報道発表資料

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2010年11月02日
  • 自然環境

生物多様性条約第10回締約国会議の結果(ハイレベルセグメント結果等を含む)について(お知らせ)

  • 生物多様性条約(CBD)第10回締約国会議(COP10)が2010年10月18日(月)~29日(金)の日程で、愛知県名古屋市にて開催され、179の締約国、関連国際機関、NGO等から13,000人以上が参加した。我が国はホスト国として、関係省庁と連携し、愛知県、名古屋市、経済団体等からなるCOP10支援実行委員会の協力を得ながら、生物多様性条約事務局とともに準備を進めてきた。会議は、松本環境大臣がCOP10の議長を務めた。また、並行して10月27日から29日まで日本政府主催の閣僚級会合が開催され、27日には菅総理大臣が出席した。
  • 今回の会議においては、特に遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)に関する名古屋議定書と、2011年以降の新戦略計画(愛知目標)が採択され、参加国からホスト国のとりまとめ努力に対して高い評価が示された。
  • そのほか資金動員戦略に関する決定の他、SATOYAMAイニシアティブを含む持続可能な利用、バイオ燃料、農業、森林、海洋等各生態系における生物多様性の保全及び持続可能な利用に係る決定の採択、生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)、国連生物多様性の10年、2011-2012年運営予算の決定等が行われた。

概要

1.開催期間・場所

2010年10月18日(月)~29日(金)(於:名古屋国際会議場)
(ハイレベルセグメントは27日~29日に開催)

2.参加者・サイドイベント

(1)
締約国179ヶ国、国連環境計画等関連する国際機関、先住民代表、市民団体等13,000人以上が参加。
(2)
過去最大となる約350のサイドイベントが開催された。また隣接する会場では「生物多様性交流フェア」が開催され、11万8千人を超える人で賑わった。

3.我が国からの参加者

 松本環境大臣がCOP10議長を務めた。また、我が国政府代表団として、外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省等の担当者のほか、経済界、労働界、NGO関係者が参加した。また、オブザーバーとして、地元自治体、企業、NGO等が多数参加した。

4.ハイレベルセグメント

 COP議長国(日本政府)主催で、10月27日~29日にCOP10ハイレベルセグメント(閣僚級会合)を開催した。27日の開会式では、菅総理大臣より、生物多様性保全に関する途上国支援として「いのちの共生イニシアティブ」が表明された。各国各機関によるステートメントに加え、28日には地元自治体や経済界、NGO、ユース等多様な主体が参加したパネルディスカッションが行われ、29日の松本環境大臣による議長総括(別紙1)で締めくくられた。

5.非公式閣僚級会合

 ハイレベルセグメントと並行して、10月27日~28日に締約国のみ参加を認めた非公式閣僚級会合(閣僚または政府団代表及び専門家の各国2名まで参加可能、非公開)が開催され、その議論の結果は28日夕方に各国交渉官に対する交渉プロセスの重要課題に関する政治的ガイダンス(別紙2)としてとりまとめられ、議長(松本環境大臣)から提示された。

6.主な成果

新戦略計画・愛知目標(ポスト2010年目標(2011-2020年))
 意欲的な目標を求めるEUと、実現可能性を重んじる途上国との間で、最終的には非公式閣僚級会合での意見も踏まえて、妥協が図られ、「2020年までに生態系が強靱で基礎的なサービスを提供できるよう、生物多様性の損失を止めるために、実効的かつ緊急の行動を起こす」との趣旨の文言となった。又、最後まで調整が続いた保護地域については陸域17%、海域10%となるなど、20の個別目標が合意された。中長期目標(「自然との共生」)については、「2050年までに、生態系サービスを維持し、健全な地球を維持し全ての人に必要な利益を提供しつつ、生物多様性が評価され、保全され、回復され、賢明に利用される」ことが合意され「愛知目標」として採択された。(別紙3)
遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)に関する名古屋議定書
 COP10までにABSに関する国際レジーム策定交渉を完了すべしとのCOP8決定に基づき、COP10開催中に非公式協議会合(ICG)において、ABS議定書案の検討が行われたが、派生物、遡及適用、病原体等いくつかの論点での資源提供国と利用国の意見対立が続いたことを踏まえて、最終日に我が国が議長国としての議長案を各締約国に提示し、同案が「名古屋議定書」として採択された。また、議定書の発効に向けた政府間委員会の設置やその作業計画が決定された。(別紙4)
資金動員戦略
 COP9で決定された「資金動員戦略」のフォローアップのためのもので、焦点は、「戦略」の進捗状況をモニターするための指標(indicators)及び目標(targets)であった。途上国側は、具体的な金額目標(官民全てのかつ世界全体での資金フローについての目標)の明記を強く求めたが、先進国側は、しっかりとした指標無しにそのような目標を設定するという議論に応じられないとし交渉が非常に難航した。最終的に、途上国側は具体的目標の要求を取り下げ、指標についての議論に応じた。その上での交渉の末、「しっかりとした指標ができるなどの条件で、COP11の際に目標(targets)を採択する」「条約の三目的達成へ貢献するため,2020年までに途上国への毎年の国際的資金フローを増加させるという目標を発展させることを検討する。」旨の決定が採択された。
持続可能な利用
 ブッシュミート(食用の野生鳥獣等)の適正な利用、アジスアベバ原則・ガイドラインの実施、SATOYAMAイニシアティブの推進などを含む決定が採択された。SATOYAMAイニシアティブについては、19日に発足した「SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ」を同イニシアティブを推進するためのメカニズムと位置付け、各国・機関等の参加を呼びかけ51の国や機関等(別紙5)が創設に参加した。
バイオ燃料と生物多様性
 バイオ燃料の生産及び使用は、食料やエネルギーの安全保障を含む社会経済的状況に影響を及ぼし得ることを認識し、その正の影響を促進し負の影響を最小化するため、バイオ燃料の生産に適した又は不適な土地を適切に見極めること、次世代バイオ燃料の生産に使用され得る合成生物学とバイオ燃料に関する情報提供を行うこと等が決定された。
海洋と沿岸の生物多様性
 生態的及び生物学的に重要な海域(EBSA)については、締約国やFAO等の関係機関等と協力し、資金が利用可能であることを条件に、一連の地域ワークショップを開催し、EBSA設定の基準の適用に関する理解の向上を図るとともに、その際に得られる科学的及び技術的情報並びに事例の集積を行うことをCBD事務局に対して求めること。また、海洋生物資源についても、生物多様性に配慮して持続的に利用するための適切な措置をとるよう各国に促すことなどが決定された。
気候変動と生物多様性
 森林の減少及び劣化に由来する排出の削減等(REDD+)の活動に関する生物多様性の保全措置や生物多様性への影響評価につき、生物多様性条約事務局が気候変動枠組条約での決定を予見しない形で助言や検討を行うこと、2012年の国連持続可能な開発会議(RIO+20)を見据えた他のリオ条約(気候変動枠組条約及び砂漠化対処条約)との共同活動の検討を行うことが決定された。
科学及び技術協力とクリアリングハウスメカニズム(CHM)
 2011-2020年のCHMミッション、目標、下位目標が採択された。また、情報共有のためCBDのCHMが全ての国連公用語で見られるようにすべきとの提案が採択された。
世界植物保全戦略
 新たな数値目標を盛り込んだ、2011年から2020年までの世界植物保全戦略が決定された。また、この戦略が各国の状況に合わせた枠組みであること、国際機関等に対しその実施に向けて開発途上国に対する支援を招請することが確認された。
広報、教育、普及啓発(CEPA)及び国際生物多様性年
 国連生物多様性の10年のためのCEPA活用及び拠点・運営体制の設置、並びにCEPAの関連ステークホルダーにILC(Indigenous and Local Community)を含むこと等が決定された。
内陸水の生物多様性
 水利用政策、気候変動の適応と緩和等に内陸水が果たす役割が確認された他、水循環と関連する生態系サービス提供に対する生物多様性の役割に関して専門家グループを開催することが決定された。
山地の生物多様性
 山地保護地域の管理の有効性の強化、気候変動への適応や緩和、地域的共同戦略や行動計画の開発・実施、山伝いの協力プログラムの開発と実施などに取り組んでいくこととされた。
保護地域
 国レベルでの長期行動計画の策定、地域(越境)構想の形成、気候変動の影響へ対処するための連結性の確保、2015年までに60%を対象に管理有効性評価の実施、外来種の管理、生態系や生息地の再生などに取り組んでいくこととされた。また、国別報告書の様式が定められた。
乾燥地・半湿潤地の生物多様性
 乾燥地・半湿潤地の生物多様性については、締約国等に対し、乾燥・半湿潤地域に関する問題を各国の生物多様性戦略計画等に盛り込むこと、2011~2020年にむけた戦略計画に則した乾燥・半湿潤地域に関する具体的な目標の設定を求めることなど、また事務局長に対し、リオ3条約間の共同活動の提案をUNFCCC及びUNFCCDの事務局に対して伝える際には乾燥・半湿潤地の役割を含めることなどが決定された。
侵略的外来種
 侵略的外来種、特にペット、水族館及び動植物園での展示生物並びに活き餌・生食料として導入された侵略的外来種に関する既存の国際的な規制枠組みの隙間(ギャップ)の解消に向けた検討を行うための専門家グループを設置することが決定された。
世界分類学イニシアティブ
 分類学のニーズと能力把握のためのアセスメント実施、分類学能力構築戦略の作成、科学技術協力のための生物標本の越境移動の推進、GEF等からの資金導入の促進を含む決議が採択された。
多様な主体との協力
 ビジネスと生物多様性について、締約国によるビジネスと生物多様性の連携活動の推進の招請、民間部門による具体的な参画の奨励、国レベル・地域レベルでのビジネスと生物多様性イニシアティブや国際的な連携をイニシアティブ間で図るためのグローバルプラットフォームの設置の奨励等が採択された。
 条約の実施においてジェンダーの考慮を行うため、COP9において取り上げられたジェンダーに関する行動計画の実施に向けた努力を条約事務局に求めるとともに、締約国や他の政府に対して、ジェンダーに関する行動計画の実施への貢献を奨励した。
 また、2011年から2020年までを対象とする、地方自治体の生物多様性に関する行動計画を承認するとともに、締約国や他の政府機関に対し、同計画の実施を奨励した。
2011年-2012年の2ヶ年運営予算
 我が国は、CBDの運営予算の最大拠出国であり、義務的拠出金総額の約16%を負担している。世界経済危機の影響で締約国の中には国家財政が極めて厳しい国がある中、COP10で採択された新戦略計画及びABS議定書を確実に実施・履行していくために必要な追加的費用を重点的に予算配分した結果、2011年予算は11,769,300米ドル、2012年予算は12,989,700米ドル(2ヶ年合計24,759,000米ドル(前期比4.3%増))とすることがコンセンサスにより決定された。我が国の分担金額は、2ヶ年合計3,586,800米ドル。
COP11の開催
 最終日の29日(金)に、2012年10月1-5日にカルタヘナ議定書第6回締約国会議を、8-19日に生物多様性条約第11回締約国会議をインドにおいて開催することが決定された。
その他
 農業の生物多様性において、特に、水田農業の重要性を認識するとともに、ラムサール条約の決議10.31「水田決議」を歓迎し、その実施を求めることなどが決定された。
 また、生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)について、第65回国連総会に対しその早期の設立を検討するよう奨励することなどが決定された。
 また、我が国が提案している「国連生物多様性の10年」を国連総会で採択するよう勧告することが決定された。

7.我が国の貢献

我が国は、COP10ホスト国として、各議題における議論に積極的に参加・貢献するとともに、COP10支援実行委員会とともにCOP10開催に向けた様々な準備を行った。
菅総理大臣より、生物多様性保全に関する途上国支援として「いのちの共生イニシアティブ(20億ドル)」、松本環境大臣より右イニシアティブの下で生物多様性国家戦略の策定支援等に向けた「生物多様性日本基金(10億円)」、ABSに関する途上国の能力構築等に向けた支援(10億円)及び伴野外務副大臣より遺伝資源、森林保全に関する具体的な支援策を表明。これらは、途上国を中心とする他の締約国から高い評価を得た。
松本環境大臣はCOP議長を務め、COP10開会式、全体会合、閉会式の議事の進行にあたるとともに、議長として各国との調整を行った。また、近藤環境副大臣は日本政府代表として、COP10開催期間中を通して、各締約国との二国間会合や国際機関等との意見交換を多数実施するとともに、サイドイベント等を通じて様々な地方公共団体、民間企業や市民との連携を図った。

添付資料

連絡先
環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性地球戦略企画室
代表:03-3581-3351
直通:03-5521-8150
室長:鳥居 敏男(6480)
室長補佐:中澤 圭一(6433)
室長補佐:中島 尚子(6488)
担当:奥田 青州(6476)

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