報道発表資料

この記事を印刷
2018年07月19日
  • 自然環境

生物多様性条約第22回科学技術助言補助機関会合(SBSTTA22)および第2回条約実施補助機関会合(SBI2)の開催結果について

 生物多様性条約第14回締約国会議(COP14)に向けて、条約の実施状況について科学技術的な見地から検討を行う第22回科学技術助言補助機関会合(SBSTTA22)および条約の構造とプロセスを効率化するための検討を行う第2回条約実施補助機関会合(SBI2)が、それぞれ7月2日(月)~7月7日(土)と7月9日(月)~7月13日(金)に、モントリオール(カナダ)で開催されました。
 SBSTTA22では保護地域およびその他の効果的な地域をベースとする保全手段や、生物多様性と気候変動などについて議論し、10本の勧告が採択されました。SBI2ではエネルギー分野、鉱業、インフラストラクチャー分野、製造業、加工業および健康分野における生物多様性主流化や、2020年以降の新たな生物多様性の世界目標に関する準備プロセスなどについて議論し、20本の勧告が採択されました。
 議論の結果は、本年11月にシャルム・エル・シェイク(エジプト)にて開催予定のCOP14での決定案などに反映される予定です。

1.第22回科学技術助言補助機関会合(SBSTTA22)(注1)の概要


(1)会議名称
 日本語...第22回科学技術助言補助機関会合(SBSTTA(サブスタ)22)
 英 語...Twenty-second meeting of the Subsidiary Body on Scientific, Technical and Technological Advice
(2)開催期間
 平成30年7月2日(月)~7月7日(土)
(3)場所
 モントリオール(カナダ)

(4)会議の概要 

 本会合では、締約国代表の他、国際機関、NGOなどの参加により、合計10本の勧告案が科学技術的観点から検討され、採択されました。主要な議題の結果概要は下記のとおりです。
(i)保護地域以外の地域をベースとする生物多様性保全手段(Other effective area-based conservation measures: OECM)の定義(注2)が採択され、愛知目標11(保護地域関係)達成への貢献を中心とした原則、ならびに生態系ネットワーク形成のための保護地域等と周辺地域との連結、および保護地域管理の効果的な運営に関する任意ガイダンスが歓迎されました。

(ii)生態系を活用した気候変動への適応策(EbA)や防災・減災対策(Eco-DRR)(注3)を効果的に実施するため計画手法等を含む実務者向け任意ガイドラインの内容について検討がなされ、COP14においてこのガイドラインを採択するとともに、締約国に対してそれぞれの実施に関してガイドラインの活用を奨励するよう求める勧告が採択されました。

(iii)2019年の第7回生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)(注4)総会において決定される2030年までのIPBESの作業計画(第2次作業計画)に関し、生物多様性条約が要請する内容(シナリオに関する継続的な作業の必要性を考慮すること等)が取りまとめられました。また、IPBESに対しこれらの要請事項に関する検討を招請することについて、COP14で決定するよう求める勧告が採択されました。


【本会合の公式ウェブサイト】 https://www.cbd.int/doc/?meeting=SBSTTA-22

(注1)科学技術助言補助機関(SBSTTA: Subsidiary Body on Scientific, Technical and Technological Advice: SBSTTA)
 ・生物多様性条約第25条に基づいて設立された。
 ・条約の実施状況について科学技術的な見地から締約国会議(COP)および他の補助機関に対して助言を行うことを任務とする。

(注2)その他の効果的な地域をベースとする保全手段(Other effective area-based conservation measures: OECM)
 愛知目標11において、保護地域と並列して挙げられている保全手段。今次会合で「生物多様性、およびこれに関連した生態系の機能とサービス、ならびに適当な場合には文化的、精神的、社会経済的およびその他の地域関連の価値の域内保全に対し、継続的に正の成果をもたらすような方法で運営・管理される、保護地域以外の地理的に画定された地域」と定義された。

(注3)EbAおよびEco-DRR 
 ・生態系を活用した気候変動への適応策(Ecosystem-based Adaptation:EbA)
   将来予想される気候変動の影響への適応策を実施する際に、生態系サービスを活用する考え方(街路樹のまとまった配置による都市のヒートアイランド対策など)。
 ・生態系を活用した防災・減災(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction:Eco-DRR)
   健全な生態系が有する森林の土砂崩れ防止機能、サンゴ礁の高潮被害軽減機能などの防災・減災機能を積極的に活用して、災害リスクを低減させる考え方。

(注4)生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム
(Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services:IPBES)
 生物多様性と生態系サービスに関する動向を科学的に評価し、科学と政策のつながりを強化する政府間のプラットフォームとして、2012年4月に設立された政府間組織。科学的評価、能力開発、知見生成、政策立案支援の4つの機能を柱とし、気候変動分野で同様の活動を進めるIPCCの例から、生物多様性版のIPCCと呼ばれることもある。

2.第2回条約実施補助機関会合(SBI2)(注5)の概要


(1)会議名称
 日本語...第2回条約実施補助機関会合(SBI2)
 英 語...Second meeting of the Subsidiary Body on Implementation
(2)開催期間
 平成30年7月9日(月)~7月13日(金)
(3)場所
 モントリオール(カナダ)

(4)会議の概要
 本会合では、締約国代表の他、先住民および地域社会団体、国際機関、NGOなどの参加により、合計20本の勧告案が検討され、採択されました。主要な議題の概要は下記の通りです。
(i)各締約国の生物多様性国家戦略および国別報告書をもとにした生物多様性戦略計画2011-2020の実施状況の分析結果をもとに議論がなされ、同計画の実施に向け取組みを著しく加速させることを締約国に求めるとともに、愛知目標の達成に向けた進捗を加速させるための方策案を歓迎することを、COP14に求める勧告が採択されました。

(ii)エネルギー分野、鉱業、インフラストラクチャー分野、製造業、加工業および健康分野における主流化(注6)に向けた様々な主体における取組みの実施、条約における主流化全般に関する長期的な戦略的アプローチの策定の決定、生物多様性条約と世界保健機関(WHO)の協働による生物多様性と健康に関する科学に基づく統合的な指標の開発などを、COP14において求める勧告が採択されました。

(iii)COP15(2020年・中国)において採択される予定である、2020年以降の新たな生物多様性の世界目標に関して、多くの関係者が参加した準備プロセスや、地域ワークショップの開催等を通じて検討を進める準備プロセスが検討されました。また、COP14において準備プロセスを採択し、次期世界目標の検討を進めていくことを決定するよう求める勧告が採択されました。

【本会合の公式ウェブサイト】 https://www.cbd.int/doc/?meeting=SBI-02 

(注5)条約実施補助機関(SBI: Subsidiary Body on Implementation)
 ・CBD-COP決定Ⅻ/26により、条約の構造とプロセスを効率化するために設立された。
 ・生物多様性条約第23条第4項に従い、条約の実施を常に評価する上で締約国を支援することを目的として、生物多様性条約、並びにカルタヘナ議定書及び名古屋議定書の実施状況について科学技術的な見地以外の観点からCOPおよび補助機関に対して助言を行うことを任務とする。

(注6)生物多様性の主流化
 生物多様性の保全と持続可能な利用の重要性が、国、地方自治体、事業者、NPO・NGO、国民などのさまざまな主体に広く認識され、それぞれの行動に反映されること。具体的には、それらの重要性について、セクター内およびセクター間の計画、事業、方針などへ組み込むこと、生物多様性の価値を国家勘定や報告制度に組み込むこと、国の意思決定に反映すること、ビジネスを含む関係者が持続可能な生産および消費のための行動を行うことなどが盛り込まれている。

3.環境省関連のサイドイベント

<ランドスケープ・アプローチ(注7)は、人々の暮らし、科学および自然保護を繋ぐことができるか?SATOYAMAイニシアティブ(注8)と科学・政策インターフェース>
 国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、日本環境省およびガーナ国家生物多様性委員会の共催で、7月5日(木)夜に開催しました。
 UNU-IASが、愛知目標への貢献を含むSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)の最近の活動成果を発表しました。また、専門家がIPBESおよびコミュニティにおけるランドスケープ管理の重要性について発表し、ランドスケープ・アプローチの課題等について、意見交換を行いました。

<生産ランドスケープ・シースケープにおける生物多様性の主流化:統合的アプローチによる生物多様性国家戦略および行動計画の策定と実施>
 UNU-IAS、条約事務局、日本環境省およびエストニア環境省の共催で、7月12日(木)夜に開催しました。
 UNU-IASと東京大学サステイナビリティ学連携研究機関が、条約事務局の協力のもとで実施しているプロジェクト「自然共生社会の実現に向けた生物多様性国家戦略および行動計画の策定と実施に係る研究」の成果として、生産ランドスケープ・シースケープ(人間が生産活動を行っている陸域・海域)における統合的管理アプローチ(様々な関係者の意見を統合して行う管理手法)に関連した概念の評価結果と、その概念と措置が各国の「生物多様性国家戦略および行動計画(NBSAPs)」の下でどのように実施されているかの分析結果を報告しました。また、英国、エストニア及び日本のNBSAPsの事例について発表があり、愛知目標との関係を含め、「社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)」の概念を各国のNBSAPsに取り入れることについて議論しました。

<ランドスケープ管理アプローチへのファイナンス:生物多様性と持続可能な開発の複製と拡大>
 国連開発計画(UNDP)、コンサベーション・インターナショナルおよびUNU-IASの共催で、7月10日(火)夜に開催しました。
 持続可能なファイナンスを通じた、地域コミュニティのランドスケープ計画と管理アプローチの事例として、SATOYAMAイニシアティブ推進プログラム(COMDEKS)、GEF-SATOYAMAプロジェクト、IPSI協力活動等の事例を発表し、これらの事例から得られた知見の普及について議論しました。

<戦略計画2011-2020・愛知目標およびポスト2020年目標に向けたサブナショナル政府(注9)の貢献>
 愛知目標達成に向けた国際先進広域自治体連合(以下「連合」という。)、nrg4SD、ICLEI、条約事務局の共催で、7月6日(金)に開催されました。
 連合が取りまとめた「戦略計画2011-2020と愛知目標に対するサブナショナル政府の貢献に関する自主報告書」が紹介された後、連合メンバーである愛知県、メキシコ州政府連合、カンペチェ州(メキシコ)、江原道(韓国)、ケベック州(カナダ)、サンパウロ州(ブラジル)から、愛知目標の個別項目に焦点を当てた取組発表がされました。
 出席した締約国(日本、メキシコ、韓国、カナダ、エジプトおよび中国)やCBD事務局の関係者などとの議論を通じて、愛知目標達成に向けたサブナショナル政府の重要性が改めて共有され、締約国関係者からもサブナショナル政府の活動に期待する旨のコメントが示されました。

(注7)ランドスケープ・アプローチ
 生物多様性を含む環境の健全性と人間の福利の向上が統合された望ましい土地利用を実現することを目的に、対象地域の様々な関係者の関与により環境保全や生活向上のための意思決定や取組を実施する手法

(注8)SATOYAMAイニシアティブ
 農林漁業などの営みを通じて自然資源が持続的に利用され、人々が豊かな自然の恵みを享受してきた、日本の里地里山のような地域(社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)の保全と再生を通じ、自然共生社会の実現を目指す取組で、日本環境省とUNU-IASが提唱。SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)は、本イニシアティブの活動を促進するために設立された組織で、2010年に開催された生物多様性条約第10回締約国会議 (COP10)の期間中に、国・地方政府機関、研究機関、国際機関、NGO、民間企業等、多様な主体の参加を得て発足し、現在、20ヶ国の政府機関を含む230団体が参加。

(注9)サブナショナル政府
 州・県レベルの広域自治体。

連絡先
環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性戦略推進室
代表   03-3581-3351
直通   03-5521-8275
室長   中澤圭一 (内 6480)
室長補佐 尼子直輝 (内 6481)
係長   蔵本洋介 (内 6489)
係長   加藤優里 (内 6482)