報道発表資料

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2000年08月09日

自然環境保全基礎調査「鳥類生息分布調査」中間とりまとめについて

環境庁生物多様性センターは、第5回自然環境保全基礎調査(通称「緑の国勢調査」、以下「基礎調査」という。)の一環として、「鳥類生息分布調査」の中間とりまとめを行った。この調査は、昭和53年度に実施した第2回基礎調査と同一の手法及び場所で、鳥類の生息分布の現状と20年間の変化を把握することを目的に、平成9年度から13年度までの5か年計画で実施しているもの。
 今回、全国の平地部(全調査地点の約2/3)の調査が終了したことを受け、中間報告書のとりまとめをおこなった。この中で、主として平地部に生息している一部の種について比較・考察を行った結果、ヒバリ、アカモズ、サンショウクイ、カイツブリ等の減少、また、カワウ、ソウシチョウの増加が判明した。
 なお、現在、平成12年度分の調査として山岳部の調査を実施しており、平成13年度には平地部と山岳部の結果をあわせて総合的に比較・解析した最終報告書を作成する予定。
 中間報告書は、全国の都道府県庁、都道府県立図書館等に配布する予定。
1.調査概要
(1)調査の目的・概要
 我が国に生息する鳥類の繁殖状況について、現状と20年間の変化の把握を目的として、昭和53年度に実施した第2回自然環境保全基礎調査の鳥類生息調査と同一の調査手法を踏襲し、調査を実施した。

(2)調査の方法(中間報告まで)
調査実施年度平成9年度から平成10年度

調査手法現地調査及びアンケート調査

現地調査対象地全国47都道府県の平地から比較的標高の低い山地部
(調査地点1,563コース、全調査地点の約2/3)

調査対象種日本に生息するすべての鳥類577種
(第2回基礎調査では、繁殖可能性のある257種のみを対象とした。)

調査体制
 環境庁が(財)日本野鳥の会に請負業務として調査を依頼し、(財)日本野鳥の会の支部や鳥類関係機関からの推薦によって現地調査員(1,029人)を選出した。アンケート調査は現地調査員以外にも鳥類研究者など(726人)に広く呼びかけを行って実施した。

実施方法
 自然環境保全基礎調査検討会鳥類分科会(平成9年度設置、座長藤巻裕蔵帯広畜産大学教授)が作成した指針に基づき、調査方法や調査コースを検討した。現地調査はロードサイド調査と定点調査を併用し、(財)日本野鳥の会研究センターで集計した。

(3)とりまとめの方法
分布図の表示単位
 3次メッシュ(約1km×1km)単位で収集されたデータを入力し、分布図を表現する単位は2次メッシュ(約10km×10km)を区画単位とした。一部の種は1次メッシュ(約80km×80km)を区画単位とした。

分布図の公表と制限
 「人による直接的な影響」を受けやすい種および環境庁によるレッドリストにあげられた種を含めて自然環境保全基礎調査検討会鳥類分科会で検討し、2次メッシュでの公表に1人でも懸念を示した種については1次メッシュでの公表とした。

2.調査結果の概要
 現地調査は全国約2,360コース中1,563コースで実施し、得られたデータ数は、現地調査で約100,000件、アンケート調査で約37,000件であった。確認された鳥類は375種で、本報告書においては繁殖の可能性の高い、234種について分布図を掲載した。
 また、第2回基礎調査の繁殖分布と比較して変化の見られた種があった。変化が著しいと考えられる種は以下の通りである。*詳細については、別添参考資料参照。
繁殖が確実であるとの記録が減少した種(7種)
 カイツブリ、シロチドリ、コジュケイ、ヒバリ、チゴモズ、アカモズ、サンショウクイ

繁殖が確実であるとの記録が増加した種(1種)
 カワウ

新たに繁殖が確実となった種(1種)
 ソウシチョウ

注意すべき記録
 調査対象種以外の記録として、シジュウカラガン、コブハクチョウの繁殖が各地で報告されているが、これは、人の手によって放された可能性が高いため、移入種として取り扱った。

<問い合わせ先>

環境庁自然保護局生物多様性センター  専門調査官  伊藤勇三
〒403-0005  山梨県富士吉田市上吉田剣丸尾5597-1  TEL:0555-72-6033

(財)日本野鳥の会研究センター  研究員  成末雅恵
〒191-0041  東京都日野市南平2-35-2  TEL:0425-93-6872
連絡先
環境庁自然保護局企画調整課生物多様性センター
センター長  :笹岡達男
 専門調査官 :伊藤勇三

〒403-0005
山梨県富士吉田市上吉田剣丸尾5597-1
              Tel:0555-72-6033