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2001年07月27日
  • 地球環境

国家CFC管理戦略について

1999年12月のモントリオール議定書第11回締約国会合において、先進国は本年(2001年)7月末までに、回収、再利用、処理等を含む「国家CFC管理戦略」を策定し、UNEP(国連環境計画)のオゾン事務局に提出することが決定された。
 このため、今般、関係12省庁と検討を行い、我が国における「国家CFC管理戦略」を取りまとめ、UNEPのオゾン事務局に提出した。
 その概要は、以下のとおり。
 
(1) 戦略の基本的考え方
冷媒分野及び発泡分野において、現に使用されている製品・機器内にCFCがそれぞれ約22,000トン、約40,000トンと相当程度残存していることから、次に掲げる考え方を基本とし、2001年4月に施行された「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)」によるフロン回収を含め、現在の取組をさらに推進していくとともに、2001年6月に成立した「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収破壊法)」を早期かつ適切に実施していく。
[1] CFC使用製品・機器の生産から使用、廃棄に至るライフサイクルの中で、CFCの使用製品・機器からの漏洩・放出等による大気中への排出を抑制する。
[2] 技術的・経済的実現可能性を考慮しつつ、環境保全の観点から支障を生じないようなCFCの代替物質・技術への転換を促進することにより、CFCの使用削減を推進する。
[3] CFC使用製品・機器ごとに、生産、使用、廃棄等の経路や実態が異なり、また、関与する事業者が多岐にわたるという実状を適切に把握するとともに、これを踏まえて、各関係者がそれぞれの適切な役割分担の下で、製品・機器の整備時・廃棄時におけるCFCの回収及び回収したCFCの適切な管理・破壊を推進する。
 
(2) 分野ごとの現状及び取組
「CFC製造・輸入分野」、「冷媒分野」、「発泡分野」、「洗浄分野」、「エアゾール分野」及び「破壊処理」に分け、それぞれ現状と取組を記述するとともに、今後、特に推進する取組については明記した。
さらに、「冷媒分野」においては、業務用冷凍空調機器、カーエアコン、家庭用冷蔵庫に区分し、使用時(漏洩防止等)における取組、使用の削減の取組、廃棄時における取組を記述した。
また、「発泡分野」においては、家庭用冷蔵庫用断熱材、建築用断熱材に区分し、転換の取組、廃棄時における取組を記述した。
 
1. 背 景
 
 1999年12月のモントリオール議定書第11回締約国会合において、先進国は本年(2001年)7月末までに、回収、再利用、処理等を含む「国家CFC管理戦略」を策定し、UNEP(国連環境計画)のオゾン事務局に提出することが決定された。
 このため、関係12省庁(内閣官房、内閣府、警察庁、防衛庁、総務省、外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)から構成される「オゾン層保護対策推進会議」(事務局:環境省、経済産業省)において検討を行い、この度、我が国における「国家CFC管理戦略」を取りまとめた。その概要は以下のとおりである。
 
2. 国家CFC管理戦略の概要
 
 (1)CFCの管理についての基本的考え方
  我が国におけるCFCの管理については、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法)」及び同法に基づき策定された「特定物質の排出抑制・使用合理化指針(排出抑制・使用合理化指針)」や産業界・地方公共団体等の関係者の取組によって進められてきている。
  しかしながら、冷媒分野及び発泡分野において、現に使用されている製品・機器内にCFCが2000年末現在でそれぞれ約22,000トン、約40,000トン(発泡分野については、暫定的に推計したもの)と相当程度残存していることから、次に掲げる考え方を基本とし、2001年4月に施行された「特定家庭用機器再商品化法」(家電リサイクル法)によるフロン回収の実施を含む、現在の取組をさらに推進していくとともに、2001年6月に成立した「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収破壊法)」を早期かつ適切に実施していく。
    [1] CFC使用製品・機器の生産から使用、廃棄に至るライフサイクルの中で、CFCの使用製品・機器からの漏洩・放出等による大気中への排出を抑制する。
    [2] 技術的・経済的実現可能性を考慮しつつ、環境保全の観点から支障を生じないようなCFCの代替物質・技術への転換を促進することにより、CFCの使用削減を推進する。
    [3]  CFC使用製品・機器ごとに、生産、使用、廃棄等の経路や実態が異なり、また、関与する事業者が多岐にわたるという実状を適切に把握するとともに、これを踏まえて、各関係者がそれぞれの適切な役割分担の下で、製品・機器の整備時・廃棄時におけるCFCの回収及び回収したCFCの適切な管理・破壊を推進する。
 なお、製品・機器のリサイクルを制度的に行う分野においては、リサイクルと一体的な回収システムの構築について、その実効性及び効率性を考慮しつつ、その推進を図る。
  回収したCFCの再利用については、技術的・経済的実行可能性や資源の有効活用の観点を考慮した上で最小限の範囲にとどめていくべきであり、その範囲に関して、CFCの再利用の状況等の実態把握やその評価、取り得る措置の実効性や有効性の検討を行うものとする。
 
 (2)分野ごとの現状及び取組
  [1]CFC製造・輸入分野
    「オゾン層保護法」に基づき、1989年からオゾン層破壊物質の製造等の規制を実施し、1995年末までにCFCの生産を全廃している。
    CFCの輸入については、「外国為替及び外国貿易法(外為法)」第52条に基づく輸入承認制度の下、輸入割当を行わないことにより、モントリオール議定書を遵守している。(ただし、MDI(喘息及び慢性閉塞性肺疾患治療用の定量噴霧エアゾール)等例外あり。)
 
  [2]冷媒分野
     業務用冷凍空調機器
      (a) 現状
        遠心冷凍機、冷凍・冷蔵ショーケース、輸送用冷凍ユニット、自動販売機などを含み、そのユーザーは、官公庁を含め、化学工業、食料品製造業、飲食料品小売業、鉄道業、倉庫業など多種多様な業界に及ぶ。
        CFCの業務用冷凍空調機器内残存量は、2000年末で約8,000トンと推計。
      (b) 使用時(漏洩防止等)における取組
        「排出抑制・使用合理化指針」に基づき、関係業界において、構造面や材質面における低漏洩化対策を実施している。
      (c) 使用の削減の取組
        CFCが冷媒として使用されている遠心冷凍機、輸送用冷凍冷蔵装置については、HCFC、HFCへの転換が進みつつあり、台数は少ないが、非フロン系冷媒(アンモニア等)への転換も見られる。
        関係業界においては、引き続き、非フロン系冷媒等の利用技術の検討を進めている。
      (d) 廃棄時における取組
        業務用冷凍空調機器関係業界や地域のフロン回収等推進協議会において、回収/再生・破壊システムの構築・整備が行われてきた。
        今後は、2001年6月に制定された「フロン回収破壊法」の施行に向け、適切なフロン回収の実施を確保するための諸準備を進める。
        さらに、フロン回収機等を持たない小規模事業者等における効率的なフロン回収を支援するため、地域におけるフロン巡回回収システム等のフロン回収支援方策を検討・整備する。
        また、使用年数の長い遠心冷凍機等大型機器については、使用状況等を的確に把握し、管理する体制を検討する。
 
     カーエアコン
      (a) 現状
        我が国の自動車の保有台数は約7,000万台で、そのうち、約90%がカーエアコン搭載車であり、自動車の平均使用年数は、約10年である。
        CFCのカーエアコン内残存量は、2000年末で約10,000トンと推計。
      (b) 使用時(漏洩防止等)における取組
        「排出抑制・使用合理化指針」に基づき、ホース・圧縮機のシールの材質及び構造の改良による低漏洩化対策や熱交換機の効率化等による冷媒充填量の削減等の措置を実施している。
      (c) 使用の削減の取組
        CFCからHFCへの転換が1992年から開始され、1994年末までに新車の冷媒については転換が完了。さらに、非フロン系冷媒等の利用技術の検討を進めている。
      (d) 廃棄時における取組
        自動車関係業界においては、1998年から回収・破壊システムを構築・整備し、ディーラー等が冷媒フロン回収を実施している。
        地方公共団体、フロン回収等推進協議会、自動車解体業者等においても、回収・破壊システムの構築・整備が行われてきた。
        今後は、2001年6月に制定された「フロン回収破壊法」の施行に向け、適切なフロン回収の実施を確保するための諸準備を進める。
        さらに、フロン回収機等を持たない小規模事業者等における効率的なフロン回収を支援するため、地域におけるフロン巡回回収システム等のフロン回収支援方策を検討・整備する。
 
     家庭用冷蔵庫
      (a) 現状
        我が国の家庭用冷蔵庫の保有台数は約5,500万台と推定され、平均使用年数は約12年である。
        CFCの家庭用冷蔵庫内残存量は、2000年末で約4,000トンと推計。
      (b) 使用時(漏洩防止等)における取組
        系が密閉されているため漏洩が極めて少なく、冷媒を補充することはほとんどない。
      (c) 使用の削減の取組
        家電メーカー等の業界においては、1993年から順次HFCへの切替えを実施し、1995年末までに、新たに製造する家庭用冷蔵庫の冷媒については、転換が完了している。さらに、炭化水素冷媒を使用した冷蔵庫の安全基準策定の検討を進めている。
      (d) 廃棄時における取組
        2001年4月に本格施行した「家電リサイクル法」に基づき、現在、家庭用冷蔵庫やルームエアコン等の機器のリサイクルと併せて冷媒フロンの回収が家電メーカー等に義務付けられており、家電リサイクルプラントにおいて、フロン回収が実施されている。
        今後とも、家電リサイクル法の適正な施行により、廃家電のリサイクル時における確実なフロン回収の実施を図る。
 
  [3]発泡分野
     家庭用冷蔵庫用断熱材
      (a) 転換の取組
        家庭用冷蔵庫用断熱材としては、硬質ウレタンフォームが使用されており、その発泡剤は、1994年からHCFC、炭化水素等に順次転換されており、1996年以降は新たに製造するものにCFCは使用されていない。
      (b) 廃棄時における取組
        現在、多くの家電リサイクルプラントにおいて、施設の整備に併せて断熱材フロンの回収装置が設置されており、回収処理コストを含む実証段階での検討が行われている。
 
    b  建築用断熱材
      (a) 転換の取組
        集合住宅やオフィスビル、冷凍冷蔵倉庫等の建築用途に使用される断熱材のうち、プラスチックフォームでは、硬質ウレタンフォーム及び押出発泡ポリスチレンが多く使用されている。
        これらの発泡剤は、硬質ウレタンフォームについては、1995年頃までにCFCからHCFC、炭化水素、水発泡等に、押出発泡ポリスチレンについては、1990年頃までに、CFCからHCFC等への転換が行われ、それ以降、新たに製造するものには、CFCは使用されていない。
      (b) 廃棄時における取組
        経済産業省及び環境省は、2001年から断熱材の使用・廃棄実態の把握、断熱材中フロンの残存量の測定・推定を行っており、その結果を踏まえ、我が国全体としてのCFCの残存量を試算する予定である。
        国においては、今後、これらの調査を踏まえて、引き続き、回収処理技術の確立及び回収処理システムの構築を検討する。
 
  [4]洗浄分野
    CFC洗浄剤は、工業用洗浄分野(金属加工部品、電気電子部品、精密部品等の洗浄)やドライクリーニング等で広く使用されていたが、CFCの生産全廃に伴い、1995年頃までに、ほとんどの用途で、塩素系洗浄剤、炭化水素系洗浄剤、水系洗浄剤、フッ素系洗浄剤や無洗浄技術へ転換が行われた。
    現在、CFC洗浄剤の出荷はほとんど行われておらず、CFC洗浄剤を使用しているのは、ごく少数のクリーニング所等で、ドライクリーニング溶剤等として在庫のCFC洗浄剤を使用している。(ドライクリーニング分野の消費量及び在庫量の合計は、2000年末時点で約240トン。)
    CFC洗浄剤の廃液については、廃油(産業廃棄物)として処理される場合が多いが、今後、これら適正処理の徹底を図る。
 
  [5]エアゾール分野
    エアゾール分野においては、CFCの生産全廃に伴い、LPG、ジメチルエーテル、HFC等に転換されている。
    ただし、MDI(喘息及び慢性閉塞性肺疾患治療用の定量噴霧エアゾール)については、モントリオール議定書上、全廃の例外として、CFCの輸入・使用が認められており、在庫量としては2000年末時点で約180トン。
    1997年のモントリオール議定書第9回締約国会合の決定に基づき、1998年12月に、MDIに係るCFC使用廃止に向けた我が国としての転換戦略「CFC含有定量噴霧吸入製剤を廃止するための日本の転換施策の骨子」を策定し、UNEPオゾン事務局に提出した。(同戦略では、2005年までに、CFC使用MDIを代替製剤に転換すること等が示されている。)
 
  [6]破壊処理
    我が国におけるフロンの破壊処理施設は、1999年度末現在、全国で40施設が稼働しており、これらの施設の破壊処理能力の合計は、年間約4,500トンである。
    今後は、2001年6月に制定された「フロン回収破壊法」の施行に向け、適切なフロン回収の実施を確保するための諸準備を進める。
    フロン製造メーカーにおいては、必要に応じて破壊能力の増強・新設を検討することとしている。
 
 (3)フォローアップ
    オゾン層保護対策推進会議においては、本戦略に関して、国民各層に対する普及啓発を行う。
    関係各省庁においては、各関係者の取組の進捗状況について一定期間ごとに調査・把握する。
    また、オゾン層保護対策推進会議では、その結果を公表するとともに、本戦略に係る取組状況のフォローアップを行い、必要に応じて本戦略の見直しを行う。

添付資料

連絡先
環境省地球環境局(旧)環境保全対策課
課  長 鈴木  克徳(内6740)
 調査官 笠井  俊彦(内6750)
 補  佐 中屋敷勝也(内6751)
 専門官 只見  康信(内6755)