報道発表資料

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2018年10月26日
  • 地球環境

「脱炭素化と持続可能な開発に向けた都市に関する日中韓共同研究に関する第1回研究会合」の結果について

10月16日(火)、中国・北京において、脱炭素化と持続可能な開発に向けた都市に関する日中韓共同研究に関する第1回研究会合が開催されました。
この会合では、日本、中国、韓国における 1)全般的な気候変動対策の現状、2)脱炭素都市へ向けた政策の現状、3)各国で選定された都市(9都市)の取組について、各国の脱炭素都市へ向けた課題などを中心に議論を行いました。その後、本共同研究の今後の方向性などについて議論を行いました。
今後は、第1回研究会合で報告・議論された成果を中心にした報告書をCOP24のサイドイベントで公表するとともに、来年に実施されるTEMM21にそれらの成果を報告し延べ3年間の共同研究を進めていく予定です。

1.会合の概要

平成30年6月の第20回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM20)において、脱炭素都市構築に向けた日中韓共同研究が正式に三カ国の気候変動プロジェクトに位置づけられたことを受けて、第1回研究会合が北京にて開催されました。

中国、日本及び韓国から会合の実施に至るまでの経緯や本共同研究プロジェクトに対する期待が述べられた後、各研究機関から各国における脱炭素都市実現に向けた政策支援の状況や、都市における取組状況が報告されました。その後、一年目の研究対象として各国で選定された都市の取組(日本からは長野県、横浜市、富山市)が発表されました。最後に、協力機関である世界グリーン成長機関(GGGI)から活動の紹介および今後の支援の可能性について述べられたあと、今後の進め方について議論が行われました。

(1)日程・場所

 10月16日(火)、於:中国・北京

(2)主催

 日本国環境省

(3)共催

 中国国家気候変動戦略・国際協力センター(NCSC)、地球環境戦略研究機関(IGES)、韓国環境研究所(KEI)、GGGI

(4)主な出席者

(日本)環境省、長野県、横浜市、富山市、IGES

(中国)生態環境部、深セン市、武漢市、鎮江市、NCSC

(韓国)環境省、水原市、KEI、GGGI

(5)議題ごとの成果

1)全般的な気候変動対策の現状

中国から、責任ある大国の役割として気候変動への対応が重視され、生態に配慮した文明を構築するためにグリーン経済を実現することが目標とされていることが示され、特に都市に対しては発展段階に応じて多様な政策決定支援をしていることが紹介された。

日本からは、温室効果ガスの排出削減目標を実現するための地球温暖化防止計画についての情報共有を行い、地方公共団体の実行計画が本計画に基づいて体系的に推進されていることを報告した。

韓国からは、温室効果ガスの排出削減目標を達成するために排出権取引を開始したこと、地方公共団体に対しても排出量を割り当てていることなどが紹介された。

2)脱炭素都市へ向けた政策の現状

中国から、国内の都市は発展段階が様々であり一律的な政策形成が難しく、温暖化防止政策で先進している都市を支援するボトムアップのアプローチが重要であるという認識が紹介された。

日本からは、温暖化対策における地方公共団体の役割が法律上規定されていることを背景に、地域の管轄者と排出源をもっている事業者という2つの側面について排出削減の実行計画づくりが求められていることとその具体的な政策事例を紹介した。

韓国からは、都市化の進行に伴い、都市を中心に低炭素政策が進められてきたこと、そのため、比較的早い段階で各都市での排出インベントリーが整備され、政策形成が進められてきたこと等が紹介された。

3)各国で選定された都市の取組

中国から、武漢市、深セン市、鎮江市から発表が行われた。武漢市からは、市内のニーズに基づき自主的に温暖化対策を推進しており、市内外の協力を得ながら国の目標よりも早期にピークアウトすることを目標としていること、深セン市からは、米国カリフォルニア州と再生可能エネルギーの推進につき協力を得つつ、火力発電所の閉鎖などの低炭素政策を推進していること、鎮江市からは、温暖化対策は都市の発展に不可欠であり、国の目標よりも早期にピークアウトする目標を掲げ、デカップリングを実践していることが紹介された。

日本からは長野県、横浜市、富山市が発表を行った。まず、長野県から、温暖化対策を推進してきた歴史を振り返るとともに、温暖化政策をエネルギー戦略としてとらえ、将来的にもその方向性を維持する予定であること、横浜市からは、温暖化対策について世界に対してリーダーシップを発揮すべく、「Zero Carbon Yokohama」を持続可能な大都市の将来像として打ち出していること、また、富山市からは、温暖化対策を町づくりの課題ととらえ、10年以上前から進められてきたコンパクトシティ化を地方都市の温暖化対策モデルの1つとして提示していることが紹介された。

韓国からは、研究者から済州市、光州広域市についての発表が行われた後、水原市から発表が行われた。済州市においては、その地理的特性を利用して風力発電を推進し、2030年までに電気自動車100%を目指していること、光州広域市では、市民参加により温室効果ガスの排出削減計画を作成し2050年までに脱炭素都市を実現することを目指していることが示された。加えて、水原市からは大量のデータを収集・分析し、市内に分析結果を共有して、市民や事業者の主体的な排出削減活動を推進するとともに自動車を使用しない生活の社会実験を行っていること等が紹介された。

4)本共同研究の今後の方向性など

COP24(ポーランド・カトビチェ)の期間中に開催されるサイドイベントにおいて、本共同研究の統合レポート、都市ケーススタディレポートなどを成果として報告するとともに、来年の第21回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM21)等でも成果を報告できるよう引き続き各国において研究を推進することになった。

連絡先
環境省地球環境局国際地球温暖化対策担当参事官室
直通 03-5521-8330
代表 03-3581-3351
参事官 小川眞佐子(内線6772)
主査  寺岡裕介(内線6774)