報道発表資料

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2009年07月14日
  • 再生循環

エコタウン等による地域循環圏の構築に向けた研究会における調査結果について(お知らせ)

 第2次循環型社会形成推進基本計画において形成を推進すべきとされた「地域循環圏」について、エコタウンがその中核としての役割を期待されていることを踏まえ、地域循環圏におけるエコタウンの役割について検討する基礎として、全国各地のエコタウンの現況・成果・課題を調査、整理するため、今般エコタウンに係る資源循環プロセスについて地域別・距離別の解析も含め整理し、環境負荷削減効果の試算を行い、また、事業運営の課題について、循環資源の調達面、リサイクル製品の供給面に分けて整理し、必要な対策についても整理しました。
 この結果、全国のエコタウンに投入された循環資源は約2,200千トンとなっており、このうち約91%が製品・原料化又はエネルギー利用(減量化を含む)されており、高い効率での利活用が行われていることが確認されました。地域別にみると、エコタウン施設が調達する循環資源のうち約59%が同一エコタウンプラン内から調達され、またエコタウン施設が供給する製品・エネルギーのうち約40%は製品等として同一エコタウンプラン内に供給されており、地域循環の中核としての機能を担いうることが明らかになりました。
 また、全国のエコタウン全体での環境負荷削減効果を試算したところ、最終処分量で約1,000千トン、二酸化炭素排出量で約420千トンとなり、一定の削減効果を挙げていることが明らかになりました。

1. 背景

 エコタウン事業は、「ゼロ・エミッション構想」(ある産業から出るすべての廃棄物を新たに他の分野の原料として活用し、あらゆる廃棄物をゼロにすることを目指す構想)を地域の環境調和型経済社会形成のための基本構想として位置付け、併せて、地域振興の基軸として推進することにより、先進的な環境調和型のまちづくりを推進することを目的として、平成9年度に創設された制度で、現在までに全国26地域のエコタウンプランが承認されている。
 平成20年3月に閣議決定された第2次循環型社会形成推進基本計画においては、循環資源の性質に応じて最適な規模の「地域循環圏」の形成を推進すべきとされており、エコタウンはこの地域循環圏の中核としての役割が期待されていることから、地域循環圏におけるエコタウンの役割について検討する必要がある。
 このため、有識者等による研究会を設置し、自治体及びエコタウンプラン地域内に立地する施設(補助対象、補助対象外双方を含む。)に対するアンケート調査を行い、全国各地のエコタウンの現況と課題を調査、整理した上で、課題の解決策等について検討した。具体的にはエコタウンに係る資源循環プロセスについて地域別・距離別の解析も含め整理を試みるとともに、環境負荷削減効果の試算を行った。また、事業運営の課題について、循環資源の調達面、リサイクル製品の供給面に分けて整理し、必要な対策についても整理した。

2. 調査対象

 承認されている26地域(表1)の関係各自治体に対して、施設の設置・稼働状況や今後のエコタウンプランの進捗や今後の展開についてアンケート調査を行うとともに、エコタウンプランの承認を受けていない他の府県・政令市に対しても類似の取組についてアンケートを実施した。
 また、26地域の関係自治体の協力を得て整理した稼動中のエコタウン施設170施設(表2。補助対象外施設を含む、研究・実証試験施設を除く。)に対してエコタウン施設における資源循環の調達・供給状況、施設の事業運営状況についてアンケート調査を実施し、有効回答が得られた93施設(表3)について整理した。

表1 エコタウンプランの承認地域
エコタウンプランの承認地域

表2 調査対象としたエコタウンプラン施設の概要
調査対象としたエコタウンプラン施設の概要

表3 アンケート調査の回収状況
アンケート調査の回収状況

3. エコタウン施設におけるマテリアルフローと循環圏の整理

(1) エコタウン施設におけるマテリアルフローの概略と資源循環の調達・供給エリア

 エコタウン施設に投入された循環資源(廃棄物・副産物)の量は約2,200千トンとなっており、このうち約91%に当たる約2,000千トンが製品・原料又はエネルギー利用(減量化を含む)されている。  利活用量約2,000千トンのうち、約1,200千トンがエコタウン施設でマテリアルリサイクル(製品・原料化)されており、マテリアルリサイクル率は約55%である(我が国の平成17年度におけるマテリアルリサイクル率35%)。また、約35%に当たる約780千トンが熱利用(減量化を含む)されている。(図1)

エコタウン施設におけるマテリアルフロー
図1 エコタウン施設におけるマテリアルフロー

 エコタウン施設で調達された循環資源の約59%が同一エコタウンプラン地域内から調達されており、エコタウン施設が立地する市町村内での調達率が高い品目は、食品廃棄物(一般廃棄物)、がれき類、木くず、一般廃棄物(可燃ごみ、不燃ごみ、資源ごみ)であった。(図2)

エコタウン施設での循環資源品目別の調達エリア
図2 エコタウン施設での循環資源品目別の調達エリア

 また、エコタウン施設で生産された製品・原料の約890千トン(40%)が同一エコタウンプラン地域へ供給されており、エコタウン施設が立地する市町村内への供給率が高い品目は、固形燃料(RDF)、飼料、建設資材、肥料であった。(図3)

エコタウン施設で生産・加工された製品・原料の品目別の供給エリア
図3 エコタウン施設で生産・加工された製品・原料の品目別の供給エリア

(2)資源循環の調達・供給の距離

 調達・供給エリアを距離に置き換えてみると、調達エリアおよび供給エリアとも30km圏域内が最も多く、調達で約74%、供給で約81%となっている(図4)。

エコタウン施設における資源循環圏の距離
図4 エコタウン施設における資源循環圏の距離

 エコタウン施設の立地から、集約されたエリアで複数の施設が立地する集約型、広いエリアに複数の施設が分散立地する分散型、一事業者のみの単体型に類型し、資源循環圏の距離を整理した結果、集約型が30km圏内調達率約78%、30km圏内供給率約86%、分散型が30km圏内調達率約69%、30km圏内供給率約73%となっており、調達・供給エリアとも集約型の方が30km圏域内での調達・供給される割合が高い結果となった。(図5)

I:
集約型(集約されたエリアで複数の施設が立地)札幌市、青森県、釜石市、東京都、川崎市、飯田市、富山市、岐阜県、大阪府、岡山県、山口県
香川県、愛媛県、高知市、北九州市、大牟田市、水俣市
II:
分散型(広いエリアに複数の施設が分散立地)
北海道、秋田県、千葉県、愛知県、兵庫県、広島県
III:
単体型(単体の事業者が立地)
栗原市、四日市市、鈴鹿市

エコタウンプラン類型別の資源循環の調達・供給距離
図5 エコタウンプラン類型別の資源循環の調達・供給距離

(3)エコタウン施設を活用した資源循環の効果

 エコタウン施設で調達された循環資源量をもとにエコタウン施設を活用したことによる最終処分量の削減を試算した結果、約1,000千トンの削減効果となった。これは平成17年度の我が国の最終処分量(32,000千トン)の約3%に相当する。
 また、エコタウン施設で生産・加工された代表的な製品・原料をもとにエコタウン施設の活用による資源消費削減及びCO2排出削減量を算定した結果、新規資源消費削減量は約1,200千トン、CO2排出削減量は約420千トン- CO2となった。

表4 エコタウン施設を活用した資源循環による効果
エコタウン施設を活用した資源循環による効果

4. エコタウンプランにおける事業運営に関する状況

(1) エコタウン施設における循環資源の調達・供給に関する現況と課題

 各エコタウン施設に、原料となる循環資源の調達状況に対して、現在「困っている」と回答した施設は67%であり、平成19年度と比較すると、「困っている」と回答した施設が12ポイント増加している。また、エコタウン施設において産出した製品・原料の供給状況について尋ねたところ、現在、「困っている」と回答した施設は55%であり、平成19年度と現在を比較すると、「困っている」と回答した施設が13ポイント増加しいる。(図6) 平成20年度は平成19年度に比べて入り口(調達)、出口(供給)とも厳しさを増したといえる。
 調達において、困っている割合の高い品目は、紙くず、廃自動車であり、紙くずにおいては調達エリアがエコタウン施設立地都道府県外からの割合が高い結果となった。(図2)
 また、供給において、困っている割合の高い品目は、製紙原料、ガラス・カレットであり、2品目とも供給エリアがエコタウン施設立地都道府県外からの割合が高い結果である。(図3)

エコタウン施設における資源循環物の調達・供給に関する課題
図6 エコタウン施設における資源循環物の調達・供給に関する課題

(2)エコタウン施設におけるこれまでの取組と、今後必要とされる対策

■エコタウン施設におけるこれまでの取組

 事業者に対して、エコタウン施設では、循環資源の調達の安定化・拡大のためのこれまでの取組を聞いたところ、「自社や協議会等での情報発信」、「ストックヤードを活用した調整」、「自治体からの安定供給」などの回答が多かった。また、供給の安定化・拡大については、「積極的な情報発信」や「ストックヤードを活用した調整」、「環境に配慮した製品の認定制度の活用」などの回答が多かった。

■エコタウン施設における今後、必要とされる対策
事業者に対して、今後、循環資源の調達を安定化・拡大するために必要な対策を聞いたところ、「各種リサイクル法等関連法や規制による効果」、「一般廃棄物等の自治体からの安定供給」、「自治体による(エコタウン施設)利用誘導策」が多く挙げられた。これらの対策は、既に実施したという回答に比して、今後(更に)必要な対策であるとする回答が大きく上回っており、今後の対策の期待が強いと考えられる。なお、具体的な内容は、「各種リサイクル法の対象品目・対象者の拡大」、「市町村での分別(収集)の促進」、「排出事業者へのリサイクルの推進」などであった。
また、今後、供給を安定化・拡大させるために必要な対策としては、「自治体による利用誘導策」、「自治体や公共部門における利用策」、「各種リサイクル法等関連法や規制による効果」が多く挙げられた。これらの対策においても、既に実施したという回答に比して、今後 (更に)必要な対策であるとする回答が大きく上回っており、今後の対策の期待が強いと考えられる。なお、具体的な内容は、「リサイクル製品認定制度やリサイクル製品の優先的な利用の補助制度」、更なる「公共事業・公共部門での積極的な利用」、「リサイクル製品の優先的な利用に係る法や政策」などであった。

エコタウン施設におけるこれまでの取組と、今後必要とされる対策
図7 エコタウン施設におけるこれまでの取組と、今後必要とされる対策

 本調査結果で得られたエコタウン施設における循環資源の調達・供給に関する現状の課題、今後の方策を整理すると以下のとおりである。

エコタウン施設を取り巻く現状の課題と、今後必要とされる対策の整理
図8 エコタウン施設を取り巻く現状の課題と、今後必要とされる対策の整理

5. 今後の推進方策の検討について

1.まとめ

 今回の検討では、アンケート調査等により現状の把握・整理を行った。これにより、以下の整理ができた。

(1)資源循環の効率と環境負荷削減効果
エコタウン施設は、約2,200千トンの循環資源が投入されており、このうちの約91%が利活用され(マテリアルリサイクルが約55%、熱利用(減量化含む。)が約35%)、高い効率で資源循環されていることが分かった。
環境負荷削減効果についてみると、最終処分量削減については約1,000千トン(平成17年度の我が国の最終処分量の約3%に相当)、また、代表的な製品・原料をもとに試算すると、資源消費削減量は約1,200千トン、CO2排出削減量は約420千トン-CO2となり、一定の環境負荷削減効果が確認された。
(2)エコタウン施設における資源循環圏
エコタウン施設で活用される循環資源の調達地域及び産出された製品・原料の供給地域を整理した。この結果、循環資源の調達については、約59%が同一エコタウンプラン地域内から調達されており、より広域の、施設立地都道府県外からの調達率は約27%であったことから、近隣地域での調達が多いことが分かった。
エコタウン施設から供給される製品・原料又は生産エネルギーについては、その約76%が同一エコタウンプラン地域内に供給されており、施設立地都道府県外への供給率は約10%であったことから、より狭い地域内で供給されていることが分かった。
これを距離に置き換えてみると、調達・供給エリアとも約7割強が30km圏域内であった。また、エコタウンを構成する施設の立地から、集約型、分散型、単体型に類型し、資源循環の距離を整理した結果、集約型が分散型よりも調達・供給エリアとも30km圏域内での資源循環の割合が高かった(30km圏域内調達率:集約型約78%・分散型約69%、30km圏域内供給率:集約型約86%・分散型約73%)。
(3)循環資源の調達・供給に関する現況と、今後の方策について
現在、循環資源の調達に「困っている」と回答した施設は約67%であり、また製品・原料の供給で「困っている」と回答した施設は約55%であった。
平成19年度の状況と比較すると、循環資源の調達に「困っている」と回答した施設が12ポイント、製品・原料の供給で「困っている」と回答した施設が13ポイント増加していた。安定した資源循環の確保が課題となっており、平成20年度は厳しさを増していることが分かった。
今後、循環資源の調達を安定化・拡大するために必要な対策として、「各種リサイクル法等関連法や規制による効果」、「一般廃棄物等の自治体からの安定供給」、「自治体による(エコタウン施設)利用誘導策」に、製品・原料の供給を安定化・拡大させるために必要な対策として、「自治体による(エコタウン施設で生産・加工された製品・原料)利用誘導策」、「自治体や公共部門における利用策」、「各種リサイクル法等関連法や規制による効果」に期待が寄せられた。

2.今後の推進方策の検討について

(1)地域の諸条件を踏まえた整理・分析と地域循環促進のための社会システムの検討
[1]
今回調査したエコタウン施設に係る資源循環の状況(調達・供給エリアや連携状況)について、立地市町村の産業特性等の特徴や、エコタウンプランにおける循環圏の規模、品目による地域循環圏の形成の特徴も踏まえつつ、それぞれの循環特性について詳細な調査を行う。
[2]
また、実施されている自治体の施策・支援体制や協議会等の連携体制の構築等と、上記の循環特性に係るデータを整理し、地域循環を促進する社会システムとして機能する施策・運営を抽出し、モデルパターン化を行う。更に、整理されたモデルパターンからグッドプラクティスの要因を分析し、エコタウン等を中核として地域循環圏を支えている事項(必要な情報、エネルギー、物流等の連携)を整理する。
[3]
特に、今回期待する声が多かった「各種リサイクル法等関連法や規制による効果」、「一般廃棄物等の自治体からの安定供給」、「自治体による(エコタウン施設)利用誘導策」、「自治体による(エコタウン施設で生産・加工された製品・原料)利用誘導策」、「自治体や公共部門における利用策」等について課題を整理する。
(2)ガイドラインの取りまとめについて

 (1)の結果を踏まえて、エコタウン等を中核とした地域循環圏構築に向けて取り組むべき施策等を整理し、またこれによって期待される環境負荷削減効果を整理したガイドラインを整備することが必要である。

<検討体制>
藤田 壮
(独)国立環境研究所アジア自然共生研究グループ環境技術評価システム研究室室長・東洋大学教授(委員長)
小倉 康嗣
JFEエンジニアリング(株)取締役専務
田島 夏与
立教大学経済学部経済政策学科准教授
中島 彰良
(株)リーテム 代表取締役兼CEO
丹羽 崇人
愛知県環境部資源循環推進課循環グループあいち資源環境推進センター主幹
橋本 禅
(独)国立環境研究所アジア自然共生研究グループ環境技術評価システム研究室特別研究員
松本 亨
北九州市立大学国際環境工学部環境生命工学科 教授

(肩書きは研究会開催当時のもの)

連絡先
環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部企画課リサイクル推進室
代表:03-3581-3351
直通:03-5501-3153
室長:上田 康治(内線6831)
室長補佐:坂口 芳輝(内線6832)
室長補佐:平尾 禎秀(内線6823)
担当:小林 賢昌(内線6828)