報道発表資料

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2017年12月27日
  • 保健対策

化学物質の環境リスク初期評価(第16次とりまとめ)の結果について

 環境省は、化学物質による環境汚染を通じて人の健康や生態系に好ましくない影響が発生することを未然に防止するため、中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会において審議していただいた上で、「環境リスク初期評価(第16次とりまとめ)」を取りまとめました。その結果、生態リスク初期評価で5物質が「詳細な評価を行う候補」とされました。  
 「詳細な評価を行う候補」とされた物質については、関係部局の連携の下で、詳細な評価の実施を含めた対応を図ることとしています。

1.はじめに

 世界で約10万種、我が国で約5万種流通していると言われる化学物質の中には、人の健康及び生態系に対する有害性を持つものが多数存在しており、適切に取り扱われなければ、環境汚染を通じて人の健康や生態系に好ましくない影響を及ぼすおそれがあります。

 このような悪影響の発生を未然に防止するためには、こうした化学物質が、大気、水質、土壌等の環境媒体を経由して環境の保全上の支障を生じさせる蓋然性(以下「環境リスク」とする。)について、科学的な観点から定量的な検討と評価を行い、その結果に基づいて、必要に応じ、環境リスクを低減させるための対策を進めていく必要があります。

 このため、まず、科学的な知見に基づいて、多数の化学物質の中から相対的に環境リスクが大きいと想定される物質をスクリーニング(抽出)し、その上でより詳細なリスク評価を行う必要があります。環境省では、この最初のステップを環境リスク初期評価と位置付けています。

2.環境リスク初期評価について

(1) 実施主体

 環境省環境保健部環境リスク評価室では、平成9年度から化学物質の環境リスク初期評価に着手し、国立研究開発法人国立環境研究所環境リスク・健康研究センターの協力を得て、その結果をこれまで15次にわたりとりまとめ、「化学物質の環境リスク評価」(第1巻~第15巻)として公表しています。

 この環境リスク初期評価の結果のとりまとめに当たっては、中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会に審議頂いています。

(2) 評価結果の活用

 環境リスク初期評価において、リスク判定の結果、「詳細な評価を行う候補」及び「関連情報の収集が必要」と評価された物質については、関係部局等との連携と分担の下で、必要に応じた対応(「詳細な評価を行う候補」とされた場合には、より詳細なリスク評価の実施等、「関連情報の収集が必要」とされた場合には継続的な環境濃度の監視、より高感度な分析法の開発等)を図ることとしています。

図 環境リスク初期評価による取組の誘導と化学物質に係る情報の創出

(3) 構成

 環境リスク初期評価は、人の健康に対するリスク(健康リスク)評価と生態系に対するリスク(生態リスク)評価から成り立っており、以下の3段階を経て、リスクの判定を行っています。

 ①有害性評価      人の健康及び生態系に対する有害性を特定し、用量(濃度)

 -反応(影響)関係の整理

 ②曝露(ばくろ)評価       人及び生態系に対する化学物質の環境経由の曝露(ばくろ)量の見積もり

 ③リスクの程度の判定  有害性評価と曝露(ばくろ)評価の結果を考慮

(4) 対象物質

 環境省内の関係部局や有識者から、各々の施策や調査研究において環境リスク初期評価を行うニーズのある物質(非意図的生成物質や天然にも存在する物質を含む。)を聴取するとともに、環境モニタリング調査結果において検出率が高かった物質等の中から有識者の意見等を踏まえ、優先度が高いと判断されたものを選定しています。

(5) 評価の方法

 化学物質の環境リスク初期評価ガイドラインに基づいてリスクの判定を行い、リスクの判定ができない場合には情報収集の必要性に関する総合的な判定を実施しています。具体的には、健康リスク評価、生態リスク評価について、それぞれ次のとおりリスク判定を行っています。

健康リスク評価:

 無毒性量等を予測最大曝露(ばくろ)量(又は予測最大曝露(ばくろ)濃度)で除したMOE(Margin of Exposure)を求めて判定します(有害性に閾値があると考えられる場合)。

MOE

判定

10未満

10以上100未満

100以上

算出不能

詳細な評価を行う候補と考えられる。

情報収集に努める必要があると考えられる。

現時点では作業は必要ないと考えられる。

現時点ではリスクの判定ができない。

  *有害性に閾値がないと考えられる場合は、過剰発生率による評価を行います。

生態リスク評価:

 予測環境中濃度(PEC)を予測無影響濃度(PNEC)で除したPEC/PNECにより判定します。

PEC/PNEC

判定

1以上

0.1以上1未満

0.1未満

情報不十分

詳細な評価を行う候補と考えられる。

情報収集に努める必要があると考えられる。

現時点では作業は必要ないと考えられる。

現時点ではリスクの判定はできない。

情報収集の必要性に関する総合的な判定:

 リスクの判定結果を踏まえつつ、化学物質の製造量、用途、物性、化学物質排出把握管理促進法による届出排出量を用いたモデル等による環境濃度の推定結果等の情報に基づいて、専門的な観点から、更なる情報収集の必要性について総合的な判定を実施します。

 初期評価を実施する際には、その趣旨に鑑み、環境リスクが高い物質を見逃してしまうことのないよう、有害性評価においては複数の種について毒性データが利用可能な場合には感受性がより高い種のデータを利用する、曝露(ばくろ)評価においては原則として検出最大濃度を利用する等、安全側に立脚した取扱いを行っています。なお、別途検討が行われているナノ材料や内分泌攪乱作用についての評価は、本初期評価の対象としていません。

3.環境リスク初期評価(第16次とりまとめ)の結果について

(1) 対象物質

 今回の第16次とりまとめにおいては、環境リスク初期評価(健康リスクと生態リスクの双方を対象)を11物質について、生態リスク初期評価を1物質について、それぞれとりまとめました。

(2) 結果

 ①環境リスク初期評価(健康リスクと生態リスクの双方を対象)

 対象とした11物質の環境リスク初期評価の結果を、今後の対応の観点から整理をすると、以下のとおりです。

 今回の第16次とりまとめにより、これまでに262物質の環境リスク初期評価がとりまとめられたことになります。

健康リスク初期評価

生態リスク初期評価

A.

詳細な評価を行う候補

【0物質】

【4物質】

・銀及びその化合物

・ジオクチルスズ化合物

・ジブチルスズ化合物

・ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート

B.

関連情報の収集が必要

B1

リスクはAより低いと考えられるが、引き続き、関連情報の収集が必要

【3物質】

・銀及びその化合物(経口曝露(ばくろ)*)

・ジオクチルスズ化合物(経口曝露(ばくろ)*)

・モノブチルスズ化合物(一般環境大気の吸入曝露(ばくろ)

【3物質】

・p-アミノフェノール*

・2,4-ジニトロフェノール

・モノブチルスズ化合物

B2

リスクの判定はできないが、総合的に考えて、関連情報の収集が必要

【1物質】

・ジオクチルスズ化合物(一般環境大気の吸入曝露(ばくろ)

【0物質】

C.

現時点では更なる作業の必要性は低い

【8物質】

・2-アミノピリジン**

・p-アミノフェノール

・2,4-ジニトロフェノール

・ジベンジルエーテル

・ジベンゾ[b,d]チオフェン

・ジブチルスズ化合物

・ジメチルスズ化合物

・ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート

【4物質】

・2-アミノピリジン

・ジベンジルエーテル

・ジベンゾ[b,d]チオフェン

・ジメチルスズ化合物

*ガイドラインに従い算出されたMOEやPEC/PNEC比では「現時点では更なる作業の必要性は低い」となるが、諸データ及び専門的な見地から総合的に判断して、引き続き、関連情報の収集が必要と考えられた物質。

**MOEやPEC/PNEC比が設定できず「リスクの判定はできない」となったが、諸データ及び専門的な見地から総合的に判断して、現時点では更なる作業の必要性は低いと考えられた物質。

 ②追加的に実施した生態リスク初期評価

 対象とした1物質の生態リスク初期評価結果を、今後の対応の観点から整理すると、以下のとおりです。

 今回の第16次とりまとめにより、環境リスク初期評価の262物質に加え、これまでに96物質の生態リスク初期評価がとりまとめられたことになります。

A.

詳細な評価を行う候補

【1物質】

・クラリスロマイシン

B.

関連情報の収集が必要

B1

リスクはAより低いと考えられるが、引き続き、関連情報の収集が必要

【0物質】

B2

リスクの判定はできないが、総合的に考えて、関連情報の収集が必要

【0物質】

C.

現時点では更なる作業の必要性は低い

【0物質】

4.今後の対応について

(1) 結果の公表

○ 環境リスク初期評価の結果は、「化学物質の環境リスク初期評価:第16巻」としてとりまとめるとともに、インターネット上で公表します(下記アドレス参照)。

   https://www.env.go.jp/chemi/risk/index.html

○ また、環境リスク初期評価により得られた科学的知見を、一般消費者が日常生活において、企業が経済活動において、より容易に活用することができるよう、物質ごとの初期評価の結果の要約を作成し、インターネット上で公表します。

(2) 関係部局等との連携

○「詳細な評価を行う候補」とされた化学物質については、規制当局である関係部局、自治体等へ評価結果の情報提供を行い、緊密な連携を図ることにより、各主体における取組(例:詳細なリスク評価の実施、環境調査の実施、より詳細な毒性情報の収集等)への活用を求めることとしています。

※今回の対象物質:銀及びその化合物(生態リスク)、ジオクチルスズ化合物(生態リスク)、ジブチルスズ化合物(生態リスク)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(生態リスク)、クラリスロマイシン(生態リスク)

 また、「関連情報の収集が必要」とされた化学物質については、個々の評価の内容を踏まえて関係部局との連携等を確保し、環境中の存在状況や有害性に係る知見等の充実を図るものとします。

(3) 環境リスク初期評価の再実施

 「関連情報の収集が必要」とされた物質については、関連情報を収集の上、適宜、環境リスク初期評価の対象物質とすることについて検討します。

 また、既に環境リスク初期評価を行った物質についても、その後、国内外で毒性データや曝露(ばくろ)データの更新や評価手法の見直し等が行われたものについては、再評価を行い、逐次、再評価結果を公表します。

(4)今後の課題・評価対象物質

○ 環境リスク初期評価ガイドラインについて、OECD等における試験法及び評価手法に関する検討状況を把握し、新たな知見等を踏まえて、今後も必要に応じて見直しを図ります(ベンチマークドーズ(BMD)法を用いた定量的な発がんリスク評価等)。

○ QSAR(定量的構造活性相関)については、生態リスク初期評価において毒性データが不足する物質を対象に必要に応じてQSAR予測値を算出するとともに、当面、専門家判断の根拠の一つとしてQSAR予測値を活用していきます。

○ 化学物質審査規制法の下でスクリーニング評価及びリスク評価が進められていることを踏まえ、以下に示す物質を母集団とします。この際、用途ごとの規制法のみによる対応ではカバーできない物質や用途が多岐にわたる物質など、総合的な化学物質管理が必要な物質に重点を置きます。

〈 化学物質の環境リスク初期評価を行う物質の母集団(例)〉

  • 環境省内の関係部局から環境リスク初期評価を行うニーズのある物質
  • 諸外国でリスク評価・管理の対象とされている物質
  • モニタリングにおいて検出され、その結果の評価が必要とされる物質
  • 非意図的生成物質
  • 天然にも存在する物質

添付資料

連絡先
環境省大臣官房環境保健部環境安全課環境リスク評価室
代  表 03-3581-3351
室  長 笠松 淳也(内線 6340)
室長補佐 塚原沙智子(内線 6341)
室長補佐 鈴木 克彦(内線 6349)

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