報道発表資料

令和元年9月17日
保健対策
この記事を印刷

平成30年度 大気中水銀バックグラウンド濃度等のモニタリング調査結果について

 環境省では、国内外の水銀対策に資するため、国内の発生源による影響を直接受けにくい地点(バックグラウンド地点)である沖縄県辺戸岬及び秋田県男鹿半島において、水銀の大気中濃度等のモニタリング調査を実施しています。
 平成30年度の調査においては、辺戸岬及び男鹿半島における大気中水銀濃度及び降水中水銀濃度は、指針値等を十分下回るとともに、これまでの調査結果と大きな乖離はありませんでした。
 辺戸岬では、水銀以外の大気中金属濃度についても調査を行ったところ、水銀と同様に、これまでの調査結果と大きな乖離はなく、指針値が設定されている金属元素については、その指針値を十分下回る値でした。
 また、これまでの辺戸岬における大気中水銀バックグラウンド濃度モニタリングの結果を解析した研究成果を論文(英語)としてまとめました。

1.背景

 環境省では、国内外の水銀対策に資することを目的として、国内の発生源による影響を直接受けにくい沖縄県の辺戸岬において、平成19年度から水銀の大気中濃度(バックグラウンド濃度)等に関するモニタリング調査を行い、平成22年度以降は、毎年その結果を公表しています。また、平成26年8月からは、秋田県の男鹿半島においてもモニタリング調査を実施しています。

2.調査概要

(1)水銀の形態別測定及び粒子状物質中の水銀以外の金属の測定について

 大気中の水銀には多くの種類(形態)が存在し、その大部分を占める元素状水銀(金属水銀)のほか、酸化態水銀、粒子状態で浮遊する水銀(粒子状水銀)等の形態があります。こうした様々な形態の水銀は、大気中において異なる挙動を示すことが知られています。

 本調査では、国際的な水銀の排出状況及び濃度レベルの推移、それらが我が国の環境に及ぼす影響の把握等に資することを目的に、国内のバックグラウンド地点である沖縄県の辺戸岬において、大気中にガス状で存在する金属水銀及び酸化態水銀、並びに粒子状水銀の濃度と、降水中の総水銀濃度について測定を実施してきました。併せて、大気中水銀濃度や降水中水銀濃度の変化傾向を確認するため、大気中粒子状物質中の水銀以外の金属類等についても測定を行いました(表1参照)。

 また、北日本における水銀バックグラウンド濃度を測定するため、秋田県の男鹿半島においても形態別水銀と降水中水銀濃度の測定を実施しています(平成26年8月~)。

(2)測定地点

  • 沖縄県辺戸岬

国立研究開発法人 国立環境研究所 辺戸岬 大気・エアロゾル観測ステーション

(沖縄県国頭郡国頭村大字宜名真)

  • 秋田県男鹿半島

秋田県船川測定局隣接地

(秋田県男鹿市船川港船川字泉台)

(3)測定方法、調査項目及び測定頻度

 大気成分については、形態別水銀連続測定装置を用いて測定を行いました。

 降水成分については、降水捕集装置により試料を採取し、米国環境保護庁(EPA)が定める方法に準じて濃度分析を行いました。

表1 調査項目及び測定頻度

区分

調査項目

測定頻度

測定地点

大気成分

ガス状

金属水銀

連続測定(16回/日)

辺戸岬・男鹿半島

酸化態水銀

連続測定(8回/日)

粒子状水銀

粒子状物質中のその他金属

(有害17成分、指標6成分)

週1回測定(7日間連続サンプリング)

辺戸岬

降水成分

降水中の水銀濃度

週1回測定(7日間連続サンプリング)

辺戸岬・男鹿半島

※本調査における「金属水銀」とは、大気中にガス状で存在する水銀元素(Hg0)のことを指します。また、「酸化態水銀」は、大気中にガス状で存在する酸化された水銀(Hg2+)を、「粒子状水銀」は、大気中の粒子状物質に含まれる又は吸着している水銀を、それぞれ表しています。

※大気汚染防止法に基づいて行われている有害大気汚染物質モニタリング調査における水銀濃度のモニタリングと本調査では測定方法が異なります(別添参照)。

3.調査結果の概要

(1)大気中水銀濃度

 大気中の形態別水銀の合計の年平均値は、辺戸岬、男鹿半島ともに1.6 ngHg/m3であり、環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値(指針値。年平均値40 ngHg/m3)を十分下回る値でした。

 なお、大気中の水銀は、そのほとんどが金属水銀であり、酸化態水銀及び粒子状水銀は平均で1%未満でした(別添表4及び別添表6参照)。

 また、辺戸岬における形態別水銀の合計の濃度及び形態別の水銀濃度の年平均値は、昨年度と同じ値で、金属水銀の濃度は通年で測定を開始した平成20年度以降、形態別水銀の合計の濃度については平成21年度以降減少傾向を示していますが、平成25年度以降は概ね横ばいで推移しております(表2及び別添表5参照)。

表2 辺戸岬における大気中水銀濃度の年度別測定結果(年平均値)

(単位:ngHg/m3


測定項目

平成
19
年度

平成
20
年度

平成
21
年度

平成
22
年度

平成
23
年度

平成
24
年度

平成
25
年度

平成
26
年度

平成
27
年度

平成
28
年度

平成
29
年度

平成
30
年度

金属水銀

1.5

1.8

2.2

1.9

2.1

2.0

1.7

1.7

1.6

1.7

1.6 1.6

酸化態水銀

0.001

0.002

0.002

0.001

0.002

0.002

0.001

0.002

0.002 0.002

粒子状水銀

0.002

0.002

0.002

0.002

0.004

0.004

0.002

0.003

0.002 0.002

合計

2.2

1.9

2.1

2.0

1.7

1.7

1.7

1.7

1.6 1.6

※平成19年度については、測定を開始した10月16日以降のデータを用いて平均値を算出しています。酸化態水銀と粒子状水銀は、平成21年10月以降に安定した測定が実施できるようになったことから、同月以降合計濃度を算出しており、そのデータを年度別平均値の算出に用いています。

※平成21年度までは試行期間であり、測定日数が限られる等の点に留意する必要があります。

 男鹿半島における形態別水銀の合計の濃度及び形態別の水銀濃度の年平均値は、過年度と概ね同等の値となりました(表3及び別添表7参照)。

3 男鹿半島における大気中水銀濃度の年度別測定結果(年平均値)

 (単位:ngHg/m3

測定項目

平成26年度

平成27年度

平成28年度

平成29年度

平成30年度

金属水銀

1.6

1.6

1.6

1.6 1.6

酸化態水銀

0.002

0.003

0002

0.003 0.003

粒子状水銀

0.009

0.009

0.011

0.009 0.008

合計

1.6

1.6

1.6

1.6 1.6

※平成26年度については、測定を開始した8月8日以降のデータを用いて平均値を算出しています。

(2)降水中水銀濃度

 降水中の水銀濃度の年平均値は辺戸岬において3.9 ngHg/L、男鹿半島において6.0 ngHg/Lでした。降水中の水銀については指針値等が設定されていませんが、参考として、水銀に関する水道水の水質基準値である500 ngHg/Lと比較すると、測定値は十分低い値でした(表4及び別添表9、表11参照)。

表4 辺戸岬と男鹿半島における降水中水銀濃度の年度別測定結果(年平均値)

(単位:ngHg/L)

測定地点

平成
28年度

平成
29年度

平成
30年度

辺戸岬

6.6

4.8

3.9

男鹿半島

6.3

5.7

6.0

(3)大気中粒子状物質における水銀以外の金属元素の濃度

 本モニタリング調査では、水銀の発生源・挙動等を解析するため、大気中の粒子状物質に含まれる、又は粒子状物質に吸着した、ニッケル、ヒ素、鉛、カドミウム等の金属元素(有害17成分、指標6成分)の濃度を、辺戸岬において測定しています(表5及び別添表12参照)。

 辺戸岬におけるニッケル、ヒ素及びマンガンの平成30年度の年平均値はそれぞれ0.97ngNi/m3、0.70 ngAs/m3、4.9 ngMn/m3であり、いずれも環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針値(年平均値 ニッケル25 ngNi/m3、ヒ素6 ngAs/m3、マンガン140 ngMn/m3)を下回る値でした。

 また、同指針値が設定されていない鉛、カドミウム及びクロムについては、平成30年度の年平均値はそれぞれ2.7 ngPb/m3、0.096 ngCd/m3、18 ngCr/m3でした。

 鉛とカドミウムについては、測定開始以来の最低値を、ヒ素については、二番目に低い値を記録しました。一方、クロムについては、金属クロム(クロム(0))、三価クロム(クロム(III))、六価クロム(クロム(VI))の合計値(総クロム)として計測し、測定開始以来、最も高い値となりました。

表5 辺戸岬における粒子状物質中の金属類の濃度の年度別測定結果(年平均値)

(単位:ng/m3

測定項目

指針値

平成19年度

平成20年度

平成21年度

平成22年度

平成23年度

平成24年度

平成25年度

平成26年度

平成27年度

平成28年度

平成29年度

平成30
年度

ニッケル(Ni)

25 0.76 0.59

0.87

0.95 0.99 1.1 1.8

1.5

1.1

0.74

0.98

0.97

ヒ素(As)

6

1.4

0.68

0.85

0.83

0.76

0.99

0.98

1.1

0.74

0.73

0.73 0.70

マンガン(Mn)

140

6.0

3.4

6.7

5.5

4.6

7.4

4.9

6.6

3.7

2.9

4.0 4.9

鉛(Pb

12

4.6

5.2

5.7

5.0

7.3

6.9

6.5

3.4

3.1

2.9 2.7

カドミウム(Cd

0.25

0.13

0.17

0.16

0.12

0.17

0.19

0.20

0.13

0.13

0.11 0.096

クロム(Cr

0.83

0.52

1.1

1.1

0.87

1.3

1.2

1.4

0.69

0.65

0.91 1.8

4.これまでの成果の英語論文化

 辺戸岬においてこれまで進められてきた水銀モニタリングデータを用いて、日本周辺の大気中水銀バックグラウンド濃度の解析を行った論文(英語)をまとめ、2019年6月30日付でオンライン・ジャーナル「Atmosphere」誌に掲載されました。本論文は、掲載雑誌のページからダウンロードできます。

タイトル:Long-Term Observation of Atmospheric Speciated Mercury during 2007-2018 at Cape Hedo, Okinawa, Japan

https://doi.org/10.3390/atmos10070362 【外部サイトへリンクします】

5.今後の対応

 本モニタリング調査のデータは、アジア太平洋地域における大気中の水銀の状況についての基礎資料として重要であり、また、水銀に関する水俣条約の有効性評価にも資することから、今後も継続的にモニタリング調査を実施し、広く国内外へのデータの提供や結果の発信を行う予定です。

添付資料

連絡先
環境省大臣官房環境保健部環境保健企画管理課水銀対策推進室
代表 03-3581-3351
直通 03-5521-8260
室長    須田恵理子(内線 6353)
担当    斉藤 貢 (内線 6368)
担当    伊藤 悟志(内線 6356)

環境省大臣官房環境保健部環境安全課
代表 03-3581-3351
直通 03-5521-8261
課長    太田志津子(内線 6350)
保健専門官 水谷 玲子(内線 6361)

環境省 国立水俣病総合研究センター
環境・保健研究部環境化学研究室
代表 0966-63-3111
室長    丸本 幸治

Adobe Readerのダウンロード

PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Readerが必要です。Adobe Reader(無償)をダウンロードしてご利用ください。

ページ先頭へ