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2018年07月30日
  • 大気環境

平成29年度アスベスト大気濃度調査結果について

 環境省では、アスベストによる大気汚染の状況を把握し、今後のアスベスト飛散防止を検討するための基礎資料とするとともに、国民に対し情報提供するため、平成17年度より毎年、大気中のアスベスト濃度を調査しています。今般、平成29年度の調査結果を取りまとめましたので、お知らせします。
 平成29年度は全国57地点で測定しました。多くの地点において、アスベスト以外の繊維を含む総繊維について特に高い濃度は見られませんでした。一方、一部の解体現場等においてアスベスト繊維について比較的高い濃度が見られたため、事業者への指導等を行うとともに、平成30年度も継続して調査を行うこととしています。

1 調査目的

 本調査は、平成17年12月27日付け「アスベスト問題に係る総合対策」(「アスベスト問題に関する関係閣僚による会合」決定)に基づき、 アスベストによる大気汚染の状況を把握し、今後のアスベスト飛散防止対策の検討に当たっての基礎資料とするとともに、国民に対し情報提供するために実施したものです。

2 調査方法

(1) 調査地点

 調査は、環境省が平成17年度から調査している継続調査地点31地点、自治体から推薦のあった平成29年度調査地点10地点及び熊本地震に係る熊本県内地域16地点の全国57地点で、大気中のアスベストおよびその他の繊維を含む総繊維数濃度を測定しました。

 調査地点を、解体現場等の発生源周辺地域、発生源の影響を受けない住宅地域等のバックグラウンド地域及びその他の地域としました。その内訳は次のとおりです。

調査区分調査時期調査
地点

発生源周辺地域

調査地点内訳

バックグラウンド地域

調査地点内訳

その他の
地域
旧石綿製品製造
事業場等
廃棄物
処分場等
解体現場蛇紋岩
地域
高速道路及び幹線道路沿線住宅地域商工業
地域
農業地域内陸山間
地域
離島地域破砕施設

継続

調査

地域

第1期調査:平成29年6~7月
第2期調査:平成29年10月~平成30年2月※
31 1 2 - 2 6 7 5 1 3 4 -
平成29年度
調査地域
年1回 10 - 5 2 1 - - - - - - 2

※ No.11「中央防波堤埋立処分場」は工事の影響を考慮し、第1期調査のみ実施

調査区分調査時期調査
地点

発生源周辺地域

調査地点内訳

バックグラウンド地域

調査地点内訳

その他の
地域
旧石綿製品製造
事業場等
廃棄物
処分場等
解体現場蛇紋岩
地域
高速道路及び幹線道路沿線住宅地域商工業
地域
農業地域内陸山間
地域
離島地域破砕施設
熊本県内地域 年1回若しくは年2回 16 - 8 2 - - 4 - - - - 2

(2) 調査方法

 試料の採取および分析は「アスベストモニタリングマニュアル(第4.1版)」(平成29年7月 環境省水・大気環境局大気環境課)に基づいて行いました。

 採取した試料については、位相差顕微鏡を用いてアスベスト以外の繊維を含む総繊維数濃度を測定しました。総繊維数濃度が1本/Lを超過した場合は、分析走査電子顕微鏡(A-SEM)でアスベスト濃度を測定しました。

3 調査結果概要について

(1) 位相差顕微鏡法による地域分類別の総繊維数濃度結果

 地域分類別に測定結果を取りまとめると表1のとおりとなりました。なお、参考として、解体現場における集じん機排気口等での調査結果についても併せて示しています。

ア 発生源周辺地域

 調査を実施した19地点について、地域分類ごとの幾何平均値は、総繊維数濃度が1本/Lを超過しませんでしたが、「旧石綿製品製造事業場等」の1地点及び「蛇紋岩地域」の1地点において、第1期調査(6月)で総繊維数濃度が1本/Lを超過したため、A-SEMでアスベスト濃度を分析しました。

イ バックグラウンド地域

 調査を実施した20地点については、総繊維数濃度が1本/Lを超過した地点はありませんでした。

ウ その他の地域

 調査を実施した2地点について、地域分類ごとの幾何平均値は、総繊維数濃度が1本/Lを超過しませんでしたが、1地点で総繊維数濃度が1本/Lを超過したため、A-SEMでアスベスト濃度を分析しました。

エ 熊本県内調査

 熊本県内において、「避難所もしくは被災建築物周辺」4地点、「がれき集積所・廃棄物処分場など」8地点、「破砕施設」2地点、解体現場2地点の計16地点で調査を行いました。

 地域分類ごとの幾何平均値は、総繊維数濃度が1本/Lを超過しませんでしたが、「破砕施設」1地点及び「解体現場」1地点で総繊維数濃度が1本/Lを超過したため、A-SEMでアスベスト濃度を分析しました。

表1 平成29年度 位相差顕微鏡における地域分類別の総繊維数濃度結果

地域分類地点数総繊維数濃度
最小値
(本/L)
最大値
(本/L)
幾何平均値
(本/L)
発生源周辺地域 旧石綿製品製造事業場等 1 0.11 7.2 0.52
廃棄物処分場等 7 0.056 0.96 0.19
解体現場(建物周辺) 2 ND 0.90 0.19
蛇紋岩地域 3 0.056 1.7 0.28
高速道路及び幹線道路沿線 6 0.056 0.56 0.17
バックグラウンド地域 住宅地域 7 0.056 0.68 0.15
商工業地域 5 0.056 0.96 0.25
農業地域 1 0.056 0.56 0.23
内陸山間地域 3 0.056 0.65 0.16
離島地域 4 ND 0.87 0.21
その他の地域 破砕施設等 2 0.11 1.2 0.36
合計 41 - - -

(参考)

解体現場の集じん機排気口等における調査結果

地点数総繊維数濃度
最小値
(本/L)
最大値
(本/L)
幾何平均値
(本/L)
解体現場(セキュリティーゾーン出入口) 2 0.68 0.90 0.78
解体現場(集じん機排気口) 2 0.11 0.11 0.11
合計  4 - - -
地域分類地点数総繊維数濃度
最小値
(本/L)
最大値
(本/L)
幾何平均値
(本/L)
熊本県地域 避難所もしくは被災建築物周辺 4 0.056 0.51 0.18
がれき集積所・廃棄物処分場など 8 0.056 0.79 0.21
破砕施設等 2 0.11 7.6 0.69
解体現場 2 0.11 1.7 0.40
合計  16 - - -

注1)解体等現場:建築物又は工作物の解体、改造又は補修作業現場

   建物周辺 :解体等現場の直近で一般の人の通行等がある場所との境界

注2)解体現場(建物周辺)以外の地域については3日間の幾何平均値で評価

(2) 継続調査地域における調査結果の推移

 継続調査地域における平成29年度調査結果は表2のとおりです。また、発生源周辺地域及びバックグラウンド地域それぞれの継続調査地域における総繊維数濃度の推移(平成17年度~29年度)は図1-1、図1-2のとおりです。近年では、全ての地点で総繊維数濃度の幾何平均値は1本/Lを下回っており、低いレベルで推移しています。

表2 継続調査地域における平成29年度調査結果

地域分類地点数総繊維数濃度
最小値
(本/L)
最大値
(本/L)
幾何平均値
(本/L)
旧石綿製品製造事業場等 1 0.11 7.2 0.52
廃棄物処分場等 2 0.056 0.51 0.30
蛇紋岩地域 2 0.056 1.7 0.25
高速道路及び幹線道路沿線 6 0.056 0.56 0.17
住宅地域 7 0.056 0.68 0.15
商工業地域 5 0.056 0.96 0.25
農業地域 1 0.056 0.56 0.23
内陸山間地域 3 0.056 0.65 0.16
離島地域 4 ND 0.87 0.21
合計 31 - - -

注1)各測定箇所の総繊維数濃度の評価に当たっては、平成元年12月27日付け環大企第490号通知「大気 汚染防止法の一部を改正する法律の施行について」に基づき、各測定箇所で3日間(4時間×3回)測定して得られた個々の測定値を測定箇所ごとに幾何平均し、その値を総繊維数濃度としている。

注2)調査地域の分類に当たっては、過去の調査結果においては異なる分類を行っていた地域もあるが、平成29年度の調査地域に合わせて分類した。

継続調査地域における総繊維度数の推移(発生源周辺地域)

図1-1 継続調査地域における総繊維数濃度の推移(発生源周辺地域)

継続調査地域における総繊維度数(バックグラウンド地域)

図1-2 継続調査地域における総繊維数濃度の推移(バックグラウンド地域)

(3)  総繊維数濃度が1本/Lを超過した試料に関しての分析走査電子顕微鏡法によるアスベスト分析結果及び 対応

 位相差顕微鏡法による測定の結果、継続調査地域及び平成29年度調査地域のうち、総繊維数濃度が1本/Lを超えた3地点については、分析走査電子顕微鏡法によるアスベスト測定を行いました。この結果、1地点がアスベスト繊維数濃度1本/Lを超過しました。また、熊本県内における調査地点において、総繊維数濃度が1本/Lを超えた2地点についても同様に分析走査電子顕微鏡法による測定を行った結果、1地点がアスベスト繊維数濃度1本/Lを超過しました。これらの地点については、次のとおり対応しています。

① 継続調査地域及び平成29年度調査地域について

 旧石綿製品製造事業場等の1地点でアスベスト繊維数濃度が1本/Lを超過しましたが、第1期及び第2期調査の合計6日間のうち1日のみの超過であり、この他の調査日には1本/Lのアスベスト繊維数濃度が確認されていないことから、恒常的に1本/Lを超過しているわけではありません。

 なお、事業場敷地境界における事業者による測定では、総繊維数濃度は1本/Lを超過していないことなども考慮し、事業者などの協力を得ながら、測定箇所周囲の状況についても調査するとともに、平成30年度は調査箇所を増やすなど、調査を充実することとしています。

 また、この他の2地点では、アスベスト繊維数濃度が1本/L以下でした。

表3 総繊維数濃度が1本/Lを超過した試料のA-SEM測定結果(1)

地点
No
都道府
県名

地域

分類

参考地域分類箇所
番号
光学顕微鏡法電子顕微鏡法

石綿

繊維数
濃度
(本/L)

総繊維数濃度
(本/L)
繊維の割合
石綿繊維その他繊維
クリソタイルアモサイトクロシドライトその他
石綿繊維

石綿

繊維
合計

2 北海道 継続調査地域 旧石綿製品
製造事業場等
①定点 5.4 80% 0% 0% 0% 80% 20% 4.3
1.2 0% 0% 0% 0% 0% 100% 0.0
②定点 7.2 13% 0% 0% 0% 13% 87% 0.9
1.7 0% 0% 0% 0% 0% 100% 0.0
③定点 2.2 0% 0% 0% 0% 0% 100% 0.0
1.9 58% 0% 0% 0% 58% 42% 1.1
1.3 0% 0% 0% 0% 0% 100% 0.0
④定点 1.0 0% 0% 0% 0% 0% 100% 0.0
⑤定点 2.5 0% 0% 0% 0% 0% 100% 0.0
5.6 13% 0% 0% 0% 13% 87% 0.73
⑥定点 1.1 14% 0% 0% 0% 14% 86% 0.16
3 北海道 継続調査地域 蛇紋岩地域 ①定点 1.7 30% 0% 0% 0% 30% 70% 0.51
50 埼玉県 破砕施設等 - ⑤地点 1.2 0% 0% 0% 0% 0% 100% 0.0

② 熊本県内の調査地点について

 破砕施設の1地点でアスベスト繊維数濃度が1本/Lを超過しましたが、破砕施設の周囲は林に囲まれ、直近の民家までは100m程度離れていること等から、影響は少ないものと考えられます。

 なお、本地点については、熊本市に依頼し、事業者に対して廃棄物受入時にアスベスト含有廃棄物の有無を的確に確認することや、散水による粉じんの飛散防止を指導済みであり、平成30年度も継続して調査することとしています。

 また、解体現場のセキュリティゾーン出入口では、アスベスト繊維は確認されませんでした。

表4 総繊維数濃度が1本/Lを超過した試料のA-SEM測定結果(2)

地点
No
都道府
県名
地域分類参考地域分類箇所
番号
光学顕微鏡法電子顕微鏡法

石綿

繊維数
濃度
(本/L)

総繊維数濃度
(本/L)
繊維の割合
石綿繊維その他繊維
クリソタイルアモサイト

クロシド

ライト

その他
石綿繊維
石綿繊維
合計
58 熊本県 解体現場等 解体現場 セキュリティーゾーン
出入口
1.7 0% 0% 0% 0% 0% 100% 0.0
68 熊本県 破砕施設 - 施設敷地内
①地点
1.1 0% 0% 0% 54% 54% 46% 0.60
1.9 0% 0% 0% 47% 47% 53% 0.89

1.1

0% 0% 0% 50% 50% 50% 0.55
施設敷地内
②地点
1.9 0% 0% 0% 67% 67% 33% 1.3
2.4 0% 0% 0% 40% 40% 60% 0.96
7.6 0% 0% 0% 27% 27% 73% 2.1
施設敷地内
⑤地点
2.4 0% 0% 0% 44% 44% 56% 1.1
6.4 0% 0% 0% 63% 63% 37% 4.0
4.7 0% 0% 0% 25% 25% 75% 1.2

4 今後の対応

 環境省では、引き続きアスベストによる大気汚染の状況を把握するため、平成30年度も大気中のアスベスト濃度調査を行う予定です。

 また、東日本大震災の被災地である福島県においても、継続してアスベスト大気濃度調査を実施しています。平成29年の結果は、下記をご参照ください。

https://www.env.go.jp/jishin/attach/asbestos_survey_r180604.pdf

添付資料

連絡先
環境省水・大気環境局大気環境課
直通:03-5521-8293
代表:03-3581-3351
課長:髙澤 哲也
課長補佐:秋山 幸俊(6533)
係長:藤沢 弘幸(6536)

関連情報

過去の報道発表資料

平成29年10月30日
平成28年度アスベスト大気濃度調査結果について

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