報道発表資料
第2回アジア国立公園会議が、令和4年5月25日から29日にかけて、マレーシア・サバ州のサバ国際 センター及びオンライン会議の併用で開催されました。 本会議では、保護地域等に関する取組みについての情報共有や保全・管理の推進に向けての意見交換が 行われたほか、保護地域の保全と管理を推進するための「コタキナバル宣言」が取りまとめられました。 環境省は、自然を活用した解決策(NbS)に関する討議の主催及び日本の国立公園等の取組状況を報告 しました。 |
(1)開催概要
・ 名 称:第2回アジア国立公園会議 (2nd Asia Parks Congress)
※保護地域等の保全・管理に関する情報共有・議論を目的に開催
・ 日 程:令和4年5月25日(水)~ 同年5月29日(日)
・ 会 場:マレーシア・サバ州 コタキナバル Sabah International Convention Centre、オンライン会場
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参加者:アジアの国々を中心とする49の国と地域から、政府関係者、国際機関、研究者、NGO、ユースや先住民の団体、民間企業等が約1,250名参加
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会議のテーマ:自然と人々のための保護地域(Parks for Nature and People)
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主な会議:全体会合、ユースセッション、ワーキンググループ、ポスターセッション、サイドイベン ト
(2)ワーキンググループ等での議論
各ワーキンググループ(WG)等での議論の概要は、次のとおりです。
1.WG1/自然を活用した解決策(Nature based Solutions : NbS)
環境省が主催し、大正大学の古田尚也教授が議長を務めた。発表・議論では、SATOYAMAイニシアティブの取組みが紹介されたほか、保護地域や保護地域以外の有効な面的管理手法(OECM)などがNbSの有効な仕掛けとなる、伝統的な知識と近代的な科学の融合が重要、NbSの考え方が十分理解されているとは言えず適切なガイダンスツールが必要、保護地域の外側も含め取組を拡大していくことが重要、新型コロナで人の健康と自然のつながりの重要性が認識され、気候変動への対応においてもNbSは有効等の意見が出された。さらに、保護地域等におけるNbS推進のためのガイドブック(案)が議長より提示され、参加者からの意見をふまえ、生物多様性条約第15回締約国会議等での公表を目指して修正していくこととなった。
2.WG2/保護地域のガバナンス
先住民や地域住民の権利と伝統的なガバナンスを尊重する必要性、意思決定の透明性確保と説明責任、取組の適切な評価と成功事例の共有、様々な関係者の連携、保護・保全に必要なコストや得られる恩恵の公平な負担と配分などの重要性などが発表・議論された。
3.WG3/生物の生息域接続と移動に配慮した保護
大規模農業開発やインフラ整備などにより生物の生息域の分断が深刻な状況であり、国境を越えた国同士の連携、生態学的な回廊や緩衝地域の設置による分断された生息地の回復と保全についてIUCのガイドラインも参考にしつつ進めることが必要といった発表・議論があった。
4.WG4/効果的な保護
IUCNのグリーンリストは保護地域の管理の質を評価し、その向上を図る有効な手段であることが共有された他。個別の保護地域の優良事例を国レベルへ拡大・発展させていくことが重要であること、保護地域を管理するレンジャーのジェンダーバランスや人材育成なども課題といった発表・議論があった。
5.WG5/保護地域の経済的・財政的持続可能性
日本から国立公園満喫プロジェクトの取組みについて共有した他、保護・保全のための経済的な手法の重要性を認識し、持続可能な資金調達の戦略が必要であること、生物多様性に及ぼす影響を可視化し、有害な補助金を段階的に廃止すべきこと、様々な経済活動の各段階において生物多様性を主流化させる必要があることなどについて発表・議論された。
6.WG6/都市部の自然保護と若者
アジアにおける急激な都市の拡大が、人と自然の分断を招いていること、都市における緑地の保全と再生が人の健康の確保や防災、気候変動への適応にも寄与していること、科学技術を活用したモニタリング、子供たちの環境教育や保護活動への参加を促すことも重要であることなどが発表・議論された。
7.ユースセッション
参加した若者間での取組み共有が行われたほか、若者が自然保護に対する熱意を有しており、その可能性を引き出すことが重要であることを踏まえ、保護地域に関する「アジア・ユースネットワーク」を設立し、参加と経験の共有を促進するとともに、能力開発の機会を増やしリーダー育成を図ることとされた。
8.先住民・地域社会セッション
保護地域において先住民や地域社会が慣習として独特の役割を果たしていることを認識し、その権利を尊重する必要。先住民等の参加や彼らの慣習的な管理手法が認識されない新たな保護地域の指定は避けるべきといったことが話し合われた。
(3)会議の成果
会議の成果として、各WG等での議論を踏まえた、「コタキナバル宣言」が最終日の閉会式で取りまとめられました。(英語全文は別添のとおり。)
宣言には、各WG等からの報告が盛り込まれたほか、「自然と人のための行動」として、次のような点が掲げられています。
・今後の世界的生物多様性枠組みが採択される予定の第15回生物多様性条約締約国会議や気候変動枠組
み条約締約国会議に対して会議から強力なメッセージを送る。
・今回の会議からの重要なメッセージを、今後開催される、第1回アフリカ保護地域会議や第7回ASEA
N世界遺産公園会議、第5回国際海洋保護地域会議、そして次回世界公園会議へ発信する。
・アジア保護地域パートナーシップ(APAP)のさらなる発展と成長を支持し、定期的なアジア公園会議
の開催を促す。
・IUCNと世界保護地域委員会(WCPA)、その他の地域または準地域の機関に取組支援を要請する。
連絡先
- 代表
- 03-3581-3351
- 直通
- 03-5521-8278
- 課長
- 熊倉 基之 (内線 6440)
- 課長補佐
- 中山 直樹 (内線 6650)
- 課長補佐
- 前原 ゆい子 (内線 6444)
- 担当
- 迫 裕樹 (内線 6649)