必要。
民間資金を持続可能な開発に向けるためには、民間の銀行がローンなどに環境や社会的な要因を考慮に入れる、銀行を活性化させる、などが重要な役割を果たす。また、資金を持続可能な開発に向けるための財政的なインセンティブ、奨励策を設ける必要性が指摘された。
商品の価格に、生産に必要であったすべてのコストも含むよう、世界で調和できるような協定が必要である。
GEFのアジア太平洋版などの新たな資金メカニズムを検討すべき。
環境会計に向けた民間・政府の取組みを促進すべき。
グローバル税制(Global Tax)について検討すべき。
 
6. 参考資料
 
別添1:  参加者リスト
別紙2:  淡水資源に関する討議用ペーパー
別紙3:  再生可能エネルギーに関する討議用ペーパー
別紙4:  貿易に関する討議用ペーパー
別紙5;  資金に関する討議用ペーパ
別紙6:  専門家議長サマリー
  別紙7:  マルチステークホルダー会合議長サマリー


参考資料はこちら

 
 
 

添付資料

連絡先
環境省地球環境局総務課
課  長:寺田 達志(6710)
 調査官:星野 一昭(6720)
 補  佐:島田 幸司(6721)
 担  当:重 浩一郎(6726)