報道発表資料

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2021年12月09日
  • 水・土壌

令和2年度漁業者の協力による海底ごみ回収実証業務の結果について

 海洋プラスチックごみ対策として、漁業者の協力を得て、操業時に回収した海底ごみを持ち帰ることなどを促進しています。この取組について、「漁業者の協力による海底ごみ回収実証地域」として7地域を決定し、令和2年度より実証業務を開始しました。
本業務において、自治体・漁業者へのヒアリング・アンケート調査及び海底ごみの調査を行い、その結果をまとめました。

1.背景

 「海岸漂着物対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」(令和元年5月31日変更閣議決定)、「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」(令和元年5月31日海洋プラスチックごみ対策の推進に関する関係閣僚会議決定)等において、漁業者の協力を得て、操業時に回収した海洋ごみについて、漁業者への負担に配慮しつつその持ち帰りを促進するための取組の推進が位置づけられています。海面に漂うごみや海底に沈んだごみは回収することが難しいため、環境省では水産庁とも連携し、漁業者等がボランティアで回収した海ごみを自治体が処理する場合の費用を、都道府県あたり最大1千万円まで定額補助する制度を2020年度に新設しました。初年度は21の道府県が本制度を利用し、漁業等が持ち帰ったごみの処理が進められています。さらに、このような取組について、より効果的な実施や他自治体への横展開を促すとともに、漁業者による海洋ごみの回収に係る実態把握を進めるため、「漁業者の協力による海底ごみ回収実証地域」として7地域を決定し、令和2年度より実証業務を開始しました。本業務では、自治体と漁業者間の協力体制の構築の手順や、回収から処分までに発生する課題の解決、より効率的・効果的な回収、海洋ごみの発生源特定などの検討に資するマニュアルの策定を3か年程度で進めていきます。令和2年度は自治体・漁業者へのヒアリング・アンケート調査、及び海底ごみの調査を行い、その結果をまとめました。

2.調査結果

(1)自治体・漁業者へのヒアリング、アンケート調査

① ヒアリング調査

 実証地域の7地域(加賀市沿岸域、金沢市沿岸域、東京湾、淡路島沿岸域、宗像市沿岸域、八代海及び青島沿岸域)の自治体と漁業者を対象として、海底ごみに関する現状や被害実態の把握、地元の活動状況・問題意識、海底ごみの分布・移動情報、自治体と漁業協同組合のごみ回収協力体制の構築における課題等について意見を聴取し、課題を整理しました。

 自治体からは、「海底ごみの回収及び分別を漁業者自らが率先して行う流れを作りたい」、「海洋ごみ回収事業をフラッグシップとしてさらに県内全域へ展開していきたい」、「ごみ回収に積極的な漁業者と一緒に漁場環境の改善を図るとともに、調査結果を次年度以降の事業に活用したい」、「ごみ回収調査協力の効果を周知・発信することで海洋プラスチックごみ問題に対する市民の意識啓発効果が期待できることから、県内や全国へのモデル的な取組としたい」等の意見が得られました。

 漁業者からは、「操業繁忙期に手間のかかる調査協力は厳しい」等の意見もありましたが、「海をきれいにしたい」、「水産物の資源管理のために休漁した期間を利用して、ごみ回収による漁場環境の改善を図り、回収ごみはリサイクルして"海ごみペットボトル"等として収益がでるようなシステムを構築したい」等の意見も得られました。

 また、ごみ回収時の破網・航行障害、漁獲物とごみ分別時の手間・ケガ、回収ごみ運搬、陸揚げ時の作業負荷など、全地域共通の課題が指摘されたほか、主要品目の組成や、言語表記の異なるごみ、特定の漁具類等の数量や発生時期に地域差も見られました。

② アンケート調査

 環境省の補助金を活用して海洋ごみ回収に取り組んでいる21道府県(北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、神奈川県、新潟県、石川県、愛知県、三重県、京都府、兵庫県、和歌山県、島根県、岡山県、広島県、徳島県、香川県、福岡県、大分県及び沖縄県)と実証地域のうち、千葉県市川市、熊本県(芦北町)及び宮崎県宮崎市の自治体並びに漁業者を対象として、アンケートを実施し、課題を整理しました。

 海底ごみ回収の取組を開始した動機としては、自治体では漁業者からの要請、漁業者では漁場環境の改善・維持管理が多く、取組による効果、知りたい情報については、自治体からは、ごみの品目特定による発生抑制対策、ごみの多い地点特定によるごみ回収の効率化に活用したいとの意見がありました。漁業者からは、加えて、ごみ発生場所特定による発生抑制対策、ごみが多い時期の特定による集中的なごみ回収が可能になるなどの意見がありました。また、海底ごみ回収の効果としては「漁網にかかるごみ総量の減少」が最も多く挙げられました。さらに、海底ごみ回収に伴う課題として、「保管場所への海底ごみ以外のごみ持ち込み」、「保管場所の確保」、「漁業者自治体間の調整と協力体制構築」等が挙げられました。

(2)海底ごみの実態調査

 実証地域における漁業協同組合の協力を得て、海底ごみの実態調査を実施し、回 収した海底ごみについて、その個数や重量、容積等を調査しました。

 その結果、容積ベースでは、全ての調査地点において、プラスチック類の占める割合が高い結果となりました。プラスチック類の主なものとしては、ポリ袋、ロープ・ひも・テープ類、プラボトル、漁具等がありました。

(3)令和3年度の計画

 本調査結果を踏まえて、自治体と漁業者間の協力体制の構築や、回収から処分までに発生する課題の解決、より効率的・効果的な回収、海洋ごみの発生源特定などの検討に資するよう、マニュアルでは「取組組事例の動機と効果」や、「海洋ごみ回収を行うための手順・検討事項」、「自治体と漁業者(漁業協同組合)との関係構築」、「海洋ごみ回収・処分手法の工夫」、「状況把握のための調査手法」等について整理することとしました。

 状況把握のための調査手法については、漁業者及び自治体へのアンケート等に基づき漁業現場の実態に応じた簡易で効率的な手法を検討します。統一した調査手法を策定することで、漁業者による回収実態を明らかにするとともに、削減効果等を「見える化」することで、関係者のモチベーション向上にも資することを目指します。

添付資料

連絡先

環境省水・大気環境局水環境課海洋環境室

  • 代表03-3581-3351
  • 直通03-5521-9025
  • 室長山下信(内線 6630)
  • 室長補佐櫻井 希実(内線 6634)
  • 担当藤本 諒(内線 6638)

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