報道発表資料
- 自然環境
生物多様性条約第14回締約国会議、カルタヘナ議定書第9回締約国会合及び名古屋議定書第3回締約国会合(国連生物多様性会議 エジプト シャルム・エル・シェイク2018)の結果について
閣僚級会合では、「エネルギー・鉱業、インフラ分野、製造・加工業及び健康分野における生物多様性の主流化」をテーマに議論や経験の共有がおこなわれ、「シャルム・エル・シェイク宣言」の採択が行われました。
これに引き続き、生物多様性条約COP14では「人間と地球のための生物多様性への投資」をテーマとして、生物多様性の主流化や、生物多様性の新たな世界目標となる、ポスト2020目標の検討プロセス等、広範な事項が議論され、39の決定が採択されました。カルタヘナ議定書COP-MOP9では、カルタヘナ議定書の実施状況や課題等について、名古屋議定書COP-MOP3では、名古屋議定書の実施に関する事項について議論されました。
1.開催期間・会場
閣僚級会合(ハイレベルセグメント):平成30年11月14日(水)~15日(木)
本会合:平成30年11月17日(土)~29日(木)
会場:シャルム・エル・シェイク(エジプト)シャルム・エル・シェイク国際会議センター
2.参加国・参加登録者数など
COP14には締約国・地域、国連環境計画など生物多様性に関係する国際機関、先住民代表、市民団体など3800人以上の参加登録がありました。
3.日本からの参加者
日本政府からは、城内環境副大臣が政府代表団長として閣僚級会合などに出席するとともに、環境省、外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省の担当者が参加しました。また、このほか経済界、地方自治体、NGO関係者等が参加しました。
4.主な成果
(1) 閣僚級会合(ハイレベルセグメント)
平成30年11月14日(水)~15日(木)に開催された閣僚級会合には、閣僚級の参加者53名を含め、118カ国からの参加がありました。会合では、「エネルギー・鉱業、インフラ分野、製造・加工業及び健康分野における生物多様性の主流化」をテーマに、環境分野のみならず生物多様性に関連する分野の閣僚等が、議論と成功事例の共有を行いました。
会合の成果として「シャルム・エル・シェイク宣言」【別添1】が採択されました。同宣言には、関連セクターの主流化に関する内容に加えて、現行の「愛知目標」を含む「生物多様性戦略計画2011-2020」を確実に実施していくための努力を加速させていくことや、2020年以降の新たな生物多様性の世界目標の策定及び実施を支援していくこと等が記載されています。
また、城内環境副大臣は、環境省がこれまで進めてきた経済活動への生物多様性の主流化に向けた取組みや、経団連をはじめとする日本の経済団体が進めている取組みも併せて紹介し、我が国において多様な主体がこの分野で活動していることを発表しました。
【紹介した取組の例】
・2006年にブラジルで開催されたCOP8の「民間参画に関する決議」に基づき、2009年から「生物多様性民間参画ガイドライン」を作成するなどして、経済活動の中での生物多様性の主流化に取り組んできたこと。また、近年のSDGsの採択、ESG投資の拡大等を背景として、昨年12月に同ガイドラインを改訂したこと。
・経団連による「経団連生物多様性宣言」の改訂とそのポイント。(「経営者の責務」の項目を新たに設け、経営トップが生物多様性の重要性を認識し、取り組むことが重要であることを示したことなど。)
・JBIB(企業と生物多様性イニシアチブ)や電気・電子4団体の生物多様性ワーキンググループによる、ガイダンスの作成を通じた企業の取組支援。
また、城内環境副大臣は、閣僚級会合の期間中にCOP14の議長国であるエジプト、来年のG7議長国であるフランス、生物多様性条約事務局長等、7つの国や国際機関の代表と個別会談を行い、生物多様性の主流化やポスト2020目標の検討プロセスについて意見交換しました。
(2)生物多様性条約COP14
COP15(2020年・中国)において採択される予定である、2020年以降の新たな生物多様性の世界目標(ポスト2020目標)に関する検討プロセスについて検討されました。採択された検討プロセスでは、多様な主体が参画するワーキンググループの設立、国連地域区分毎でのワークショップの開催、閣僚級パネルの設立等が決定されました。なお、日本は愛知県の協力を得て、2019年1月末にアジア太平洋地域のコンサルテーションワークショップを愛知県名古屋市で開催することとしています。
また、生物多様性の主流化については、エネルギー分野、鉱業、インフラ分野、製造業及び加工業における主流化が、生物多様性の損失を食い止め、戦略計画やSDGsの達成にあたり不可欠であることが強調されました。これを踏まえ、締約国や経済界等の関係者に対し、生物多様性の主流化に関する措置をとることが奨励されました。
このほか、生物多様性と気候変動、空間計画・保護地域及びその他の効果的な地域をベースとする保全手段(OECM)、合成生物学、遺伝資源に関する塩基配列情報(DSI)等、広範な事項が議論されました【別添2】。
(3)カルタヘナ議定書COP-MOP9
名古屋クアラルンプール補足議定書が発効したことが報告されるとともに、当該補足議定書を締約していない他のカルタヘナ議定書締約国へ批准を要請することが決定されました。また、情報交換センター(BCH)の効率的・効果的な運用や、能力養成など、カルタヘナ議定書の適切な実施を図るための各種の取組や、カルタヘナ議定書の次期戦略計画の検討方法などが決定されました【別添3】。
(4)名古屋議定書COP-MOP3
生物多様性条約締約国の55%が議定書を締結し、そのうち約70%が国内のABS措置を策定するなど、進捗が見られることが確認されました。しかし、未だ議定書締結に至っていない国や、国内措置策定中の締約国、ABS国際情報交換センター(クリアリングハウス)に国内措置等の必須情報を掲載していない締約国も多く、これらの改善を求めることなどが決定されました。
このほか、名古屋議定書の有効性評価、ABS国際情報交換センター(クリアリングハウス)の活用、遺伝資源の利用から生ずる利益の多国間利益配分メカニズムの必要性及びあり方などについて議論されました【別添4】。
(5)ビジネスフォーラム
平成30年11月14日(水)~15日(木)に開催されたビジネスと生物多様性フォーラム2018では、「人と地球のための生物多様性への投資 生物多様性の保全のために学んだ教訓を共有し、民間部門の行動を推進する」をテーマに、経済分野のビジネスリーダー等が出席し、ビジネスモデルや事業における生態系や生物多様性の考慮事項、取組等について議論を行いました。
日本の経済界からは、経団連自然保護協議会の二宮会長(損保ジャパン日本興亜会長)、サラヤ株式会社の更家社長、味の素株式会社の木村常務執行役員、富士ゼロックス株式会社の宮本環境経営グループ長の4名が登壇し、生物多様性の主流化に向けた先進的な取組を説明しました。
本フォーラムでは、①持続可能な消費と生産パターンへ移行することで、企業にとって大きな利益をもたらす可能性があること、②こうした移行期は資金を提供する革新的な財務ツール開発の好機となること、③国の経済開発計画に生物多様性を統合することが、主要経済分野で新しいビジネスモデルを開発するための好機を生み出すことができることなど、事業活動と生物多様性の関係について議論がなされました。また、2020年以降の生物多様性の枠組みについて、生物多様性を保全するため、既存の優良事例も参考に、具体的な対応を実施していくべきであることなどがまとめられました。
5.日本の貢献・取組
日本は、COP10以降、生物多様性日本基金および名古屋議定書実施基金を設立し、途上国における愛知目標達成に向けた取組に対して支援を行うとともに、国内でも愛知目標を踏まえた生物多様性国家戦略の改訂やその実施を通じて施策の充実を図ってきました。
今次会議においても、各議題の議論に積極的に参加・貢献するとともに、次のような取組を行いました。
(1)国連生物多様性の10年の日(UNDB-DAY)(11月19日)
・国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)と生物多様性条約事務局の主催により、「国連生物多様性の10年の日」として、愛知目標達成のための行動を国際的に呼びかける終日イベントを開催。
・「愛知目標の達成に向けた主流化促進施策・優良事例の紹介」、「2020年に向けたラストスパート」、「愛知目標からポスト2020目標へ 自然との共生を目指して2021~2030になすべきこと」の3部に分けて、国内外の行政、経済界、NGO、ユース等の幅広い分野から出席者を得て、発表・意見交換を行った。
・日本からはIUCN-Jの道家氏、イオン環境財団の星田氏、電機・電子4団体環境戦略連絡会生物多様性WGの土田氏、経団連自然保護協議会の石原氏、国連大学サスティナビリティ高等研究所の武内氏が登壇され、各自の取組等の発表、意見交換等が進められた。
(2) 生物多様性と人々の暮らしのための社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ:ポスト2020世界生物多様性枠組における役割(11月17日)
・コンサベーション・インターナショナル(CI)、生物多様性条約事務局(SCBD)、国連開発計画(UNDP)、地球環境ファシリティ(GEF)、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、環境省、クリティカル・エコシステム・パートナーシップ基金(CEPF)、公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)により開催。
・社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS:SATOYAMAの専門的な定義)に関する国際的な議論の進展と、GEF-SatoyamaプロジェクトやCOMDEKSなどの取り組みの成果を踏まえ、生物多様性や人々の暮らしにおけるSEPLSの重要性と、環境や経済・社会の様々な課題解決に向けてポスト2020世界生物多様性枠組みにおいて期待される役割に関して発表。
・今後、SEPLSでの取組を推進し拡大していく方法を議論。
(3)生物多様性の保全と人々の暮らしのための効果的なランドスケープ・アプローチに関するまとめと普及(11月19日)
・国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、国連開発計画(UNDP)、コンサベーション・インターナショナル(CI)、地球環境戦略研究機関(IGES)、環境省により開催。
・SATOYAMAイニシアティブ主題レビュー第4巻「社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)における生物多様性の持続可能な利用及び効果的な地域ベースの保護への貢献」の発刊の紹介、及びSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)の下の資金メカニズム(国連大学によるSATOYAMA保全支援メカニズム(SDM)、UNDPによるSATOYAMAイニシアティブ推進プログラム(COMDEKS)、GEF-Satoyamaプロジェクト)により得られた、SEPLS保全に関する知見(住民参加・制度化・多様な資金の必要性など)に関して発表。
・ポスト2020目標におけるSDGsや経済・社会問題との統合、様々なレベルでのステークホルダーの参加、他セクターとの協力、気候変動適応への貢献など、今後の方向性を議論。
(4)展示ブース
COP14期間中、以下の展示が行われました
・環境省、農林水産省及び経団連自然保護協議会が、日本の生物多様性の主流化に関する取り組みを紹介。
・国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)が、SATOYAMAイニシアティブに関する取組を紹介。
6.次回以降の会議
次回以降の会議開催国・時期については、次の通り決定しました。
・生物多様性条約第15回締約国会議、カルタヘナ議定書第10回締約国会合および名古屋議定書第4回締約国会合...中国、2020年第4四半期
・生物多様性条約第16回締約国会議、カルタヘナ議定書第11回締約国会合および名古屋議定書第5回締約国会合...トルコ、2022年第4四半期
・生物多様性条約第17回締約国会議、カルタヘナ議定書第12回締約国会合および名古屋議定書第6回締約国会合......未定、2024年第4四半期
添付資料
- (1)シャルム・エル・シェイク宣言(仮訳) [PDF 23 KB]
- (2)生物多様性条約COP14の主要な決定の概要 [PDF 23 KB]
- (3)カルタヘナ議定書COP-MOP9の主要な決定の概要 [PDF 8 KB]
- (4)名古屋議定書COP-MOP3の主要な決定の概要 [PDF 9 KB]
- 連絡先
- 環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性戦略推進室
直通 03-5521-8275
代表 03-3581-3351
室長 中澤圭一 (内6480)
室長補佐 尼子直輝 (内6481)
専門員 木内武雄 (内6485)
係員 澁澤悠哉 (内6663)
環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性主流化室
室長 中澤圭一 (内6480)
室長補佐 西田将人 (内6666)
環境省自然環境局野生生物課外来生物対策室
室長 北橋義明 (内6680)
室長補佐 八元綾 (内6681)