報道発表資料

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2012年06月25日
  • 自然環境

鳥類標識調査の合計放鳥数500万羽突破及びウェブサイトの公開について(お知らせ)

 環境省では、鳥類の渡りの実態や様々な生態を明らかにし、鳥類の保全施策やそのための国際協力の推進に役立てるため、鳥類標識調査を全国各地で実施しています。
 今般、継続的にデータが蓄積された1961~2011年の合計放鳥数が500万羽を突破しました。このことを機に、鳥類の渡りの記録をパソコン上で地図表示することができる「鳥類アトラスweb-GIS版」を主要なコンテンツとした鳥類標識調査のウェブサイトを新たに公開しましたので、お知らせします。

1.鳥類標識調査について

 鳥類標識調査は、鳥類に足環等を装着して放鳥し、再捕獲や観察によって情報を収集、解析することにより、鳥類の渡りの実態や様々な生態を明らかにし、鳥類の保全施策やそのための国際協力の推進に役立てるものであり、わが国では、1924年に農商務省によって初めて行われて以来、途中戦争の影響による中断があったものの、約90年にわたって続けられており、現在は環境省による公益財団法人山階鳥類研究所への委託事業として実施されています。
 全国各地での鳥類標識調査を実際に担っているのは、鳥類の識別について十分な知識を持ち、野鳥を安全に捕獲して放鳥する技術を身につけていることを認定された鳥類標識調査員(バンダー)です。全国で約450名のバンダーがボランティア調査員として活躍しています。

2.合計放鳥数及び鳥類標識調査の成果について

 鳥類標識調査により1961~2011年に継続的に蓄積されたデータの合計放鳥数が500万羽を突破しました。
 なお、本調査結果については、毎年得られた調査結果を翌年に集計しており、今般、2011年の放鳥記録の入力が終了したため、500万羽を突破したことが明らかになったものです。
 また、これら蓄積された標識調査の成果は、鳥類を保護するための基礎データとして重要な役割を果たしています。その主な例としては、例えば次のような成果が上げられます。

[1] 野鳥の渡りに関すること

 1964年に南極で足環をつけられたオオトウゾクカモメという海鳥が、赤道を越え、2年後に北海道の近海で発見されました。12,800km以上もの長距離を移動していることが分かりました。

[2] 野鳥の年齢・寿命に関すること

 2012年1月にマレーシアのボルネオ島で衰弱して救護収容されたオオミズナギドリという海鳥の個体は、1975年5月に京都府の冠島で足環をつけられたものでした。最初に放鳥された時から実に36年8ヶ月経過していました。

[3] 野鳥の形態や分類に関すること

 標識調査のために捕獲された個体の詳細な観察や測定結果、写真記録と、死体から作成された標本などにより、1981年にヤンバルクイナという新種が記載されました。

[4] 個体群や生息環境の変化に関すること

 1973年以来継続して実施されている山梨県山中湖の繁殖期における調査からは、1989年以降夏鳥の占める割合が年々減少してきていることがわかりました。

3.鳥類標識調査ウェブサイトについて

 1961~1995年の野鳥の渡りの記録をパソコン上で地図表示することができる「鳥類アトラスweb-GIS版」をはじめとして、鳥類標識調査でわかること、鳥類標識調査の歴史、関連プロジェクト等を紹介するウェブサイトを新たに公開しました。
 本ウェブサイトでは鳥類の渡りの実態を視覚的にわかりやすくとらえることができますので、是非ご覧下さい。

鳥類標識調査ウェブサイト
http://www.biodic.go.jp/banding/index.html

連絡先
環境省自然環境局生物多様性センター
電話:0555-72-6033(直通)
 センター長 :奥山 正樹
 総括企画官:鑪 雅哉
 担当     :吉澤 泰輔