報道発表資料
事務次官等会議 1月20日(月) 閣議 1月21日(火)
二つの政令の要点は、次のとおり。
- 「大気汚染防止法の一部を改正する法律」の施行期日を「本年4月1日」とすること
- 石綿による大気汚染防止のための規制措置の対象となる「建築物の解体等の作業」(特定粉じん排出等作業)として「延べ面積が500m2以上の耐火・準耐火建築物を解体・改造・補修する作業であって、作業の対象となる部分に吹付け石綿が50m2以上使われているもの」を指定すること
- 低濃度長期曝露による健康影響が懸念される有害大気汚染物質のうち、「排出又は飛散を早急に抑制しなければならない物質」(指定物質)としてベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンを指定すること
- 知事が指定物質の排出抑制のための勧告等を行う対象施設となる「指定物質を大気中に排出し、又は飛散させる施設」(指定物質排出施設)として一定規模以上の乾燥施設、蒸留施設等の11種類を指定すること
1.経 緯
平成8年5月9日に「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が公布され、公布の日から1年以内の政令で定める日から施行されることとなっている。
同改正法の要点は、次のとおり。
{1} | 吹付け石綿等を使用する建築物の解体等の作業に伴う石綿(アスベスト)による大気汚染を防止するため、政令で定める解体等の作業について、作業基準の設定、事前届出、計画改善命令等の規制措置を講ずること。 |
{2} | 低濃度長期曝露による健康影響が懸念される有害大気汚染物質について、対策推進のための法的枠組みを構築するとともに、有害大気汚染物質のうち、排出又は飛散を早急に抑制しなければならない物質として政令で定める指定物質については、対象施設(指定物質排出施設)の指定、指定物質抑制基準の設定、排出抑制のための勧告等の措置を講ずること。 |
{3} | その他所要の改正を行うこと。 この法改正を受けて、有害大気汚染物質対策関係については、10月18日に中央環境審議会が環境庁長官に対して「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第二次答申)」を答申している。 この答申等を踏まえ、今般、「大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令案」及び「大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令案」を閣議に提出する。 |
2.政令の要点
・大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令の要点
同改正法の施行期日を本年4月1日とすること。
・大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令の要点
(1) | 建築物の解体等の作業に係る規制 | ||
{1} | 特定建築材料の指定 | ||
特定粉じん(石綿)を発生し、又は飛散させる原因となる建築材料(特定建築材料)として「吹付け石綿」を政令指定すること。 | |||
・ | 吹付け石綿 | ||
石綿とセメントを混合し、建築物の壁、天井、柱等に吹き付けたもの。耐火性能向上等のために使われていたが、昭和55年以降は使われてない。 |
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{2} | 特定粉じん排出等作業の指定 | ||
規制対象となる作業(特定粉じん排出等作業)として、次の作業を政令指定すること。 | |||
ア | 耐火建築物又は準耐火建築物で延べ面積500m2以上のもの(特定耐火建築物等)を解体する作業であって、その対象となる建築物における吹付け石綿の使用面積が50m2以上であるもの | ||
イ | 特定耐火建築物等を改造し、又は補修する作業であって、その対象となる建築物の部分における吹付け石綿の使用面積の合計が50m2以上であるもの |
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(2) | 指定物質対策 | ||
{1} | 指定物質の指定 | ||
有害大気汚染物質のうち、その排出又は飛散を早急に抑制しなければならない物質(指定物質)として、ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンを政令指定すること。 | |||
・ | ベンゼン (C6H6) | ||
炭化水素化合物。化学工業製品(合成ゴム、合成洗剤、合成繊維等)の原料、溶剤、抽出剤等広範な用途に使われており、ガソリン中にも3%程度含有されている。人に対する発がん性が確認されている。 我が国の大気環境中からは、一般環境では<0.00064~0.0344mg/m3(平均値0.0053mg/m3)、工場等の周辺環境では0.004~0.023mg/m3(平均値0.0098mg/m3)で検出されている。これに対して、環境基準設定の指針として年平均値0.003mg/m3以下が適当、との中央環境審議会答申が出されている。 |
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・ | トリクロロエチレン(ClCH=CCl2) | ||
有機塩素化合物。機械工業、金属加工業等で金属加工部品の脱脂洗浄に使われるほか、化学製品等の原料や溶媒等としても利用されている。人に対する毒性としては、中枢神経障害、肝臓・腎臓障害等が認められている。 我が国の大気環境中からは、一般環境では濃度は低いものの、トリクロロエチレンを使用等する工場等の周辺環境では0.1~数mg/m3検出されることもある。これに対して、環境基準設定の指針として年平均値0.2mg/m3以下が適当、との中央環境審議会答申が出されている。 |
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・ | テトラクロロエチレン(CCl2=CCl2) | ||
有機塩素化合物。ドライクリーニング用洗浄剤として使用されるほか、金属加工部品の脱脂洗浄、化学製品等の原料、溶媒等として利用されている。人に対する毒性とし ては、中枢神経障害、肝臓・腎臓障害等が認められている。 我が国の大気環境中からは、一般環境では濃度は低いものの、テトラクロロエチレンを使用等する工場等の周辺環境では0.1~数mg/m3検出されることもある。これに対して、環境基準設定の指針として年平均値0.2mg/m3以下が適当、との中央環境審議会答申が出されている。 |
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{2} | 指定物質排出施設の指定 | ||
指定物質を大気中に排出し、又は飛散させる施設で工場又は事業場に設置されるもの(指定物質排出施設)として、以下の11種類を政令指定すること。これらの施設は、化学工場をはじめとして、石油精製、製鉄、金属部品加工、ドライクリーニング等の幅広い業種の工場・事業場に設置されている。 | |||
1 | ベンゼン(濃度が60体積%以上のものに限る。以下同じ。)を蒸発させるための乾燥施設であって、送風機の送風能力が1時間当たり1000m3以上のもの | ||
2 | 原料の処理能力が1日当たり20t以上のコークス炉 | ||
3 | ベンゼンの回収の用に供する蒸留施設(常圧蒸留施設を除く。) | ||
4 | ベンゼンの製造の用に供する脱アルキル反応施設(密閉式のものを除く。) | ||
5 | ベンゼンの貯蔵タンクであって、容量が500kl以上のもの | ||
6 | ベンゼンを原料として使用する反応施設であって、ベンゼンの処理能力が1時間当たり1t以上のもの(密閉式のものを除く。) | ||
7 | トリクロロエチレン又はテトラクロロエチレン(以下「トリクロロエチレン等」という。)を蒸発させるための乾燥施設であって、送風機の送風能力が1時間当たり1000m3以上のもの | ||
8 | トリクロロエチレン等の混合施設であって、混合槽の容量が5kl以上のもの(密閉式のものを除く。) | ||
9 | トリクロロエチレン等の精製又は回収の用に供する蒸留施設(密閉式のものを除く。) | ||
10 | トリクロロエチレン等による洗浄施設であって、トリクロロエチレン等が空気に接する面の面積が3m2以上のもの | ||
11 | テトラクロロエチレンによるドライクリーニング機であって、処理能力が1回当たり30kg以上のもの |
3.今後の予定
今後さらに、特定粉じん排出等作業に係る作業基準を定める「大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令」や指定物質抑制基準を定める環境庁告示を速やかに公布・告示し、所要の改正法の施行準備を進める予定。
大気汚染防止法の一部を改正する法律(平成八年法律第三十二号)の施行期日を平成九年四月一日とすること。
政令第 号
内閣は、大気汚染防止法の一部を改正する法律(平成八年法律第三十二号)附則第一項の規定に基づき、この政令を制定する。
大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行期日は、平成九年四月一日とする。
理 由
大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行期日を定める必要があるからである。
◎参照条文
○大気汚染防止法の一部を改正する法律(平成八年五月九日法律第三十二号)抄
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
第一 | 大気汚染防止法(以下「法」という。)第二条第八項の特定建築材料として吹付け石綿を指定すること。(第三条の三関係) | |
第二 | 法第二条第八項の特定粉じん排出等作業として、次の作業を指定すること。(第三条の四関係) | |
一 | 耐火建築物又は準耐火建築物で延べ面積が五百平方メートル以上のもの(次号において「特定耐火建築物等」という。)を解体する作業であつて、その対象となる建築物における特定建築材料の使用面積が五十平方メートル以上であるもの | |
二 | 特定耐火建築物等を改造し、又は補修する作業であつて、その対象となる建築物の部分における特定建築材料の使用面積が五十平方メートル以上であるもの | |
第三 | 特定粉じん排出等作業を伴う建設工事を施工する者に係る報告及び検査に関する事項を定めること。(第十二条第六項関係) | |
第四 | 法附則第九項の指定物質として、次の物質を指定すること。(附則第三項関係) | |
一 | ベンゼン | |
二 | トリクロロエチレン | |
三 | テトラクロロエチレン | |
第五 | 法附則第九項の指定物質排出施設として、ベンゼンを蒸発させるための乾燥施設等を指定すること。(附則第四項及び別表第六関係) | |
第六 | 市長への事務の委任その他の所要の規定の改正を行うこと。 |
政令第 号
内閣は、大気汚染防止法の一部を改正する法律(平成八年法律第三十二号)の施行に伴い、並びに大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号)第二条第八項、第二十六条第一項、第三十条の二、第三十一条第一項及び附則第九項の規定に基づき、この政令を制定する。
大気汚染防止法施行令(昭和四十三年政令第三百二十九号)の一部を次のように改正する。
第三条の二の次に次の二条を加える。
(特定建築材料)
第三条の三 | 法第二条第八項の政令で定める建築材料は、吹付け石綿とする。 (特定粉じん排出等作業) | |
第三条の四 | 法第二条第八項の政令で定める作業は、次に掲げる作業とする。 | |
一 | 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第九号の二に規定する耐火建築物又は同条第九号の三に規定する準耐火建築物で延べ面積が五百平方メートル以上のもの(次号において「特定耐火建築物等」という。)を解体する作業であつて、その対象となる建築物における特定建築材料の使用面積の合計が五十平方メートル以上であるもの | |
二 | 特定耐火建築物等を改造し、又は補修する作業であつて、その対象となる建築物の部分における特定建築材料の使用面積の合計が五十平方メートル以上であるもの |
第四条中「第二条第八項」を「第二条第十項」に改める。
第十一条第二項中「第二十三条第四項」を「第二十三条第二項」に改める。
第十二条第一項中「ばい煙排出者」を「ばい煙発生施設を設置している者」に、「並びに法第六条第二項」を「、法第六条第二項」に改め、「事項」の下に「並びにばい煙発生施設の事故の状況及び事故時の措置」を加え、「第二十三条第三項若しくは第四項」を「第二十三条第二項」に改め、同条第二項中「ばい煙排出者」を「ばい煙発生施設を設置している者」に、「第二十三条第三項若しくは第四項」を「第二十三条第二項」に改め、同条第五項を削り、同条第四項を同条第五項とし、同条第三項中「行なう」を「行う」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3 | 都道府県知事は、法第二十六条第一項の規定により、特定施設を工場若しくは事業場に設置している者 (法第二十七条第二項に規定する特定施設を設置している者を除く。以下同じ。)に対し、特定施設の事 故の状況及び事故時の措置について報告を求め、又はその職員に、特定施設を工場若しくは事業場に設置している者の工場若しくは事業場に立ち入り、特定施設及びその関連施設並びに関係帳簿書類を検査させることができる。 |
第十二条に次の一項を加える。
6 | 都道府県知事は、法第二十六条第一項の規定により、特定工事を施工する者に対し、特定粉じん排出等 作業の対象となる建築物の部分における特定建築材料の種類並びにその使用箇所及び使用面積、特定粉じん排出等作業の方法並びに法第十八条の十五第三項の総理府令で定める事項について報告を求め、又はその職員に、特定工事の場所に立ち入り、特定工事に係る建築物、特定粉じん排出等作業に使用される機械器具及び資材(特定粉じんの排出又は飛散を抑制するためのものを含む。)並びに関係帳簿書類を検査させることができる。 |
第十三条第一項中「第十七条第二項」の下に「の規定による通報の受理に関する事務、同条第三項」を加え、同項第一号中「並びに第十八条の七第一項」を「、第十八条の七第一項並びに第十八条の十五第一項及び第二項」に改め、同項第二号中「並びに第十八条の十一」を「、第十八条の十一、第十八条の十六並びに第十八条の十八」に改め、同項第五号中「第二十三条第三項及び第四項」を「第二十三条第二項」に改め、同条第三項中「、第三項及び第四項」を「及び第二項」に、「、同条第二項の規定による届出の受理に関する事務並びに同条第三項及び第四項」を「並びに同条第二項」に改める。
附則第三項から第五項までを削り、附則第二項の次に次の四項を加える。
(指定物質)
3 | 法附則第九項の政令で定める物質は、次に掲げる物質とする。 一 ベンゼン 二 トリクロロエチレン 三 テトラクロロエチレン (指定物質排出施設) |
4 | 法附則第九項の政令で定める施設は、別表第六に掲げる施設とする。 (事務の委任) |
5 | 法附則第十項の規定による勧告及び法附則第十一項の規定による報告の徴収に関する事務(工場に係る 事務を除く。)は、第十三条第一項に掲げる市の長に委任する。 |
6 | 前項に規定する事務並びに法附則第十項の規定による勧告及び法附則第十一項の規定による報告の徴収に関する事務であつて工場に係るものは、地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市及び同法第 二百五十二条の二十二第一項の中核市の長に委任する。 |
別表第五の次に次の一表を加える。
別表第六(附則第四項関係)
一 | ベンゼン(濃度が体積百分率六〇パーセント以上のものに限る。以下同じ。)を蒸発させるための乾燥施設であつて、送風機の送風能力が一時間当たり一、〇〇〇立方メートル以上のもの |
二 | 原料の処理能力が一日当たり二〇トン以上のコークス炉 |
三 | ベンゼンの回収の用に供する蒸留施設(常圧蒸留施設を除く。) |
四 | ベンゼンの製造の用に供する脱アルキル反応施設(密閉式のものを除く。) |
五 | ベンゼンの貯蔵タンクであつて、容量が五〇〇キロリットル以上のもの |
六 | ベンゼンを原料として使用する反応施設であつて、ベンゼンの処理能力が一時間当たり一トン以上のもの(密閉式のものを除く。) |
七 | トリクロロエチレン又はテトラクロロエチレン(以下「トリクロロエチレン等」という。)を蒸発させるための乾燥施設であつて、送風機の送風能力が一時間当たり一、〇〇〇立方メートル以上のもの |
八 | トリクロロエチレン等の混合施設であつて、混合槽の容量が五キロリットル以上のもの(密閉式のものを除く。) |
九 | トリクロロエチレン等の精製又は回収の用に供する蒸留施設(密閉式のものを除く。) |
十 | トリクロロエチレン等による洗浄施設(次号に掲げるものを除く。)であつて、トリクロロエチレン等が空気に接する面の面積が三平方メートル以上のもの |
十一 | テトラクロロエチレンによるドライクリーニング機であつて、処理能力が一回当たり三〇キログラム以上のもの |
附 則
(施行期日)
1 この政令は、平成九年四月一日から施行する。
(経過措置)
2 この政令の施行の際現にこの政令による改正後の大気汚染防止法施行令第三条の四各号に掲げる作業が行われている場合における当該作業については、法第十八条の十七及び第十八条の十八の規定は、適用しない。
(環境庁組織令の一部改正)
3 環境庁組織令(昭和四十六年政令第二百十九号)の一部を次のように改正する。
第二十九条第十一号中「関すること(」の下に「大気規制課、」を加える。
第三十条第二号中「並びに特定粉じん発生施設に係る特定粉じんの規制基準」を「、特定粉じん発生施設に係る敷地境界基準並びに特定粉じん排出等作業に係る作業基準」に改め、同条第三号を同条第四号とし、同条第二号の次に次の一号を加える。
三 | 大気汚染防止法に基づく有害大気汚染物質による大気の汚染の防止に関する調査 、指定物質排出施設に係る指定物質抑制基準の設定その他の有害大気汚染物質対策の推進に関すること(自動車環境対策第一課及び自動車環境対策第二課の所掌に属するものを除く。)。 |
理 由
大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行に伴い、特定建築材料、特定粉じん排出等作業、指定物質及び指定物質排出施設の範囲を定めるとともに、特定粉じん排出等作業を伴う建設工事を施工する者に係る報告及び検査について所要の事項を定める等の必要があ
るからである。
- 連絡先
- 環境庁大気保全局大気規制課
課長 飯島 孝 (6530)
補佐 深見 正仁(6547)